★阿修羅♪ > 経世済民75 > 367.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
「就社」社会の余命 アメリカの外食産業に過労死がない理由とは? 虫歯でERに駆け込むアメリカ人
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/367.html
投稿者 MR 日時 2012 年 3 月 11 日 23:07:01: cT5Wxjlo3Xe3.
 

2012年03月06日 13:19
「就社」社会の誕生 −ホワイトカラーからブルーカラーへ−冷泉彰彦氏のコラムが話題になっているが、このようにレストランの給仕でも職務が細分化されているのは、アメリカだけではなく日本以外のすべての国の組織の特徴である。日本のように他人の仕事を手伝ったりサービス残業したりする労働者は、中国にも韓国にもいない。これは勤勉革命のたまものだろう。

ただ日本でも、戦前の職人は多くの職場を渡り歩く専門職だった。それがなぜ戦後は就社になったのかというのが本書のテーマだが、これには諸説ある。経済史でふつう想定するのは戦時体制で年功序列になったとか、戦後の労使紛争を経て熟練労働者を囲い込むために長期雇用が始まったというものだが、本書は戦前からの学校の需給調整機能に注目している。


職能別の編成はいいことばかりではなく、排他的な縄張り主義になりやすい。特に職能ごとに労働組合が編成されると、一つの企業に何十も組合があって、その一つでもストライキをしたら工場が止まる、といった非効率性が、かつては大きな社会問題になった。それに対して日本の企業別組合では、労使が「一家」として長期的関係で問題を解決するので労使紛争が少なく、市場の変化に対して配置転換で対応しやすい。

しかし職能別に物的資本と人的資本がモジュール化された組織は、企業買収・売却で一部を切り離すのには適している。職能も専門的でポータブルなので、クビになっても再就職しやすい。つまり職能別組織は、石油化学や食品のように変動の少ない業種か、ITのように変動の非常に激しい業種に向いており、日本型の「就社」組織はその中間のゆるやかに変化する2.5次産業に向いている――というのが拙著の整理である。

このようにjob descriptionが曖昧でfirm-specific skillに片寄っている日本の労働編成はきわめて特殊で、アジア進出に際しても障害になっている。だから先進国に残された成長フロンティアが変化の激しいITやサービス業に移っているとすれば、考えられる対応は二つしかない:グローバルな産業構造の変化に合わせて組織を職能別に再編成するか、それとも今の組織を維持して国際競争にさらされない業種に特化するかである。

TPPに反対したり原発の再稼働に反対して「脱成長」とか言っている人々は、暗黙のうちに後者を選ぼうとしているのだろう。しかしそれは日本が貧しい小国になる道であり、私は(逃げ切れる世代なので)個人的には悪いとは思わないが、今の30代以下には(財政負担も含めて)相当ひどい生活が待っていることを覚悟したほうがいい。
「本」カテゴリの最新記事

「悪党」と「非人」の力
「就社」社会の余命
意志と表象としての世界
勤勉と「ものつくり」の終わり
ムーアの法則が世界を変える
「日本的経営」という錯覚
戦争機械とリゾーム
原発「危険神話」の崩壊
偏狭な利他主義と寛容な利己主義
トリックスターとしての山本太郎


http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2012/03/post-407.php
アメリカの外食産業に過労死がない理由とは?
2012年03月05日(月)15時53分
 大前提として客も店も細かいことはゴチャゴチャ言わないし、とりわけ中堅以下の企業化されたファミレス系やファーストフード系に至っては、サービスの水準はかなり低いという問題があるわけです。その点では、日本とは全く別世界で比較の対象にはならないのですが、個別の問題では参考になる点もあると考えて箇条書きにしてみました。

(1)役割分担がハッキリしています。例えば、注文を取るのは「サーバー」、最初に接客して客をテーブルに誘導するのは「ディスパッチャー」などという「専任」ですし、料理を運んだり皿を下げる専門の「アシスタント」など接客だけでも細かく分かれています。厨房の中も役割分担が明確です。

(2)職務内容は契約書で明確になっています。ですからコストカットのために、ある仕事を他の人間にカバーさせるなどということは不可能です。また契約に書いてあることは双方が履行しなくてはなりません。野球の井川慶選手がヤンキースで一軍落第の烙印を押されてもクビにもならず、5年間毎年400万ドル(3億2千万円)ずつ払われたのがいい例で、契約社会では成立した契約を力関係でひっくり返すことはできないのです。外食産業での契約も双務性(お互いが契約に縛られる)という点では同じです。

(3)もっと言えば、人の仕事はやってはいけないのです。誰かが客の前で料理をひっくり返した場合に、その人間がサーバーだったら掃除をしてはいけません。掃除はジャニターの権限であり、他の人間がその仕事を横取りするのはジャニターの雇用を脅かし、給与の分配の根本を壊すので重大な規律違反になります。従って、他の人が忙しくても自分の仕事や勤務時間が終わったら帰っていいのです。といいますか、他の人の仕事にちょっかいを出すのは禁じられています。

(4)決して給与は高くありません。全員が腰掛け仕事と言っても過言ではありません。「アシスタント」はまず最低賃金レベルでヒスパニック系の出稼ぎ労働の人が目立ちます。「デイスパッチャー」なども大した時給ではなく、学生のアルバイトが多かったりします。それぞれが、人生のそれぞれの段階で、収入の不足を補うという位置づけで働いており、長く勤務するという前提の人はほぼ皆無、従って何らかのストレスを貯めこむ危険があるようなら転職してしまいます。

(5)本部の経営層やマーケティング専門職、商品開発専門職は管理職扱いで給与も高いですが、こうしたポジションはMBAやフードビジネスの修士などが要求され、またそうした「最先端知識」を大学院で学んだ人が即戦力、もしくは業界をヨコに転職してきてポジションを取ります。ですから、現場叩き上げで昇進する可能性はゼロ。現場の仕事は良くも悪くも腰掛けであり、フルタイム雇用者が管理職候補で将来の出世を人質にムリな働き方を強制されるということは絶無です。

