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スウェーデンモデルを礼賛する愚者たち
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投稿者 MR 日時 2012 年 3 月 03 日 00:35:58: cT5Wxjlo3Xe3.
 

スウェーデンモデルを礼賛する愚者たち 

2012/02/28 (火) 12:47

 第140回で「消費税の既成事実化を図る財務省」というタイトルで、新聞を利用し、消費税増税について「すでに決まったものですよ」という印象操作を図る、愚かな財務省の手口についてご紹介した。とはいえ、この手の印象操作の手法は、何も既成事実化ばかりではない。別の手法としては、矮小化、針小棒大、曲解報道、極論連呼など色々とあるが、本日取り上げるのは「ユートピア報道」である。すなわち、日本以外のどこかの国を「ユートピア」として紹介し、
「このように素晴らしい国にするには、○○をするしかないのですよ」
 と、繰り返しメディアに報道させるわけである。○○に入るのは、増税でもTPPでも、あるいは外国人地方参政権でも人権侵害救済法でも、何でも構わない。

 現実の世界に、ユートピアなど存在しない。それでもあえて、他国を絶賛、礼賛し、国民を間違った方向に導くべく、悪質な印象操作を繰り返すわけだ。

 この手法は、インターネットが普及する以前はかなり有効だった。例えば、日本から在日朝鮮人が十万人以上も北朝鮮に渡った、かつての「帰還事業」の際には、
「北朝鮮は地上の楽園である」
 といったユートピア報道が繰り返された。無論、現実の北朝鮮は地上の楽園どころか、この世の地獄であったわけである。北朝鮮に渡った人々は、まさしく人生を失う羽目になったが、日本国内で「ユートピア北朝鮮論」を振りまいた朝日新聞などのメディアは、一切、責任を取っていない。

 繰り返すが、この世界にユートピアは存在しない。ついでに書いておくが、現在の世界には、すでに日本の「モデル」になる国も存在しない。日本が今後の経済戦略、成長戦略、税制、財政や社会保障のあり方について考える際には、現在の我が国の環境を基に、国民自身が情報を共有し、議論を重ねていかなければならないのである。他国のモデルは「参考」にはなるが、模倣はできない。

 ところが、現在の日本にはいまだに「外国」をユートピアとして讃え、
「このような素晴らしい国にするには、増税しかないですよ」
 などと、プロパガンダとしか言いようがない印象論を新聞で振りまく人々がいる。代表的なのは、スウェーデンモデルを礼賛する人たちだ。

 ちなみに、スウェーデンが日本でユートピアのごとく語られるのは、最近に始まった傾向ではない。管内閣の内閣参与であった五十嵐敬喜氏は、1997年に出版した「公共投資をどうするか」において、社会保障・福祉充実国としてスウェーデンを引き合いに出し、絶賛している。

 スウェーデンの国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)は、08年時点で60%に達し、日本(40%弱)よりも対国民所得で20%も大きくなっている。特に、スウェーデンの消費税は25%である(日本はご存知5%)。ここまで国民から政府が所得を搾り取っている国である以上、スウェーデンの社会保障が充実していて、当たり前だ。

 すなわち、スウェーデンでは「官の存在」が極端に大きくなっているのである。五十嵐氏は同著で散々に官僚や公共投資を批判しておきながら、官の存在が極端に大きいスウェーデンを比較対象に持ってくるわけだから、笑うしかない。この世に「所得(お金ではない)」が成る木はない。所得を生み出すには、国民が働き、付加価値を生み出すしかないのだ。

 そして、政府の税収とは国民が稼いだ所得から、「政府に分配される所得」に過ぎないのである。政府に分配される「国民が稼いだ所得」を、いかに分配するのか。スウェーデンは社会保障への配分が多く、日本は(97年当時は)国民経済を成長させるための公共投資が多かった。ただ、それだけの話で、いずれにせよ他国の社会保障の充実度を一方的に称賛するなど、愚かとしか言いようがないわけだ。

 五十嵐氏が「公共事業をどうするか」を書いてから15年が経過したが、未だに日本国内にはスウェーデンをユートピアとして書き立てる新聞記者や評論家が少なくない。


『2012年2月24日 読売新聞「[税と安心 一体改革の行方](1)消費税25%、北欧は納得」

「消費税国会」が始まって1か月。「無駄の削減が先」「景気が悪い時に増税などとんでもない」という慎重論も根強い中、なぜ消費税率引き上げが必要なのか。その結果、どんな社会保障の将来像を描けるのか。海外事情も含め、"生活者の視点"から、社会保障・税一体改革の意味を考える。

