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日本企業、止まらぬ韓国投資
• 2012年3月14日 水曜日
• 張 勇祥、小谷 真幸
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帝人、東レ、イビデン、住友化学──。素材メーカーが韓国シフトを強めている。引っ提げてゆくのはリチウムイオン電池や炭素繊維など日本のお家芸だ。「六重苦」の対策だけではない。企業の背中を押すのは顧客、市場の存在だ。
帝人はリチウムイオン電池の主要部材であるセパレーター(絶縁材)市場に参入する。他社よりも耐熱性が高く、長寿命の製品の開発に成功。EV(電 気自動車)やスマートフォン、タブレット端末用などで電池メーカーに採用を働きかける。ただ、量産の地に選んだのは日本ではない。韓国だ。
韓国のフィルム加工会社、CNFと合弁で生産会社を設立。数十億円を投じ、韓国中部の忠清南道・牙山市にある工場の建屋内にセパレーターの製造設 備を建設している。稼働は6月を予定。既に複数の電池メーカーで採用が決まっており、2020年に年200億円の売り上げを目指す。
進出だけでなく、増産も韓国で
旭化成は韓国でアクリロニトリルを増産する
ソウル市内には100%出資の販売会社も設立し、既に1月から営業を開始している。韓国だけでなく、中国市場の開拓にも力を入れる。販売会社の代 表を務める帝人・新機能材料事業開発部の小山俊也部長は、「リチウムイオン電池の生産拡大は韓国、中国で著しく、需要地に近い所に供給体制を敷くメリット は数多い。日本ではどうしてもコストが高くなる」と説明する。
下表に主なものをまとめたが、韓国進出が急激に増えている。東レも2013年1月の稼働を目指し、韓国に炭素繊維の工場を建設中だ。それに先立ち開発拠点も韓国に設ける。開発から生産まで一貫した体制を整える。
炭素繊維は日本勢が世界シェアの7割を持ち、これまで各社とも国内を中心に生産してきた。だが、東レは既に将来の増産に向け、土地を追加で取得済 みだ。炭素繊維や電子材料などの分野で、2013年からの10年間に総額1兆3000億ウォン(約940億円)を投じる計画を打ち出している。
リチウムイオン電池、炭素繊維、イビデンの特殊炭素製品――。弱体化がささやかれる日本のモノ作りの中で、素材分野は強みを保つ数少ない分野だ。その代表的な企業群が雪崩を打って韓国シフトを進めている。
韓国の知識経済部によると、2011年の日本からの対韓直接投資(申告ベース)は22億8400万ドル(約1860億円)と前年比で9.6%増加 した。これは、全体の伸び率(4.6%)よりも大きい。もちろん円高を追い風にしている面はあるが、ドルベースではリーマンショック後で最多となった。
「六重苦」、韓国進出で解消
なぜなのか。
日本に立地する企業の厳しい競争条件を表す言葉として繰り返しささやかれる「六重苦」。具体的には円高や高い法人税、高額な電力料金や供給制約、 環境対策への負担、貿易自由化の遅れ、厳しい労働規制を指す。ただ、これらの重荷は「韓国に移転すれば、かなりの部分を解消できる」(日本総合研究所の藤 井英彦理事)。
例えば、賃金。経済協力開発機構(OECD)の「Employment Outlook 2011」によると、2010年時点の韓国の平均賃金は名目ベースで2万6538ドル。日本の4万7398ドルに対し6割弱の水準にすぎない。産業全般の 人件費の低さは、工場建設をはじめ企業進出の多くの場面で有利に働く。
対ドルの為替レートの差も大きい。比較する時点によって差は大きいが、リーマンショック前で「円キャリートレード」による円安が進んでいた2007年末との比較では、円はドルに対し37%上昇している。一方、韓国ウォンは17%の下落だ。
インフレ率の違いももちろん考慮する必要はあるが、それでも円とウォンの値動きが競争力に及ぼす影響は無視できない。日本銀行が2月14日に決め た追加の金融緩和を受けて為替相場は円安方向に推移しているが、現時点では急ピッチで進んできた円高の一部が修正されたにすぎない。
ほかにも法人税の実効税率や電力料金など、立地面での韓国の優位性を示す要素は少なくない。東レが進出理由を「労務費や税金面、電気代、為替など を総合的に勘案した」とするのももっともだ。だが、それだけでない。日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部の百本和弘主査は、「何といっても顧客、市場 の存在が韓国シフトを促している」と指摘する。
需要地への立地が圧倒的優位
住友化学が2500億ウォン(約180億円)を投じたタッチセンサーパネルの新工場。1月から試験生産を始め、量産は3月からだ。主な納入先はサ ムスンモバイルディスプレー(SMD)。日本のスマートフォンやタブレット端末が世界で存在感を示せない中、需要のあるところへの立地は自然と言える。
東レにとっても事情は同じだ。韓国には現代自動車やサムスン電子グループなど炭素繊維の採用に積極的な顧客企業が多く、生産拠点を設ければ共同開発や顧客ニーズをくんだ素早い仕様変更にも対応できる。
画面基板用樹脂の合弁をSMDと設立した宇部興産も背景は変わらない。アルバックや東京エレクトロンをはじめ、研究施設を設置する動きも急速に広がっている。
つまり、市場としての日本の魅力低下が、日本企業の背中を押している。法人税率の引き下げは重要な手立てだが、これだけでは産業立地としての優位 性を取り戻せない。例えば現代自動車は2012年の14兆ウォン(約1兆円)を上回る投資計画のうち、11兆6000億ウォンを韓国国内に投じると報じら れた。日本のモノ作りを保つための総力戦が求められている。
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小谷 真幸(こだに・まさき)
日経ビジネス記者。日経ホーム出版社(現日経BP社)入社後、日経トレンディ、日経マネー、日本経済新聞社・証券部を経て、2011年4月より日経ビジネス編集部に在籍。
張 勇祥(ちょう・ゆうしょう)
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