(6)店全体の管理責任と業績の責任を負うのは店長です。ですが、店長の処遇は歩合制がほとんどです(スーパーの店長も同様)。ですから、オペレーションマニュアルと自身の雇用契約に違反しない範囲という「ゲームのルール」さえ守っていれば、儲かれば儲かるだけ自分の懐に入ってくる仕掛けです。終身雇用と将来の出世を人質に、ネチネチとエリアマネージャーに管理されるということはありません。売上の最低ラインが未達成ならアッサリとクビになり、これも後腐れはありません。

(7)歩合ということで言えば、サーバーもチップ制になっています。サーバーというのは基本的に出来るだけ高い料理と酒を選ばせ、デザートも注文させることでテーブル単価を稼ぐ「営業職」という位置づけだからです。また客はサービスの満足感に対して、チップの率を12%から20%の間で変動させますから、顧客満足度の向上のモチベーションもカネで精算されるわけです。つまり、固定給を前提にノルマ達成を迫られるより、後腐れがないわけです。

(8)サービスのレベル一般は低いです。客を待たせても、注文の料理が遅くても、冷めていても、そこで謝罪することはまずありません。その代わり、好感度を増してチップを稼いだり、リピートにつなげるためには、パーソナルタッチ、つまりサーバーの個人的なアドリブ会話が奨励されています。それも厳しい強制はないですし、上手になればチップという見返りがあるので、働いている人間にはそれほどストレスにはなっていないようです。

(9)労働法規のコンプライアンスに関しては、特に当局が査察をするわけではないのですが、例えば多くの州で「従業員控え室には労働法規の一覧と最低賃金額を記載したポスターを掲示しなくていけない」という法律があって、それが雇用側が法律順守をするようなプレッシャーになっています。また、実際に労働法規違反が顕著であれば、多くの労働者は弁護士を雇って訴訟に持ち込みます。その場合、内容が悪質で、かつ雇用主に支払い能力がある場合は、巨額の懲罰賠償を取られますから、雇用主としては自発的に法律に従わされる仕組みです。

 というわけで、同じ外食産業といっても、労働契約や労務管理に関しては、全く日本とは事情が違います。ですが、こうした要素一つ一つが「ブラック性」であるとか「過労死」という方向性とは反対の作用をしているのは事実だと思います。一点でも、二点でもいいですから、参考になればと思う次第です。
キーワード

アメリカ社会
消費
雇用

関連記事

アメリカで「病児保育」が社会問題にならない理由とは? 2012.03.07
スーパーチューズデー直前の共和党、どうしてロムニーでまとまれないのか? 2012.03.02 
ミシェル・オバマに人種差別の厚い壁 2012.03.01

http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2012/03/post-2456.php
虫歯でERに駆け込むアメリカ人

More Americans Use the ER for Dental Care

普通の歯科医に診てもらえない低所得者がERに殺到、虫歯1本に1000ドルもかける茶番の元凶は、やっぱり医療保険の不備
2012年03月01日(木)17時11分
サマンサ・スタインバーン

格差 公的医療保険をもたないことのしわ寄せは低所得層に Mario Anzuoni-Reuters

 歯がシクシク痛む。どうやら虫歯ができたようだ──。そんなとき、近所の歯医者ではなく、大病院の緊急救命室(ER)に駆け込むアメリカ人が増えていることがわかった。

 ピュー・リサーチ・センターが2月28日に公表した最新調査によれば、歯のトラブルでERを訪れる人の数は、06年から09年の間に全米で16%も増加したという。いくつかの州では特にその傾向が顕著で、サウス・カロライナ州では過去4年間で60%近く増加。テネシー州では、歯科治療のために病院のERを訪れた人の数が火傷の患者の5倍に達した。

 ERで歯科治療を受けるという行為は、「驚くほどカネがかかり、驚くほど非効率だ」と、調査を精査したフロリダ大学歯学部教授のフランク・カタラノッテ博士は語る。カタラノッテによれば、定期的な歯のクレンジングのような予防的処置の医療費が50〜100ドル程度なのに対し、虫歯や感染症の処置を救命病棟で受ける場合は1000ドルかかるという。
治らない患者がERに戻ってくる悪循環

 しかも、ERの医師や看護師は歯科の専門家ではないため、そこで提供できる治療は痛みを止めたり感染症を抑える応急処置に限定される。歯の病気が治まらないと、患者は高額の追加処置を受けるために再びERに戻ってくる。

 ピュー・リサーチ・センターによれば、ミネソタ州では歯科関連の治療でERを訪れる患者の20%が再診だった。「間違った環境で、間違ったタイミングで、間違ったサービスが行われている」と、同センターの小児歯科活動担当ディレクター、シェリー・ゲーシャンは言う。

 人々はなぜ、普段から地域の歯科医院で定期的な検査を受けておかないのだろうか。もともと歯科医の数が足りないうえに、メディケイド(低所得者医療保険制度)を使う患者を敬遠する歯科医院が多いためだと考えられる。

 事態を改善するために、地域で歯科治療を受けやすくするよう各州の政策にいくつかの変更を加えるべきだと、ピュー・リサーチ・センターは提言している。小児科医が基本的な歯科治療も提供できるようインセンティブを用意したり、診療報酬を実際の治療コストをカバーできる額に引き上げるなどして、より多くの歯科医院にメディケイドへの参加を促す方策などが考えられる。

(GlobalPost.com特約)  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年3月12日 00:11:56 : G3DdREoruw
嘘書くな。
アメリカ合衆国の歯医者は46万人いる。統計に出ている。
日本のコンビ二の数の十倍近くいるのだ。
人口は2倍ほど。
日本の歯医者の数の5倍はいる事になる。
2006年のWHOの統計

