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http://diamond.jp/articles/-/16107
老後不安の呪縛を捨てよう
山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
金融業界にとって最も恐ろしい本が現れた。そのタイトルは『年金15万円のゴージャス生活』(中町敏矢著、ぱる出版)。
著者は関西で経理マンとして定年までサラリーマンを勤め上げた方だが、ご夫婦で月15万円の年金で暮らし、この中から毎月1万円を貯金しているという。
詳しくは、この本を読んでほしいが、著者夫婦は、毎月、家賃3万5000円の市営住宅に住み、毎月の食費が4万5000円、被服費7000円、通信費8000円といった生活をされていて、趣味として英会話(頭の体操にいいらしい)を習い、近隣住民に開放されている大学や市役所の食堂や図書館などを有効に活用し、普通の現役サラリーマンよりもよほど文化的で健康的な生活を営んでおられる。年金をはじめとする各種制度の賢い使い方や、いざというときにどうしたらいいかについては、かつての経理マンらしい几帳面さで対策が書かれているから、15万円という金額に納得しない方にも一読の価値がある。
15万円で足りるか足りないかは地域や生活スタイルによるだろうし、年金を受け取るのが10年以上先の人は、実質的な年金の受取額自体をかなり割り引いて見込む必要があるだろうが、年金で20万円くらいの収入を見込むことができる方は少なくあるまい。もちろん物価も生活スタイルも違うわけだが、学生時代の生活を振り返ると、学費さえなければ、毎月20万円もあれば、まあまあの生活が送れたのではないか。
企業年金が手厚い会社に勤めるサラリーマンや公務員などは毎月もっと多額の年金収入を見込むことができるはずだ。
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この本の著者も指摘しているように、将来、公的年金は現在の受給者ほどの「使いで」がない額に削られるだろうが(実質的に2〜3割の削減は覚悟しよう)、年金支給額の減額は、常識的には、あるときにいきなり行われるのではなく、なだらかに行われるだろう。したがって、年金の受給開始を早めるか遅らせるかの選択は、現在と同様に余命に関する予想で損得が決まることは変わるまい。一部の雑誌が推奨する支給開始年齢の繰り上げはトクにはなるまい(年金財政側は繰り上げ受給で「助かる」はずだ)。
さて、将来の実質的な年金受給額は細るとしても、その金額で文化的で楽しい暮らしは十分可能だろう。新興国では、日本の労働者の何分の一かの賃金で暮らしている。モノの生産効率は年々改善している。日本でも、低所得者が増えたら、その層に合わせた財やサービスが供給されるはずだ。
端的にいって、リタイアするときに何千万円も持っていなくとも、心配する必要はない。十分に楽しく、かつそれなりに格好よく暮らすことは可能だ。幸福感には、経済力よりも、本人の健康、能力、人間関係のほうが重要だろう。
人びとにこうした割り切りと余裕を持たれることは、金融業界にとって悪夢だ。わが業界は、長年にわたり、時には金融不安を、時には将来のインフレの可能性をスパイスにして味付けしながら、「老後不安」を主要な商材としてきた。
もちろん、高齢だろうと若かろうと、おカネがたくさんあって邪魔になることはない。また、生活のレベルを不連続に変えないためには、収入の一定割合を貯蓄に向けることは賢い習慣だし、せっかくおカネを持っているなら有効に増やすことを考えるのは悪くない。だが、将来の不安に駆られて、金融業界にたっぷり手数料を払う運用にすがるのは愚かだ。
http://diamond.jp/articles/-/16201
吉崎誠二 [船井総合研究所 上席コンサルタント 基礎研究チーム責任者 Real Estateチーム責任者]
2020年日本の不動産価格・地価を大胆予想
!3分で読める人口予測と地価予測の概略
今回の原稿では、これから先の地価や住宅価格がどう変化していくかを考えてみたい。
