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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34595 Financial Times
周縁国の苦境をよそに信用ブームに沸くドイツ
2012.02.22(水)2月21日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ドイツは今、銀行にとって安全な投資先となっている(写真はBMWの工場)〔AFPBB News〕
ドイツのフランクフルトに本社を構える製薬会社メルツ(同族経営の株式非公開)にとって、ユーロ圏の周縁国で猛威を振るう危機は、地理的な距離に限らず、遠い世界での話になっている。
ギリシャなどでは銀行が難を避けようと門戸を閉ざし、企業は貸し渋りに見舞われているが、メルツの最高財務責任者(CFO)を務めるマチアス・フォークト氏によれば、ドイツの銀行は融資をしたがっているという。
「信用収縮の兆しなど、私は全く感じていない」とフォークト氏。メルツには、欧州最大の経済大国であるドイツで「ビジネスを拡大しようとしている」外国銀行が次々にアプローチしてくるそうだ。「どの銀行も、融資の実行には何の問題もないと言っている」
同社は、ユーロ圏の危機にもかかわらず、融資がかつてないほどに受けやすくなったと語る多数のドイツ企業の典型だ。
欧州では今、経済の強い国と弱い国の間で、驚くべき資金の逆流が生じている。この流れがしばらく続けば、ユーロ圏の不均衡が一部是正されることになるだろうが、ドイツの銀行や輸出業者がひどい副作用に悩まされる恐れもある。
10年前には「欧州の病人」だったドイツに資金が逆流
今から10年前のこと。ドイツをはじめとするユーロ圏諸国の銀行は、低金利が信用バブルと住宅建設ブームを煽っていたギリシャやスペインといった国々への融資に熱心だった。対照的に、低成長に喘ぐドイツは「欧州の病人」だった。
やがてソブリン債務危機が発生し、銀行は周縁国での融資に及び腰になるか、融資ができない状態に陥った。だが、今度はドイツの健全な輸出主導型経済が資金を引き寄せている。
ドイツ連銀のデータによれば、ドイツの銀行による外国銀行および外国企業への融資は2007年末以降、4800億ユーロ(率にして約20%)減少している。ところが、ドイツ国内の銀行および企業への融資は、同じ時期にほぼ2000億ユーロも増加している。
ギリシャなどの周縁国の企業は資金不足に汲々としているのに・・・〔AFPBB News〕
また、ドイツでは同じ時期に、企業と個人の預金が純額で3900億ユーロ近く流入している。
「銀行は資金を運用する必要があり、ドイツは現時点では安全に見える、ということだ」。格付け会社フィッチの銀行業グループに籍を置くミヒャエル・ドーソンクロップ氏はそう語る。
おかげで、資金需要のあるドイツ企業にとっては、融資が受けやすく金利も低いという状況が生まれている。金融当局からバランスシートの強化を求められている銀行は融資残高を高水準にしたくないにもかかわらず、だ。
融資の受けやすさを測る各種の調査によれば、融資は2008年に金融危機が拡大する前と同じくらい利用しやすくなっている。建設会社を対象にした同種の調査によれば、過去20年間で最も借りやすい状況になっているという。
ドイツの貯蓄銀行430行と信用協同組合1200組合――この2種類の金融機関が主な貸し手――による融資は、この危機にもかかわらず増えている。
好業績のドイツ中小企業に狙いを定めた融資合戦
ハイテクを駆使した義足や車いす、リハビリ機器などを製造する株式非公開企業、オットーボック・ヘルスケアのCFO、ハリー・ウェルツ氏は、「好業績のミッテルシュタント(中小企業)に銀行側がとても融資したがっている様子が明らかに見て取れる」と述べている。
ドイツの銀行と外国銀行は「低リスクのドイツ企業に狙いを定めて魅力的な条件を提示している」とウェルツ氏は言う。