02. 2012年3月12日 00:45:44 : gosf2ji9lo
>一点でも、二点でもいいですから、参考になればと思う次第です

アメリカという国が馬鹿の集まりだという事が良く分かりました

今の日本の状況は確かに酷い
しかしそれでも
今のアメリカ人より
今の日本人のほうがハッピーですよ
それだけはハッキリ言える


03. 2012年3月12日 00:55:46 : gosf2ji9lo
>一点でも、二点でもいいですから、参考になればと思う次第です

つまり日本もアメリカ型の社会になれと?
だれが騙されるか


04. 2012年3月12日 03:09:24 : FijhpXM9AU
ERだったらクレジットカードがなくても診てもらえるからだろ。最初から治療費踏み倒すつもりで。冷戦とかいう物書きはホントにダルマ人形のように薄っぺらで中身はスカスカだ。読む価値なし。

05. 2012年3月12日 08:46:29 : 0rewhl0M05
米国のサービス業は本当に悲惨だな。

それでも、過労死が無いから日本よりよいと言いたいのかいな?

この程度のアホでも難しい学校でて留学できるんだな。


06. 2012年3月12日 09:15:47 : nr6GSPnt4g
46万人の歯医者が高収入を保っているアメリカ。人口3億人。
9万人の歯医者ワーキングプアーの日本。人口1.2億人。
人口1万人当たり歯科医数
アメリカ 15人
日本   7.5人
アメリカはさしずめ、日本の2倍多い歯医者の割合という事になる。
日本の歯科医師のワーキングプアーは、厚労省の決める保険点数が原因という官製不況である事が証明できた。 さっそく歯医者の保険点数を2倍に上げよう。

07. 2012年3月12日 09:59:11 : QuXwEmPL1s
こんなひどい雇用形態を真似しろとかひでえwww
馬鹿に働かせるための歯車社会じゃんwww

08. 2012年3月12日 10:37:10 : nr6GSPnt4g
日本では、厚労省が意地でも上げない根管治療(歯の根っこの治療)、アメリカでは大臼歯の治療費2100ドル、ヨーロッパ(西欧)で5万円くらいである。ちなみに日本は1万円以下。
1000ドルで痛みを取るのは、価格が安いから。
「歯がしくしく傷む」状態は根管治療が必要な状態。さもなくば抜歯。
日本は抜歯は3000円以下。ヨーロッパ、アメリカでは2万円以上するもの。
倍の6000円したってバチはあたらない。日本でもド素人の医者が歯を抜くと6000円以上になる。
歯医者の保険点数倍にしてもおかしくない根拠は国内に照らしても明らか。

09. 2012年3月13日 07:31:06 : rfwUA0KiU2
莫迦と鋏は使いよう、群がる金魚の糞の雇用形態なんてどうでも良いって事(笑

10. 2012年3月13日 16:59:18 : XlWA7UxZEo
楽に所にいて、深刻なアメリカの現実を意図的に、無視して、嘘でも何でもてきとうにそれらしく書きまくる御用記者=Bこのいまの時代に、アメリカだろうが日本だろうがこんな気楽な調子で誤解誘導記事だなんて。不快だ。
日本国民の真の独立よりも、奴隷のおこぼれにあずかれと高い所からありがたいご忠告付きだ。

11. 2012年3月13日 21:09:44 : CQCsDxaqvU

 リーマン・ショックから約3年半。今また、アメリカの金融業界に深刻な信用危機が忍び寄っている。徐々に逼迫する信用状況を反映して、世界中の大手銀行がオーバーナイト(翌日切り)の貸出金利を上げている。翌日には返済してもらう資金の金利を顕著に上げているということは、相当危ない借り手にも貸し出しているということなのだろう。

 金融危機の時の特徴として、銀行側が「こういう安全な借り手ならいくらでも貸したい」と思うような財務体質のいい企業は借りる気が全くなく、危ない借り手ばかりが旺盛な資金需要を持っているということだ。その旺盛な資金需要は、もうどこかで既に空けてしまった大穴を何とか埋めるための必死の金策なのかもしれない。

 今後、アメリカ・ヨーロッパ・新興諸国の金融市場がどこから先に破綻していくのかは、あまりにも不確定要因が多く、分からないとしか言いようがない。だが、一つだけ断言できることがある。それは、国境を越えて広がる貸し手・借り手のネットワークの中で、どこかで起きた危機が他の地域には何の影響も及ぼさないということはあり得ない。これは確かだ。

 もう一つ、確かなことがある。それは、アメリカの個人家計が極端に疲弊していて、金融危機を無事乗り切れる世帯が非常に少ないということだ。

 「もし今、1000ドルが必要になったら、どうやってそのカネを作るか」というアンケート調査に対して、「貯金を下ろす」と答えたのはたった36%だけで、他の64%の回答者は何らかの形で借りるか、資産を処分する必要があると答えるほどアメリカの個人世帯の経済状態は逼迫しているのだ。

 貯蓄を下ろせる「幸運な」36%が首位を占めているわけだが、その他では以下の通りの回答率となっていた。「友人や家族から借りる」と「他の支払いを伸ばす」が12%ずつの同率2位だ。単独4位に入ったのが「資産を売るか質入れする」の11%。「新しくローンを起こす」と「クレジットカードでキャッシュを引き出す」が同率5位の9%だった。

 これが世界最大で、最も裕福とは言えないまでも、有数の裕福さを誇る国の家計状況かと思うと、情けなくなる。だが、アメリカの経済格差がどこまでひどくなっているかを直視すれば、この調査結果もまた順当な回答だ。2009年時点でアメリカの五分位別の所得シェアをチェックしてみよう。五分位というのは、例えば今回の例なら所得順位で人口全体を20%ずつの5グループに分けた時の、その5つのグループのことだ。

