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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34802
Financial Times
ユーロ圏の危機にスペインのシエスタはない
2012.03.21(水)
ユーロ圏の危機は終わったわけではない〔AFPBB News〕
市場はユーロ圏の危機が終わったとの結論を下した。数人の政治家も、最悪期は終わったと思うと述べている。安心感が戻ってきた。
筆者は過去にも、似たような発言を聞いた覚えがある。何らかの形式的な進展(救済の傘や流動性注入、うまくいった債務交換など)があると、楽観論が戻ってくるのだ。
欧州中央銀行(ECB)の政策が「時間を稼いだ」と思っている人は、「何のための時間か」と自問すべきだ。
ギリシャの債務状況は相変わらず、持続不能だ。ポルトガルの債務状況も然り。欧州の銀行部門やスペインの債務状況も同様だ。たとえECBが2010年代の終わりまで低利資金を無制限に供与したとしても、それだけでは不十分だ。
バブル崩壊後の調整はまだ道半ば
スペインでは、不良化した債務の大半を民間部門が抱えている。欧州連合(EU)統計局によると、民間部門、すなわち家計と金融機関以外の事業会社の債務水準は、2010年末時点で国内総生産(GDP)比227.3%に達していた。昨年のデータはまだ出ていないが、数字はわずかに低下するだけだろう。
調整が進んでいる分野の1つは、住宅市場だ。スペインを見る最善の指標は、スペイン統計局が出している一連の新指標で、これによると、住宅価格の総合指数は昨年だけで11.2%低下したが、2007年第3四半期につけた高値からの下落率は21.7%にとどまっている。
我々はここで、スペインのバブルが他国のバブルよりはるかに激しかったことを覚えておく必要がある。それなのに価格は2割程度下がっただけなのだ。マドリード地区では動きがもっと活発で、ピークから底までの下落幅が29.5%に達している。
筆者の試算では、スペインの住宅価格の調整は、まだ半分も終わっていない。実質ベースで見ると、米国の住宅ブームはほぼ完全に帳消しになった。実質価格で描いた場合、歴史的なバブルの図は、きれいな釣鐘型の曲線となる。それは理にかなっている。国内の物件は非生産的な不動産だからだ。
他国と同様にスペインでも、住宅の実質価格がいずれ、1990年代半ばから終盤にかけてつけた水準まで低下すると考えるのが妥当だろう。
スペイン政府は貯蓄銀行に対し、今年、不動産融資で500億ユーロの損失処理を行うよう迫った。筆者が想定しているように住宅市場が下落するのであれば、これは最終的に必要になる損失処理額のほんの一部にすぎない。
政府の試算は、緩やかな価格下落と速やかな景気好転を想定している。どちらの想定も妄想だ。民間部門と公的部門が同時にデレバレッジング(負債圧縮)を進めており、今後何年も続ける可能性が高い時に、スペイン経済は一体どうやったら回復できるのか?
緊縮一辺倒では景気回復など期待できない
公的部門のデレバレッジングは、激しいものになる。財政赤字は昨年、GDP比8.5%だった。目標を大きく超えてしまった形だが、その理由は財政の不規律ではなかった。もっと大規模な不況を回避するために多額の赤字が必要だったのだ。
最近修正された財政赤字目標は、今年がGDP比5.3%、来年が3%だ。つまり、欧州の赤字規則の下で求められる公的部門の調整総額は今後2年間で5.5%という途方もない規模になる。それも景気後退の真っ只中で行わねばならないのだ。
民間部門、公的部門の双方で先々待ち受けているデレバレッジングの規模を考えると、問題は、スペイン経済が2012年か2013年に回復するかどうかではなく、2010年代末までに少しでも回復を遂げられるかどうか、だろう。
この最後の見解に対する欧州の典型的な反応は、経済改革が信頼感を高め、成長を生み出す、というものだ。楽観論者たちは、マリオ・モンティ氏の首相任命が改革と市場金利低下という好循環を生んだように見えるイタリアを引き合いに出す。
どちらの国でも、主な改革は労働法の小幅な緩和だった。恐らく必要な改革なのだろうが、筆者としては、これが長期的な成長率に大きな影響を与えたら驚きだ。仮にそうなった場合、労働市場に関する教えの大部分を書き直さねばならないだろう。
スペインにとって正しい調整政策は、民間部門に3〜5年かけてデレバレッジングを促すプログラムを課す一方、一貫して大規模な公的部門の赤字で経済を支え、併せて経済改革も実行することだ。公的部門の赤字に対処する時期は、民間部門のデレバレッジングが完了した後だ。このような政策は調整を円滑にするだけでなく、加速することにもなる。
しかし、超緩和型の金融政策と財政緊縮の組み合わせは、避けられない調整を遅らせる。スペインは依然、悪化の一途をたどる債務の罠にはまったままで、そこから抜け出す唯一の方法はデフォルト(債務不履行)しかない。