第93回や第98回で は賢いマンションの見分け方という、いわゆるミクロの視点で不動産・住宅について述べてきたが、今回はマクロの視点となる。この手の内容を述べるとき、数 式などを使ったとても難解なものか、あるいは預言者の言葉のようなものになりがちだ。しかし、ここでは分かりやすさを念頭に置いて、3分程度でざーっと読 んでいただけるものにした。ただ、未来のことについては、書き手の主観が多少なりとも入るのはご容赦いただきたい。
まずは人口と住宅・不動産の関連を見てみよう。
2030年ほとんどの都道府県で
人口減少が始まる
改めて言うまでもなく、不動産価格・住宅価格は人口動態の影響を受ける。そこに住む人が減れば、何か特別な付加価値がなければ、一般的にはそこにある土地の価値は下がる。
一般的に、建物そのものの値段はこうしたことに関係なく、仕様や使用材料などにより変わる。しかし、マンションのように建物と地面(土地)の価値に厳密な区別がつきにくい場合は、土地と同じだろう。
人口の今後の推移は国立社会保障・人口問題研究所が予想している。
日本の人口は、第二次世界大戦の影響を除けば、明治以降ずっと右肩上がりで増え続けた。しかし、1995年には15歳〜64歳のことを指す生産者 人口の減少が始まった。生産と消費という社会の主役である層が減少し、社会全体の高齢化が進んだ。そして、日本の人口は2005年辺りをピークに減少しは じめた。
欧米の一部の国のように外国からの移民を受け入れれば、いまのような深刻な人口減少を食い止められたかもしれないが、移民の受け入れは、様々な問題をもたらすだろう。
そして、2020年――。日本はどうなっているのだろうか。
次のページ>> 地方都市は下落止まらず大阪も例外ではない
徐々に人口は減っているものの、社会の仕組みや経済、東京、大阪などの大都市圏の様子にそれほど大きな変化はないだろう。ただし、すでに日本海側の いくつかの県や四国の県などで人口が大きく減っているように、地方都市では人口が大きく減ると予想されている。もしかすると、県と県を統合するという話が 現実のものとなっているかもしれない。
さらに、それから10年後の2030年。現在働き盛りの40歳の人は、58歳になる。そろそろ定年が近づく頃だ。この頃になると、かなり大きな変 化が起こっていることだろう。なんといっても、東京を含めた日本のほとんどの県で人口減少が起こり、秋田県などは現在から4割近くも減少すると予想されて いる。世帯数も2015年の50600世帯をピークに減少が始まる。
地方都市は下落止まらず
大阪も例外ではない
では、不動産価格・地価はどのような影響を受けるのだろうか。
はっきりと言えるのは、3大都市圏と沖縄を除く、地方各県・各都市の商業地の地価は、多少の上下はあれども値下げ傾向にあるということだ。これら の地域の小売業は、相当厳しい経営環境になることは間違いない。地方の住宅地は商業地ほどではないにしろ、地価が今よりも浮上する可能性は少ない。ネガ ティブな予測であるのだが、先述したように人口減少に拍車がかかる状況では仕方あるまい。
次に3大都市圏の中で首都圏と関西圏がどうなるかを見て行きたい。
関西エリアは、近年大都市圏の中で人口減少がもっとも激しかった。最大の理由は地方都市からの流入が少なくなったからだ。かつては九州や四国エリ アからの流入が多かったが、1990年代後半を境にその人々は首都圏へ向かってしまった。都市部は地方よりも少子化傾向が強く、地方都市からの流入が少な くなると、すぐに人口減少に繋がる。もはや流入圏ではなくなっている。
その上、関西在住の人々の首都圏への流入が続いている。これは様々な要因があるといわれているが、大手企業の本社が東京に移転したこと(会社登記上の本社所在地は変わらず、事実上の本社機能の移転も含む)に伴う人々の移動が増えているからだとも考えられる。
一方、滋賀県の人口や世帯数が伸びていることが取り立たされているが、これはかなり特殊な要因がある。中京圏と関西圏のちょうど真ん中に位置する こともあり工場誘致や増設などに伴う人口増でこうした傾向は長く続くことは考えにくい。人口減少に伴う関西地域力の低下は続くだろう。
