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やっと退院できてアパートを借り、新しい独身生活をはじめています。これまでの社員寮生活は肌にあいませんでした。ところが病院は、勤務OKの診断書を書いてくれません。心臓から聞こえるノイズのためとか。そこで今は貯金を切り崩し、歩きまわり、いろんな生活道具を買い集めています。鍋とかデスク、ベッド、冷蔵庫なんかを。
こんなとき、街のリサイクル・ショップは助かります。たとえばデスク。一人用ソファーをセットにすると、新品なら3万円でも足りません。これをリサイクル・ショップで探しあて、
¥6000(デスク)+¥7800(ソファー)=¥13800
で入手できました 。
ですが、安ければいいってわけじゃなく、安く買えたからいいってわけでもない、ですよね。よくわかっています。これじゃ新品の家具は売れず、不景気が進行するだけです。やがてリサイクル・ショップの商品も買えなくなるでしょう。他にテレビ、冷蔵庫、オーブンレンジなどを新品で購入すれば、十万円は・・・。サラ金の世話にならないかぎり、ぜったい買えません。こうして貧乏な消費者は、新品が売れにくい社会を歩き回り、デフレを望みつづけます。
ほかの皆さんはどうでしょう。銀行からの融資がむずかしく、また借りるのも不安な現代では、輸出入関連にかぎらず、零細、小、中企業の順にギリギリまで人を減らし、給料やボーナスを加減していることでしょう。従業員たちと一緒に働き、顔を合わせ、会話する中小・零細の企業主には、自分や家族だけが、いい目を見ればOKと考える者はいません。そんな企業主からは従業員が遠ざかり(情報ネットワークがある)、会社は資金不足以外の主因で倒産に追い込まれ、消え去るからです。
ここにも、デフレ社会を煽る姿が歴然と観察できます。人件費、材料費を抑制して支出を抑え、企業主とその家族と、従業員の生活力を脆弱化させ、あるいは破壊して、市場の冷え込みを誘導しています。デスク+ソファセットを¥13800で手に入れたと知ったら、彼らは羨ましがるんじゃないでしょうか。
デフレ社会を望む、煽るとはいっても、倫理・道徳的な判断を下しているわけではありません。わたしたちは長引くデフレ不況の被害者であり、その中で、やむを得ずの選択肢をたどっているだけです。デフレ不況を深化させる方向へと。よって倫理的、道徳的には、被害者であり、加害者でもある。これが正しい判断かと考えます。
では、お金持ちはどうでしょう。金融業を除く大企業の役員たちは? 大王製紙事件、オリンパス事件をつうじて、業績悪化に焦っている姿が想像できます。世界も国内も市場が冷え込み、デフレ・円高ですから、当たり前でしょう。焦りによる正社員の大量リストラ。そして不足する人間を安価な非正規で、つまりバイトで雇用。こうして彼らは、際限のない人件費の削減に動いています。これがデフレ不況を煽り深化させる行為ではないと、誰が考えられるでしょう。
銀行は銀行で、本来の金貸し業を忘れて融資を渋り、市中における通貨の流通を阻害し、デフレ不況を煽っています。融資による利子を集めて食うことを忘れた金融業者は、その習性を活性化させ、投資への依存度を高めます。不況下の融資リスクを避けて市中の通貨量を抑制し、デフレを誘導する結果、投資リスクを呼び込んでいます。リスクをリスクで補おうとするのです。
デフレ不況を深化させ、あるいは無視して、投資リスクを選択するのは銀行だけではありません。投資会社、投資信託、、保険会社、年金機構など、従来から「機関投資家」と呼ばれてきた組織はみんなそうです。銀行はそのひとつにすぎません。
市中に通貨は回りませんが、彼ら機関投資家の間では、皮肉にも盛んに通貨が流通しています。その第一の理由は「為替差益」を得るためでしょう。海外に旅行する人々は、銀行までいって円をドルに交換します。このとき銀行に手数料を払いますが、円高のため、旅行者は過去よりも得しているはず。この得が、変動する為替レートを利用した「為替差益」です。金融業者たちは、変動する為替レートによる自己資本の目減りを防ぐため、また為替差益を得るために、円やドル、ユーロといった通貨を大量に売り買いしています。
この記事では、おもにデフレ不況に苦しむ日本と日本人にフォーカスしていますが、為替取引に言及する以上は、世界中のおもな銀行(中央銀行を含む)が参加する「インターバンク」市場についても、簡単にふれておかなければなりません。通貨の売り買いといっても、麻薬を取引するギャングたちのように、その都度、円やドルがぎっしり詰まった金属製のスーツケースを輸送するわけではありません。今日では、インターネットを利用した資金の付け替え――銀行のATMを利用して、自分の口座から相手の口座にお金を振り込むような――が多様されているようです。
ところで重要なのは、こうしたインターバンク市場で盛んにやり取りされる通貨が、有名になりつつある巨大ファンドと機関投資家によって構成された、いわば金融ネットワークの中だけでしか流通していないことでしょう。この流通は、通貨不足に陥った日本のデフレ不況を解決しません。金融ネットワークは市中と切り離されています。ですから、世界市場の苦しみとは無関係に、ただ金融操作のみによって自己資本を蓄積する者が発生してきます。彼らにとってデフレ不況など関心事の枠外にあり、この有りようはホームレスに近いといえなくもありません。いや、世界と国内市場の冷え込みによる為替変動を利用する点において、世界の苦しみを自己資本の拡大に積極的に利用しています。
こうして私たちは、貧乏人から大金持ちに至るまで、日本のデフレ不況を熱望し、その深化に手を貸していることがわかりました。この流れを押しとどめられる者は、もはや愛国的な政府と日銀以外にありません。「愛国的」とは、IMFや世界銀行、WTOなどのアドバイスに盲目的にならず、自国の特殊性を認識するという意味です。または、全国民あげての知的な反抗。この処方箋が現実的かどうかは、議論の余地もありませんが。(終)
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