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すでに日銀がか細い声で「1%のインフレ目標」を口に出しただけで、オオカミどもは円買いを中断した。 田村秀男
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/405.html
投稿者 TORA 日時 2012 年 3 月 16 日 13:10:32: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu260.html
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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すでに日銀がか細い声で「1%のインフレ目標」を口に出しただけで、
オオカミどもは円買いを中断した。政策転換さえすれば、オオカミは去る

2012年3月16日 金曜日

「1%のインフレ目標」を口に出しただけで、オオカミどもは円買いを中断した


◆円相場反転? 円投機集団のオオカミは去ったか  3月14日 田村秀男
http://tamurah.iza.ne.jp/blog/

 月刊「文藝春秋」が4月号で、「日本をギリシャにしないための方策」を特集した。主要全国紙の「主筆」級に競作させるという珍しい企画で、肩書は特別記者の筆者の拙稿も掲載された。さて、自作の出来栄えはともかく、どのような書き手が登場するか、興味津々。お楽しみはあとでというわけで、雑誌発刊までは編集者にあえて聞かなかった。

 手に取るとびっくり、かの読売新聞は渡邊恒雄会長・主筆自ら文字通り筆をとっておられる。毎日新聞は論説委員長の倉重篤郎氏、そして産経新聞は拙論という陣容だった。朝日新聞と日本経済新聞は残念ながら執筆を断ったようだ。筆者の推測だが、自紙での社説やコラムで論陣を張っているので、あえて第三者の雑誌で競作する必要はない、という考えによるだろう。

 産経を除けば消費増税早期実現の旗を振っているもう一つの巨大部数紙と経済思潮に絶大な影響力を持つ日経がこぞって寄稿に参加していれば、反増税で少数派の拙論と、他紙の増税賛成論との中身の違いを一般読者がつぶさに観察できただろう。あるいは新聞界多数派の増税論をめぐっても、各社間の温度差があらわになっただろう。

 拙論の見出しは「オオカミはとっくに来ている」で、金融市場の分析に基づいて、日本の増税に次ぐ増税路線が円高・デフレ要因となり、海外の投資ファンドなど投機集団という「オオカミ」を引き寄せている、というものだ。この際、増税を棚上げして、脱デフレ、成長率アップの財政・金融政策の王道に回帰せよと提案している。

 ■円買い誘う増税路線

 「オオカミ」はどこにいるのか。
 まずは国際金融データを見よう。大震災以降の超円高を引き起こしてきた震源地はロンドンである。英国からの日本の短期債ネット購入額は2011年で65兆円に上る。短期債の100%近くは短期国債である。英国勢による年間純短期債投資は日本政府の短期国債発行残高(政府短期証券を含む)の実に40%を占める。グラフは、英国からの各月の過去3カ月合計の短期債投資額と円ドル相場の推移であり、両者の傾向は重なる。短期債投資は円投機の常套(じょうとう)手段だが、英国以外の海外勢のネット投資は米国を含めマイナスである。言い換えると、ニューヨークではなくロンドンが世界の円投機集団の巣窟になっている。

 ロンドン在住国際金融アナリストのA・シムキン氏によれば、英国勢の正体は帳簿上だけロンドンに本拠を置く各国の投資ファンドだという。中国の国有企業系、アラブ産油国系と余剰マネーを運用するファンドで占められる。

 シムキン氏によれば、「日本の政府債務は問題ではあるが、債務危機ではない」とロンドンの投機家たちはみている。日本は世界最大の債権国であり、政府長期債務の九十数%は国内貯蓄でまかなわれている。しかも、大震災が起きるや、日本政府はただちに復興増税に踏み出したし、続いて消費増税の大幅アップを決意し、野田首相は国際公約までした。デフレなのにデフレを悪化させる増税路線を推進するのだから、モノや設備に対して価値が上がる円債が買われるのは当然だ。言い換えると、増税路線が異常なまでの円買い投機を誘ってきた。国債の短期ものがまず買われ、その影響で中長期国債の利回りも低下する。