ドイツ企業はこれまでずっと、財務の強化と借入金の削減に努めてきた。そのため、銀行から見た融資先としての魅力は高まったが、借り入れ需要は逆に減っている。
ドイツの貯蓄銀行430行を代表する団体によれば、年間売上高5000万ユーロ以下の小企業では自己資本がかつてないほど蓄積されており、売上高に対する比率は2006年の11%弱から2010年の18%強に高まっているという。
「ドイツ企業は資本のバッファーを強化してきたから、過大な借り入れ需要は生じないだろう」。ドイツ機械工業連盟(VDMA)のヨーゼフ・トリ シュラー氏はそう話す。またコメルツ銀行のカトリン・シュタルク氏によれば、銀行が企業セクターに認めたクレジットライン(融資枠)のうち40%は使用さ れていない。
Ifo経済研究所のハンス・ウェルナー・ジン所長は、ドイツに資金が戻ってくれば、この国の競争力回復に貢献したと見なされている労働市場改革とともに始まったドイツの変革に、一層弾みがつく可能性があると指摘する。
「資本の向かう先では景気が良くなり、経常収支が赤字になる。資本が出ていくところでは景気が悪化し、経常収支が黒字になる。これが資本主義の基本法則だ」
そのため、ドイツが強いということは、ユーロ圏内で早急な実施が求められているリバランス(再調整)の一環だ、とジン所長は考えている。「輸入が増えるにつれて、我々は少しずつ均衡状態に戻るだろう。均衡状態では、ドイツの経常黒字がいまよりもずっと小さくなる」
信用バブルなどの副作用の恐れも
しかし、この資本の移動はリスクを伴う。「ドイツ国内にあるわずかなビジネスを過大な量の資金が追い回すことになるだろう」と格付け会社のフィッチは予想している。
「また、ドイツのような輸出主導型経済では、外国の借り手への融資が減らされると・・・中期的には、ドイツの輸出製品への需要が減少するという形でドイツ国内の借り手に影響が及ぶ恐れがある」
ドイツは信用バブルに直面しているのだろうか? 足元の需要の弱さを見る限り、大半の人はそうではないと思っているようだ。しかしIfoのジン所長は、ドイツの昨年の経済成長は「投資ブーム」によるところが大きいと述べ、住宅価格が上昇していることを指摘している。
実際、ドイツ連銀が20日発表したリポートによれば、125都市で調査した結果、居住用不動産は2011年に5.5%という「力強い価格上昇」を見せたという。「我々は、スペインで見たような住宅ブームの入り口に立っている」とジン所長は見ている。
ドイツ連銀が抱える多額の債権
南欧諸国はECBが供給する流動性に大きく依存するようになった〔AFPBB News〕
ジン所長はさらに、融資パターンの変化によって依存の危険な循環が生じる恐れがあると警告を発している。
ドイツやほかの国々の銀行が南欧諸国に融資したがらなくなったため、南欧諸国は欧州中央銀行(ECB)が供給する流動性に依存するようになった。
危機で打撃を受けたユーロ圏諸国でドイツからの民間資金の流入がECBからの資金供給に置き換わったことで、ドイツ連銀のバランスシートにはほかのユーロ圏諸国の中央銀行に対する債権が約5000億ユーロも積み上がっている。
ユーロ圏の中央銀行の間で使われている資金決済システムにちなみ、「Target2」債権と呼ばれているものだ。
ECBの政策立案者らは、この巨額の債権のリスクを軽視している。ユーロ圏の中央銀行が損失を被った場合、その損失は中央銀行間で平等に負担するのが通例だ。
ユーロ圏が分裂したら・・・
しかしジン所長は、もしユーロ圏が分裂したらドイツはこの債権により多大な損失を被るだろうと指摘している。これは、ユーロ圏救済を巡る議論でドイツの政治家の立場を弱くしてしまう状況だ。
「誰もが知っているように、ユーロ圏が分裂したら、ドイツがこの資金を取り戻すのは難しくなる」とジン所長は言う。「分裂を心配すればするほど――心配するのはもっともなのだが――それを回避するために自分の財布を開く可能性が高くなるはずだ」
By James Wilson
