http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/435.html
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日本再生への提言
http://jp.reuters.com/article/jpopinion
電力自由化促進、エネルギー政策改革 (16名)
規制・制度改革を柱とする成長戦略 (11名)
財政再建、国家予算の抜本的見直し (9名)
政治ガバナンスの質の向上 (9名)
各種規制機関の透明性・独立性確保 (4名)
被災地への権限委譲による復興加速 (8名)
企業統治改革、経営手法の刷新 (3名)
TPPやFTAなど通商貿易協定の推進 (3名)
海外人材の登用・活用、移民政策の推進 (3名)
消費税は6年後に20%まで引き上げを=アニール・カシャップ教授
東北で実現すべきコンパクトシティ構想と農業改革=山下一仁氏
自動車は最後の砦、「根こそぎ空洞化」阻止を=志賀俊之・日産COO
日本に残されたアジアのスイスという選択肢=ロナルド・スレスキー教授
成長戦略は既得権との闘い、道州制は霞が関解体とセットで=古賀茂明氏
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82L01N20120322?sp=true
消費税は6年後に20%まで引き上げを=アニール・カシャップ教授
2012年 03月 22日 11:36 JST
「欧州問題が落ち着けば、市場の次の関心は日本に向かう。危機が始まる前に行動を起こすべきだ」とシカゴ大学教授でニューヨーク連銀の経済諮問委員会委員を務めるアニール・カシャップ氏は警鐘を鳴らす。
消費税、デフレ対策、成長戦略に関する同氏の提言は以下の通り。
●危機が始まる前に消費増税を急げ
第一に、日本は財政の健全化を急がなければならない。支出を減らすとともに、消費税の増税が必要だろう。
私は消費税を段階的に引き上げ、向こう6年間で20%にする案に賛成だ。欧州問題が落ち着けば、市場は日本に注目し始めるだろう。日本政府は、危機が始まる前に行動を起こすべきだ。
●事実上のインフレ目標の達成は必須
第二に、日銀は(2月の金融政策決定会合で決めた事実上の)インフレターゲットを是が非でも達成しなければならない。米連邦準備理事会(FRB)による非伝統的な金融政策は、デフレ対策として有効であることが証明された。一方で、失策を繰り返した日銀の過去の議論は説得力に欠くことが分かった。
今のままでは、借り手から貸し手への意図せぬ所得移転は、わずかしかリバランスされないだろう。デフレにつながる政策の継続に賛成する理由は見当たらない。
●成長戦略を定量的評価する仕組みが必要
第三に、政府は成長戦略をナンバーワンの優先課題にすべきだ。改革すべき項目のリストはとても長く、選択肢のランク付けは容易ではない。しかし、簡単な策として以下の方法がある。
政府のすべてのイニシアチブを、中長期に成長に貢献するかどうかという点に基づいて判断するのだ。具体的には、各イニシアチブがいかにして成長に貢献するかそのメカニズムを示し、可能な限り成長への貢献度合いを数値化すべきだ。
この基準に沿って政策を決めれば、政府が成長の見返りのない政策論争や政策提言のために、どれほど多くの時間と労力を無駄にしてきたかが分かるだろう。そうした努力への時間の無駄を省くこと自体、大きな前進になるはずだ。
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82L01C20120322?sp=true
東北で実現すべきコンパクトシティ構想と農業改革=山下一仁氏
2012年 03月 22日 11:03
人口減少や高齢化のペースが速い東北の再生には、生活に必要な諸機能を都市の中心部に集中させるコンパクトシティ構想の実現が望ましいとキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は説く。
農業改革を含めた全3項目の提言は以下の通り。
●徒歩圏に生活の諸機能を集中配備
コンパクトシティという考え方がある。これは、都市のスプロール化(無秩序な拡大)を抑制するため、歩いて行ける範囲の中心市街地に医療、教育、商店、住宅など生活に必要な諸機能を集中配備し、住みやすい街づくりを目指そうとする、効率的で持続可能な都市づくりである。