 ■脱デフレ政策必要

 ここで、増税論者はしたり顔で言うだろう。投機筋は流れの変化に目ざとい。何かのはずみで一挙に円売り、日本国債売りがロンドン発で起きかねない、と。だから復興増税も消費増税も必要なのだ、でないと「投機筋というオオカミが来る」、と。

 だが、オオカミはとっくに大挙して日本に入っている。オオカミを招き入れたのは、増税とデフレを容認してきた財務省なのである。財務省がさらにデフレと増税政策を続けるなら、それは日本の家計を困窮させ、若者の将来を奪い、企業を国内にいられなくする。代わりに跋扈(ばっこ)するのはオオカミだ。

 政府は増税という餌でオオカミどもを太らせる政策を打ち切るべきだ。消費増税はオプションとして残し、増税時期はデフレ脱出のメドが立ったときに時の総理が決断することとする。その間、政府と日銀は脱デフレで足並みをそろえ、政府は成長戦略、日銀は金融緩和を徹底すればよい。

 すでに日銀がか細い声で「1%のインフレ目標」を口に出しただけで、オオカミどもは円買いを中断した。よりはっきりと大きな声を出して政策転換さえすれば、オオカミは去り、円高デフレの流れは変えられるのだ。
 (特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)


(私のコメント)

日銀の一声で円は84円まで安くなり株価は10000円を超えて上昇しました。財務省のバカ連中は数兆円もかけて円売りドル買い介入しましたが数日しか持たなかった。彼らがいかにバカであるかがわかりますが、このような現実を見させないと彼らにはわからない。だから消費税増税したら大不況になることもバカな財務省の官僚にはわからないのでしょう。

インフレターゲット政策がいかに円高や不況対策に効果があるか証明されましたが、もし日銀がインフレターゲットに反することをしたら一気にその反動が来るだろう。田村秀男氏が3,11以降の円高がロンドンからの円買いにあることを分析していますが、増税路線が円高を招いているのだろう。増税と言えば言うほど円が買われる。

大手のマスコミは財務省や日銀の広報機関だから、インフレターゲット政策は一部の学者や経済評論家しか言わなかった。「株式日記」では定期的に田村氏の記事を紹介して金融緩和を主張してきましたが、物価が1%上昇するまで日銀は金融緩和を継続しなければならない。そうでなければ白川日銀総裁は嘘をついたことになる。

だからロンドンからの円買いは止まり、株式に資金が動いている。株式相場が上昇すれば銀行も自己資本が豊かになり融資余力が出てくる。今までは株価が低迷していたからいくら金融緩和しても銀行は貸し出しを増やすことが出来なかった。自己資本が減ってしまえば買えるのは国債しかないからだ。

もっと分かり易く言えば、日銀が金融緩和しているか引き締めているかを見るには株式相場を見れば分かる。株価が高ければ銀行は積極的に融資を増やして国債を売る。財務省は銀行に国債を買わせるためにわざと増税政策をとって不況感を煽ってきたのだろう。そうすれば株が売られて国債が買われる。

90年代初頭から日本が長期不況に突入したのは、日銀官僚が日銀総裁となり金融の引き締め政策を持続してきたからだ。金利を引き下げても日銀が資金を回収して量的引き締めを続けてきた。だから円高は90年代から今日まで続いてきたのですが、日銀のインフレターゲット政策は一大金融政策の転換であり円高に転換点にもなるだろう。

当面の注目点は国債金利の上昇ですが、デフレギャップが存在するから物価の上昇や金利の上昇は遅れるだろう。円買いに向かっていた投機資金はドルもユーロも買えないから石油などに向かうだろう。今まだは円が投機資金を一手に引き受けてきたようなものですが、ドルやユーロが通貨安政策をとってきたら円も円安政策をとるべきだ。

これで日銀系や財務省系のひも付き経済評論家や経済学者はおとなしくなるのでしょうが、消費税増税のキャンペーンは止めるつもりは無いようだ。テレビも新聞も政府の広報機関だから増税しないと大変だといい続けるのでしょうが、デフレから弱いインフレになれば景気が上昇して税収も増加する。株価は景気の先行指標だから先高感が定着すれば国債を売って株を買うだろう。