 安い保育料/育休8割補償/大学無料

「子供の未来に、特に不安はない」。スウェーデンの首都ストックホルムの集合住宅で、3歳と1歳半の子供を育てるマティアス・ボリーンさん(34)と妻のインゲルさん(34)が口をそろえる。

 ともにIT(情報技術)関連企業の会社員。平均月収は計7万クローナ(約84万円)を超え、所得税などで3割近い約2万クローナ(約24万円)が源泉徴収される。日本の消費税に当たる付加価値税の税率は原則25%。「確かに税金は高い。だけど納得できる」とマティアスさんは言う。

 それというのも、保育園の費用の大半は市の予算で賄われ、自己負担は2人分で月約1700クローナ(約2万円)。16歳になるまで国から児童手当が支給され、月額2250クローナ(約2万7000円)を受け取れる。授業料も、小学校から大学まで無料だ。

 息子がそれぞれ1歳になるまで、夫婦交代で育児休業をとった時は、給料の80%が国から支給された。インゲルさんは「この国では男女がともに働き、子育てするのが普通。とてもいい環境よ」と笑顔を見せる。

 高負担への納得感は、子育て世帯だけに限らない。

 ストックホルムの職業安定所で、効果的な履歴書の書き方の講習を無料で受けていた男性(27)は、職を失って1年以上たったが、月約1万クローナ(約12万円)の失業手当を受け取っている。男性は「お陰で生活費の心配をせずに職探しに専念できる」と話す。

 スウェーデンの社会保障の特徴は何か。ペール・ヌーデル前財務相の説明は明快だ。「高齢者や低所得者だけでなく、あらゆる世代に給付がある。普遍的な給付のために負担は高くなるが、納めた税金が確実に戻ってくるとの実感があるから国民は負担を受け入れるし、世代間の対立もない」(後略』


 この手の記事を書く新聞記者たちが、いわゆるスウェーデンモデルの何を理解しているのか、不明である。特に、
「日本政府は金を使いすぎる! 公務員も多すぎる! スウェーデンのような高福祉の国を目指せ!」
 などと支離滅裂なことを言う人までいるわけだから、呆れて言葉もない。なぜならば、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国は、労働人口に対する一般政府雇用者(いわゆる公務員)の比率が、ほとんど30%に達しているためである。すなわち、労働人口の三分の一は公務員という話になる。(日本は5%)

 公務員が多いということは、その分だけ政府の支出がGDPに占める割合は高まる。ということは、民間のスウェーデン国民は、公務員に支払われるお金の元である「税金」を、それだけ多く自らの所得から支払っているという話になるわけだ。

 それに対し、日本の公務員の労働人口に占める割合は、OECD諸国で最低である。日本は「先進国クラブ」ともいえるOECDにおいて、最も公務員数が少ない国なのだ。スウェーデンやノルウェーの一般政府雇用者対労働力人口比率は、日本の6倍だ。

 スウェーデンモデルを礼賛する人は、
「日本は公務員の数を現在の6倍に増やせ!」
 と言っているに等しいわけである。ということは、スウェーデンモデルを活用して消費税増税を推進しようとしている読売新聞や記者は、
「日本政府はもっと公務員を増やし、公務員給与に金を使え! その分の税金は自分が負担してやる!」 
 と言いたいのだろうか。恐らく違う。無責任にスウェーデンモデルを礼賛する人こそ、国家のために税金を支払うことを嫌がる。それでいて、社会福祉については「もっと金を使え!」などと叫ぶわけで、本当に支離滅裂という以外に表現のしようがないのだ。

 スウェーデンモデルについて理解を深めてもらうために、政府の支出(社会保障支出、社会保障以外の政府支出)対GDP比率のグラフを作成してみた。


【図143−1 2007年 主要国の政府支出(対GDP比)】
20120301_01.png
出典:OECD


 図143−1の通り、スウェーデンの社会保障支出及び社会保障以外の政府支出の合計は、対GDP比で50%を超えている。それに対し、日本は合計で38%と、OECDで下から五番目となっている。