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34571 The Economist
米国経済:過剰な規制に苦しむ米国
2012.02.22(水)2月18日号)
自由放任主義の国が、過剰かつ出来の悪い規制で窒息しそうになっている。
自由放任主義であるはずの米国が、過剰な規制でがんじがらめになっている〔AFPBB News〕
米国人は、馬鹿げた規制を笑い話の種にするのが大好きだ。フロリダ州には、自動販売機にラベルが付いていない場合は通報するよう利用者に促すラベルを自動販売機に貼付することを義務づける法律がある。
連邦鉄道管理局は、すべての列車の正面に「F」とペイントしなければならないと定めている。どちらが前でどちらが後ろかを分かるようにするためだ。
メリーランド州ベセスダのおせっかいな役人は、子供たちが出していたレモネードの屋台を閉鎖した。起業精神に富んだ子供たちが販売免許を持っていないというのが、その理由だ。滑稽な例を挙げればきりがない。
だが、米国のお役所仕事は、笑いごとではなくなっている。問題は、馬鹿げていることが明らかな規則ではない。それ自体は理にかなっているように見えながら、全体として膨大な負担を課す規則が問題なのだ。
複雑怪奇な規制
米国は自由放任主義の本拠であるべき国だ。昔から干渉好きの政府とブリュッセル発の命令に生活を束縛されているヨーロッパ人と違い、米国人は良くも悪くも、選択の自由を持っているとされる。だが、しばらく前から、米国はその理想から外れてしまっている。
2010年のドッド・フランク法を見るといい。金融危機の再来を防ぐというこの法律の意図は気高い。戦略も理にかなっている。
透明性を向上させ、銀行が過剰なリスクを冒すのを食い止め、不正な金融慣行を排除するという戦略だ。さらに、足元がぐらついた大手金融機関に介入し、段階的に縮小する権限を規制当局に与えることで、「大きすぎてつぶせない」という問題に終止符を打とうとした法律だった。
本誌(英エコノミスト)は法案成立当時、そうした目標を支持していたし、今でも支持している。だが、ドッド・フランク法はあまりにも複雑で、しか もますます複雑になっている。848ページという長さは、1929年のウォール街の大暴落後に制定された規制法、グラス・スティーガル法の23倍もの分量 だ。
さらに悪いことに、1ページおきに、さらなる詳細を書き加えることが規制官庁に求められている。そうして加えられた説明の中には、それだけで数百ページに上るものもある。
例えば、銀行の危険な自己勘定取引を制限する「ボルカー・ルール」には、383項目の質問が含まれ、それがさらに1420項目の下位質問に分かれている。
中国政府とニューヨークの本誌特派員を除けば、ドッド・フランク法を実際に通読した人はほとんどいないだろう。どうにか理解しようと苦労している 人がいるとしたら、それは何よりも、まだ書き込まれていない詳細があまりにも多いからだ。この法律が制定を求める400の規則のうち、完成しているものは 93にすぎない。
つまり、米国の金融機関は、一部は理解不可能で、一部は内容を知り得ない法律を遵守するための対策を取らなければならないのだ。
水上スキーの火災
ドッド・フランク法は大きな潮流の一端にすぎない。民主党政権も共和党政権も山のような規則を追加し続けてきた。撤回されるものは、ほとんどない。
共和党はテロリストを阻止するための規則を制定してきた。それにより米国内の飛行機による移動が苦行となり、大勢の聡明な移住者が行き先をカナダ に変えた。民主党は社会保障制度を拡大する規則を作っている。バラク・オバマ大統領による2010年の医療制度改革には、多くの長所がある。特に、健康保 険の国民皆保険化を試みている点は評価できる。
だが、医療制度の圧倒的な複雑さはほとんど軽減されず、悪化の一途をたどっている。米国では、1時間の治療につき少なくとも30分の事務処理が発生する。丸々1時間が事務仕事になることも少なくない。