株が買われれば企業も資金調達が楽になり設備投資などが行なわれて、新規採用も増えるだろう。原発が停止してLNGの輸入が増えるから貿易赤字も定着する。そうなれば円は売られて1ドル=100円から120円くらいまで戻るかもしれない。それはいつとは言えませんが円高の流れは変わった。


 

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コメント
 
01. 2012年3月16日 13:20:49 : Pj82T22SRI

>。ヨ1%のインフレ目標」を口に出しただけで、オオカミどもは円買いを中断

全然わかってないな


02. 2012年3月16日 13:46:07 : 8NyLMQNDIw
うん。分かってないな。
ギリシャの出口とアメリカが不況に飽きたのが主因だよ。

03. 2012年3月16日 18:47:25 : wO7TnF0TW2
増税しか能がない財務省一味が
売国奴犯罪集団で、野豚一派がその手先だということは
良くわかった。

04. おっさんZ 2012年3月17日 10:14:59 : vf1pLsPn/FgHY : TwezM2hnjk
本当は、日銀と財務官僚はデフレを維持したいのだ。
だから、たかだか1%のインフレターゲットにこぎつけるのに数年抵抗した。
何故なら、彼らの頭では「デフレを脱却して景気が上昇すると、金利が上昇して財政が破綻する」となっている。
景気上昇すれば当然入るはずの直接税収入の増加さえも、計算に入れることが出来無いバカっぷりだ。

資本主義には本来的にデフレスパイラルに陥って破滅するという根本的欠陥が有る。
それを避けるために「弱インフレ誘導」と「直接税主義による資本再配分」が絶対に必要なのだ。
さもなければ資本の流動性は「全体の5%の富裕層に資本が集中」して完全に無くなって終わるのだ。

つまり、日本は侵略や売国などといったファンタジーによって消滅するのではなく、強欲すぎる財界と無能すぎるエリートどもに食い潰されるというリアルによって消滅するのだ。


05. 2012年3月17日 11:29:33 : W2oUDU7vn2
【日銀総裁とのスピリチュアル対話】より

・日銀が インフレ目標導入を渋った 三つの理由

その理由は 三つある。

一つは、そもそも日銀の物価上昇率の目安として「2%以下のプラスで中心は1%程度」という曖昧な表現をしており、デフレ克服に向けた強い意志がほとんど感じられなかったこと。

二つ目は、FRBが2%の物価上昇を目標に設定した後も、白川方明・日銀総裁が、「FRBが、現在日銀が行っている政策に近づいてきたという認識を持っている」 と、むしろ日銀のほうが先行しているとの認識を示していたこと。

三つ目は、白川総裁が 「現在の経済情勢やデフレ、円高は大変厳しいと認識している。 そうした認識の下に強力な緩和政策を行っている」 と、やるべきことはすでにやっていると主張していたことだ。


・なぜ日銀総裁は インフレが嫌いなのか

幸福の科学では、以前から 「なぜ日銀は金融緩和を行わないのか」 に疑問を抱き、1月2日に白川総裁の守護霊の霊言を収録しその本心を探ってみた。

すると、次のような 本音のコメントが飛び出した。
「私たちは、デフレが基本的に好きなのよ。 デフレだったら、それは 『インフレを抑え込んだ』 ということであって、私たちの力が強いということだからね」
「日銀の紙幣を 一枚一枚刷るたびに 罪悪感を感じるのが、本当のバンカーなんだよ」
「 『 インフレ 』 っていう言葉を聞いただけで、じんましんが出るんだ」

いかに、日銀総裁が 本心では、通貨を供給して インフレを起こすことを嫌がっていたかが分かる。

このスクープ的な内容は 1月末に書籍化され、改めて日銀の無策ぶりを浮き彫りにすることになった。
この書籍と、その直後に 米FRBが インフレ目標導入を決断したことも、実は 相当なプレッシャーを与えていたのだろう。
これまでの頑なな姿勢が 嘘のように、インフレ目標に向けて 「速断」 することになった。
今回の日銀の追加緩和策は 不十分とはいえ、ある意味で 画期的な方針転換であったと言える。

