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ギリシャが全面的にデフォルトする日
周到な準備のために、あと1年必要
2012.02.28(火)Financial Times
ユーロ圏、ギリシャ第2次支援で合意 主なポイント
第2次支援がまとまったが、ギリシャはいずれはデフォルトせざるを得ない(写真は2月21日、ユーロ圏財務相会合後に記者会見するギリシャのエバンゲロス・ベニゼロス財務相=左=とルーカス・パパデモス首相)〔AFPBB News〕
実際に交渉に当たった人も含め、誰もが良策だとは思わない合意になった。
ギリシャの第2次支援は今後、形式的に実行されていくが、ギリシャはいずれにせよ、デフォルト(債務不履行)することになる。問題はそれがいつ、どのような形で行われるかだ。
ポール・クルーグマン氏はニューヨーク・タイムズ紙のブログで、ギリシャは債務問題を永久に悪化させる財政緊縮プログラムと、プライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)が黒字にならなければ実現し得ないデフォルトとの間にはさまれて身動きが取れなくなっていると指摘した。
プライマリーバランスの財政の黒字化は2013年まで期待できないため、ギリシャ政界の支配者層は成り行きを見守るしかない、というのがクルーグマン氏の見立てだ。
対外債務の全面的なデフォルトに備える道
確かにその通りだが、ギリシャにはもっとやれることがある。そう、来年の対外債務の全面的なデフォルトに備えるということもできるのではないだろうか。
具体的には、プライマリーバランスの赤字をとにかくゼロに近づけるために、ギリシャは今年も緊縮財政を続ける必要がある。またデフォルトがもたらし得る恩恵を享受できるように、いくつかの構造改革も実行に移す必要があるだろう。
合意された民間部門関与(PSI)によって、ギリシャの国内総生産(GDP)比の政府債務残高が先週21日の合意で目標とされた120.5%で安定するという大胆な想定をする場合、デフォルトは間違いなく「公的部門の民間化」を意味する。
欧州金融安定機関(EFSF)による融資や、欧州中央銀行(ECB)およびその他の中央銀行が保有するギリシャ国債も、デフォルトの対象にならざるを得ないということだ。民間部門が保有する残りの国債についても、一部または大半がデフォルトになるかもしれない。
なお、筆者がここで言うデフォルトは、対外債務の大半について返済が行われなくなることを指す(国内債務については、そうなるとは限らない)。GDP比の債務残高を60%に引き下げることがその目標となるだろう。
ユーロ離脱に至った場合のシナリオ
もしデフォルトがギリシャのユーロ離脱という結果に至るのであれば、ギリシャは独自通貨(新ドラクマ)を、ユーロとの名目交換レートが1ユーロ=1ドラクマになる形で導入することになるだろう。そして、新ドラクマのレートは大幅に下落する。
通貨安により、ギリシャのGDPの約7%を占める輸出財セクターは競争力を大幅に高めるだろうが、ギリシャを危機から脱出させるには至らないだろう。
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ギリシャ観光はコストが上昇している(写真はイオニア海のコルフ島からの眺め)〔AFPBB News〕
観光業セクターには2008年にGDPの18%を稼ぎ出した実績があるが、ギリシャの観光地で休暇を過ごす際のコストは非常に高くなっており、競争力を維持するにはこれを(理想を言うなら50%程度)引き下げる必要がある。
これは内的減価(名目賃金と物価の引き下げ)では達成できない。観光業と輸出、そして交易条件の改善に伴って輸出が力強く伸びるという見込みの3点がそろえば、ユーロ離脱戦略を機能させるには十分だろう。ただし、それは、ユーロ離脱がしっかりと準備された上で実行される場合に限られる。
皮肉なことだが、ギリシャはそれでも、国際機関などが今求めているものと同様な改革を実行しなければならないだろう。まず、政府は税金を徴収できるようにならねばならない。汚職も一掃しなければならない。労働市場の柔軟性が大幅に高まるような施策も必要だ。
為替レートの調整による賃金・物価水準の名目的な引き下げの恩恵を打ち消してしまう賃上げ交渉を、労働組合が始めることのないようにしなければならない。ギリシャは賃金・物価水準を実質的な意味で2ケタ、それもかなりの高率で引き下げる必要があり、それには賃金水準の調整が欠かせない。
ギリシャ政府はそのような戦略を、紛れもない所得政策で補足していく必要があるかもしれない。
緩やかなデフォルトなら離脱を回避する道も
比較的マイルドなデフォルトなら、ギリシャのユーロ圏残留を可能にするプログラムもあり得るだろう。そのようなプログラムの交渉に当たっては、お互いに対する信頼感の回復が最低限の前提条件となる。ギリシャは合意の文面と精神に忠実でなければならないし、欧州連合(EU)はギリシャ政府への融資を帳消しにする必要性を受け入れなければならない。
短期的には、先週合意されたプログラムにより、ギリシャの景気後退はさらに悪化する。こんなものは非現実的であり、借金の棒引きを盛り込んだプログラムに切り替えるべきだと、ギリシャ政府が言い始める可能性もあるだろう。
ギリシャには経済成長も必要だ。ユーロ圏にとどまったままでは、デフォルトしても競争力は改善しない。
この戦略に成功の可能性を持たせるためには、経済成長のエンジンをギリシャ国外に構築する必要がある。そしてそれは、EUの大型投資プログラムという形でしか実現できない。
もしこのプロセスがすべての段階で完璧に実行されれば、それが最も痛みの小さいシナリオとなるだろう。ただ、そうなるためには、犠牲を払う善意とやる気がすべての関係者に、それも普通ではあり得ないほど備わっている必要がある。
今後1年間は悲惨な状況が続くが、その先には希望の光
上記の2つの選択肢のうち、実現の可能性が高いのは前者の方であり、望ましいのは後者の方である。どちらを取るかをギリシャが今すぐ決める必要はない。次期政権はまず、両方の選択肢のための下準備を進めるべきだ。
向こう1年間は、悲惨な状況が続く。しかし、すべてのことがうまく運べば、ギリシャはそこでようやく、状況が自分に有利になるような対策を講じる余裕を手に入れることになる。
By Wolfgang Münchau
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34640
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