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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0FXKZ1A74E901.html
3月6日(ブルームバーグ):効率の良さとしっかりとした社会基盤で知られる国だけに、きっと再建の世界基準を示してくれるに違いない―。そんな期待が高かった。巨大地震と津波が襲ってから1年が経過した。しかし、日本の再建はほとんど手に着いていないのが実情だ。
昨年3月11日の東日本大震災発生直後にエコノミストらは、1995年の阪神大震災の時の状況が再現され、被災した東北地方には建設部隊が集まって経済は力強く反発すると予想していた。さらに、多くの人々は、2万人もの死者が出て、町や村がかき消され、チェルノブイリ以降最悪の原子力発電所事故を引き起こしたこの大災害が、東京の政治的まひ状況を打破し、大きな変革を引き起こすきっかけになるのではないかと期待していたのである。
日本のバブル崩壊は過去の戦略―公共事業のための巨額借り入れ、超低金利、終身雇用、微々たる移民受け入れ、一部巨大企業の輸出に肩入れした硬直的な産業構造、何でも言いなりの銀行、政治と企業の親密な関係―などの見直しを突き付けた。それから20年以上を日本の政治家らは無駄に過ごしてきた。また、東京電力と官僚の排他的関係は安全報告に小細工を施すことを可能にし、危険性を過小評価してきた。これが日本の原発危機の舞台を用意し、その危機的状況は今なお次々に明らかにされている。放射能は今も福島第一原子力発電所から漏れ続けており、日本の機能不全を象徴する事態となっている。
日本が第二次大戦の廃墟から立ち直ったように、日本がより生産的な道筋に戻るには巨大な危機に直面するほかないと長く言われてきた。しかしながら、約20兆円の復興計画は、野田佳彦首相がそのグランドビジョンを明示することができず、また官僚たちが重大な決定を下すことに二の足を踏み、さらにはデフレ的循環が過去一年間に悪化し、企業と消費者がともに意気消沈しているという現実が、計画実行に向けての障害となっている。日本が新たに設置を決めた復興庁が業務を開始したのは津波から11カ月たった今年2月10日のことだった。
期待に応えていない政府
「彼らは見事にがれきを片付け、それを防水シートの下に隠してくれた。しかし、それ以外に進展したことはほとんどない」と、テンプル大学東京校のジェフ・キングストン教授(アジア研究学)は指摘する。「その原因の一つは政治がまひしていることであり、官僚が何を再建しどのように統合していくのか、そしてがれき処理をどうするのかについて決定を下さないことも原因になっている」と話す。
そして、最も注目を集めている残骸が日本経済だ。日本の公的債務は世界最大で、国内総生産(GDP)5.5兆ドルの2倍以上に達している。日本のGDPは過去4四半期のうち3四半期で減少しており、2011年の経常収支黒字は過去15年間で最低水準に落ち込んだ。1月には貿易収支が1兆4800億円の赤字と、戦後最大の赤字を記録した。円高はソニーやホンダなどの輸出企業に打撃を与え、産業の空洞化が一段と進んでいる。「政府は期待に応えていないし、日本国民はそのことを分かっている」と、英スタンダードチャータード銀行のチーフエコノミスト、ジェラード・ライオンズ氏(ロンドン在勤)は語る。
政府に対する不信感が高まるなかで、野田首相の政治生命も長くは持たないようだ。野田氏(54)は昨年9月に人気の波に乗って首相に就任した。経済を再建させるだけでなく新たに作り変えるに当たって時宜を得た指導者として選ばれた。だが、いま有権者たちは野田氏について、首相として、2006年後半以降に次々交代した5人の首相たちをしのぐ人物ではないと信じ始めている。野田首相の支持率は現在30%と、前任者たちが議員らから職を去るよう求められた水準に低下している。
野田首相がいてもいなくても、東京電力の国営化および現経営陣の追放は決定されるべきだ。彼らの怠慢が、日本が今の状況に陥るのを助長したのだ。同じことが、オリンパスで見苦しい会計スキャンダルを生んだ企業文化に対しても起きている。
最大の間違い
日本の首相は東北のどの町や村を復旧し、どの町はそうしないのかについて決定する仕組みを作らなくてはならない。日本の多くの地方では長年にわたり人口が減少し産業力が失われてきている。
地方分権は中央政府の規制改革を必要とするが、それは復興プロセスを支援することになろう。日本は長年にわたりトップダウン型の経済だった。東京の官僚たちが采配を振るい、税収を分配。地方の指導者たちはそれに応じて行動する、という形だ。東京で復興計画を策定している者たちは非効率的な仕組みから抜け出せず、また被災地から遠く離れて現地の複雑な生活事情を掌握できずにいる。日本にとって最大の間違いは2011年3月10日に存在していたものを再現することだろう。日本にとって過去1年間は失われた1年となったものの、まだ物事をリセットする千載一遇の機会は失ってはいない。日本がそれを無駄にすれば恥ずべきことだ。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:First Disaster, Then Dysfunction(抜粋)
記事に関するエディターへの問い合わせ先:東京 大久保 義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net
更新日時: 2012/03/06 13:30 JST
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