3年がかりとは言え、ようやく日銀が本腰を入れて物価上昇を目指して 大胆な金融緩和を実際に行うかどうかを 注視したい。


06. 2012年3月17日 11:32:52 : vv2VEHAE5E

 消費税増税に当り、停止条項を盛り込むかどうかが焦点となっていて、何が何でも増税したい老害政治家・藤井裕久税制調査会長は、停止条項導入を阻止すべくトンデモ発言をしています。「NHK NEWS WEB」は、昨日付けでこう報じています。(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120314/t10013712581000.html)

   “経済成長にかかわらず増税必要”

民主党の藤井税制調査会長は、東京都内で講演し、消費税率の引き上げについて、与党内から、景気が好転しないかぎり行うべきではないという意見が出ていることに関連して、「増税と経済成長は関係ない」と述べ、経済成長にかかわらず引き上げる必要があるという考えを示しました。

野田政権が今月中の閣議決定を目指す、消費税率を引き上げるための法案について、民主党は14日から事前審査に入りますが、与党内には、景気が好転しないかぎり消費税率を引き上げるべきではないという意見が出ています。

これに関連して、民主党の藤井税制調査会長は、講演で「経済成長は、消費税率を実際に引き上げる平成26年や27年のときに考える話で、今、この話が出ること自体がおかしい」と述べました。

そのうえで、藤井氏は「イギリスでは、経済がマイナス成長でも、日本の消費税に当たる付加価値税を上げることを決めている。増税と経済成長は関係ないというのが、ヨーロッパの中心的な考え方だ」と述べ、経済成長にかかわらず、消費税率を引き上げる必要があるという考えを示しました。

また、藤井氏は、小沢元代表が法案に反対する姿勢を鮮明にしていることに関連して、「小沢氏が率いていた、かつての自由党の政策が、法案の根っこの考え方を提供している」と述べました。

 「増税と経済成長は関係ない」などと述べていますが、増税すれば消費は低迷し、資産の海外逃避を促します。こんな判り切ったことを否定するのですから、完全に財務省の走狗と化しています。(元大蔵官僚ですから当然ですが) 増税ができるよう、日々神棚に向かって祈っているそうですから、亀井静香・国民新党代表に習って、「地獄に落ちるぞ!」と言ってやりたい気分です。

 停止条項が導入されれば、小沢派は矛を収めるだろうという予測をしましたが、客観的な指標を盛り込めるかどうかが問題です。主観的に判断する(つまり景気に関係なく消費税を上げる)ということで民主党執行部は押し切ると思いますが、増税反対派に不利な状況が整いつつあります。

 現在、円安と株価の上昇が進んでいますが、これがこのまま景気回復に繋がれば、増税に反対する大義名分が失われます。増税反対の大義は、公務員制度改革などの実行(中でも最重要課題が天下りの禁止)にあるのですが、停止条項に問題の焦点が絞られていますので、現時点で景気が回復してくれば反対する理由がなくなります。

 今の円安・株高は、欧州や米国の金融緩和により一時的に危機が遠のいたとの判断によるもので、根本的な解決がなされたわけではありません。いずれ危機が再燃するのは時間の問題ですが、どうも消費税増税が予定されている2014年頃までは緩やかな景気回復が続きそうなのです。

 昨日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は声明を発表しましたが、その一部を以下引用します。(同日付「ロイター」、http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE82C01920120313、下線は引用者による)

「法令で定められた責務に即し、FOMCは雇用最大化と物価安定の促進を目指している。FOMCは、経済が向こう数四半期に緩やかに(moderate)成長すると予想しており、その結果、失業率はFOMCが2つの責務に整合するとみなす水準に向かって徐々に低下する(decline gradually)と予測している」

「具体的には、FOMCは本日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置くことを決定した。資源活用の水準が低く、中期的なインフレ見通しが抑制されているなどの経済状況から、少なくとも2014年終盤まで(at least through late 2014)、FF金利を異例の低水準(exceptionally low levels)とすることが正当化される可能性が高いと現時点で予想している」

 つまり、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2014年終盤まで緩やかに成長すると予測しているのです。これはそのように持って行くという宣言に外なりません。もちろん、予測通りになるとは限りませんが、今年末の大統領選に向けて景気の調整を入念に行うことは間違いありません。

 ここで気になるのは、「2014年終盤」という文言で、これは消費税増税が行われる予定の年に当たります。今のまま円安・株高が続いてこれが景気回復の装いを見せれば、政府(財務省)としては、増税しやすい状況が整います。果たしてこれは偶然なのでしょうか?