これによってお年寄りも身近な病院で診察を受けることができる。さらに、モータリゼーションを抑制し、地球温暖化ガスの排出抑制にも貢献できる。
東日本大震災からの復興にあたっても、このような都市づくりを行えば、災害対応にも食料安全保障にも美しい農村景観にも貢献できる。具体的には、幅員(ふくいん)の大きい幹線道路を整備し、住宅地は津波の心配のないところに一か所にまとめ、災害に強い堅牢な建物を設置(三陸地域では後背高地に建設)したうえで、間に住宅などのないまとまった規模の農業用地を創造すればよい。
水産施設についても、小規模な漁港を中核となる漁港に集約し、そこに加工、流通、関連産業が集中するコンパクトな水産地域づくりを目指すべきである。
●規制がない状態で農業復興を図る
津波で被害を受けた農地については、その多くは畔(あぜ)もなくなっているので、もともとあった一筆の農地の形状を復元することは難しい。高齢な農業者が新たに機械を購入して、営農を再開することも困難だろう。
しかし、これは非効率だった農業を効率的な農業に新生させる大きなチャンスである。
すでに主業農家に対して、農地の貸し出しを要請する高齢農家が出てきている。その際、これまで日本農業の近代化・効率化を阻んできたものに、農地制度などの各種規制が存在することから、復興地域において「農業特区」を設け、規制がない状態で農業復興を図るべきである。
具体的には、(1)現行農地保有合理化法人をフランスの土地整備農村建設会社(SAFER)のような法人に再編・整備し、いままで認められてこなかった、他の者に先駆けて農地を購入する権利である「先買い権」をこの法人に認め、法人が購入した農地を若手農業者に優先的に売却する、 (2)農協などの一部の法人にしか認めてこなかった農地信託事業を信託銀行、信託会社など一般の法人にも認め、信託農地で土地購入代金を支払えない若手農業者に営農させる、政府出資を含む農業ファンドを創設して若手農業者の資金繰りを援助するなどの積極果敢な対策が講じられるべきだ。
●緊急措置で農地の大規模化を促す
現在、農地整備は0.3ヘクタール区画を標準に行われている。高齢化で農業を継続できなくなった農家の農地を集めたり、別の地区の農地との交換を行って農地をまとめるという換地処分を行ったりして、2ヘクタールの大規模区画にすれば、作業の効率化の効果に加え、育苗、田植えという旧来の技術に代えて、水田に直接種をまく直播という新しい技術も導入できる。
さらにコストは低下し、農業収益は増加する。このような農地基盤整備事業を5年以内の緊急時限的な措置として、土地改良事業を行う際、地区内の農地所有者等の3分の2が同意しなければならないという要件を2分の1に切り下げるとともに、農家負担を伴わない100%補助で実施する。
これはあくまでも復興の緊急措置として、5年間集中的に実施させるために行うものであり、この期間を過ぎた事業実施の申請には応じないこととする。これにより短期間のうちに、迅速な農業基盤を実現できる。
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82K00S20120321/?sp=true
日本に残されたアジアのスイスという選択肢=ロナルド・スレスキー教授
2012年 03月 21日 10:41 JST
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日本再生への提言
消費税は6年後に20%まで引き上げを=アニール・カシャップ教授
東北で実現すべきコンパクトシティ構想と農業改革=山下一仁氏
自動車は最後の砦、「根こそぎ空洞化」阻止を=志賀俊之・日産COO
成長戦略は既得権との闘い、道州制は霞が関解体とセットで=古賀茂明氏
「生活水準はそれなりに高いが、国外の出来事にはほとんど影響力を持てない」。数十年前に話題になった「日本のスイス化」というシナリオが現実味を増しているとサフォーク大学東アジア研究所所長のロナルド・スレスキー教授は指摘する。そして、それは決して悪い選択肢ではないという。
全3項目の提言は以下の通り。
●被災者への思いやりを忘れずに
