03. 2012年3月17日 12:08:08
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http://president.jp/articles/-/5716衝撃ルポ「働く富裕層vs働く貧困層」のアフター5 いまや日本はアメリカに次ぐ富裕層大国なのだ。その一方で貧困に苦しむ人も急増。彼ら富裕層と貧困層の実態を追ってみる。 (PIXTA=写真)都内にある豪華な会員制の都市型リゾートホテル。最高級のロイヤルスイートの会員権の価格は約3000万円以上もする。しかし、すでに会員の枠は一杯で空きを待っている人も多い。ホテルの施設内に入れるのは会員とその招待客だけという機密性が人気の的で、「事前に予約しておくと、誰にも会わずに地下駐車場からダイレクトに部屋へ行けるのです」と利用者の一人が教えてくれた。 週末ともなると、地下の駐車場には3000万円は下らないフェラーリがずらりと並ぶ。会員は芸能人や企業のオーナーたち。そんな会員男性の一人はベンツだけでなんと数十台を所有し、さらにフェラーリをはじめとする高級外車を数十台ほど持っている。そして、都心のビルの駐車場一フロアを借り切り、その費用だけで月に100万円単位のお金を払っているそうだ。 長らくデフレ不況にあえいできた日本だが、こんなスーパーリッチたちが存在している。いや、それどころか世界同時不況に突入したいまでも、富裕層は着実に増えているのだ。 メリルリンチ・グローバル・ウェルス・マネジメントとキャップジェミニが行った「第15回ワールド・ウェルス・レポート」によると、100万米ドル以上の投資可能資産を保有する富裕層は、2010年時点で世界に1090万人おり、前回09年の調査より8.3%も増加した。その保有資産は42兆7000億米ドルに達し、ほぼすべての地域で07年の金融危機以前の水準に戻っている。その中で、日本の富裕層人口も5.4%増加して174万人となり、アメリカに次ぐ二番目の富裕層大国としての地位を盤石なものにしている(図表参照)。 では、いまどきの富裕層とは、どのような人たちなのか。その疑問を解くべく、1999年11月に日本の金融機関として初めて三菱UFJ信託銀行が立ち上げた富裕層向けの会員クラブ「エクセレント倶楽部」を訪ねてみた。
現在、同クラブの会員数は約33万世帯。入会条件は取引残高1000万円以上の一定条件を満たす顧客で、同5000万円以上の約3万世帯を「ロイヤルステージ」と位置づけている。同クラブを運営しているリテール企画推進部戦略企画室の石本千明室長によると彼らの平均像は、例えば金融資産を5000万円ずつ三つの銀行に預け、そのほか1億〜1億5000万円ほどの不動産を所有しているという。つまり、2億5000万〜3億円の総資産を持っているわけだ。 しかし、冒頭のスーパーリッチたちのようにハデにお金を使っているわけではない。石本室長は「先祖の資産や事業を代々継いでいる地元の名士の家系の方々や、専門職、大企業の役員を引退した方々が多く、皆さんとても紳士的で物静か。資産をいかに維持管理、承継していくかに高い関心を寄せられ、遺言信託や不動産仲介などを積極的にご利用いただいております」と話す。 そんな富裕層たちの資産管理に警鐘を鳴らしているのが、ファミリーオフィス的サービスを提供しているワンハンドレッドパートナーズの百武資薫社長だ。 ファミリーオフィスのサービスは、資産運用・管理だけでなく、税金などに対する正しい情報提供を行ったり、子供や孫たちの就学・就職・結婚に関することまで、あらゆる相談にのって、解決への道を切り拓くこと。 大手証券会社で法人営業を担当していた百武社長は、顧客である大企業の経営者の多くが、自分たちの専門領域では辣腕を発揮できても、資産管理については正しい情報を持っていることが少ないことに気づく。そして外資系金融機関に移籍してプライベートバンクの事業に携わった後、ファミリーオフィスを立ち上げた。証券会社時代から付き合いのあった上場企業の経営者や役員OBらが顧客の中心だ。 