 消費税率は将来的に、16〜30%ぐらいになると思われますが、日本国民のために使われるのはその一部で、大部分は米国へ横流しされ、官僚がそのお零れに預かるという形になることは必定です。政府と米国が結託して見せかけの景気回復を演出しようとしている可能性もあり、我々は浮かれているわけには行きません。もしそうであれば大掛かりな詐欺行為であり、断じて許してはなりません。


07. 2012年3月17日 11:41:12 : BoVZM0p38A

 日本は世界一の低金利で、10年物国債の金利も0.9〜1.1%で済んでいる。しかもインフレではなく若干のデフレなので、この低金利でも実質金利は1.3〜1.6%くらいと、安全性の高い国債の金利としては十分商品価値のある利回りになっている。多くの金融機関も、無理をしてリターンも大きいがリスクも大きい投資対象で資金を運用せず、安全な日本国債の低金利で良しとする方針の企業が多い。というよりは、日本国債だけはかろうじてプラスの収益を上げているが、その他の外国債や内外の株式投資ではマイナスなので日本国債にしがみついているという機関投資家が多い。

 低金利は一般的に健全な経済の証拠だということだけは、明らかにしておきたい。金利が高いことを喜ぶのは、貸しているだけで高収益を上げられる金融機関と金利収入だけで食べていける大金持ちくらいのものだろう。普通の事業をしている企業や、運用資金の小さな個人にとって高金利で困ることはあっても、低金利で困ることはない。

 特に現在のように、長い不況の中で企業の投資意欲が弱っている時に金利も低くなるのは、市場経済がうまく機能している証拠だ。もし、企業の投資意欲が復活すれば、他社より多くの資金を確保しようとする企業同士が社会全体としては限られた量の融資可能額を取り合うため、自然に金利は上がる。企業の投資意欲が復活する前に金利だけを高くするのは、馬の前に馬車をつなぐようなものだ。

 普通、低金利の弊害として金融機関の安易な借金拡大を挙げる人が多い。金利が低いと、ついついしないでもいい借金をして、そのカネをハイリスク・ハイリターンの投融資で運用して、結局は穴を空けてしまうというわけだ。

 その点で、日本の金融機関、大手企業は、1989年末に諸外国よりはるかに早くバブル崩壊を経験し、その後も延々と続く資産デフレの中で、長い敗戦処理を余儀なくされた。低金利の資金を引っ張ってきてハイリスク・ハイリターンの投融資をして、利ザヤを抜くといういわゆるキャリートレードも驚くほど小規模に保っている。単なる臆病だったのかもしれない。だが、2012年中にもこの慎重な姿勢が報われる日が来るだろう。

 デフレ環境下では、名目金利は低くても実質金利は高いので、金利生活者も極端な不利はなく、所得が一定のまま増えない多くの給与所得者も、それほど生活が困難になるわけではない。デフレの害毒としては、「経済全体が縮小再生産過程へと転落する」、「借金が不利だから、貧乏人にも不利な経済環境になる」、「賃金の下方硬直性があるため、失業者が増加する」の3点が挙げられることが多い。

 だが、日本では1990年代後半から15年程度デフレが続いているが、3点ともまったく当てはまらないことが、はっきりしてきた。

 日本経済は、実質ベースでは伸び続けている。そもそも、「少しでも値下がりしたものはもっと値下がりすると思って買わない人が増えるので、悪無限的に価格と数量が下がり続ける」という主張が本当なら、経済学の大前提としての価格理論は成り立たない。世界中どこでも安くなっているモノほど需要量が大きくなり、値段が変わらなかったり高くなったりするモノは需要量が小さくなる。

 17世紀以降、市場経済が定着し、過剰な金融投機でインフレが起きるたびに、反動としてデフレも起きてきた。だが、1873年〜1895年の大不況までのデフレ期は、経済も拡大し勤労者の実質所得も向上する、インフレからの健全な自然治癒過程だった。

 一方、1930年代のアメリカ大不況だけは正反対で、勤労者の少なくとも1/4、おそらく1/3が職を失い、国民全体の生活水準が約30%低下した。何が違っていたのか?