 最上位20%が全所得の50%、上から2番目の20%が23%、真ん中の20%が15%、下から2番目の20%が9%、最下位20%はわずか3%となっている。一番下の20%に属する世帯の平均年収は、一番上の20%に属する世帯の平均年収のたった6%に過ぎないのだ。

 そして、所得より遥かに格差が大きく表れる資産所有の分布を見ると、世帯間の資産格差は凄まじい事になっている。事業資産の93%、金融証券の99%、信託資産の80%、株式・投資信託の81%、自宅以外の不動産の77%が、最上位10%の世帯に集中していたのだ。

 ここまで資産が少数の大金持ちの所に偏在している経済が、今後確実にやって来る金融恐慌や長期不況を平穏無事に乗り切る事ができるのだろうか。

 とにかく、現在のアメリカ株式市場には、ある日突然下げ始めたら、商いを伴って大暴落をしそうな金融銘柄が目白押しだ。そして、製造業の空洞化が進んでいるアメリカ経済には、全企業収益の30〜35%をコンスタントに稼ぎ出している金融業界がこけた時、これに代わって経済全体をリードするような業種はない。その金融業界からバタバタと破綻企業が続出するような景況は、もうすぐそこまで来ている。

 アメリカ経済の現状は、回復の目途が立たないどころか、日を追って悪くなる一方だ。これもまた、アメリカやヨーロッパは素晴らしい国々で何もかもうまくいっているという大嘘を守るために、日本のマスコミがほとんど報道しない事実だ。だが、アメリカ経済の悪化のスピードは凄まじいものになっている。

 例えば、たった2年前の2010年には、まだ失業者の4人に3人は何らかの失業手当の給付を受けていた。それが、1年後の2011年には、2人に1人よりちょっと下の48%まで、失業手当受給率が下がってしまった。くどいようだが、わずか1年のうちに起きた変化である。

 「アメリカは、リーマンショックの際にも金融・財政政策の対応が速かったので、処理もその後の回復も順調に進んでいる」などというたわごとは、一体どこから出てくるのだろうか。失業者の苦しみとか、まだ何とか自分の職を守っている人たちの不安など、全く気にもしていない連中だからこそ言えるセリフなのだろう。

 そして、普通の庶民の生活が苦しくなる一方なのだから、当然住宅市場の泥沼化も収まらない。最近になってようやく2010年に行われた国勢調査の結果が公開され始めている。その成果の一つは、ローン返済中の持ち家のうちで、ローン残高よりもその家の資産価値が低くなっている、いわゆる「水没物件」数の正確なデータが出たとことだろう。水没物件とは、すぐさま家を売り払っても、その代金でローンを完済することができない物件のことだ。

 ローン返済中の持ち家が全米で5033万9500戸あるのに対して、そのうち約28%に当たる1430万戸前後が水没物件だという。しかも、住宅ローン制度自体が、いつの間にか金融機関に有利で、借り手に不利に改悪されている。従来、アメリカの金融業界では、ローンはノンリコース(非遡及型)ということになっていた。

 担保権を設定した物件を貸し手に渡せば、借り手は後腐れなく出ていくことができたということだ。もしその物件を処分した金額が物件の残高に満たなくても、それは担保価値を査定した貸し手の責任だという理論だ。

 この住宅ローンは原則ノンリコースという点だけは、担保権を設定した物件を引き渡しても、その売却額がローン残高に満たなければ、差額を払えと追いかけ回す日本のリコース(遡及型)ローンよりいいと思っていた。ところが、最近のアメリカの民事訴訟では、物件の売却額とローン残高の差額が大きいと、金融機関に元借り手に対する差額の請求権を認めているのだ。まさに泣きっ面に蜂だ。


12. 2012年3月13日 21:27:28 : bca9gOgfDE
>>11
ノンリコース型ローンは結局、「不良債権」を銀行が全部かぶるシステム。実際は
「金融工学」とやらを駆使して世界中にばらまいたわけだが、銀行も無傷ではない。

それでアメリカの銀行がやばくなれば税金を投入。その原資は日本が「為替介入」で
買ったドルで買った米国債。

アメリカの庶民が借金を踏み倒した分、日本の庶民が税金で払わされている。
たまったものじゃない。


13. 2012年3月13日 23:18:25 : Pj82T22SRI
>>01

ちゃんと読めよ

ERに駆け込むのは低所得者向け医療があるからだ

そもそも米国は医療大国だから、日本と比較するのが間違っている
あくまでもメディケイドが使える他の医療分野との比較の話


http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0311-5a4.html


14. 2012年3月13日 23:21:30 : Pj82T22SRI

いずれにせよ日米欧、先進国は、今後、医療など社会保障が崩壊していくのは避けられないだろうな


http://www.y-okabe.org/medical/post_144.html


15. 2012年3月14日 07:26:00 : pxVO9PovkA

 今の外国為替市場について、一体円が強いのだろうか、ドルが弱いのだろうか、どちらなのだろうという論争が起きている。結論は、円は固有の理由で世界中のありとあらゆる通貨に対して高くなって当然だし、米ドルは米ドルで固有の理由からこれからも低落傾向が続くということになる。

 日本の「知識」人は、大手メディアにすっかり洗脳されていて、自国通貨が高くなるのは悪いことで、安くなるのがいいことだと思い込んでいる。だが、円高・ドル安が続くというのは、日本国民にとって素晴らしいことだし、アメリカ国民には悲惨なことなのだ。