 特に、日本の「社会保障以外の政府支出」の対GDP比が、OECDで一番少なくなっていることに注目してほしい。理由はもちろん、現在の日本政府が、公共事業や教育投資をガリガリと削り取り、公務員の数も「少ない」ためである。

 ついでに書いておくと、アメリカは社会保障支出対GDP比率が少ない割に、社会保障以外の政府支出対GDP比率は多い。すなわち、アメリカは国民への社会保障にあまり金を使わず、同時に軍隊(公務員)が多いという事になる。軍人の給与は、もちろん「社会保障以外の政府支出」に含まれる。

 また、韓国の社会保障支出の対GDP比の少なさにも驚かされる。日本と比べると、韓国は対GDP比で半分以下の社会保障しか実現されていないわけだ。なかなか厳しく、暮らしにくい社会のようである。

 さて、読売新聞はあたかもスウェーデンを理想郷のように書き立て、消費税増税を煽っている。とはいえ、スウェーデンの犯罪率は日本の七倍だ。特に、昨今は凶悪犯罪数が増えてきている。理由はずばり、中東移民が増えているためだ。

 かつてのスウェーデンは、確かにユートピアに「日本よりも」相対的に近かったのかも知れないが、現在は異なる。多文化共生主義に基づき、スウェーデンが中東などからの移民を「積極的に」受け入れた結果、30年後のスウェーデンでは、中東からの移民が「生粋のスウェーデン人」の人口を抜くと考えられている。

 また、スウェーデン語を話せない中東移民は、スウェーデン国内で職を得にくい(当たり前だが)。結果、移民の若者の失業率は50%に達している。第一世代や第二世代の移民の職がなく、彼らが犯罪に走る結果、スウェーデンでは犯罪率が高まっていっているわけだ。

 ちなみに、日本は昨今、犯罪が減ってきており、さらに英米独仏などの主要先進国も、最近は犯罪率が減少傾向にある。それに対し、スウェーデンは真逆になっているのだ。

 読売新聞はスウェーデンについて、「安い保育料/育休8割補償/大学無料」などと「ユートピアチック」なことを書いている。だが、それは単にその分だけ「政府が金を使っている」という意味に過ぎない。この世に無料のものは、ほとんどないのだ。

 しかも、スウェーデンの国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)は60%に達し、日本(40%弱)よりも対国民所得で20%も大きい。

 要するに、スウェーデンは「国民の負担が重く、国民への支出が大きい」という国に過ぎないのだ。ある意味で、社会主義的な国であり、その国家モデルも移民急増や高齢化で崩壊しつつある。

 スウェーデンモデルを礼賛することは、分かりやすく書くと、
「所得の六割を政府に持っていかれ、公務員が現在の日本の六倍、GDPに占める政府の支出も50%超」
 の国を目指すのか? という話であり、筆者は真っ平御免である。と言うよりも、散々に日本の公務員の悪口を書いているマスコミが、よくもまあ、スウェーデンを絶賛できるものだ。スウェーデンこそが、ギリシャなど足元にも及ばない公務員天国なのである。

 無論、公務員が多い分、政府の社会保障は手厚い(当たり前)が、逆に言えば社会保障を手厚くするには、公務員を増やすしかないのだ。ところが、マスコミの自称記者や自称評論家たちは、日本の公務員を「多すぎる(事実誤認)」などと批判しながら、スウェーデンを絶賛する。

 この種の「ユートピア論」は、いい加減に日本のメディアもやめておいた方がいい。この世に、ユートピアはないのだ。読者が新聞などで、本稿のようなユートピア論を見かけたら、是非とも「地上の楽園」と呼ばれていたのがどこの国なのか、思い出して欲しい。


三橋貴明
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2012/03/01/015110.php  

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コメント
 
01. 2012年3月03日 01:01:02 : FijhpXM9AU
スウェーデンで餓死者が出たという話は寡聞にして聞いたことがない。スウェーデンはアメリカのような精神異常的貧富の差がないから安定した社会を実現できたわけだが、大量の移民受け入れ政策でもうスウェーデンモデルもお終いだろう。

