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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34810
The Economist
ギリシャのデフォルト:待ち時間は終わった
2012.03.22(木)
史上最大かつ最も予想されたソブリン債のデフォルト
史上最大のソブリン債のデフォルトで、ギリシャは約1000億ユーロの債務を帳消しにした〔AFPBB News〕
最後には、大半の債権者が黙って従った。複雑極まりないプロセスを経て、ギリシャ国債を保有する民間債権者の大半は3月9日までに、手持ちの国債を、額面が古い国債の半分にも満たず、表面利率が低く、期限の長い新発債と交換することに同意した。
史上最大のソブリン債務の再編によって、ギリシャは約3500億ユーロに上る債務のうち、約1000億ユーロを帳消しにすることができた。
今回の債務再編は、不良債権に対する一種の保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のソブリン債への支払いに対する金融システムの抵抗力を試す最初の試験にもなるだろう。
「自発的」な損失負担で済まず、クレジットイベントになった理由
ギリシャの法律に基づいて発行された1770億ユーロのソブリン債のうち、1520億ユーロ分を保有する債権者が債務交換に同意した。
残りの債権者(交換の申し出に返答しなかった債権者や、交換に反対した約90億ユーロの債券を保有する債権者)は、取引に応じることを余儀なくされた。ギリシャ政府が、3分の2を超える民間債券保有者が同意した場合には、すべての民間投資家に債務交換を強制適用するという最近制定された法律を行使したからだ。
外国の法律に基づいて発行された290億ユーロのギリシャ国債のうち、約200億ユーロ分を保有する投資家も交換に同意した。残りは、取引に応じるために3月23日まで猶予が与えられた。
強制という脅しが、銀行や年金基金といった大口の保有者が債務交換の条件に異議を唱えないことにした理由を説明しているかもしれない。だが、ギリシャは、支援国・機関からの第2次救済措置を引き出すために、債務交換で100%近い参加率を達成しなければならなかった。
そのことは、ギリシャが不満を持つ少数の債権者に取引をのませなければならないことを意味し、その結果、債務交換がもはや自発的と見なされないことを意味した。このことが「クレジットイベント(信用事由)」の引き金を引き、今月下旬のギリシャ国債に対するCDS支払いにつながるプロセスを始動させた。
欧州の当局者たちは何カ月もの間、ユーロ圏でソブリン債のクレジットイベントが起きる可能性に恐怖を抱いてきたが、金融市場は今回の知らせをあっさり受け入れた。
当局者たちの苦悩の一因は、当局が早い段階で、ギリシャがデフォルト(債務不履行)したり、債務再編を行ったりすることはないと約束していたことにある。民間投資家が「自発的」に損失を負担していれば、そうした作り話を維持することもできた。
また、ユーロ圏の政策立案者たちは、国が破産することに賭けていた道徳心のない「投機筋」への支払いを発生させる事態を避けたかったのかもしれない。
試されるCDS
彼らの不安には、もっと根深い要因もあった。CDSの支払いにつながる企業のデフォルトはよくあるが、ソブリン債のクレジットイベントは珍しい。それが一体どう進展していくのかについては、当然の不安があった。
当然ではあるが、見当違いだ。デポジットリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション(DTCC)によると、CDSによって保険がかけられているギリシャ国債の想定元本は約690億ドルだ。
だが、銀行やヘッジファンドは、CDS契約を発行することもあれば、CDS契約を購入することもあり、相殺されるポジションを抱えている。これらを除くと、ギリシャのデフォルトに対するネットのエクスポージャーは想定元本よりかなり少ない32億ユーロ程度になる。
ギリシャ国債のCDSの提供者が負う損失が一部企業に相当集中していない限り、金融システムを脅かすことはないだろう。
また、債務交換によって発行される新規のギリシャ国債にはいくらか市場価値があるため(もっとも、既に相当割安な水準で取引されているが)、3月19日に正確な支払額が決定された後でやり取りされる金額は、この数字よりいくらか少なくなるだろう。
ECBは将来、パニックを食い止められるのか?