実は上場企業でも世界企業クラスの役員ともなると、リタイアするまでに築き上げられる資産は半端な額ではない。「あるメーカーでは常務と専務では生涯賃金が大きく差がつきます。またその後も、子会社や関連会社にトップとして移籍し、そこでも大きな蓄財が可能になります」と百武社長は語る。 いま、そうしたビジネス界出身の富裕層の頭痛の種となっているのが、株価の低迷。彼らの多くは自社の株式がストックオプションの形で増えており、全体の資産に占める株式の比率が大きくなっている。しかし、10年前に時価評価が10億円だったものが、株価の下落で3億円程度まで下がっているケースも決して珍しくはない。そこで百武社長のファミリーオフィスが頼れる強い味方となる。 「資産を正しく守っていくことで、顧客の生活がより豊かになれば」と百武社長が独自に用意した運用先の一つが、経済成長が著しいカンボジアやベトナムなどの投資先企業を選定するターゲットファンド。金利選好の顧客の要望に応えるべく、大手会計事務所の力を借り、カンボジアの大手銀行と契約をかわし、現地の米ドル預金での運用ができるプラットホームもつくり上げた。 いま、日本の財政破綻等に危機感を募らせる一部の富裕層の間では、海外へ資金を移動させる“資産フライト”の動きが強まっているといわれる。しかし、事前の情報収集・調査、そして正しい税務に関する理解が必要不可欠であり、百武社長はこうした動きには逆に注意を喚起している。 「政府は12年度の税制改正の大綱のなかに、海外資産に関する報告を義務付ける課税強化の措置を盛り込みました。法案が通れば、13年以降、毎年12月31日時点で5000万円超の海外資産を持っている人は報告義務が発生します。不提出や虚偽申告すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。単に危機感を煽って海外に資金シフトを促すようなアドバイスは間違い。顧客に正しい金融情報や知識を伝えていくのがファミリーオフィスの最も重要な役割なのです」と百武社長はいう。 これは富裕層は富裕層で自分たちの資産を守るために日夜腐心していることの表れなのだろうが、片や貧困層と呼ばれる人たちの世界はどうなっているのか。 いま手元に「若年世代で拡大する世代内格差」というタイトルのレポートがある。著者の第一生命経済研究所経済調査部の鈴木将之・副主任エコノミストは、総務省の「全国消費実態調査」に示された所得分配の不平等さを測るジニ係数の推移に着目する。 94年から5年刻みで各年代のジニ係数の変化を追っていくと、70歳以上では社会保障の整備などにより、格差が解消される傾向にある。逆に30歳未満、30〜39歳では格差が一気に拡大している。年間収入別の世帯構成の分布を見ても、30歳未満では99年に400万〜500万円の間にあったピークが09年には300万〜400万円へ下方シフトしている。その一方で09年には600万〜800万円の間にもう一つのピークが表れ、二階層化していることが読み取れるのだ。 その原因について鈴木副主任エコノミストは「正規労働者と非正規労働者の二つの異なる水準の年間収入の分布が示された結果でしょう」という。つまり、安定した収入のある正社員と、低賃金にあえぐ派遣や契約社員との格差が如実に表れてきているわけだ。 「従来であれば、高校新卒者の雇用の受け皿だった工場や一般事務といった仕事が、製造部門の海外移転やIT化による間接部門の省力化などで失われています。大学新卒者についても一部が就職できないまま難民化する状態が続いています。これらの人たちは非正規社員として働き始めるわけですが、その状態がずっと固定化していくことになる可能性が高いのです」 そう聞くと、なんだか八方塞がりの気分に襲われる。また、独自の賃金調査を行っている北見式賃金研究所の北見昌朗所長は「10年度の首都圏の30歳男性の年収は403万4276円。グローバル化の波は賃金にも及び、中国人と同水準になるまでこのままの状態が続きそうです」と語る。なんとも切ない話ではないか。 |