02. 2012年3月03日 03:19:50 : 2vYDiBPoAw
スイスは韓国に次いで出費が少ないようですが、普通の人が安心して暮らせる社会を実現しています。年金は3本立てで、老後も先ず不安なく暮らせます。
消費税は8%ですが、ホテル代等は特例として3.8%、食料品と日用品は2.5%です。
http://www.estv.admin.ch/mwst/themen/00155/index.html
別にスウェーデンの様に法外な税金を徴収しなくても、豊かで治世が行き届いた社会が形成出来ます。
これは年に数回行われる国民投票を通して、国民が政治に関心を持ち続け最終決定権を持っている事が要因になっていると考えられます。
これを保証しているのは、メディアが国民の側に立ってまともな報道をしている事です。
連邦政府は7人の閣僚が毎年交代で名誉職の連邦大統領を務めています。
特定の個人や政党に権力を集中させ過ぎて、却って政治が不安定になっている諸外国に比べて、パワーバランスが良く取れています。
2大政党制や大統領選挙制で充分衆愚政治が蔓延しています。
多様な国民のニーズを汲み上げるには政治制度も多様な利益代表で構成させるのが結局正解である事をスイスの政治は具現しています。

03. 2012年3月03日 08:50:13 : IOzibbQO0w

スウェーデンは高負担だが、再分配や財政支出が日本のように、経済成長に寄与しない一部の既得権者に偏るということが少ないから

あまり国民の不満は高くないが、それでも、負担が集中する富裕層や、高い賃金に耐えられない企業は逃げ出すか、労働意欲を失う

極右大量殺人で有名になった移民の問題も昔から燻っている


日本では、口では公務員など既得権益層を批判しながら、実際は自分だけ美味しい思いをすることしか考えていない人々が大部分だから

そうした自由と平等と高負担を理想とした社会を目指すことが本当に可能かは非常に怪しいものだ


04. 2012年3月03日 09:06:18 : H6bKapKPbY
スウェーデンでは日本人が考えるような「プライバシー」は存在しないよ。

カーテンを閉めたまま夫婦げんかをしているだけで隣近所から通報されるらしい。
DVの疑いがあるから、と。すぐ警官が飛んでくるとか。だから、スウェーデン人は
あまり自宅のカーテンを閉めない。

違法駐車の車があれば、電話1本で所有者の住所氏名がいつでもわかる。
隣近所からすぐに苦情が来るから、逃げ得はあり得ない。

所得は国民総背番号で完璧に把握されている。徴収方法は税に一本化されている。
保険料やら年金やら煩雑なものはない。国民背番号がないと行政サービスが一切
受けられない。

北欧の高福祉社会というのは、個人のわがままを我慢し、徹底的に助け合うという
古き佳きムラ社会を国家レベルで実現したようなものらしいよ。

自分勝手な現代日本の都会人に耐えられるかな?


05. 2012年3月03日 10:03:46 : 8YvWx6rRIE
北欧の国って基本人口がみんなあ少ないのよ
だから自国で生産出来る物が限られちゃうので
収入があっても消費文化が以外と貧弱なの
良く言えば質素
こういうと怒られるけどあんま生活していて面白くない
だから国家だ税金で国民の収入を召し上げないと
かなりの人が国外に逃げる恐れがあるのね
税金で半分以上所得をとられちゃうから
逃亡資金を貯める事が出来ない

06. 2012年3月03日 12:04:21 : 3vtxM75iOA
日本の消費税が25%になると、医療費は全てタダになるというキャンペーンはないのか。
日本の消費税が25%になると、手厚い失業保険が受けられるというキャンペーンはないのか。
それなら、消費税が25%になってもかまわないと思う。
いまのはただ、税金が上がって、社会保障費が削られるという話。
スウェーデンとは関係ない話。
税と社会保障の一体改革というが、税を上げて社会保障を向上させるのが本筋なのに、税を上げて社会保障を削るという話。笑止千万。
ちなみにスウェーデンでも老後までは手が回っていないよ。最低の保障はあるが、少し良い老人ホームに入ろうと思うと莫大なお金が必要。
また、北欧は「人形の家」(イプセン)の国。女性の権利が強くほとんど共稼ぎ。失業するのは男性である。女性が、線路工夫や重機の運転までしている。日本みたいに鉄道の運転手どころの問題でない。お産も体調さえよければ3日で職場に復帰する。日本よりも働き者と言えるかも知れない。ローカル線に乗れば電車内で編み物をしている女性を見かける。
公務員といっても、日本は本来公務員がやる所まで民営化しているから比較してもネ。

