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http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120229/229285/?ST=print
オバマ法人税改革に難問〜優遇撤廃に抗う既得権益者
• 2012年3月2日 金曜日
• The Economist
米国の政治家は税制改革を頻繁に口にするが、実際には何もしていない。残念なことだ。米国が議論に終始している間に他国は改革を進めてきた。各国の最高 法人税率は1980年代以降大きく下がった。かつて世界平均より低かった米国の法人税率は、現在ではかなり高いものとなっている(図参照)。
この変化を受けて、米国に本拠を置く多国籍企業は海外への事業移転を進めてきた。多国籍企業の米国外での雇用は過去10年増え続けている。他方、国内で の雇用は減少した。原因の大半は新興国の安価な労働力と市場の成長にある。とはいえ、経済団体やエコノミストの多くは、米国の税率にも責任の一端があると 考えている。
自由主義派のアナリストは、別の理由からも米国の税制を批判する。多国籍企業が海外のタックスヘイブン(租税回避地)に所得を隠匿し、課税を無期限に先延ばしできるからだ。この仕組みも雇用の国外流出を促進する。
税収減は優遇措置の撤廃で埋められる
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バラク・オバマ米大統領は、この問題に対処する意思を明らかにしている。オバマ大統領は2月22日、現在の税制は「時代遅れで不公平で非効率」として、 最高法人税率を35%から28%へと引き下げる案を示した(州税、地方税を含めると39.2%から32.6%への引き下げ)。
この減税による税収減は、向こう10年で7000億ドル、GDP(国内総生産)の0.4%以上に上ると試算される。加えて、研究開発に関する控除など様々な減税措置の恒常化により、今後10年間でさらに2500億ドルの減収になる可能性がある。
しかしオバマ大統領は、「この減収分は各種の優遇措置を必要なだけ撤廃することで埋め合わせが可能だ。全体として財政赤字が膨らむことがないようにす る」と明言した。理論的には、それが理想だ。法人税率を下げて広く薄く課税すれば資本配分の歪みは小さくなるし、脱税の理由も減る。
だが、どの優遇措置を廃止するかという問題が、税制改革を阻んでいる。オバマ大統領は、税制の雑多な「抜け穴」を撤廃するよう改めて求めてきた。「抜け 穴」とは、以下の項目などを指す――棚卸資産の評価、石油・ガス事業、企業生命保険方式 、投資ファンド利益、企業が所有するジェット機などに関わる優遇措置。オバマ政権の予算はこれらをなくすことができずにきた。
また、オバマ大統領は、多国籍企業などが米国外の事業で得た利益(国外源泉所得)に対しても、最低限の税率で一律課税する意向だ。
それでも、もっと多くの収入源を確保する必要がある。しかし、この点になるとオバマ大統領の言葉は切れを欠く。減価償却や利息控除、株式会社以外の事業 形態(「Sコープ」、合名会社、有限会社など)に制限を加えることを「考慮する」必要があると大統領は述べる。大統領の歯切れの悪さは残念だが、理解でき る面もある。
米国企業に対する優遇措置のうち最も大きなものは、減価償却と設備投資支出の扱い、そして国内生産に対する減税だ。しかし困ったことに、こうした優遇税 制からとりわけ恩恵を受けてきたのは、今オバマ大統領が擁護に努めている製造業なのだ。大統領は国内生産に対する控除を維持する意向で、製造業の実効税率 は26%から25%へと小幅ながら減税となる(実効税率は、税額――すべての控除を実行した後の額――の所得に対する比率のこと。最高法人税率より適切 に、実際の税負担を表す)。
減税案の行方は不透明
オバマ大統領の税制改革は、国内の製造業に対する支援を強化するものだ。しかし、さほど大きな変化は期待できない。共和党系シンクタンク、アメリカン・ エンタープライズ研究所のアレックス・ブリル氏は、この減税案を実行しても、米国の法人税率は依然として高い、OECD諸国の中で1位から3位に下がるだ けだ、と指摘する(日本で予定されている法人税減税が実施された場合)。
冷酷な政治的現実もある。独立エコノミストのマーティ・サリバン氏は、アップルやメルクなど、国外源泉所得に対する軽い課税の恩恵を被ってきたハイテク 業界、製薬業界の多国籍企業が大きな打撃を被ると指摘する。利息支払いや減価償却費が多額に上る電力、ガス事業者や通信事業者も同じだ。これらの業界が 黙って増税を受け入れるとは思えない。
理屈から言えば、共和党はこの税制改革案を受け入れるはずだ。共和党も法人税改革を求めてきた。共和党の4人の候補の誰が大統領になっても、法人税率は25%以下になるだろう。
下院歳入委員会のデイブ・キャンプ委員長(共和党)は2011年秋に、法人税の25%への引き下げと、国外源泉所得の大半に対する課税免除を提案した。 しかしキャンプ委員長は、減税で失われる歳入をどう埋めるかについて、オバマ大統領以上に曖昧だ。税制改革を生かすも殺すも、そこにかかっている。
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