本当の問題は、ギリシャの債務交換がCDSの支払いを発生させていなかった場合に生じていた。そうなれば、将来のソブリン債のデフォルトに対する保険としてのCDSの信用が失墜し、各国政府の借り入れコストが上昇していたからだ。
債務再編の別の側面はもっと厄介だ。1つは、欧州中央銀行(ECB)が、問題を抱えたユーロ圏諸国の国債市場を安定化させる措置の一環として取得したギリシャ国債について、強制的な評価減を免れたことだ。
これは、国債購入を通じて将来の市場のパニックを抑えるECBの力を弱めることになる。というのも、投資家は今、ある国でECBが保有する国債が多ければ多いほど、債務再編で民間投資家が被る評価減が大きくなることを知っているからだ。
ECBはその代わり、12月と2月に期間3年の資金供給の入札で成功したように、将来のパニックを食い止めるために、銀行に長期低利融資を無制限に供給するという手段に訴えることもできるだろう。
ECBの流動性に依存する銀行
だが、3年物オペの成功は犠牲を伴っている。預金残高が融資残を上回る健全な銀行は今、ほかの銀行が長期流動性と引き換えに、ECBに最も優良な担保を差し入れているのではないかと心配して、余裕資金を他行に貸し出す可能性が低くなったからだ。
ドイツ連邦銀行のイェンス・バイトマン総裁は先日、一部の銀行はECBの低利の流動性に依存するようになるとの懸念を口にした。そうした懸念は既に現実になっているのかもしれない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120319/230027/?ST=print
ドイツ経済はなぜ絶好調なのか
ユーロ危機をものともせず、絶好調に推移する独経済2011年度の成長率は3%でユーロ圏平均の2倍に
• 2012年3月22日 木曜日
• 熊谷 徹
「ドイツの輸出産業は、2012年も好調なスタートを切った。わが国の企業は、世界経済が直面する困難な状況に対し、果敢に立ち向かっている」。ドイツ連邦経済技術省のフィリップ・レスラー大臣は、3月9日にベルリンでこう語った。彼がコメントしたきっかけは、連邦統計庁が発表した名目輸出額である。2012年1月の輸出額は、前年の1月に比べて9.3%増加した。興味深いことに、輸出だけではなく内需も好調で、2012年1月の輸入額は同6.3%増えている。
日本では昨年以来、ユーロ危機に関するニュースが頻繁に報じられている。多くの日本人が「ヨーロッパは大変な状況になっている」と認識している。だがその陰で、ドイツ経済が絶好調であることは意外と知られていない。
ドイツは2009年、リーマンショック後の世界同時不況に直撃され、マイナス5.1%という戦後最悪の景気後退を体験した。しかし2010年にはGDPを3.7%増やして、不況の後遺症から急速に立ち直った。
2011年の成長率は前年にやや劣るものの、EU主要国の中では最高の水準である。そのテンポは、ユーロ危機もどこ吹く風と言わんばかりである。
欧州統計局によると、2011年のドイツの国内総生産(GDP)は2010年に比べて3%増加し、ユーロ圏の平均成長率(1.5%)を大幅に上回った。フランス、英国、スペイン、イタリアなど他の西欧諸国は、ドイツに大きく水を開けられている。
2011年の第4四半期だけを見ても、ユーロ圏全体のGDP成長率が前年同期比で0.7%であるのに対して、ドイツは2%で群を抜いている。
輸出が経済成長を推進〜過去最高の1兆601億ユーロに
ドイツの力強い経済成長の原動力は輸出だ。連邦統計局によると、2011年のドイツの輸出額は前年比で11.4%増えて、過去最高の1兆601億ユーロ(116兆4000億円)に達した。貿易黒字も2%増加して1581億ユーロ(17兆4000億 円)に拡大。フランスが、700億ユーロ(7兆7000円)という、同国の歴史で最悪の貿易赤字を記録したのとは、対照的である。
輸出増に大きく貢献したのが、この国の産業の屋台骨である機械メーカー。この国では輸出額の85%が機械製品である。ドイツ工作機械工業会(VDW)によると、この業界の2011年の生産額は前年比で33%も増えて、131億ユーロ(1兆4000億円)を記録。輸出額も中国と米国向けを中心に33%増加した。
自動車業界の輸出も、大きく拡大した。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、2011年の乗用車の輸出台数は、前年比6.6%増えて約452万台となった。2010年の前年比23.7%という驚異的な伸び率には及ばないものの大きな伸びである。
EU以外の地域向けの輸出台数が伸びた。アジアへの輸出台数は21.9%も増加。そのうち中国向けは22.5%、台湾向けは44.9%、インド向けは60.8%も増えている。VDAのマティアス・ヴィスマン会長は、2012年1月16日にベルリンで開いた新年祝賀パーティーで、600人の参加者を前にこう語った。「2011年は我々にとって素晴らしい年だった。西欧で新しく認可された乗用車の2台に1台は、ドイツ製だった。中国におけるドイツ車のマーケット・シェアは20%になった。『メイド・イン・ジャーマニー』は、多くの国で高品質の代名詞となっている」。
