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ギリシャ危機はもはや問題ではない 今後注意を払うべきはインフレ動向だ
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投稿者 MR 日時 2012 年 2 月 29 日 02:32:20: cT5Wxjlo3Xe3.
 


ギリシャ危機はもはや問題ではない 今後注意を払うべきはインフレ動向だ

2012年2月29日 水曜日
クレム・チェンバース


 ユーロ危機問題は、解決などしていないように見える。アテネでは暴動が続き、あらゆる政治的プロセスにおいては、様々な怒りや思いが錯綜している。

だが、今、目を向けるべきはギリシャ問題などではない。

 こう言うと、「そんなはずはない」とか不謹慎な発言だと思うかもしれない。だが、ギリシャがもはや大した問題でないというのは明白だ。

動かなくなったユーロ相場が意味するもの

なぜかといえば、ユーロの相場は何週間もまったく動きがないからだ。

 中国がユーロを支援しようがしまいが、ギリシャで暴動によって歴史的な建物に火がつけられようが、ユーロの相場はほぼ動いていない(※)。一体これが何を意味しているのか――。それが重要な問題だ、と言いたい。

※欧州連合(EU)は2月21日のユーロ圏財務相会合で、EUと国際通貨基金(IMF)によるギリシャ向け第2次金融支援について合意した。ユーロの対円相場で見ると、ユーロは合意が危ぶまれていた2月1日には99.66円と100円を切るところまで落ちたが、合意以降、2月24日には108.27円まで戻している。ユーロ対ドルで見ると、ただ、2月頭の1.32ドルから2月24日でも1.34ドル、ユーロ対ポンドで見ても、2月頭の0.83ポンドから2月24日でも0.84ポンドと大きくは動いてはいない。筆者は、ユーロ対ドル及びユーロ対ポンドを指して、相場が動いていないと指摘していると思われる。

 私は、投資のアドバイスをする際、その人にまずトレーダーに「価格は上がっているのか、下がっているのか」を聞けと助言している。つまり、価格の変動を見れば、個人の投資家であろうと機関投資家であろうと、彼らが現状をどう見ているか分かるからだ。価格が上がっていれば楽観的になるし、下がっていれば悲観的になるものだ。

 欧州の政策当局が出席する会議の内容について、一般の投資家が情報を得ることは難しいが、大手の投資家ならほぼ確実に重要な情報は入手している。そのことを頭に入れて、改めて今のユーロの動向に目を向けて欲しい。

 現在のユーロの価格を見れば、ギリシャ債務危機がもはや問題の本質ではないことが分かるはずだ。つまり、ギリシャは債務不履行(デフォルト)するのかという点について、市場は「ギリシャは絶対にデフォルトしないと分かっている」か「デフォルトしても関係ない」と思っているのだ。

今のユーロはあらゆる事態を織り込み済み

 今のユーロの価格は、あらゆる事態を想定し、それらをすべて折り込んだうえで弾き出されたもので、正しい水準にあると言える。

 市場がこれまで心配してきたのは、ギリシャの債務危機問題をきっかけに欧州各国の銀行に対する信用が失われ、それがドミノ現象となって、ほかのユーロ圏国家の信用不安問題へと波及していくことだった。

 しかし、米連邦準備理事会(FRB)も欧州中央銀行(ECB)は既にしっかりと手を打っている。こうした事態が発生しないように、銀行向けに無条件で資金供給を大幅に拡充している。

 その結果、流動性を失った銀行がもはや国有化されるという事態は起きない。今や銀行は、中央銀行に流動性を求めさえすれば、資金を得ることができる。むしろ心配すべきは、銀行は今後、欧州と米国にインフレを引き起こすいわば導線となったという点だ。

 各国政府が経済を下支えするために取っている現在の戦略とは、無償でお金を銀行に貸すことだ。そして銀行は、その資金で国債をどんどん購入し、(つまり政府にお金を貸すことで)、金利を低く抑えておく、という戦略だ。莫大な債務を抱えているにもかかわらず、政府が生きながらえているのは低金利のおかげだ。

 もちろん銀行は、低金利で調達したこれらの資金を企業や消費者に貸し出し、投資や消費支出を高めることは可能だ。マネーサプライの拡大は、負債を減らし所得を押し上げるという、快適なレベルのインフレを誘発することにつながる。

 しかも、「緊縮財政策」を取る限り、インフレ率を抑えられるだけでなく、その緊縮策が公的セクターの肥大化を招かないためのアナウンス効果だけのものでない場合、財政を改善させることも可能となる。

