http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/269.html
Tweet |
高まる放射能不安に付け込む便乗商法の跳梁跋扈
福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故からまもなく1年。正確な情報が乏しいことに加え、除染が進まないこともあって、放射能汚染の恐怖にさいなまれている人びとは少なくない。だが、そんな不安に付け込んだ詐欺事件も発生するなど、“わるいやつら”が跳梁跋扈している。
いまや携帯電話などでも測定できる放射線量。正確な情報がないため不信感が募り、自ら測定する市民グループも増えている。だが、その陰で不安に付け込む新たなビジネスも発生している。
Photo:AP/AFLO
2011年秋。千葉県北西部に位置するベッドタウンに、放射線量測定器がずらりと並べられたレンタルスペースが現れた。
ここでは、家庭や店舗などから食材を持ち込み、自ら放射線量を測定することができる。料金は、測定器の精度によって1件当たり980円と3980円だ。
じつは、この地域周辺では放射線量が周囲よりも高い、いわゆるホットスポットが発見されていた。そのため開設当初から、子どもを持つ主婦など危機感を抱いた人たちが長蛇の列をつくっていた。
こうした“市民測定所”は、福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故以降、地元の福島県はもちろん、東日本を中心に雨後のたけのこのようにあちこちで設置された。
しかし、事故からまもなく1年を迎えるに至り、市民有志の場が、いつしか新たなサービスを展開する“ビジネス”へと姿を変えつつある。
たとえばある測定所では、市民が持ち込む商品だけでは飽き足らず、スーパーマーケットなどで食品を自ら買ってきて放射線量を測定している。
コメから乳製品、インスタント食品や菓子に至るまであらゆる食品が対象で、これまで測定した商品はじつに1000あまり。結果をデータベースにまとめ、独自の基準をクリアした商品をインターネット上で公開、商品に“お墨付き”シールまで貼っている。
ところがである。ホームページを見てみると、首をかしげざるをえない文言が至るところにちりばめられている。
次のページ>> 品質や対応に不備ある放射線量測定器が続出
まず、「食品の放射能測定は非常にファジーな測定」としたうえで、「100%安全を保証できるものではありません」とする。しまいには「誤った内部被曝につながる可能性」もあるから、「心配な方は利用されないほうがよい」という始末。勝手に商品を測定し、公開しておきながら、これでは責任逃れ以外の何物でもない。
そんなあやふやな測定を基に、風評被害に困っている生産者に対しシールの活用とともに協賛金も募っているといい、まさに「押し付け商法そのもの」(関係者)。おまけにシールを貼った食品を転売しようという話まであるという。
現在、この測定所を運営している事業者はNPO法人を申請中。にもかかわらず、周囲には無邪気にも「収益が得られるよう日々、頑張っています!」と話している。
測定結果のデータをすべてそのままホームページ上に堂々と公開しているところよりはましかもしれないが、「市民活動家を装いながら、れっきとしたビジネスになっている」と事情に詳しい関係者は指摘する。
品質や対応に不備ある
放射線量測定器が続出
事故発生当初から、政府の発表が二転三転するなど正確な情報が欠如していたこともあって、放射能に対する不安はいっこうに収まらない。
右のグラフを見ていただきたい。これは、震災以降、国民生活センターに寄せられた「震災関連」と「放射能関連」の相談件数の推移だ。
11年の年末にかけて、件数的には徐々に落ち着きを見せつつあるものの、ミネラルウオーターや生鮮魚肉、野菜といった食品の安全性をはじめとする放射能関連の相談が、相変わらず3分の1以上を占めている。
不安が高まれば、その心の隙に付け入ってひと儲けしようという連中がうごめくのは世の常というもの。その一つが、いまや1万円以下のものから、iPhoneに接続すれば測定できるものまで数多く現れている放射線量測定器だ。
「通信販売で購入したが、離れた3県で同じ値になるので信用できず、解約・返金を申し出たが業者に拒否された」「通販で購入した測定器が約2ヵ月で動かなくなった。1年間の保証付きだが業者に連絡が取れない」など、国民生活センターには品質や解約に関するものが多く寄せられている(下グラフ参照)。
次のページ>> 風力発電や浄水器の未公開株詐欺も横行
国民生活センターが調査した測定器。ほとんどが正確ではなく、購入は避けたほうがいいと呼びかけている
Photo:JIJI
事態を重く見た国民生活センターでは、これまで2度にわたって測定器の性能調査を実施しているほどだ。
こうしたものは、まだかわいいほうだといえる。放射能を分解する力があり、「世界的な有名大学の研究チームも認めている」とのうたい文句で、数種類の酢を混ぜただけの「奇跡の水」が2万円あまりで売られているし、単なる水を「放射能物質を体外に排出する効果がある」として販売しているものもある。
これらは明らかに放射能に便乗した詐欺商法。すでに警察に摘発されているケースもいくつか出てきているが、それでも「効果はあるはずと信じ込む人が後を絶たず、いまだ売れ続けている」(業界関係者)というから事態は深刻だ。
風力発電や浄水器の
未公開株詐欺も横行
対象は食品にとどまらず、あらゆるものに広がりを見せている。代表例が未公開株だ。
昨年末のことだった。都内在住の男性の元に、一本の電話がかかってきた。
「風力発電の会社の株を持っていると聞いたが、2倍で売ってくれないか」
その会社の名前さえ知らない男性が、株など持っているわけがなかった。ところが数日後、突然ダイレクトメール(DM)が届き、そのなかには風力発電を展開しているという会社のパンフレットが入っていた。
後日、DMを送ってきた業者から電話がかかってくる。
「原発事故の影響で、今後は風力発電が注目されることは間違いない。だからこの会社は有望だ。あなただけに特別教えるが、今なら未公開株をほかの人より安く買うことができる」
次のページ>> 浄水器関連会社などの未公開株に関する相談も
2倍で買い取ると言ってくる人もいるくらいだから将来、値上がりするのは確実だろうと考えた男性は、未公開株を購入してしまう。
すると今度は証券会社を名乗る人物から「買い増ししてほしい」という勧誘の電話が頻繁にかかるようになり、ようやく「おかしい」と気づいたという。
これは、みんながグルになって行う、いわゆる劇場型の未公開株詐欺。国民生活センターには、このほか放射能対策に効果があるとする浄水器関連会社などの未公開株に関する相談が寄せられているという。
放射能関連以外にも、被災地の復興を支援する会社や、鉄道建設関連業者など、震災便乗型の未公開株詐欺も横行、すでに被害者が出ている模様だ。
原発事故の発生からまもなく1年。除染も進まず、不安がつきまとうのは致し方ない。しかし、心の隙に付け入る“わるいやつら”がいることも肝に銘じておく必要がありそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)
http://diamond.jp/articles/-/16296
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。