ドイツ最大の自動車メーカー・フォルクスワーゲン(VW)社は2011年、当期利益を前年の2倍に増やして158億ユーロ(1兆7000億円)を計上。これは、ドイツ株式指数(DAX)市場に株式を公開している企業が計上した利益の額としては過去最高である。
株主たちも満足しているに違いない。VW社が2月24日に発表したところによると、取締役は、優先株の配当を2.26ユーロから3.06ユーロに引き上げることを提案している。この提案が4月の株主総会で承認されれば、配当額が実に35.3%増えることになる。BMWグループの取締役会も、優先株の配当を75.8%引き上げることを提案している。
収益を増やした多くのメーカーの取締役たちのポケットには、業績に連動する特別ボーナスがころがりこむだろう。実際、VW社のマルティン・ヴィンターコルン社長は、2011年に1660万ユーロ(18億2000万円)の報酬を手にした。これは、2011年の社長の年収の中で最高額である。ドイツ銀行など金融機関の業績が、ユーロ危機の影響でふるわなかったのに対し、物づくり企業は中国など新興国からの需要急増で、破竹の進撃を続けている。
失業率を過去20年間で最低に
好景気は2011年の雇用状況を大幅に改善した。ドイツ連邦統計局によると、2011年のドイツの勤労者数は4100万人を突破し、史上最高の水準に達した。ウルズラ・フォン・ライエン労働大臣によると、2011年に約70万人分の新しい雇用が創出されている。2011年の平均失業者数は298万人。失業率は7.9%で、過去20年間で最低の水準を記録した。
この国が深刻な不況に襲われていた2005年には、486万人が路頭に迷い、失業率は13%という高水準だった。このことを考えると、雇用状況は過去7年間でめざましく改善したことになる。人材不足の兆候すら出ている。機械製造やIT、化学工業などの分野では、高いノウハウを持った技術者を見つけるのが非常に難しくなっている。
レスラー経済大臣は、2011年を振り返って「ドイツ経済の状態は健全で、活力に満ちている。ヨーロッパの状況は厳しいものの、国内経済が成長率を下支えするようになってきている」。
2009年から経済専門家会議の座長を務める、マンハイム大学のヴォルフガング・フランツ教授も、経済大臣の楽観的な見方に同意する。「私は、ドイツ経済の2012年の成長率が0.5%前後にとどまると思います。しかし、勤労者の数が戦後最も多くなっているほか、産業界の設備稼働率も平均を上回っています。また多くの企業が将来について明るい見通しを持っています。このため、GDPが5%も減った2009年ほどひどい不況にはならないと思います」。経済専門家会議は、経済問題に関する連邦政府の諮問機関で、ドイツのトップクラスの経済学者で構成する。
ドイツ経済は、ユーロ危機の逆風にもかかわらず、なぜ好調なのか。次回からその背景についてお伝えしよう。(続く)
ドイツ経済はなぜ絶好調なのか
ユーロ危機に関するニュースが頻繁に報じられている。多くの日本人が「ヨーロッパは大変な状況にある」と認識している。だがその陰で、ドイツ経済が絶好調であることは意外と知られていない。
ドイツは2009年、リーマンショック後の世界同時不況に直撃され、マイナス5.1%という戦後最悪の景気後退を体験した。しかし2010年には3.7%成長を達成して、不況の後遺症から急速に立ち直った。2011年の成長率は3%で、EU主要国の中で最高の水準である。
ドイツの力強い経済成長の原動力は輸出だ。2011年のドイツの輸出額は前年比で11.4%増えて、過去最高の1兆601億ユーロに達した。貿易黒字も2%増加して1581億ユーロに拡大している。
その背景には何があるのか? ドイツ在住のジャーナリスト、熊谷徹氏がその謎に迫る。
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熊谷 徹(くまがい・とおる)
在独ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。早稲田大学政経学部経済学科卒業後、日本放送協会(NHK)に入局、神戸放送局配属。87年特報部(国際部)に配属、89年ワシントン支局に配属。90年NHK退職後、ドイツ・ミュンヘン市に移住。ドイツ統一後の変化、欧州の安全保障問題、欧州経済通貨同盟などをテーマとして取材・執筆活動を行う。主な著書に『ドイツ病に学べ』、『びっくり先進国ドイツ』『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』『顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折』『観光コースでないベルリン―ヨーロッパ現代史の十字路』『あっぱれ技術大国ドイツ』『なぜメルケルは「転向」したのか――ドイツ原子力四〇年戦争』ほか多数。ホームページはこちら。ミクシィでも実名で日記を公開中。
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