 1873年〜1895年の大不況までは、基軸産業が競争市場であり、どんなに大きな企業でも生産縮小をすれば他社にシェアを奪われるのが怖くて、極端な生産削減はできなかった。ところが、1920年代半ばには自動車産業における事実上の独占を確立していたGMは、1929年〜1932年までで生産台数を1/4に減らす(つまり75%の大削減!)といった無茶苦茶な生産削減をやってのけた。その結果、鉄鋼、ガラス、ゴムその他まで生産縮小が波及し、未曾有の国民経済の収縮が起きてしまったのだ。

 確かにデフレは借金の実質負担が増えるので、借金に不利な経済環境だ。だが、普通の貧乏人は好きな時に欲しいだけ借金ができるわけではない。「いつでも、いくらでも、何回でも」という戦略的な借金ができるのは、大金持ち、金融機関、一流企業と国や自治体だけだ。インフレは確かに借金に有利な経済環境だが、その環境で得をするのは強者で、弱者は損をするのだ。つまり、インフレは貧困税なのだ。

 直近の労働市場の数値を日本と欧米で比べてみよう。不況でも金融機関だけは潤い、インフレと高金利が共存している欧米の失業率は軒並み8%〜10%台で、中にはスペインの20%とか、同じスペインの若年失業率48%というようなすさまじい数字も出ている。

 日本の失業率は最悪期でも6%には至らず、現在5%台を割る水準に落ち着きつつある。また、若年失業率も一時9%前後まで上がったが、2011年末では6%台に下がっている。

 事実に即してみれば、「デフレなのに、労賃だけは高止まりしているから、心ならずもクビを切らざるを得ない」というのは、勤労者を犠牲にして自分たちだけが、儲かればよいという金融機関や一流企業経営者の、本音とは正反対の言い訳に過ぎない。むしろ、不況下でもインフレの持続を許してしまうような大衆の弱い経済圏では、大量クビ切りが横行する傾向が強い。だが、不況下でのインフレは許さないような大衆の強い経済圏では、大量クビ切りを許さないという傾向が強い。

 日本にとってアキレス腱のように弱いと思われている分野でも、よく調べてみると逆に日本の強さが分かってくる。エネルギー源をほぼ全量輸入しているにもかかわらず、日本がエネルギー価格上昇によって受ける被害は中国や韓国やアメリカよりは遥かに低く、ドイツよりも若干低い。

 実際に2011年2月まで、つまり東日本大震災直前の1年間で、食料価格、エネルギー価格、それ以外の全ての消費財価格がどう推移したかの実績を見ても、日本がエネルギー需給の逼迫に強い国だと確認できる。日本はこの1年間でエネルギー価格の上昇率を4.1%にとどめていたが、これはOECD(経済開発協力機構)諸国で最小の値上がり率だった。

 そして、食料品価格も0.7%値上がりしていたが、エネルギー・食料以外の全品目が0.6%の値下がりだったため、全体としてはインフレでもデフレでもない0.0%の消費者物価変化率となっていた。

 アメリカはエネルギー価格が11.0%、食料価格が2.8%の値上がりで、全体としての消費者物価指数は2.1%の上昇だった。韓国はエネルギー価格が9.1%、食料価格が12.2%の値上がりで、全体としての消費者物価指数は4.5%の上昇だった。日本に次いでエネルギー・食料インフレに強いドイツでさえ、エネルギー価格が10.2%、食料価格が3.5%の値上がりで、全体としての消費者物価指数は2.1%の上昇だった。

 海外のメディアやブログ論壇でも、勃発当初はこの大震災を待っていたかのように「日本経済崩壊論」を触れ回る連中が圧倒的に優勢だった。だが、最近になって過去のデータを冷静かつ客観的に検討し、日本経済の強さを再認識する論考が増えてきた。

 例えば1990年代以降の日本経済については、「失われた20年間」という形容が定着している。つまり、1990年〜2010年という20年間の日本経済はゼロないしマイナスの成長率で低迷し続けていたという評価だ。だが、客観的にG7諸国の実質GDP成長率を比べてみると、日本は一般に考えられているほど他の6カ国に後れを取っていたわけではない。

