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吉田 恒
8月87円、2014年100円、2015年120円?
逆バブル破裂で史上最長のドル高・円安も
2012年03月06日(火)東京時間 12:45
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足元で進行している米ドル高・円安が、一時的ではない可能性が高まってきました。過去の例を参考にすると、米ドルはもう79円を大きく割ることなく、今年8月あたりに87円前後を目指す見通しとなります。
そして、米ドル高・円安の「平均シナリオ」ならば、2014年には100〜110円まで上昇し、さらに、米国の金利に「予想できないこと」が起これば、過去最長の円安となるかもしれないのです。
■米ドル高・円安は「一時的」か? 基調転換なのか?
米ドル/円は先週、82円近くまで上昇しました。
それでも、この米ドル高は一時的で、再び昨年10月に記録した75円台前半の歴史的安値更新をトライする可能性は消えていないといった慎重な見方も少なからずあるようですが、果たしてどうでしょうか?
最近のこのコラムでも何度か申し上げてきましたが、82円近くまでの続伸の動きは、足元で79.00円レベルにある52週移動平均線を大きく越えたことになります(「ドル/円は基調転換か、ダマシかを見極める最終段階に入った。『週末終値79円』がカギ」など参照)。
「資料1」をご覧ください。私が調べたところでは、52週移動平均線を一定期間、かつ、大きくブレイクした動きが一時的だったことは、これまでにありませんでした。
資料1
ちなみに、この場合の「一定期間」とは1ヵ月程度、「大きく」とは4%以上です。先週まで、米ドルは3週連続で52週移動平均線を上回り、そして、先週の終値は52週移動平均線を4%近く上回るものでした。
その意味では、かなり「一定期間」、「大きく」、52週移動平均線よりも米ドル高・円安になったのです。
■今年8月に87円に向かう米ドル高・円安が始まっている!?
52週移動平均線を「一定期間」、「大きく」ブレイクしたにもかかわらず、米ドル高・円安が一時的であったということになるなら、それはこれまでになかったことが起こるという意味になります。
そうではなくて、これまで起こらなかったことは、やはり今回も起こらないとなるなら、この米ドル高は一時的ではないということになります。
つまり、当面のところ、52週移動平均線を米ドルは下回らないということになり、すなわち、79円を大きく割り込むことはないという見通しになります。
資料2
また、過去の例を参考にすると、52週移動平均線をブレイクした直後の米ドルは、一方向へ大きく動くという傾向がありました。
「資料2」をご覧ください。2000年と2005年のケースを見ると、米ドル高トレンドの中で52週移動平均線を上抜けた場合、その後の半年程度で、米ドルは10%前後も上昇していました。
これからの展開を考える上で、過去の似たようなケースを参考にするのは基本でしょう。
そうであれば、2月に79.00円レベルにあった52週移動平均線を上抜け、それから半年で10%程度上昇するならば、8月に87円に向かう米ドル高・円安が始まっていると考えることができます。
そして、誤差を考慮するなら、今年の夏から秋にかけて85〜90円を目指すというのが基本シナリオだと思います。
■2014年までに100〜110円を目指すというシナリオも!
さて、そのような動きになるとしても、それは米ドル高・円安の始まりに過ぎないと思います。
最短でも、この米ドル高・円安は来年前半まで続き、その中で90円を超えることになるでしょう。また、これはあくまでも「最短シナリオ」であり、「普通」ならば、米ドル高・円安は2014年まで続いて、100〜110円を目指すことになると見ています。
このように考える理由について、下に示した「資料3」をご覧ください。
資料3
(出所:BloombergよりMarket Editors作成)
過去20年あまりを調べたところ、対円での米ドル高は、最短でも1年半程度続いており、その中で2割以上も上昇していたのです。平均的には、米ドル高は3年前後続き、3割程度も上昇していたのです。
もちろん、為替相場というものは、必ずしも「平均シナリオ」どおりに展開するわけではありません。しかし、そもそも、何が「平均シナリオ」なのかがわからないと話にならないはずです。
まずは「平均シナリオ」を理解し、それを大前提とすることから先行きを予想するということが、基本中の基本だと思います。
■米金利に「予想できないこと」が起こるならば?
ここまで、私は米ドル高・円安の「基本シナリオ」についてご説明してきました。
それでは、この「基本シナリオ」が展開する中で、現在ではとても「予想できないこと」が米国の金利に起こるなら、米ドル高・円安は「基本シナリオ」を超える動きになるのではないでしょうか?
「予想できないこと」が起こるかを「予想する」というのは、言葉としてはまったく矛盾しているものだと思います。
ただ、過去において、「予想できないこと」が起こった前例は、私たちも確認することができます。
資料4
「資料4」をご覧ください。たとえば、ITバブル破裂後の米国の金融政策は、当初からはとても「予想できない」大転換に向かいました。ITバブル破裂直後に6%を超えていた「FFレート」(※)は、3年後の2003年には1%まで低下したのです。
つまり、3年間に5%もの大幅低下となったのですが、このことを事前に予想できた人は皆無に等しいでしょう。
(※編集部注:「FFレート」とはフェデラル・ファンド・レートのこと。米国の政策金利)
■「逆バブル」の破裂なら、2015年に120円の可能性も!
このように、バブル破裂のような経済局面の大転換期における金融政策には、「予想できないこと」が起こるのです。
その意味では、足元の局面が行き過ぎた楽観論である「バブル」の正反対で、行き過ぎた悲観論、すなわち「逆バブル」の破裂という局面にあるなら、金融政策において「予想できないこと」が起こることを予想する意味が出てくるでしょう(「こうなると、米ドル/円は『2014年120円』になる!『逆バブル破裂』がキーワード!!」を参照)。
足元では実質ゼロ金利となっている「FFレート」ですが、3年後に5%を超えているといった予想は、現時点ではほとんどないと思います。
しかし、今が「逆バブル」の破裂局面ならば、そのような「予想できないこと」が起こる可能性も出てくるのです。
さて、「FFレート」が5%を超えていた2007年に、米ドルは120円を超えていました。
2015年に「FFレート」が5%超といった、現時点ではとても「予想できないこと」が起こるならば、米ドル高・円安は過去20年あまりの最長記録を更新し、「史上最長の円安」が展開していることでしょう。そして、2015年に120円が実現する可能性が出てくるかもしれません。
http://zai.diamond.jp/articles/-/126792
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