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日銀引き受けによる国債発行は インフレをもたらすか?  消費税増税法案「景気条項」「再増税条項」に 隠された政府の思惑
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/433.html
投稿者 MR 日時 2012 年 3 月 22 日 01:42:36: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://diamond.jp/articles/-/16704【第11回】 2012年3月22日

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

日銀引き受けによる国債発行は
インフレをもたらすか?


 前回述べたように、これまで日銀が銀行から国債を買い上げることができたのは、利子率が低下してきたからである。利子率が上昇すると、国債売却は銀行にキャピタルロスをもたらすので、銀行は国債を売るかどうかわからない。つまり、これまで述べたオペレーションは、実行できなくなる可能性がある。
 では、日銀が直接に政府から購入すればどうか? これについて以下に検討しよう。
日銀引き受けなら、
無制限に国債を発行できる
 日銀が直接に政府から購入することを「日銀引き受け」という。長期国債の日銀引き受けは、財政法の第5条で禁止されている。しかし、但し書きによって、国会が議決すれば実行できることになっている(なお、短期国債の日銀引き受けは可能であり、実際行なわれている)。
 この場合には、日銀のバランスシートで、資産で国債が増え、負債で政府預金が増える。これは、政府と日銀が合意すればできることであり、銀行の行動や市中の状況とはまったく無関係に、いくらでも国債を引き受けることができる。これが、市中からの買い上げと本質的に違う点である。
 いくらでもできるから、政府は国債発行に何のためらいもなくなり、財政規律が弛緩する。そして無駄な支出が増加するおそれがある。財政法が日銀引き受け国債を禁止しているのは、このためだ。
 また、こうした操作は、「日銀券を刷って財政支出をファイナンスすることを意味するから、インフレーションを引き起こす」とも言われれる。インフレーションが生じると、経済活動は著しく攪乱される。とりわけ経済的弱者は、多大の負担を負う。
 だから、日銀引き受けは望ましくないのだと言われる。果たしてそうなのだろうか?
次のページ>> マネーサプライを増やすかどうかは定かでない
 政府が発行した国債を日銀が引き受けた段階では、ベースマネーに変化は生じない。政府が国債発行で得た資金で財政支出を行なうと、ベースマネーが増加する(そのメカニズムは【補論】を参照)。
 つまり、市中から国債を購入したのと同じ結果が生じるわけである。
 しかし、それがマネーサプライを増やすかどうかは定かでない。
 これまで見てきたように、2001年からの量的緩和では、ベースマネーは増えたが、マネーサプライは増えなかった。
 2004年には、為替介入のために政府短期証券が発行された。これによって政府預金が一時的に増加し、すぐに減った。しかし、このときも、マネーサプライには目立った変化が起きなかった。
 マネーサプライが変化しなければ、物価には影響が及ばない。マネーサプライが増加したとしても物価上昇が起きるかどうかは疑問だが、そもそも、マネーサプライが増加するとは限らないのである。
 日銀引き受けで長期国債を発行したとしても、上の経験と同じ結果になる可能性がある。実際にどのようなことが起きるかを以下で検討するが、「日銀引き受けの国債発行は、インフレーションを引き起こす」とは必ずしも言えないのである。「インフレーションも金利上昇も引き起こさずに、いくらでも国債を発行して財政支出を増大できる」ということが、原理的にはありうるのだ。
移転支出なら
「自動ファイナンス」がありうる
 経済に何の影響も与えずに国債発行をいくらでも増やせるというのは、不思議なことであるような気がする。
 しかし、つぎの例を考えると、こうしたことがありうることがわかる。
 いま、政府が年金増額を決定し、そのすべてを国債増発で賄うものとしよう。そして、年金受給者が、増加した年金のすべてを貯蓄したものとしよう。
 この場合には、増加した貯蓄で国債が消化されることになる。つまり、年金受給者と政府の間でカネがぐるぐる回るだけであって、経済全体のバランスには何の影響も及ばないのである。
次のページ>> 需要が増えれば経済活動に影響が及ぶ
 マクロ経済のバランスで表現すれば、この場合には、まず政府の貯蓄投資差額が、年金増加額だけ減少する(差額がマイナスであれば、年金増加額だけ差額の絶対値が大きくなる)。他方で、家計の貯蓄投資差額は、年金の増加額だけ増加する。これらは打ち消し合うので、経済のマクロ的なバランスに影響が及ばないのである。
 言いかえれば、国債の増発が、自動的に国債購入資金を作り出すことになる。国債の供給増が自動的に国債への需要を増加させるのである。国債は「自らをファイナンスする」のだ。
 年金は移転支出(直接には財・サービスの購入を伴わない支出)であるために、こうしたことが起こりうる。現在の日本の財政支出のかなりの部分は、社会保障関係を中心とする移転支出である。したがって、増発された国債のすべてではないにしても、かなりの部分が「自動的に」ファイナンスされる可能性がある。