日本は、昨年3月11日に発生した東日本大震災で生活に深刻な打撃を受けたすべての人々への思いやりをしっかり持ち続ける必要がある。地域社会や支援ネットワークとのつながり、そして仕事を失い、日本社会の一員だという意識を喪失したすべての人々のことを決して見過ごしてはならない。
彼らのために新しいコミュニティは作られるのか、どこにどのように作られるのか。被災地に住む人たちだけでなく、日本全国の人々が心の中でそうした意識を維持することが、非常に重要だ。将来や方向性を感じられないまま、依然多くの人々が仮の生活を強いられているが、それは本来許されることではない。
もしも苦しんでいるこれだけ多くの人々が社会から見捨てられたり見過ごされたりするならば、日本国家というアイディアに対する国民のコミットメントも大いなる危機に直面するだろう。
●仕事や勉強の意義を示す
今は日本政府にとって非常に難しいときだ。経済を活性化しなければならないというプレッシャーは高いが、どうすればそれができるのか創造的な言葉も決定打も見つからない。若者に前向きな未来を提示することもできなければ、国の方向感覚すら見失っている。
これまでのところ、日本人の回復力や協調精神は強く、社会は非常に素晴らしい団結力を示している。ただ、旧態依然とした政治は、(国民の)基本的な疑問に答えられていない。
どうすれば良い仕事が見つかるのか、どうして猛勉強をしなければならないのか、将来は現在よりも良くなるのか――。社会的そして情緒的に深刻な問題は、政治家の利己心や市民グループの疎外によって、未解決のままだ(一方で政治家の利己心と市民グループの疎外ゆえに、社会は日常的に機能している面もあるが)。
日本はビジョンを持ったリーダーの下で一体になることを避けているが、それはおそらく力も先見性もある指導者が多くいながらも、国家を太平洋戦争での敗北に導いた経験によるものだろう。
●創造的だが孤立する国という現実
振り返れば、20─30年前、日本はアジアにおけるスイスになるとの見方が一部から示されていた。生活水準はそれなりに高くて暮らしは快適だが、国境外で起きている出来事にはほとんど影響を及ぼすことはないという国だ。これは現実のことになりそうだ。
もし南北朝鮮が統一されれば、将来いつかの時点でその経済力は日本を上回るだろう。そうなれば、日本は、ある意味で、鎌倉時代のような国になるだろう。創造的だが孤立し、近隣国から見下ろされやすい国に。
それは将来への展望としては胸躍るものではないが、アジアとの関わりの歴史の中で何回も繰り返されてきたパターンだ。期待値が低くなれば、もしかしたら日本は国内問題に集中し、それを解決することができるのではないだろうか。
(3月21日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82I03A20120319?sp=true
成長戦略は既得権との闘い、道州制は霞が関解体とセットで=古賀茂明氏
2012年 03月 19日 15:48
大阪から日本を変えたい――。大阪府市統合本部の特別顧問を務める元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、成長戦略、地方分権、エネルギー戦略の3分野で従来とは抜本的に異なる政策アプローチをとる必要があると説く。
提言は以下の通り。
<今こそ既得権と闘う成長戦略が必要>
野田佳彦首相は1月24日に召集された通常国会での施政方針演説で、日本再生戦略を年央までに策定すると表明した。その際、成長産業となる大きな可能性を秘めている分野として、農業、エネルギー・環境、医療・介護などに言及したこと自体は適切だと思う。
しかし、これらの分野への期待は実は過去の成長戦略の中でも語られていた。期待を述べるだけでは、何も変わらない。具体的にどうやって伸ばしていくのか、問われるのはそのアクションプランである。
過去の成長戦略が絵に描いた餅に終わった理由は明白だ。伸ばすための政策支援は「補助金」「融資」「税制上の優遇措置」といったお決まりの三点セットにとどまり、しかも厳しい財政事情を反映して支援規模はこぢんまりとしていた。その結果、借金を増やすだけでいずれの分野でも競争力は高まらないという悪循環の繰り返しだった。
本来、こうした分野を本気で伸ばそうとするならば、必要なことは成長機会を阻んでいる既得権を突き崩すことであり、そのための競争原理の積極的な導入である。