07. 2012年3月03日 15:47:42 : OEx0tt7exQ
三橋貴明って名前、聞いたことがあるね。


08. 2012年3月03日 16:27:37 : i9pZGbLUxk
>>05
「逃亡」って、スウェーデンは島国じゃありません。

デンマークを経由してヨーロッパ本土まで海峡横断道路がつながってますよ。

自家用車とガソリン代があればいつでも外国に行けます。
鉄道運賃も日本よりはかなり安いです。

北欧の人は英語・ドイツ語のどちらかはペラペラですしね。


09. 2012年3月03日 23:37:17 : OvJwaNGmzs
日本よりやや広い国土に、920万人程度の人口。
確かに比較するには無理がある。

10. 2012年3月04日 01:40:33 : Ri3coEuKrM
行って見て民主党がモデルにするのがわかりません。現地を見てないのでは。私は北欧をモデルにした日本にするのは反対です。

11. 2012年3月04日 23:01:36 : GBK8IreXtd
スウェーデンのような高福祉と官僚・公務員の数・権限の少ないという意味での小さな政府を目指せばよいのだ。

いわゆる「福祉国家型最小国家」だ。

“鍵”は、基本所得保障制度だ。


基本所得保障制度とは、イデオロギー的に真逆同士、つまり左からも右からも制度設計如何で支持され得る可能性のあるイデオロギー独立性の高い制度といえよう。
■なぜ? コミュニタリアンとリバタリアンが共にBIに賛同するのか?
BIについて面白いのは、政府の役割について両極端の意見を持つ
「コミュニタリアン」と「リバタリアン」の双方が、BIを支持している点である。
コミュニタリアンは、国民の平等性を最重視し、手厚い社会保障や福祉を強く主張し、その結果大きな政府を志向する。
リバタリアンは、国家における政府の役割は可能な限り小さいことが望ましいと訴えている。
また「ネオリベラリズム論者」もBIを支持している。
彼らは、リバタリアンほど思想的色彩が強いわけではないものの、
経済活動も国民の厚生も市場メカニズムを最大限に尊重することによってうまくいくというスタンスだ。
今回はこの点について説明しよう。
■コミュニタリアンのBIは格差解消の平等政策
コミュニタリアンがBIに賛成するのは分かりやすい。
彼らは「人は平等に生活し幸福になる権利がある」という理念を根拠に、社会保障や福祉の充実を主張する。
“平等”を最重要価値とするコミュニタリアンにとって“格差”は何としても是正しなければならない。
特に生存権を脅されている人々が存在する状況は決してあってはならないと考える。
その点、国民全員に、無条件で、生活を保障するお金を給付するBIは、理念的にも、現実的効果の面でもコミュニタリアンの主張そのものだ。
ところで、私も含めてBIを考えるきっかけは、
「普通の生活にすら困っている人々に対して何らかの公的救済を図るべきである」という思いにあることが多いのではないか。
例えば、子供を抱えたシングルマザーのうち半数以上が年収114万円以下の相対的貧困に苦しんでいる現実を見ると、
何としてもそうした人達に強力な支援をしなければという思いを抱く。
日本が豊かな先進国であるにもかかわらず、経済的要因を理由とする自殺がどんどん増え続け、
人口当りの自殺者数が世界でワースト3位であることを知ると、改善の必要性を感じる。
人として自然な感情であろう。
こうした普通の人々が自然な感情に基づいてBIを支持の動機と、
コミュニタリアンがBIを支持の理由とは、厳密に言うと、理屈の面で多少違っている。
普通の人々がBIを支持する理由の重点が「貧困からの弱者救済」であるのに対して、
コミュニタリアンがBIを支持する重点は「格差解消」「一律平等性」にある。
どちらの立場も政策の対象としては、“貧困に苦しむ社会的弱者の支援”ではあるが、
理念的な重点のあり所は異なっている。
■リバタリアンにとってBIは政府の介入と裁量の排除
次にリバタリアンによるBI支持の理由を示そう。
そもそもリバタリアンは、国家における政府の役割は警察・外交・国防など、最小限にすべきであるという立場を取る。
にもかかわらず、最低でも60%程度の高い国民負担率を覚悟せざるを得ないBIを支持するのは意外に感じられるであろう。
リバタリアンがBIを支持する最大の理由は、BIが一律・無条件であるため行政コストが小さいことと、
行政の恣意性と裁量が排除できる点にある。
レッセフェール――成すに任せよ――を旨とするリバタリアンが最も排除すべきだと考えるのは“政府の介在”である。
現行の社会保障や社会福祉は、細かな規定に基づいて施行・運用されている。
政府による介入と裁量的運営のコングロマリットのような存在である。
この政府介入・裁量運営のシンボル的分野を根こそぎ更地に戻すがごときBIは、
財政面では拡大が避けられないにしても、理念的には極めて好ましいということになる。
リバタリアンは、元来は「最小政府国家」を看板にしていた。
しかし近年は、こうした側面を重視して「最大限に分配する最小国家」という理念が登場してきている。
ここでも通常の社会人の考え方とリバタリアンの考え方とのニュアンスの違いを示しておこう。
先ほども述べたように、通常の人たちがBIを支持する動機は、色々な事情で貧困に苦しむ社会的弱者を救うことにある。
これに対してリバタリアンにとっては、様々な形で政府/公的権力が介入・裁量することを排除できることが、
BIに賛同する最大の理由である。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111129/224650/?rt=nocnt