 なぜ、ドルは長期にわたって安くなり続けるし、円は長期にわたって高くなりすぎるのかを順を追って説明しよう。

 1970年代半ばまでは基本的に黒字基調でたまには赤字になることもあった程度だったアメリカの経常収支は、1970年代末の第二次オイルショック以来慢性的な赤字体質に変わってしまった。そして赤字額はどんどん増え続けた。クルマ・石油文明にどっぷり浸りきっているアメリカが原油の輸入代をケチるわけにもいかないし、製造業の基盤もどんどんやせ細っていったので、初期には日本との、そして最近では中国との貿易収支も万年大赤字だ。

 アメリカの貿易赤字を見ると、だいたいの年で約半分は原油輸入関連で、残りの半分は対中国の赤字となっている。つまり、アメリカが自国の石油消費量を自給自足の範囲内に収めることができて、この世に中国という国が存在しなかったら、アメリカは貿易収支をトントンに持ち込めるはずなのだ。

 だが、現実には アメリカは、クルマ・石油文明と手を切る気もないし、中国に対する日用品の全面依存を克服する意志も方策も持ち合わせていない。とすれば、経常赤字が永続するものとして国家的な戦略を立てなければならない。

 第二次世界大戦後ずっとお山の大将だったアメリカの慢心を叩きのめしたのは、石油の値上がりだった。第一次オイルショック後、7〜8年という長い期間にわたってOPEC(石油輸出国機構)諸国から抜け駆けで安売りに走る国が出なかったことも驚きだった。だが、それ以上に、1979年のイラン・イスラム原理主義革命に絡む第二次オイルショックで、原油価格がさらに引き上げられたことが深刻な打撃だった。

 第二次オイルショック以降、さらに引き上げられた価格が国際原油市場で定着した。この事実は、アメリカの指導者たちに世界戦略についての根本的な見直しを迫った。

 彼らは、バーレル当たり2ドルとか3ドルとかの価格で原油を輸入でき、文字通り湯水のようにガソリンを使いまくりながら繁栄を謳歌することは二度とできないだろうと覚悟を決めた。これが、1979年のイスラム原理主義=原油価格革命へのアメリカにおける対抗の原動力だった。アメリカの指導者たちが直面した課題の中で特に重要だったのは、以下の二点だ。

 1.アメリカの貿易収支を、収支トントンから黒字の範囲内に保つことはできない。遅かれ早かれ、アメリカ社会を平穏無事に運営していくために不可欠の大量の原油輸入が、アメリカを慢性的な貿易赤字国にする。

 2.アメリカ国民全体が毎年着実に実質所得を伸ばしていくことは、不可能に近い。知的エリートが、1960年代までの豊かな生活を維持しようとしたら、中流以下に属する国民にはしわ寄せを引き受けてもらわなければならない。

 この二つの課題をきれいに解決する妙手が、国際基軸通貨としての米ドルが持つユニークな地位をフルに活用した慢性インフレだった。まず、貿易黒字国との関係で言えば、黒字国が貯めこんだ米ドル札や米国債は、インフレによって実質価値がどんどん目減りする。アメリカ国民にとっては、ドル価値の目減り分だけ、外国からモノやサービスをタダでいただいたことになる。つまり、毎年借金で自分の稼ぎよりいい暮らしを続けながら、借金の元本を返さなければならない頃には、その元本の実質価値は大きく低下しているわけだ。

 そして、アメリカ国内でも慢性的なインフレは、貸し手である個人世帯から借り手である国・地方自治体、金融機関、一流企業への所得移転を実現した。この所得移転で、一般大衆の実質所得はほとんど伸びないが、所得順位で上から10%とか、5%までとかの人間の実質所得は大幅に伸びていった。つまり、アメリカは対外的には合法的な借金踏み倒し国家となり、対内的には貧富の格差がどんどん拡大する社会に変質していったわけである。

 アメリカの知的エリートたちは、1980年代初めには、慢性的な経常赤字を改善する見込みはないと腹をくくっていたようだ。とすれば、どんどんカネが海外に流出するのを防ぐためにはどうするか。海外から投資や融資を呼び込むことによって、資本収支の大幅黒字を維持しなければならないということになる。

 資本収支の黒字というのは、我々が日常用語で使う「黒字」という言葉の意味とは、ほとんど正反対なのでご注意いただきたい。海外から投資や融資としてカネが入ってくれば黒字、海外に投資や融資としてカネが出ていけば赤字なのだ。融資を受け入れるのはもろに借金をすることだし、投資は借金ではないが似たようなものだ。投資主が満足してくれる配当や株価上昇という見返りを出し続けなければ、返却しなければならない。

 こういうカネを毎年毎年膨大な金額で呼び込み続けなければ立ち行かなくなってしまったのが、1980年代以降のアメリカ経済なのだ。もちろん、アメリカ連邦政府が発行している米国財務省債だけではなく、州債とか地方自体債を買ってもらうためのセールスも盛大にやる必要がある。だが、こうした公的機関の借金だけでは絶対に足りない。

 公的機関の借金である国債、州債、地方自体債の返済原資は将来の税収以外にない。その残高があまりに巨額になり過ぎると、返済能力に疑問が生じてとんでもない高金利を約束しないと買ってもらえなくなる。

 そこで、アメリカとしては、国が高収益の大企業を応援して、こうした企業の株や社債も世界中の投資家に買ってもらわなければならないということになる。企業が投資主に払う配当や、社債保有者に払う金利の原資は利益だ。だから、金融市場の評価で高収益を持続できる。それどころかその高収益がさらに成長すると見込まれた企業なら、かなり大きな資金を呼び込めるからだ。

 普通、競争の激しい先進国の基幹産業で、大企業が万年高収益などということはあり得ない。だが、そういう企業がゴロゴロあるのが、アメリカという「市場経済の母国」の不思議なところだ。アメリカでは、寡占市場の中の1社だけが突出して大きなシェアを持って、価格支配力があるから万年高収益という構造を維持できる仕組みになっている。こういう突出したシェアを持つ寡占企業のことを「ガリバー」と言うが、アメリカの株式市場はそれぞれの産業分野でガリバーにのし上がった企業の品評会のようなものだ。