 アメリカFRB(連邦準備制度理事会)議長のベン・バーナンキは、「経済を活性化させるために、ヘリコプターから紙幣をばらまけばよい」と言った(このため、彼は「ヘリコプター・ベン」という綽名を奉られた)。しかし、ばらまかれた紙幣がすべて預金になってしまうなら、バーナンキが期待した効果は生じないことになる。
需要が増えれば
経済活動に影響が及ぶ
 もちろん、以上で述べたことは、「どんな場合でも日銀引き受け国債がインフレを招かない」ということではない。上の例で財政支出増加が何の効果ももたらさないのは、そのすべてが貯蓄されてしまうからだ。
 実際には、そうではない。年金のような移転支出の場合にも、受給者は、増加した年金の一部を消費支出に回すだろう(実際、これまでも年金支出の増大に見合ってマクロ的な家計貯蓄が増加するようなことはなかったので、前述の「自動ファイナンス」が完全に行なわれたわけではない)。そうすると、経済全体の需要が増加することとなり、経済活動に影響が及ぶ。
 政府が、国債増発で得た資金を用いて、年金ではなく公共事業を増やすのだとすれば、鉄やコンクリート、そして労働力などに対する需要が発生する。
 一般に、国債で調達された資金で政府が財・サービスの購入を行なうのであれば、経済全体の需要が拡大する(バーナンキは、「日銀は紙幣を刷ってケチャップでも買えばよい」とも言ったが、これは、「政府が直接に財・サービスを購入せよ」という意味である。もちろん、ケチャップでは、需要はさほど増大しないが)。
次のページ>> 終戦直後のインフレーションを考える
 経済全体の需要が増加する場合に何が起こるかは、供給面での制約があるかないかで異なる。
 制約がない場合には、経済全体の産出量が増加するだろう。産出量が増加すれば所得が増加し、消費が増加するだろう。これがさらに産出量を増加させ、所得を増加させる。
 これがケインズの想定したメカニズムに他ならない。
 経済の供給能力に限度があるのであれば、クラウディングアウト(混雑による押し出し現象)が起きる。これは、物価の上昇、または金利の上昇をもたらす。そして、需要が供給の範囲に収められる。
復金債の日銀引き受けが
招いたインフレーション
 実際に起こった例として、終戦直後のインフレーションがある。
 終戦直後の1947年、戦後復興のため、政府は「傾斜生産方式」を実施した。復興金融公庫が復金債を発行し、それを日銀に引き受けさせて調達した資金を、石炭・鉄鋼産業に重点的に融資したのである。
 復興金融公庫は政府そのものではないが、実質的には政府の一部と考えてもよい。したがって、この政策は、日銀引き受けによる国債発行と変わらない。これによって、基幹産業復興の資金を賄ったのである。
 対象となった基幹産業は、復興金融公庫からの借入れによって多額の投資を行なった。戦争で生産設備が壊滅した中で需要が急増したため、猛烈なインフレが生じた。45年に3.5だった物価指数は、49年には実に208.8になった。つまり、この4年間だけで、物価は60倍になったのである。
 終戦直後の国債残高は一般会計総額の5倍程度であったのだが、インフレによって約4分の1にまで低下した。他方で、戦時国債を持っていた国民は、それがほぼ無価値になることで損失を被った。金融資産を保有していた旧支配階級である地主も没落した。
 このように、日銀引き受け国債がどのような結果をもたらすかは、財政支出の内容や経済全体の状況に依存しており、一概には論じられない。「日銀券が増加するからインフレになる」というような機械的な議論はできないのである。しかし、他方で、復金債のケースのように激しいインフレが起きる場合もある。
次のページ>> 金融緩和は国際的な資本移動を引き起こす
 以上で考えたのは、外国との取引がない「閉鎖経済」である。
 しかし、現代世界においては、国家間の資本移動がほぼ制約なしに行なわれている。これは、金利のわずかな差にも敏感に反応して大きく変動する。また、将来の金利予想にも影響される。したがって、金融緩和は、金利変化を通じて国際的な資本取引に影響を与える可能性がある。
 国際間資本移動は、為替レートを変化させる。それによって貿易が影響を受ける。また、ドル建て価格が一定でも円建て価格が上昇し、インフレが輸入されることもある。
 実際には、このルートからの影響の方が、はるかに大きい可能性がある。この点は、資本移動が自由化される前の1980年代以前とは大きく変わった点である。金融政策は、もはや一国だけの問題としては議論できなくなったのだ。
 為替レートの変化は、経済にきわめて大きな影響を与える。そして、為替レートは金融政策で決まる側面が大きい。したがって、現代の世界では、金融政策がきわめて大きな意味を持つことになっている。しかも、為替レートは将来の期待に応じて動くため、金融政策との関連は複雑である。
 以上のようなことは、2003、04年の為替介入によって、実際に起こった。また、金融危機後のアメリカの金融緩和も、このようなルートを通じて国際的に伝播していると考えられる。
次のページ>> 補論:国債の日銀引き受けがベースマネーを増やすメカニズム
 政府が日銀引き受けで国債を100だけ増発したものとしよう。これにより、政府の負債で国債が100増加し、資産で日銀の政府預金が100増加する。日銀のバランスシートでは、資産で国債が100増加し、負債で政府預金が100増加する(図表1。図には、0から開始した場合の残高を示してある)。