先進国における21世紀の「国のかたち」は、「福祉国家型最小国家」ではないだろうか。
21世紀半ばまでには、実現したい国家構想
■「福祉国家型最小国家」に関するやりとり
http://togetter.com/li/157490

「小さな政府と大きな社会保障」が正解だ。
“鍵”は、ベーシックインカムや負の所得税(大人手当て)。

もっとも合理的なのは、利用者から見て極めて使い勝手が悪い官僚・公務員の裁量にもとづく無原則な福祉を全廃し、
「負の所得税」のような非裁量的なルールで所得を再分配することだ。
負の所得税とは、課税最低限以下の低所得者に「マイナスの税金」つまり所得補償を行なう制度である。
たとえば年収300万円以下は非課税だとすると、いまの税制ではそれ以下の所得の人は税金を払わず、働けない人だけが生活保護を受ける。
これでは少しでも働くと生活保護が打ち切られるので、働くインセンティブがない。
それに対して負の所得税では、課税最低限の所得との差額の一定率を支給する。
その税率を0.5とすると、たとえば年収150万円の人には、(300円―150万円)×0.5=75万円を支給するのである。
これによって、少しでも働けば所得が増えるので、労働意欲が生まれ、生活保護を受けられないホームレスを防ぐことができる。

■大きな政府、小さな政府、シンプルな政府。
一般的に、政府の大きい小さいは “予算規模”で区別される。
けれど、ブログ界隈で議論される政府の大きい小さいの場合は必ずしも予算規模の話ではなく、
政府を構成する組織・人員の大きさが焦点になっている場合が多い。
「小さな政府」を主張すると、(予算規模の話だととられて)
「福祉の切り捨てだ」「弱者の切り捨てだ」「所得の再配分ができない、格差を増大させる」と言われたりするけれど、
所得の再分配・福祉と(規模の意味で)小さな政府は両立可能だと思う。
ただ、それは小さな政府というより「シンプルな政府」なんだと思うけれど。

たとえば、ベーシックインカムや負の所得税を導入して年金・保険・育児教育補助を根本的に整理しなおして
厚生労働省の役割を1/5以下に縮小したら、それは予算的には「大きい政府」だけど、
機能的には「小さな政府」であり、よって「シンプルな政府」だ。
予算も機能も福祉もない“夜警国家”へ立ち返るのはやりすぎだと思うけれど、
18世紀から積み上げた経済学的知見や計算機科学を活用すれば、
規模を大きくせずに機能のみを伸ばした政府を実現するのも不可能ではないと思う。

複雑な政府では、みんなの目が届かないところでルールが悪用されたり、理不尽な運用がなされたりすることが多い。
一方、シンプルな政府はシンプルであるがゆえに悪が露見しやすい。
シンプルな政府は公正な政府により近い。
シンプルであるがゆえに行き届かない部分は、“時限的な”例外を設けて対処すればよい。
                    ◇
政府機能は所詮必要悪だ。税金なんか払わずに済むのならばそうしたい。
しかし、それでは公共的な財やサービスの供給がなされず、長期的にみれば多くの可能性をコロしてしまう。
だから、社会的ゆるやかな合意のもと、みんなの信頼の上に政府という機構を構築している。