 アメリカでは国策として、高収益の大企業が投融資を吸収し続ける経済モデルを追及している。だから、例えば独占禁止法というような法律も、現在では本来の趣旨とは正反対の、非常に大きなマーケットシェアを持ったガリバーの存続を容認し、奨励するような運用をしている。アメリカの巨大企業が、市場シェアが大きすぎるという理由で解体・分割されるということは、1983年のAT&Tという国内電話通信をほぼ独占していた企業の分割を最後に、全くなくなってしまった。

 アメリカでは、マイクロソフトや、インテルや、アップルや、グーグルや、アマゾンや、イーベイといったそれぞれの分野で6割とか7割、時にはそれ以上のシェアを持った大企業が、毎年のように高収益を出し続けて、世界中からカネを掻き集めるというパターンが定着した。ただ、国も企業もとにかく世界中から借金を掻き集めることを使命として運営されている経済には、致命的な弱点がある。

 それは経済を慢性的なインフレ状態に保ちたいという誘惑が強すぎることだ。インフレは一般市民にとって過酷な経済状態である。なぜ借金依存体質はインフレを志向せざるを得ないのか。

 もし、貨幣価値が全然変わらなければ、何年、何十年経とうと、借りた時1万ドルだった借金は返す時にも1万ドルの価値がある。ところが、例えば、年率せいぜい2〜3%といった「穏やかな」インフレでも、10年続くと返済時の実質負担はけっこう大きく減少するのだ。年率2%のインフレなら、約18%目減りするし、3%のインフレなら、何と26%も減少してしまう。

 これは、借り手としては魅力的だ。インフレ率が高ければ高いほど、また借入期間が長ければ長いほど、インフレによって借金の実質負担は大幅に軽減される。そこで、アメリカの指導者たちが実施したのが、慢性的に出てくる経常赤字の実質負担を軽減するために、慢性的なインフレを維持するという経済政策だった。そうすれば、アメリカにとっての経常赤字、諸外国にとっての経常黒字という形で、諸外国が米ドルという形で持っているアメリカのモノやサービスに対する請求権の価値も、歳月が経つにつれて目減りする。

 こうして、経常赤字を黒字あるいはせめて収支トントンに持ち込む努力を完全に放棄してしまってからのアメリカでは、国は国債の、そして企業は自社債務の返済時の実質負担を軽減するために、慢性インフレを大歓迎する風潮が蔓延した。

 もし、アメリカが普通の経済大国であれば、この政策はあまり長続きしなかっただろう。アメリカに対する経常黒字の出ている諸外国は、必ずしもその黒字を米ドルで持つとは限らない。アメリカに自国通貨での支払いを要求するかもしれないし、第三国の通貨での支払いを要求するかもしれない。

 そういう取引が多くなれば、インフレによる借金の実質負担軽減というアメリカの目論見は、うまくいかなくなる。外国為替市場で他国の通貨に対する米ドルの交換レートがどんどん下がってしまう。結局、アメリカはインフレ分だけ安くなった米ドルを他国通貨に替えてから決済しようとすれば、為替レートの下がった分だけドルベースでは高い支払いをしなければならず、結局ほとんど得はなくなってしまうからだ。

 ここで、アメリカは普通の経済大国ではなく、自国通貨米ドルが世界の基軸通貨となっている覇権国家だという利点が生きてくる。米ドルが基軸通貨なので、アメリカに対する債権を持っている諸国は、その債権の大部分を米ドル建て資産として持っている。だからこそ、アメリカ政府は自国内のインフレ政策で、政府として国債保有者に対して負っている債務を軽減できるだけではなく、アメリカ経済全体が負っている体外債務の実質負担軽減も果たすことができる。一石二鳥というわけだ。

 ただ、これは普通であれば大きく下落するであろう米ドルのその他通貨に対する為替レートが、穏やかな下落にとどまるというだけのことだ。下落するはずの為替レートが、逆に上昇するという話ではない。

 しかし、たとえその程度のことでも、やっぱりこれはうまくいってる限り、絶対に自発的に返上するはずがないような基軸通貨国の旨味なのだ。例えば、インフレ率だけの比較で言えば5%下がるはずだった米ドルのその他通貨に対する為替レートの下落率が、3%にとどまったとしよう。そうすると、その差である2%分は、アメリカが諸外国に負っている債務の実質負担を軽減できていることになる。

 普通の経済環境なら、物価水準を安定させるための貨幣供給より多めの貨幣供給を維持していれば、国内経済をインフレに保つことはできる。そういう、ほとんど苦労のない作業を金融政策でやっている限り、モノやサービスの生産現場で何の努力をしなくても、国民経済として諸外国に対する債務の実質負担が着実に、かつ自動的に目減りしていくわけだ。これは、一度始めたら止められない方針だろう。

 結局のところ、この万年ドル安・インフレ政策もまた、ギリシャがユーロ圏内のギリシャ国債所有者に対してやってのけたのと同じような借金踏み倒し政策なのだ。ただし、非常に大きく違っているところもある。

 今ユーロ圏で起きている連鎖的な国債の債務不履行危機は、返すと約束したカネが返せないと居直ることだ。立派な犯罪であり、こんなことを4〜5年も許していれば、契約の概念とか社会全体の信頼関係がボロボロに崩れ落ちてしまう。どう考えても長続きするはずのない、脱法行為としての借金踏み倒しだ。

 2011年12月中旬に朝日新聞との単独インタビューに応じた世界銀行のロバート・ゼーリック総裁ーもちろんアメリカ人だーは、「欧州内で財政的に余裕のある国(具体的にはドイツ)がもっとカネを出すべきだ」という持論を繰り返した。財政基盤の脆弱な国に、もっともっと大きく借りてうまく踏み倒せれば、丸儲けというスタンスでドイツのすねかじりをすることを奨励するような内容の発言だ。なぜ、アメリカの財政界の首脳は、この手の愚劣な主張を押し通そうとするのだろうか。