 2002〜2006年は、ドイツやイタリアのほうが一貫して日本より成長率が低かった。また、確かにリーマン・ショック後の落ち込みは日本が最大だったが、それと同時に直後の回復幅も日本が最大だった。そして、リーマン・ショック前後の一過性のの落ち込みを除けば、イタリアの実質GDP成長率は2001〜2010年のほとんどの時期で、日本よりずっと低い成長率にとどまっていた。全体的には、日本の実質GDP成長率はG7諸国で中ほどに位置していたというのが、公平な評価だろう。

 要するに、日本のGDPが先進諸国の中で最低の部類だったという印象は、もっぱら名目GDPで見ると非常に低い成長率、時にはマイナスの成長率を記録していたことに起因している。確かに、名目成長率だけを見ていれば、199年代以降の日本経済は惨憺たる状態が続いているように思える。

 だが、名目ベースの数字というのは、その時々の物価水準に大きく影響される。マネーサプライが過剰でモノの値段がどんどん上がるインフレの世の中では、名目成長率は非常に高くなる。逆に、マネーサプライが抑制気味でモノの値段がどんどん下がるデフレになれば、実際にはプラスの経済成長があっても、名目成長率ではマイナスになってしまうこともある。

 まさに日本経済は、このモノやサービスの供給は徐々に増えているのに、名目ベースでの成長率はマイナスという状態だった。どこでそれが分かるかというと、どこに行っても同じモノを同じ量買うことのできる購買力平価として算出して、直近の米ドルベースに換算した日本の国民1人当たりGDPは、1〜2回短期的な落ち込みを示しながらも、1980年以来ほぼ一貫して上昇し続けているのだ。

 この安定成長は、OECD諸国の中で高い方だったのか、低い方だったのかというとちょうど真ん中あたりだった。OECD加盟諸国の国民1人当たりGDPの水準が、20年の歳月を隔てた1987年と2007年という2つの年でどう変わっってきたかチェックした。

 結果は、20年前も今も日本の位置はほぼ真ん中で、ドイツよりちょっと低く、フランスよりちょっと高い。そして、2007年でもほとんど同じ位置だった。つまり、この間の日本経済は、OECD諸国の実質成長率の中ほどに位置する実質成長率を達成してきたのだ。

 また、2007年時点では、アイルランドとかイギリスとかの派手に金融バブルを膨らませた国々が日本の上にいる。しかし、この2カ国は金融危機が深刻化すれば間違いなく日本より下にくる。だから、日本の順位は今後2〜3年でもっと上に行っているだろう。

 1987年〜2007年の日本経済は、ほぼ全面的に金融や不動産でのウィンドフォールゲイン(棚ボタの利益)に頼らず、製造業などの地味な努力の積み重ねで成長を維持していた。そして、先端産業における日本企業の強さは、今回の被災地で操業を停止した工場からの出荷が途絶えたために、、世界中のさまざまな分野で生産活動がストップしたり、大幅に削減されたりしたことで再認識され始めた。

 結局のところ、日本経済の「失なわれた20年」とは、マネーサプライが非常に低水準にとどまったため、インフレがほとんど起きず、時折デフレ状態になっていたからこその、純粋に名目ベースだけの停滞だった。欧米諸国ではサブプライムローン・バブルが絶頂に達しつつあった2006年にかけて、M3という幅広いマネーサプライの数値が前年比で減少していた。これだけ実際の貨幣供給を絞り込めば、当然インフレは起きない。そして、実体経済の収縮につながらない限り、穏やかなデフレには何ひとつ問題はない。

 従って、日本はインフレ率も主要先進7カ国の中で他の6カ国より圧倒的に低かった。2006年末から2007年秋までのデフレほとんど誤差の範囲内というような低率にとどまっていたが、2009年春から2010年春までは、消費者物価下落率が前年比で2%台に達する明らかなデフレになっていた。