しかしそこで、複雑で規模が大きいがゆえ政府のX非効率、機能不備、汚職が増大すれば、
政府への信頼が揺らぎ、公共の仕組みとしての政府が支持されず、結局は破綻してしまう。
だから、いつの時代もヒトは本能的な嗅覚として政府の汚職と無能を嫌悪し、公正な政府を求めている。
http://www.be-styles.jp/archives/3213

■イメージ図
http://www.be-styles.jp/wp-content/image697.png

■大きな政府・小さな政府の議論は、福祉の大きさと、行政の大きさに話を分けて行うことが重要だ。
そうしないと、国民のニーズを正確に汲み取ることができない。
▼均等な「ばらまき」か、行政による「事業」か
この点に関しては、できるだけ偏らない配分で、使い道が自由な「お金」を再配分してくれる方が、
公平感があるし、行政コストが掛からないのではないか。
国や自治体がハコモノを作ったり、福祉関係の事業に補助金を出したり、
教育費などに使途を限定した支出を行ったりするのは、時に便利であるかも知れないが、
お金の使途が不自由であり、生活スタイルへの介入でもあるし、
何よりも、多くの行政関係者の関与を必要とする分コスト高だ。
こう考えると、何の権限にも天下り先の確保にもつながらずに予算を食う「子ども手当」を
官僚及びその周囲の利害関係者(大手マスコミなど)が目の敵にする理由がよく分かるのではないか。
尚、子ども手当に対する所得制限は事務を複雑にするし、不要だ。
お金持ちにも手当が支給されることが問題なら、お金持ちの資産なり所得なりにもっと課税すればいい。
手当の仕組みはシンプルに保って、公平性の調整は課税の見直しで行えばいい。
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員=山崎 元)
http://diamond.jp/articles/-/11333?page=3
小さな政府でも、大きな政府でもなく、
官僚・公務員・族議員差配の複雑な政府でもない
効率的でシンプルな政府=公正な政府、
「シンプルな政府、普遍主義(非裁量的なルール)にもとづく社会保障」


12. 2012年3月05日 17:02:08 : Yds25uaX36
>スウェーデンのような高福祉と官僚・公務員の数・権限の少ない
ま、医者を奴隷にすれば可能でしょう。
スウェーデン並みの医療にすれば、医療費だけで80−90兆円はいるでしょう。それを付加価値税だけで賄うのですよ。

13. 2012年3月08日 22:18:12 : 1PDcrsaVSg
>>12
日本の医師の方がよっぽと「奴隷」ですよ。24時間拘束されて結果が「患者様」に
気に入られなければ民事・刑事で訴えられる。先進国のまともな病院では、勤務時間が
終わったら目の前に重症患者がいても医者は帰宅します。

どんな失策があっても責任を問われない官僚とはえらい違いです。

医学部と同程度以上の「偏差値」の大学を出た連中は、学者以外は殆どが医師よりも
良い暮らしをしています。ちなみに、「底辺私立医大」と早稲田・慶応の理工学部が
同じ偏差値です。まともな医大は早慶理工よりも遙かに難しい。

北欧などの「高福祉」国家では、基本的に後期高齢者に対する積極的な治療は保険が
効かないし、認知症老人の延命治療もしません。あるのは介護給付だけ。脱水症で
点滴1本で生き返る状態でも自力で水分が飲めなくなったら「見なし末期」でジ・エンド。
これが「世界標準」です。


14. 2012年3月10日 19:55:13 : 6kuobrWeYc
スウェーデンは公務員は多いぞ。

15. 2015年1月10日 02:43:59 : 8meOEhCYik

三橋さんも中野さんもけちょんけちょんです。


meguのブログ

2012年5月20日日曜日

中野剛志亡国論 8 左翼学者エマニュエル・トッドへの心酔
http://megu777.blogspot.jp/2012/05/blog-post.html


16. 2015年1月10日 02:59:24 : 8meOEhCYik

「脱原発を許さない」などと言ってるのでめぐちゃんだめです。

http://megu777.blogspot.jp/search/label/%E5%8E%9F%E7%99%BA


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