 結局のところ、アメリカとギリシャやイタリアやスペインは、同じ穴のムジナだからだ。今のところ、アメリカの借金踏み倒しには脱法的な要素はない。アメリカの借り手側は、あくまでも返済期限が来たら米ドルでいくらという額面通りの返済をすると約束し、その通りの金額を返済してきている。ただ、返済期日までに米ドルのモノやサービスに対する購買力がどれほど落ちていようと、あるいは諸外国の通貨に対する為替レートがどれほど下がっていようと、それは借り手の関知するところではない・・・というわけだ。

 この合法的な借金踏み倒し政策は、基軸通貨としての米ドルの地位に不安や疑惑が広まらない限り、いつまででも持続できる。だが、あっちこっちで続々借金の大きすぎる国が破綻し始めたら、アメリカだって基本構造は同じだから、いつ破綻するか分からないという不信や疑惑が芽生える。そうなったら、アメリカにカネを貸している国は、今まで通りに貸したカネを米ドルのまま持っていることをためらうようになる。

 アメリカという国の資金が回っているのは、アメリカにカネを貸している国が、米国債、アメリカ企業の株や社債、アメリカへの直接投資のような形で、つまりは米ドルのままで貸し続けているからこそなのだ。このカネが一斉に引いてしまったら、アメリカの国際収支はもたない。だからこそ、アメリカの政財界首脳は、過重借金国家はいつか必ず破綻するという当たり前のことが、当り前に起きることを防ごうとする。だが、もちろん自国に救済資金はないから、ヨーロッパではドイツ、全世界では日本や中国に頼って救済をしてもらおうとという虫のいい主張を繰り返すのだ。

 普通の国で慢性インフレ・自国通貨安という政策を追求すると、自国民が海外からモノやサービスを買う場合にあらゆるものが割高になるので、国民大衆の生活水準が下がるという大問題がある。だから、この政策を延々と持続することはできないものだ。アメリカが、平然とこの政策を30年以上にわたって持続できたことについては、二つ大きな要因があるだろう。

 一つは、最近十数年間にわたる最大の貿易相手国である中国が、人民元を実質上米ドルにペッグするという愚劣な方策を取っていたことだ。ペッグというのは、その通貨との為替レートを一定に保つように操作することだ。例えば、中国は米ドルの諸外国通貨に対する為替レートが下がれば、人民元も米ドルと一緒に下げ、上がれば一緒に上がるという方向に為替を操作しているのだ。

 だから、中国からの輸入に限っては、米ドルがどんなに下がっても、購買力が低下しなかった。つまり、ほとんどが中国製品に頼っているアメリカの大衆市場(マス・マーケット)では、最低品質の日用品輸入に限り、ドル安政策が大衆の生活水準に及ぼす影響は無視しうるほど小さかった。

 もう一つは、アメリカの知的エリートたちは、庶民の生活がどんなに困窮しようと全然気にかけていないのではないかということだ。基本的にアメリカのエリートは、庶民の生活苦など何とも思っていない可能性が高い。だからこそ、自国通貨安=国民全体の生活水準低下という政策を延々30年以上にわたって持続できたのだ。

 アメリカの知的エリートたち自国通貨安を追求する最大の理由は、一握りの多国籍巨大企業に高収益を上げ続けてもらわなければ、アメリカ経済全体が持続できないという危機感にある。多国籍企業というくらいだから、世界中で商売をしている。その収益を保つためには、自国通貨は安いほうがいい。

 2007年までは一見好調に見えていたアメリカ経済で、一体何が起きていたのだろうか。まさに、企業が儲かれば儲かるほど、勤労所得はやせ細るという構図だった。

 アメリカ経済の怖さは、知的エリートの能力が高いから、自国経済の存立条件を非常にはっきり意識していて、そこから割り出された国家目標を忠実に推進する実行力があることだ。アメリカ経済全体として慢性経常赤字を改善する努力を放棄してからは、毎年モノやサービスを外国から買うために支払う金額より、外国にモノやサービスを売って稼ぐ金額のほうが少ない状態が続いている。そのまま放置しておけば、いつかは国中のカネが外国に持っていかれてしまう。

 そうさせないためには、資本という名前の借金を海外から呼び込み続けなければならない。具体的には、連邦政府財務省の発行する米国債を始め、州債、地方自体債、企業の発行する社債を買ってもらうか、アメリカ企業の株を買ってもらうか、直接アメリカで企業経営をしてもらうかといった形で、資本を呼び込むしかない。

 海外から資本を呼び込むためには、どうするか。海外投資家にとって魅力的な投資対象がなければならない。アメリカ政府としては、巨大企業の持続的な高収益によって万年高水準の株価を維持する事が国際収支の帳尻を合わせておくためには必要不可欠の国策だという方針が導き出されるわけだ。

 そのためには、世間一般は不況でも金融市場は万年好況でなければならないし、万年高収益の大企業がゾロゾロ株式市場に名を連ねていなければならない。その結果が、勤労所得は横ばいからマイナス圏で推移しているのに、史上最高益更新企業が続出し、金融市場の規模は拡大し続けているという、現代アメリカ経済のグロテスクな姿だったわけだ。

 まず、アメリカ経済の表面的な好調ぶりから見ていく。1990年代までずっと年間5000億〜6000億ドルどまりだったアメリカ企業部門の税引き後利益額が、2002年以降急上昇に転じた。リーマン・ショック前のピークでも1兆4000億ドル、大暴落後の反騰局面では、さらに1兆5000億ドルにも達しようかという勢いを示している。