スペインも救済の傘の下に入る可能性大
スペインがEUと合意した政策を遂行すれば、ギリシャやポルトガル、アイルランドと同じところに行き着くことになる。すなわち、救済の傘の下だ。スペインでは、これが実現の可能性が最も高いシナリオだろう。
筆者は昨年11月、欧州の指導者たちがユーロを救うには、あと10日間しかないと書いた。筆者の分析は当時も今も、指導者たちが失敗したというものだ。ECBの政策は時間を稼いだわけではない。危機を解決するのに必要な政治プロセスと経済調整のペースを落としたのだ。最悪の事態はまだ先に待ち受けているようだ。
By Wolfgang Münchau
http://diamond.jp/articles/-/16674
【第694回】 2012年3月21日
週刊ダイヤモンド編集部
ギリシャ債務強制減免で
欧州が抱え込んだ新たな火種
ギリシャ与党の新党首に就任したベニゼロス財務相。交渉では表に立った
ギリシャの民間債権者との債務減免交渉問題は、債務交換プログラム参加を強制する「集団行動条項」(CAC)発動で決着した。これにより参加率は目標の90%を超え、ユーロ圏は3月12日、同国への第2次支援を承認した。
一方、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)は、CAC発動を、事実上のデフォルト(債務不履行)と認定。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS。債務不履行の場合の元本支払いを保証する金融派生商品)の損失補償支払いを決めた。市場はこれらを織り込み済みで、懸念された混乱は起きなかった。しかし、問題が解決したわけではない。
まず、ギリシャの財政再建が計画通り進むとは限らない。そして「危機の封じ込めにも成功していない」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長)。安全網であるEFSF(欧州金融安定基金)は規模が不十分で、7月に発足予定のESM(欧州安定メカニズム)も議論が遅れているからだ。
今回、ギリシャ政府のCAC発動を欧州当局が容認したことは、将来への禍根を残すことになる。「国債の保有者は、他国でも同様のことが起きるリスクを考えざるを得ない」(藤岡宏明・大和証券キャピタル・マーケッツ金融市場調査部副部長)からだ。
ギリシャ政府はすでに発行済みの国債に対し、“後付け”で法律を作り、強制的な債務交換を断行した。最悪の事態は回避されたが、同時に「パンドラの箱」を開けてしまったのだ。
足元では、ポルトガルやスペインへの不安が再燃し、国債利回りが高止まりしている。欧州危機は新たな火種を抱え込んだ。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT810197620120320
ユーロ圏経済の南北格差、今後3年間拡大続く=オーストリア中銀総裁
2012年 03月 20日 23:39 JST
[フランクフルト 20日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるノボトニー・オーストリア中銀総裁は20日、ユーロ圏域内経済の南北格差は今後3年にわたり拡大が続くとの見解を示した。
オーストリア紙スタンダードのウェブサイト上のチャットルームで述べた。
総裁は、ユーロ圏債務危機によってギリシャ、イタリア、スペインなどの南部諸国の経済競争力が、ドイツ、オランダ、フィンランドなどの強い輸出国と比べていかに低いかが浮き彫りになったと指摘。
「こうした格差は2012年、そしておそらくその後2年間続く見通しだ」と述べた。その後は構造改革への取り組みが奏功し、南部諸国の成長加速につながるとの見方を示した。
ギリシャを取り巻く状況はスペインやイタリア、ポルトガルよりも「はるかに困難」とも指摘した。
米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のモハメド・エラリアン最高経営責任者(CEO)が独週刊誌シュピーゲルのインタビューで、ポルトガルがギリシャと同様、今年末までに追加金融支援が必要になるとの見方を示したことに関連し、ノボトニー総裁は、ポルトガルの債務や貿易収支はギリシャよりも良好だと強調した。
ユーロ圏のインフレについては、現時点で原油高が最大のリスクとの見方を示した。
総裁はさらに「銀行融資が大幅に伸びれば、中銀は間違いなく直ちに注意を払い、必要に応じて抑制措置を講じる必要が出てくる」と述べ、景気の安定化に伴いECBは金融システムにおける流動性をより正常な水準に戻す必要があるとの考えを示唆した。
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