市場への大規模な資金供給でようやく株式市場も反応

 問題は、銀行が資金をリスクのない政府に貸しても、企業や個人には貸したがらないという点だ。銀行が企業や個人に貸さないのは、「大もうけをしようと考えて、愚かなリスクは取るな」とあまりにも何回も忠告されてきたからだ。その結果、銀行は「国債をどんどん購入して政府に貸すほうがいい」と考えるようになっている。政府も、銀行に国債を購入して貰いたいと思っている。

 だが、これだけの規模の資金が市場に投入され、米国ではついにその効果が現れ始めてきた今、企業や個人に融資しないというのは大した問題ではない。

インフレの先行指標は金価格の動向

 これだけの資金を投入することは、少なくとも初期段階においては株式市場の回復を期待できるし、実際、今年初め株価は大幅に上昇した。よって我々は今後、景気がかなりよくなるだろうと予測している。しかし、やがてインフレの制御という問題に直面することになるだろう。

 欧州と米国は、果たしてインフレ率を10%以下に抑えることが出来るだろうか。より理想的に言えば、ここ数年で積み上げてしまった膨大な債務をリセットすべく、インフレ率を5〜7%という水準に維持できるだろうかという課題に直面することになる。

 金の価格はその意味でバロメーターとなる。金価格はいわばインフレがどこへ向かうかを知る指標だ。もし金価格が1トロイオンス=2000ドル以下で推移すれば、十分、インフレを抑制することができるだろう。金価格が1トロイオンス=2000ドル〜3000ドルの間にとどまれば、米国と欧州におけるインフレ率は高いながらも何とか10%以下に抑えられるだろう。

 だが、金価格がもしそれ以上高騰したら、少なくとも米国、そして恐らく欧州を含めた先進諸国はもちろん、世界経済は暴走し始める。

 英国は、いわば欧州経済の今後を占う青写真だ。フランスとドイツの選挙が終われば、その傾向はさらに加速するだろう。米国もまた、大統領選挙後、文字通り同じコースを辿ることになるだろう。

 今後、新聞などのニュースの見出しで注目すべきは、米ドル、ユーロ、円、英ポンドの動向と、金価格の行方だ。金は、まさに炭鉱のカナリアのごとく、今後起こりうることに対する早期の警告を発するからだ。
このコラムについて
英国人投資家クレム・チェンバースの世界経済斜め読み

100年ぶりの危機到来と言われた2008年9月のリーマンショックを機に発生した世界金融危機から3年強が経つ。だが、まだ病み上がり過程にある世界経済に今、重くのしかかるのがギリシャの財政赤字問題に端を発した欧州のソブリン債務危機だ。先進諸国には、もはや財政を出動させる余力がないのはもちろん、多くが巨額の財政赤字にあえぐ。金融危機以降、世界経済の牽引役を果たしてきた新興国も、中国では不動産バブル崩壊のリスクがささやかれる一方で、インド経済も急減速を見せ始めるなど不安要因が山積する。世界経済は今後どこに向かうのか、今の状況は何を意味するのか、異色の経歴を持つ英国人投資家が大胆に世界経済の今を斬る。

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著者プロフィール

クレム・チェンバース

クレム・チェンバース 1963年、英ケント州生まれ。父親が商品トレーダーだったことから幼少より投資に関心を持つ。1989年、友人とインターネットゲーム開発を手がける会社、オンラインを設立、96年にロンドン証券取引所の新興企業向け市場AIMに上場を果たす。その後、投資情報サイトを展開するADVFNを設立、2000年3月に同じくAIMに上場させ、2002年1月にADVFNの最高経営責任者(CEO)に就任する。最近は、英BBC、米CNN、米CNBCなど、テレビのビジネスニュース番組や米CNBCの「Wall Street Shuffle」といったラジオの番組に市場コメンテーターとして登場する一方、英紙「ザ・ガーディアン」、「ザ・デイリー・テレグラフ」、米「フォーブス(電子版)」、中東最大の新聞「ガルフ・ニューズ」、南アフリカ共和国の「ケイプ・タイムズ」紙などにも経済情勢に関するコラムを寄稿している。
著書も「101 Ways to Pick Stock Market Winners」といった投資本だけでなく、金融小説「The Armageddon Trade」(2009年)、小説「The Twain Maxim」(2010年)、「Kusanagi1」(2011年)など著書も多数。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120227/229109/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年5月17日 02:41:28 : sgolhP60mA
今はEUもアメリカも金融を緩めていますが
物価上昇が目立つようになったら引き締めに転じるのではありませんか。
EUなら、4%上昇くらいまで。ドイツが我慢しないでしょう。
アメリカなら5%くらいか。10%になる前に国民が騒ぐでしょう。

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