 政府は財政支出を行なう。たとえば、年金受給者A氏に対して年金を100支払うものとしよう。
 まず最初に、日銀券を用いてこれを行なう場合を考えよう(実際には、そうした手段は用いられない)。政府は預金を引き出して日銀券を受け取る。したがって、政府預金は100減少し、日銀券の保有額が100増加する。日銀のバランスシートでは、負債で政府預金が100減少し、日銀券が100増加する(図表2)。日銀券はベースマネーの一種なので、これによってベースマネーが増えたことになる。政府は日銀券100をA氏に手渡す(バーナンキの「ヘリコプター・マネー」は、こうした方法による財政支出である)。
 実際の支払いは、つぎのように、現金通貨の移動を伴わない振替によって行なわれる。
 政府は、政府預金を100減少させ、民間のB銀行の日銀当座預金を100だけ増加させることを日銀に依頼する。これによって、日銀のバランスシートでは、負債で政府預金が100減少し、B銀行当座預金が100増加する。B銀行のバランスシートでは、資産で日銀当座預金が100増加する。B銀行では、A氏の預金を100増加させる。これによって年金の支払いがされたことになる(図表3)。この場合には、日銀券でなく日銀当座預金というベースマネーが増えることになる。

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質問1 国債の「日銀引き受け」について賛成ですか、反対ですか?
賛成
反対
わからない


http://diamond.jp/articles/-/16703
田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

消費税増税法案「景気条項」「再増税条項」に
隠された政府の思惑


 前回の本欄で、私は、「岡田克也副総理は大連立に反対する」と精一杯の願望を込めて書いた。

 その矢先、岡田氏が自民党に大連立を持ちかけていたという報道があった。

 それが事実なら、岡田氏は私が考えていた人物とはかなり違っていることになる。彼の二大政党論や政権交代論も、原理主義どころか単なる政治的方便に過ぎなくなってしまうからだ。

