http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/419.html
Tweet |
http://diamond.jp/articles/-/16652
【第173回】 2012年3月19日
東電の高コスト体質は温存!
国際入札“出来レース”の全内幕
東京電力に「自ら変わろう」という意思はない──。家庭に大量導入される次世代電力計のスマートメーターをめぐり、今年10月に第1回が予定される国際入札。閉鎖的な電力業界にオープンな調達手段の道が開け、「1000億円以上のコスト削減になる」と期待される。ところが、思わぬ“ワナ”が仕掛けられていた。
3月12日正午過ぎ、東京・内幸町のビルの一室に、続々とスーツ姿のビジネスマンたちが吸い込まれていった。東京電力が今後5年間で1700万台を導入しようとしている次世代電力計「スマートメーター」。その国際入札を実施するため、メーカー向けに説明会を開いたのだ。
「皆さんからご意見を頂戴して、素晴らしいメーターを作りたい」
東電幹部がさわやかにあいさつをすると、スマートメーターの仕様について話し始めた。世界中から集まった約70社の担当者らは真剣に耳を傾けた。もし受注できれば「1回で百億円単位のビジネスになる」(外資系メーカー)というのだから、必死なのも当然だ。
これは2〜3年前には、あり得ない光景だった。
米GE、米アイトロン、独エルスターなど、欧米大手メーター会社を筆頭に、中国や韓国などのアジア勢もちらほら。国内勢でも、ソフトバンクやパナソニックなど、未参入の企業の姿もあった。
東電幹部は「新しい東電のコストに対する姿勢を示したい」と、オープン、透明で、コスト削減につながる国際入札の狙いを語った。
東日本大震災による原子力発電所事故で巨額の賠償金を背負った東電。もはや過去のような“浪費”は許されない。スマートメーターの調達改革は、そんな「東電改革」のシンボルになりつつある。
ところが──。
「これは完全な“出来レース”だ」。大手電機メーカー幹部は、冷笑する。東電と長らくズブズブの既存メーター4社(東光東芝メーターシステムズ、大崎電気工業、三菱電機、GE富士電機)の“不戦勝”が濃厚なのだ。なぜか。
次のページ>> スケジュールもわざと“綱渡り”で設定
そのからくりは「独自仕様」と「スケジュール」にある。
今回、参加メーカーが秘密保持の誓約書を書いた上で、東電から渡されたスマートメーターの「仕様書案」(約90ページ)を入手した。サイズや機能、必要な規格などが細かく列記してある。
この仕様は「デザインからネジ1本まで、東電と既存メーカーが共同開発した高価な特注品。この『型』ありきで、すべて進んでいる」(業界関係者)。
東電と特許まで固めた既存4社は無論、いつでも作れるスタンバイ状態。新参メーカーには、受注保証もないまま、この難解なメーター作りに、単独でカネと時間を注げというのだ。
スケジュールもわざと“綱渡り”で設定してある。
4月中旬まで意見や提案ができるが、採用されない限り、すべて非公開。「東電はあらゆる反論を用意して、微修正で終わる」(電機メーカー幹部)という見方が強い。
さらに「正式仕様の発表直後に、完成メーターを検定試験に出さないと、入札に必須な型式認定が間に合わない仕掛け」(関係者)になっている。
結局、東電の電気メーターを、これまで独占的に分け合ってきた4社が圧倒的に有利なのだ。
「第1回の入札は、諦めるしかない」。説明会後、複数の外資系メーカーの担当者は、そう漏らした。まさに、思惑通りだ。
1100億円の巨費で
光ファイバー網も計画
“出来レース”以上にとんでもないのが、東電のスマートメーター導入に伴う「隠れコスト」の存在だ。主に二つある。
一つ目は、スマートメーターでやりとりするデータの大きな通り道として、総額1100億円で自前の光ファイバー網を敷設する計画を進めていることだ。
「国道16号線の外側を中心に、その総距離は5万キロメートル以上に上る見込み」(東電関係者)。これを子会社の工事会社などに発注する。使用する最先端の光ファイバー素材も、子会社が開発したものだ。
NTT東日本など通信会社の光ファイバー網を借りれば済むのだが、「セキュリティが担保されない」と主張。月内に、原子力損害賠償支援機構に計画を報告する段取りになっているという。
二つ目は、東電が採用するスマートメーターが、将来的に莫大な追加コストを必要とすること。
スマートメーターは近所の家々がリレー形式で伝える「無線メッシュ」という方式でネットワークを形成するが、実は家同士の距離が離れていると、データがうまく伝送できない。その際は「中継機」と呼ばれる高額な機材が、大量に必要になる可能性がある。
ところが、この追加コストをまるで表に出していないのだ。
「国際入札に引きずり込んだのは改革のシンボル」(政府関係者)。確かに東電の原案よりはスマートメーターの想定価格は落ち、国際入札は効果を挙げそうに見える。
しかし本質は、水面下で高コスト体質を残し、既存の体制を引きずった“体制内変更”にすぎず、本当の改革には程遠い。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志、後藤直義、森川 潤)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。