改めて指摘するまでもないが、農業には農協、医療には医師会、エネルギーには電気事業連合会といった強力な「利益団体」が存在する。これらの既得権にメスを入れずして、真の成長戦略を語ることはできないはずだ。
具体的には、農業では減反廃止と株式会社による農業参入の全面解禁、医療では混合診療の解禁や株式会社の医療経営参入、エネルギーでは発送電分離などの競争メカニズムの導入によって既得権を突き崩し、成長機会を増やす必要がある。
ただ、率直に言って、今の野田政権にそこまで踏み込む覚悟があるのか疑問だ。本当ならば、民主党の方が各種利益団体に支えられてきた自民党に比べて、こうした改革を断行しやすかったはずだが、権力の座についてからはすっかり自民党と同じになってしまった。それどころか震災以降は自信を喪失し、既得権にいいように利用されている気がする。このような政治が続くことは、日本にとって悲劇だ。
どうやら政治家は改革の時間的余裕はまだ20年程度あると考えているようだ。しかし、欧州債務危機の例を見るまでもなく、それでは悠長すぎる。野田政権に言わせれば、だからこそ消費増税の必要性を訴えているということなのだろうが、消費増税だけで日本が救われるわけではない。欧米のエコノミストたちは、日本が消費増税だけで財政再建を果たそうとするならば、その税率は30%以上に引き上げる必要があると口をそろえている。
むろん、財政再建に向けて歳入面や歳出面でさまざまな手を打つ必要性は私も理解しているが、政府与党は既得権に挑み成長機会を増やすという議論から逃げてはいないか。デフレ脱却だけでも税収は相当増える。小泉・安倍政権下の2006年度には一般会計税収が6年ぶりに50兆円台を回復したことがある。日本をどう成長させるのかという議論を諦めていては、既得権を守るための増税路線をひた走るだけになってしまう。
<道州制は霞が関の解体とセットで>
最近、道州制を視野に入れた地方分権論がふたたび盛り上がっている。私が特別顧問を務める大阪府市統合本部も、道州制を推進する立場を明確化している。しかし、どうも狙いが正しく理解されていないようなので、ここできちんと説明したい。
よくありがちな誤解は、いくつもの県を束ねる道州制では、住民との距離が遠くなるのではないかというものだ。確かに行政の合理化は狙いの一つだが、道州制は基礎自治体の拡充とセットであり、むしろ行政と住民とのあいだの距離を縮め、地域ごとのニーズや実情により則した地方自治の実現を容易にするものである。
基礎自治体とは、多少の組み換えはあるだろうが基本的には今の市町村のことだ。大きな政令市などは、さらにいくつかに分けることになろう。道路や水道といった広域インフラ整備は道州が担当するが、子どものための予算であれば、基礎自治体が子ども手当に充てるか、塾代の補助金として使うか、待機児童を減らすために保育所を整備するか、地域の実情に応じて決めればよい。
もうひとつ道州制において大事なことは、霞が関の解体とセットで行わなければならないということだ。外交や安全保障、国家財政などは中央官庁が引き続き担う必要があるが、地域の産業政策や国土交通戦略などは道州が担えばよい。
経済産業局など地方にある中央の出先機関は解体し、人員は整理することだ。また、国の出向者は係長以下に限定する。これをやらないと中央からの出向者に支配された似非(えせ)道州政府が補助金をばらまくといった事態に陥りかねない。中央から地方、その地方内でもさらに住民に近いところへの権限移譲が道州制成功のカギだ。
<関西発のエネルギー革命を目指せ>
大阪府市統合本部は、2月に「エネルギー戦略会議」を発足させた。関西地区の住民の安全・健康を守る観点から施策をまとめるとともに、エネルギー分野において既得権と闘う成長戦略を示すことになる。
まずは、大阪市が8.9%の株式を保有する関西電力に対して株主提案をする。今後の日本の電力・エネルギー市場をリードするのは、現実問題、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)ではなく関西電力(9503.T: 株価, ニュース, レポート)だ。しかし、地域独占の上にあぐらをかいた今のような状態では、背中を強く押さなければ、新しいことには挑戦しないだろう。
欧州では、スマートグリッドの普及が急ピッチで進み、洋上風力発電の普及に伴い海底送電インフラ事業も積極化している。日本にはたくさんの良い技術があるのだから、関西電力にはそうした技術を生かして、スマートグリッドや再生可能エネルギーの普及を牽引してもらいたい。新しいスマートグリッドのシステムを実用化して、そのシステムを海外に輸出することも検討すべきだし、関西電力が他の電力会社を買収してもよいだろう。