2013年には、病院が償還請求できる疾患や外傷として連邦政府が定めるカテゴリーの数が、1万8000から14万に増加する。例えば、オウムが原因の外傷に関連する条項だけで9つ、水上スキーの火災による火傷に関連する条項も3つある。
米国の法律があまりにも複雑化している要因は2つある。1つは、尊大さだ。議員の多くは、あらゆる事態をカバーする規則を制定できると信じているように見える。
その例は、単にうっとうしいだけのもの(箱に入れなければならないクレヨンの本数を定めるコロラド州の託児所向けの法案など)から妄想的なもの(金融機関が将来思いつくであろうあらゆる卑劣な手段を予想し、禁止できると信じるドッド・フランク法のうぬぼれ)まで、幅広い。
こうした複雑さは、不正を防ぐどころか、ずる賢い人が罰を受けずに悪用できる抜け穴を生み出している。
米国の法律を複雑にしているもう1つの要因が、ロビー活動だ。政府があまりにも多くの活動をこと細かに管理しようとしていることが、利益団体にとって特別扱いを求める大きな動機となっている。
反対論も多かったオバマ大統領の医療制度改革法には、圧力団体に有利な条項が山ほど盛り込まれた〔AFPBB News〕
数百ページに及ぶ法案の場合、議員がとりまき連中や選挙資金の寄付者を利する条項を紛れ込ませるのは難しいことではない。
医療制度改革法には、圧力団体に有利な条項が山ほど盛り込まれた。温室効果ガスを規制しようとして失敗した米国議会の最近の試みは、さらに悪い例だろう。
複雑さに対応するには費用がかかる。エンロン流の不正の防止を目的としたサーベンス・オクスリー(SOX)法により、米国の株式市場への上場が非常に難しくなったせいで、企業は他国での上場や非公開の維持を選択することが多くなっている。
世界の新規株式公開(IPO)に占める米国の割合は、同法に若干の修正が加えられたにもかかわらず、2002年(SOX法成立年)の67%から2011年には16%にまで低下した。
米国中小企業庁(SBA)の依頼で実施された調査によれば、各種の規則全般により増加するコストは、従業員1人当たり1万585ドルに上るという。失業率が現状程度にとどまっているのが不思議なくらいだ。
法の簡素化が必要
民主党は規則の簡素化が必要だと口にするが、実践が伴わない。オバマ大統領が任命した規制の総責任者は、新規則がコスト効率の良いものにするためだったはずだ。だがオバマ政権には、利点を誇張し、コストを過小評価する傾向がある。
共和党は、オバマ大統領の医療制度改革法とドッド・フランク法を撤廃し、多くの政府機関を丸ごと廃止すると大言壮語しているが、それに代わるものについては大雑把にしか説明していない。
米国に必要なのは、規制に対するもっと賢明なアプローチだ。まず、すべての重要規則を対象に、独立した監視機関による費用対効果分析を実施すべきだ。その結果は、規則を発効させる前に公表する必要がある。
また、すべての重要規則にサンセット条項を付け、議会が明示的に再承認しない限り、例えば10年後には失効するようにする。
さらに重要なのは、規則の簡素化だ。規制当局があらゆる目的にかなうマニュアルのような規則を作ろうとすれば、本当に重要な命令・禁止事項が無数の言葉の海に沈んでしまう。
大枠の目標を定め、それを達成するために絶対に必要なことのみを規定する方が、ずっと効果がある。議会は簡潔な法律を可決し、法の執行は規制当局に委ねるべきだ。
規制が米国経済の息の根を止めてしまうリスク
そうしたアプローチは、選挙で選ばれたのではない官僚に大きな権力を与えすぎることになるだろうか? 官僚の説明責任を強化すれば、そうはならな い。理不尽な判断に対しては、迅速に不服を申し立てられるようにする。誤った判断をした監督担当者は容易に辞めさせられるようにする。
そのようにしても、複雑な現代社会の規制に不可避な困難を解消できるわけではない。だが、規則が米国経済の息の根を止めるという真の危険を緩和することはできるはずだ。
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