 しかし、デフレ最大の弊害と言われる「デフレが生産活動を収縮させ、その収縮が一層のデフレを招く」という悪循環は起きていない。従って、給与水準がほぼ一定の勤労者にとっては、物価が上昇しなかった分だけ、実質購買力が高く保てたというポジティブな効果の方が大きい。

 もっと興味深い事実がある。残存期間8年の債券にどの程度の利回りを求めるかから逆算した、8年間のインフレ期待値を日本の債券市場で計算すると、以下のような興味深い数値がはじき出されていた。

 2008年10月には3.5%前後のかなり深刻なデフレを予想していたが、2010年に入ってからは1%程度のデフレ期待に収まっていた。そして、東日本大震災の後、日銀が大胆に量的緩和を行った段階では、ちょうど0.0%のインフレもデフレもない状態を期待していることが判明した。

 カネの価値とモノやサービスの価値の間に何の変動もない状態を市場全体として期待しているわけだ。しかも、それは2010年2月までの1年間の消費者物価変動率の実績ともぴったり符合している。

 そして、今回の大震災に際して日銀が大胆な量的緩和に踏み切れたのも、最初の量的緩和が終わると同時に、日銀は顕著にバランスシートを絞っていたからだ。2001年1月に量的緩和を始めた時約110兆円だった日銀のバランスシートは、量的緩和を終了した2006年1月には150兆円まで膨らんでいた。

 だが、その後1年間で日銀はバランスシートを元の110兆円レベルに圧縮し、それから2011年3月までだいたい110兆〜120兆円の範囲にとどめていた。だからこそ、今回の危機に際しても、機敏に約30兆円の資産購入=マネーサプライの増加を実施することができたのだ。

 日銀による「元祖」量的緩和と、外国為替市場での円売りドル買い介入の合わせ技は、確かに2003年初めには800台の大底圏で推移していた東証株価指数を引っ張り上げる効果があった。だが、日銀は為替介入と量的緩和を終えた後、すぐ肥大化したバランスシートを縮小させている。そして、このバランスシート縮小にもかかわらず、東証株価指数は2006年初めから2007年夏頃まで1800前後の高値圏にとどまっていた。

 その後、2008年秋から顕在化した国際金融危機に連れ安する形で東証指数がまたぞろ800近辺まで下げても、日銀は余り極端なバランスシート肥大化に踏み切らなかった。日本経済の規模に比べてほとんど意味のないほどの少額にとどまる「特別融資枠」の設定というような、協力の「心意気」は示すが、実効は初めから期待できない政策を小出しに発動するだけだった。

 QE1で肥大化したバランスシートをそのまま高水準で維持しておいて、さらにQE2で肥大化に輪をかけているうちに、明らかに資源インフレに火をつけてしまったFedとは、金融政策の節度が違う。そして、Fedではなく日銀が日本の金融の舵取りをしてくれて、本当に良かったと思う。

 この日銀の慎重なスタンスがあったからこそ、東日本大震災の勃発で本当に必要な資金需要が起きた時に素早く対応できたのだ。その意味では、知的エリートの中に「英雄」を作ることなく着々と復興を進めている日本社会の中で、日銀の白川方明総裁だけは正しい方向にリーダーシップを発揮している稀有の人材だと言えるかもしれない。

 2008年3月に前任の福井俊彦総裁が任期満了で引退した後の後継者選びは、もめにもめた。当時、野党第一党だった民主党が自民党の推薦する候補について、「財務官僚はダメ」、「日銀生え抜きはダメ」、「市場原理主義的な発言の前科がある人間はダメ」とごねまくった挙句、「比較的敵の少ない温厚な学者」という無難さを買われた妥協の産物が白川総裁だった。

 ところが、この敵の少ない温厚な学者だった白川総裁が舵取りをするようになってから、今や政権第一党の民主党も、財務省もほとほと手を焼いている。何しろ、「中央銀行には自由にインフレを起こす力があるはずだ」とか、「マネーサプライや実質金利を操作できるはずだ」とかの世迷言には一切耳を貸さず、出来ることしかやらないという真っ当な路線をひたすら追及しているからだ。

 その意味では、こんなに度胸の据わった金融節度の守り手が現在日銀総裁のイスに座ってくれているのもまた、日本政治に指導力が全く存在しなかった事の賜物かもしれない。


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