法律上、制度上のハードルが多く浮上するだろうが、政府や中央官庁にも積極的に協力を求めていくつもりだ。大阪から日本を変えていきたい。
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82I02W20120319?sp=true
憲法に財政均衡化ルールを明記せよ=ホスキンス元クリーブランド連銀総裁
2012年 03月 19日 15:07 JST
日本再生への提言
消費税は6年後に20%まで引き上げを=アニール・カシャップ教授
東北で実現すべきコンパクトシティ構想と農業改革=山下一仁氏
自動車は最後の砦、「根こそぎ空洞化」阻止を=志賀俊之・日産COO
日本に残されたアジアのスイスという選択肢=ロナルド・スレスキー教授
財政再建が急務となっている日本は、ドイツやスイスのように、財政均衡化のルールを憲法で明文化すべきだと元米クリーブランド地区連銀総裁のW・リー・ホスキンス氏は述べる。
全3項目の提言は以下の通り。
●財政健全化に向けて改憲含む法的措置を
日本は米国と同様に、債務問題に取り組むための改革が必要だ。具体的には、憲法を改正し、歳出総額を対GDP比で制限するなどの財政均衡条項の明文化が考えられる。
また、より効率的な税制への転換、そして行政組織や規制に有効期間を設けるサンセット法(時限立法)の活用が必要だ。それらは、改憲による財政支出規制とともに、日本にとって重要な改革である。
●特定エネルギー分野への優遇措置は間違い
エネルギー改革は、主に市場のシグナルに従ってなされるべきだ。政府の役割は環境や安全面での監督や規制を行うことであり、特定産業の優遇は避けるべきだ。
すなわち、米連邦政府が行っているような風力やソーラー発電、エタノールといった特定分野への補助金の傾斜配分はすべきではない。
●米軍能力低下を念頭に防衛政策見直しを
日本は極東の潜在的脅威に対応できるように、防衛政策を急ぎ見直すべきだ。その際には、米国がこの地域でハードパワー(軍事力や経済力)を拡大する能力が弱まっていることを考慮に入れなければならない。
(3月19日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82F01H20120316
会社形態の農業・漁業を縛る規制の見直しを=八代尚宏教授
2012年 03月 16日 16:40
単なる復旧ではなく、被災地の雇用機会拡大に結びつく復興を目指すためにはどうすればよいのか。国際基督教大学の八代尚宏教授は、従事者が多い農業・漁業分野における零細な経営体の共同組織化や大規模な法人経営への転換が必要と説く。
提言は以下の通り。
●大震災を契機に雇用機会の拡大を
東日本大震災のような大規模災害では、震災前の量的な原状回復ではなく、質的な改革を伴う復興が求められる。
被害の大きかった地域の高齢化率は、全国平均よりも2%ポイントほど高く、若者の雇用機会は相対的に少なかった。農業や漁業の従事者が多く、いずれも零細な規模がほとんどである。
仮に、被害を受けた小規模水田や流失した小型漁船を、そのままの形で復旧できたとしても、地域産業としての長期的な衰退傾向に歯止めをかけることは困難となる。
むしろこの機会に、自営業ではなく、共同で会社組織を作り農業経営に参画する、生産性の高い大規模農業を目指すことが望ましい。
これは漁業も同様で、共同で大型船を建造・運営できる会社組織での漁業を支援する仕組みが必要とされる。個人として経営リスクを負うのではなく、被用者として農業や漁業に従事できる雇用機会を広げることで、後継者の層も厚くなり、産業としての持続性も高めることができる。
こうした改革を進めるためには、会社形態での農業や漁業を制約する様々な規制・制度の大胆な見直しが必要とされる。これには、地域を限定して新しい制度を導入する震災特区の活用が効果的である。
高齢人口比率が高いことは、医療や介護サービスへの潜在的な需要が大きいことを意味する。高齢者の多様な病気に対応できる家庭医を、全国に先駆けて普及させることを震災対策の一環として進めれば、医療改革の新しいモデルともなる。単なる復旧ではなく、雇用機会の拡大に結びつく、「禍いを転じて福と為す」復興を目指すべきである。