 この急上昇が、国民経済全体として高成長が続き、勤労所得も伸びている中での急上昇ならとやかく文句を言う筋合いではない。だが、アメリカの企業利益はGDP上昇率をかるかに上回るペースで増加していた。企業利益がGDPに占める比率の推移を見ると、20世紀後半を通じてめったに二桁に届かなかった企業利益額の対GDPシェアが、2002年ごろから急騰し、現在では12.5%を上回る高水準に達している。一体どこにしわ寄せが来ているのだろうか。もちろん、勤労所得だ。

 1960年代後半から1980年代始めにかけては60%近かったアメリカの勤労所得のGDPに対するシェアは、2009年には54%台まで落ち込んでいる。1999年代末から2000年代初めにかけていったん59%台を回復してから7〜8年のうちに、約1割勤労所得のGDPに対するシェアが下がってしまったのだ。これでは、そうとう深刻に消費が冷え込んでしまったのも当然だろう。

 それではなぜ、アメリカの企業社会全体として勤労所得に食い込むほど高い利益額の伸びを追い求めたのだろうか。最大の理由は、海外から安定した資本収支の黒字を呼び込むことだった。そして、そのためには金融業の度はずれた肥大化を許さざるを得なかった。

 投資や融資を募るには、「優秀」なセールスマンの存在は欠かせない。毎年莫大な金額の資本収支の黒字を上げていかなければならないアメリカの国民経済にとって、金融業界は給与水準がどんなに高くても、手放すことができない優秀なセールスマンなのだ。

 金融機関が全産業に占めるシェアは、生産高(付加価値額)ベースで1984年の8.8%から2011年の16.3%へと2倍をほんの少し下回るペースで伸びていた。ところが、企業利益ベースで見ると、1984年の11.8%から2011年の32.3%へと3倍弱の伸びを示している。

 雇用者ベースで言えば、金融業の雇用者数はほぼ一貫して全就業人口の5〜6%に過ぎない。それだけに、この生産高(付加価値額)で16.3%、利益額で32.3%というシェアはとてつもなく大きな数字だ。金融業の利益額がアメリカのGDPに占めるシェアは、借金経済化の進展と二人三脚で上昇してきた。

 そして、金融業の利益は2008年第四・四半期のような突発的な金融危機の直後にはマイナスになることもあるが、普通の景況の年では安定して年間2500億ドルから4500億ドルの範囲内で推移していた。その他産業の利益額は、低い時には約3000億ドルから高い時には9000億ドルと、上下で約3倍の差がある。

 これに比べると、金融機関の利益額は振幅が非常に小さい。この「安定性」が何を意味するかというと、リーマン・ショックのような激甚災害でも起きない限り、金融業界は景況がどんなに悪くても年率換算すると2500億ドル前後、四半期ごとなら600億ドル強の利益額を着実に確保し続けるということだ。

 リーマン・ショックをきっかけとして始まった世界金融恐慌が2009年春に底打ちしてからの回復過程にも、それがはっきり表れている。1948年以来の超長期にわたるアメリカの企業利益推移を見れば、1980年代以降のアメリカ経済がいかに異様なものに変わり果てていたかが分かる。

 1980年代以降のアメリカ経済は、景気がよかろうと悪かろうとお構いなしでとにかく企業利益額だけはどんどん伸び続ける社会になっていた。そして、さすがにリーマン・ショックをピークとする1年半から2年間だけは企業利益全体が落ち込んだが、2009年秋以降はまたぞろ増加基調に戻っている。特に金融業界は、2009年第三・四半期の段階で、既に史上最高益を突破しようかという勢いを示していた。

 アメリカの金融業界だけが肥大化する経済の異常さは、ニューヨーク株式取引所とナスダックの2市場に上場している全銘柄の時価総額の推移からも読み取ることができる。1924年から2011年までという非常に長い期間の中で、1996年10月までの862ヵ月間(72年10ヵ月間)では、この2市場に上場している全銘柄の時価総額は一度も名目ベースのGDPを上回ったことがなかった。

 ところが、1996年10月以降の178ヵ月間では、正反対になっている。そのうち15ヵ月間は時価総額がGDPを下回ったが、残る163ヵ月間(13年7か月間)ではGDPを上回る時価総額を維持していた。

 1924年から2011年までの88年間の通算では、両市場上場銘柄の時価総額のGDPに対する比率は平均72.79%だった。だが、1996年10月以降の2011年7月までの178ヵ月間の平均値では実に126.35%と、GDPを約26%も上回っている。

 アメリカという世界経済の覇権を握っている国でこうい異常事態が起きると、その影響は世界中に広まる。世界全体の金融資産総額も、アメリカ国内での金融業の肥大化とほぼ歩調を合わせて進んでいた。

 世界全体の金融業の肥大化を数字で検証してみよう。まず、1990年から2010年の20年間で、世界中の金融資産・負債総額は「たった」54兆ドルから約4倍の212兆ドルに膨れ上がっていた。

 特に伸び率の高かった分野を拾っていくと、株式市場の時価総額が11兆ドルから54兆ドルと5倍近い増加を示していた。リーマン・ショック前後に国際金融市場をきりきり舞いさせた証券化ローンの残高は、1990年の2兆ドルから2010年の15兆ドルへと7.5倍も伸びていた。金融機関債の残高も8兆ドルから42兆ドルへと5.25倍の激増だった。

 興味深いのは、2009年〜2011年という「バブル崩壊後」の金融業界でさえも、資産・負債増額が減少していたのは、証券化ローンがマイナス5.6%、金融機関債がマイナス3.3%と、この二分野だけだったことだ。そして、金融資産・負債総額全体の複利年間伸び率は1990年〜2009年の7.2%から2009年〜20011年の5.6%へと減速しているが、直近の2年間でマイナス成長だった二分野を除くと、他の四分野は全て成長が加速していることだ。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