最終的には「再増税条項の削除」で決着か
増税に突き進む野田首相の“筋書き”

 さて、問題の消費税増税法案は、3月14日から民主党の事前審査にかけられている。

 今のところ(20日現在)議論百出で、決着が先送りされているが、これも想定内であろう。

 議論の争点も、予想通り「再増税条項」と「景気条項」の2つにしぼられてきた。

 結局最後は、昨年末の“素案”決定のときと同じように野田佳彦首相が党の会議に乗り込んで反対派の矢面に立つ筋書きかもしれない。そして、不退転の決意をあらためて示し、最終的に妥協の英断によって決着を企てるということではないか。それまでも小出しの譲歩が積み重ねられるだろう。大きな妥協をしなくて済めばそれに越したことはない。

 小出しの妥協の第1弾として「再増税条項」の修正案が出てきた。「16年度をめどに必要な法制上の措置を講ずる」を「公布から5年後をめど」に変更するという。表現は違っているが内容に大差はない。これで反対派が引き下がるはずはない。ただ、これで修正への努力をしている印象を与えようということだろう。

 首相の最終的な英断は、「再増税条項」の削除ということになる。この条項は法案に必要不可欠なものではない。端的に言えば、削除するために設けた条項と言ってもよい。削除に至らなかったら儲け物と思っているに違いない。

 しかし、この条項の削除によって反対派が納得するだろうか。とてもそうは思わない。もしも、これで決着するとしたら、反対してきた民主党議員は選挙区に帰れなくなる。

 もう1つの「景気条項」の修正も困難だ。これには財務省は本気で抵抗してくるだろう。

次のページ>> 消費税増税実施の条件に数値目標付き「行革条項」を加えるべき

 反対派は「名目成長率3%」を消費税率アップの条件として明記することを要求している。しかし、これについては政府側の反論も理解できる。成長率を含めてより総合的に景気を判断する必要がある。むしろ、政府(特に財務省)の恣意的、主観的な判断を排除できるように、中立的な判断機関を設ける方向が望ましい。

消費税増税実施の条件に
数値目標付き「行革条項」を加えるべき

 ところで、私も関与した97年4月の消費税率アップに際しての主たる条件は「行政改革」であった。行政改革の進捗状況を点検し、それが進まなければ、半年前(96年9月)に見直すという規定を法律に盛り込んだ。

 当時閣僚であった私は、その閣議で「実施までの半年間の行革への最大限の努力」を条件に4月実施を認めた。

 ところが、翌月の総選挙で私は落選。政府はその選挙後、「行政改革会議」を設置したものの、ムダ使いの排除ではなく、省庁の統合などの機構改革の方向に大きく逸れてしまったのだ。 

 行政改革を後回しにすることは行政改革をやらないことを意味している。それを許してしまった反省から今回の消費税増税の先行に警告を発しているのである。

 今、民主党議員は、なぜ行政改革の旗を揚げて消費税増税法案に立ち向かわないのか。明確な期限と数値を示した「行革条項」を付け加え、それを実施の条件とする。そこに的をしぼることこそ、ほとんどの人が心底から望んでいる。

 私が知る限り、その方向に近い論陣を張っているのは川内博史議員くらいなもの。政府が用意した前述の2つの争点に群がっていたら、このまま政府の思惑に引きずられる公算も高くなるだろう。

 今回の税・社会保障の一体改革は、それこそ100年に1度の行政改革の絶好のチャンスである。民主党議員は今、その成否の鍵を握っているのだ。

◎編集部からのお知らせ◎

2001年に講談社から刊行された田中秀征著『梅の花咲く――決断の人・高杉晋作』が近代文藝社より新装版となって発売されました。命を懸けて幕府の息の根を止め、新しい国家への道を切り拓いたリーダーの生き方は、今の日本人に何を問いかけるのか――。ぜひ、ご一読ください。
 

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