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82F02V20120316
海外の知識労働者を登用せよ=加藤隆俊・国際金融情報センター理事長
2012年 03月 16日 18:07
日本の課題は、日本人だけで解決しようとする必要はない――。元財務官の加藤隆俊・国際金融情報センター理事長は、政策的に助成したとしても、海外の優秀な知識労働者を招き、日本人と一緒に考えてもらう仕組みを整えるべきだと語る。
全3項目の提言は以下の通り。
<「知」を日本人だけに求める必要はない>
日本に限った問題ではないが、多くの先進国は国内の雇用確保の面において輸出主体の製造業から教育や社会保障関連など非貿易財分野へのよりいっそうのシフトを迫られている。
このシフトを円滑に進めるためには、英知の結集が望まれる。グローバルに開かれた現代において、知を日本人だけに求める必要はない。政策的に助成したとしても、海外の優秀な知識労働者を招き、日本人と一緒に考えてもらう仕組みが不可欠だと私は考えている。
たとえば、英国では中央銀行であるイングランド銀行の金融政策委員会の委員がアメリカ国籍だったり、国際通貨基金(IMF)に派遣している理事代理がデンマーク国籍だったりする。国の行方に影響を与えるシニアなポジションにおいて、海外の人材を登用する姿勢は先進諸国の中でも抜きん出ている。
日本の場合、一足飛びに政府や中央銀行は無理でも、公的教育機関の教員の一定割合は外国人にするといった決め事があってもいいのではないだろうか。中国も北京大学や清華大学には相対的に多くの外国人教員がいると聞く。
何も日本人の想像力が低いと言っているわけではない。日本人がどっぷりと浸かってきたライフスタイルとは違う視点から、独創的なアイディアを提示してくれるのではと期待しているのだ。
海外の人材を登用すれば、必然的な流れとして英語教育のインフラも今以上に整えなければならなくなる。海外に比べて遅れている女性の管理職登用も進む可能性が高い。後者は、少子高齢化の進展で労働力不足が深刻化する日本にとって、非常に重要な論点である。日本企業の経営にとっても、よい影響を与えることになるだろう。
<「官」の能力の活用>
政治主導が声高に叫ばれる時代にあって、官の役割が難しくなっていることはわかる。しかし、5年後、10年後の国家の戦略を考える組織がどこかに必要であることに異論を挟む人は少ないだろう。
アメリカでは大学やシンクタンク、ドイツやフランスなどの欧州諸国では主に中央銀行や政府傘下の研究組織がその役割を担っている。日本の場合、歴史的に官がその役割を果たしてきたわけだが、ここ数年は政治主導の流れの中で関わりを減らしつつある。
もちろん、その役目を官庁だけに限る必要はないが、能力を持った人間の集まりであることを考えれば、中長期的な国家の課題と政策対応の検討において、もっと活用されてしかるべきだろう。
<財政再建は、もはや待ったなし>
10%までの消費増税を「税と社会保障の一体改革」案に盛り込んだ野田政権が、相当な決意と危機感を持って財政再建に正面から取り組んでいることは素直に評価されるべきだ。ただ重要なことは、与党全体として、国全体として、政策を実際にデリバーすることだ。
消費増税に向けた国民のコンセンサスを得るためにも、世代間の負担問題である社会保障問題に真摯に取り組み、全体像を見直し、持続可能な状態に持っていかなければならない。
そもそも新発債の発行額が税収を上回るという異常事態は持続できるようなものではない。人口が爆発的に増えているならば話は別だが、日本はむしろその逆に人口減少のペースが速まり、高齢者が増えている社会だ。負担をお願いすべきところはお願いし、身を切るべきところは切る。当たり前のことを政府が有言実行できなければ、ギリシャの例を見るまでもなく、日本を見る世界の目は一気に厳しくなるだろう。世界経済運営における日本の影響力も大きく低下しかねない。財政再建は、もはや待ったなしだ。
http://jp.reuters.com/article/jpopinion/idJPTYE82E01Q20120315?sp=true
地方発の成長戦略と歳出改革の同時推進=高橋進・日本総研理事長
2012年 03月 15日 13:11
成長力のさらなる低下、電力危機、財政破綻リスクの上昇――。震災後の日本が直面する3つの困難をいかに乗り越えるか。日本総合研究所の高橋進理事長が処方箋を示す。
提言は以下の通り。
<成長戦略は地方から始めよ>
東日本大震災によって、日本は、(1)成長力のさらなる低下、(2)電力危機、(3)財政破綻リスクの上昇、という3つの困難に直面することになった。これを放置すれば、衰退の危機につながる。この3つの困難にいかに立ち向かうかが日本の課題である。
まず、成長力低下の危機を克服するためには、被災地の復興が最優先課題だ。もともと過疎・高齢化が進行していた被災地の経済を再興するためには、(1)農林水産業は集約化や民間資本の投入などを通じて競争力の強化と効率化を進める必要があり、(2)製造業は電子、機械などの集積を加速させるだけでなく、風力発電関連など地場の特色を活かした新産業を育成するため、産業政策の広域連携化や地方分権を進める必要がある。
日本経済全体についても、成長戦略の柱を地方分権と規制改革に置くべきだ。地方経済が公共事業や製造業大企業の工場誘致に依存して、成長を続けることはもはや限界である。地場産業を育成し、地域の潜在力を活かして、地域独自の成長戦略を紡ぎだしていく必要がある。
とりわけ医療・介護、保育・教育、農業、観光といった非製造分野は、地方独自の取り組みによって競争力を強化することが可能だ。それによって初めて、地方は国内の他地域からだけでなく、成長するアジアからヒト・モノ・カネを取り込み、アジアの都市間競争を勝ち抜くことができるようになり、日本経済全体の成長にも貢献することができる。
地方独自のこうした取り組みを支援するため、政府は上記分野の規制改革を徹底して推進し、民間資本の参入が活発化する環境を整備すべきだ。
<電力危機をチャンスに>
大震災後の原発事故による電力供給不安は、円高などと相まって企業の空洞化を加速し、経済の成長力の低下を招く恐れがある。既存原発の安全対策を抜本的に強化した上で再稼動したとしても、新規の原発を建設することはかなり困難とみられ、電力危機は長期化する可能性がある。
電力危機を克服するためには、電力のみならずエネルギーの効率的な創出、配分、使用を目指したスマートシティの構築を目標にして、再生可能エネルギーの開発を加速するとともに、発送電分離など電力システムの改革を進め、電力の安定供給と電力事業の効率化を進めるべきである。
同時に、徹底した節電、省エネによって今後の電力・エネルギー需要の伸びを抑制することで、2030年頃には火力発電への依存度を大きく高めることなく脱原発を視野に入れ、電力の安定供給とCO2削減を両立させることも可能となる。
今後、社会全体で省エネ、節電のノウハウを蓄積し、関連産業を育成することで、環境・エネルギー分野で日本の新たな強みを生み出し、成長力を高めるだけでなく、アジアの逼迫(ひっぱく)するエネルギー需給の緩和にも貢献できる。
<財政健全化に向けた三位一体改革を>
大震災の復興に伴う財政負担増や税収減によって財政再建はさらに困難になった。2010年代中にも財政赤字が国民貯蓄を食いつぶし、国債金利に上昇圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する恐れがある。これを回避するためには、歳入改革(増税)だけでなく、歳出改革および既述した成長戦略を同時に推進する必要がある。
歳出改革は、行政・政治の改革と社会保障の給付抑制によって、歳出の伸びを抑えることが課題だ。行政改革に際しては、国と地方の役割の見直しまで踏み込んだ公務員制度改革、政治改革では、議員定数・歳費の削減はもとより、衆参両議院の機能のあり方といった政治制度の改革まで視野に入れるべきである。
社会保障改革では、年金制度の持続性を確保するため、賦課方式から積立方式への制度変更まで視野に入れて、世代間の不公平の抜本的是正に取り組むべきだ。医療・介護についても、給付抑制のためのシーリングだけではなく、高齢者医療・介護の効率化のための制度改革が不可欠だ。
こうした改革を推進するためには、客観的なデータに基づき、与野党が党派の利害を超えて取り組む必要があり、データを分析しシナリオを提示するための第三者委員会と超党派の改革委員会の設置を求めたい。
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