こうした状況下で、革命児として現れた橋下徹氏を中心とする政治家の方々がどう立て直すことができるのか。おおいに期待するとともに、かなりの困難があると予想する。なにしろ保守的な地域であり、「何とかなるよ」という楽観的な考え方の人々が多い。
それゆえ、関西エリアの不動産価格・地価の下落傾向は止まらないだろう。新たな産業の進展も見られず、ベンチャー企業の著しい活躍も聞かない。産 業が再び活気を取り戻し、人口流入が増えなければ、橋下氏がどれだけ行政改革を行っても関西の不動産価格・地価が上昇する可能性は低い。
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首都圏も楽観できず
予想の3つのポイント
ここまでの論調から考えれば、首都圏エリアは前途洋々のように感じるかもしれない。
ところが、1月初旬に大きくメディアで報道されたように、千葉県では2011年の確定人口ベースで予測よりも7年も早く人口減少が始まった。これ は海岸線エリアの震災による液状化の問題や、内陸部の常磐線エリア(柏・松戸など)で高濃度の放射線が検出された「ホットスポット」の問題によって、人口 流入数が減少したためということらしい。千葉県が7年も早く人口減少時代に入ったのはショッキングなことだった。
しかし、首都圏全体で見ると流入数は最も多いことに変わりはなく、人口増は2020年代まで続く見通しだ。この予測はおそらくその通りになると思うが、予想が裏切られることがあるとするならば、次のようなシナリオが考えられる。
人々が首都圏へ流入するタイミングで最も多いのは高校卒業の18歳から24歳のころで、まだ親からの援助が必要な年代だ。地方の景気がさらに悪化 すれば、親は物価の高い首都圏での生活を支えるだけの仕送りが厳しくなる。子どもがアルバイトで稼ぐことで生活費を補うことも、景気悪化によるアルバイト 時給の低下などが進み、厳しくなるかもしれない。そうなると、首都圏でさえも人口減少時代に予想よりも早く突入するかもしれない。
首都圏の不動産価格・地価の動向を予測するのは他のエリアに比べて難しい。人口流出入が激しく、目まぐるしく変化する都市環境よって付加価値が上下しやすいうえに、原因となる状況が読みにくいからだ。
とは言っても、予測するポイントは3つある。
1、人口流入・人口増が予想どおりなのか?
2、原発・震災がにどのくらい影響を与えるか。首都地震は起こるのか?
3、中国人富裕層の首都圏マンションの高い購買意欲が続くか?
中国人の動向を述べたのは、今後、大量の中国マネーが日本の不動産市場に押し寄せる可能性があるからだ。中国では不動産バブルが終わりつつあり、すでに価格は下落基調にある。中国人富裕層は本国での不動産投資を控えて、日本の首都圏不動産市場に目を向けているのだ。
全般的に地方と都市圏ともに下落方向へ進む
筆者は2020年までに政府が大胆な移民受け入れ政策は行なわないと考えている。また、そもそも出生率が急激に上昇するような即効性のある少子化 対策は考えにくく、人口動態の大きな流れは変わらないと見るのが自然だ。こうした見地から、2020年の不動産価格・地価を予想してみると、以下のように なるだろう。
・地方都市の地価の上昇可能性は低い。とりわけ商業施設は上昇可能性は非常に低い。
・関西圏は政治・行政改革だけでなく経済・産業改革(回復)が成功しない限り上昇可能性は低い(橋下氏の改革では経済・産業改革がポイント)。
・首都圏の今後の不動産・地下状況は読みにくいが、大きく低下することはないだろう。中国マネーと不動産ファンドの状況しだいでは上昇可能性もある。
・その他、詳しく述べなかったが沖縄エリアは上昇の可能性がある(人口動態、中国マネー)。
ちなみに、歴史上、不動産価格・地価の状況と経済状況(例えばTOPIXや日経平均)の動きは、よく似ている。2020年の日本経済の予測が、そのまま不動産価格・地価の予測となると言える。
2020年まで、あと8年。
<著者 プロフィール>
吉崎誠二 [船井総合研究所 上席コンサルタント 基礎研究チーム責任者、Real Estate チーム責任者]
1971年生まれ。立教大学大学院卒(比較組織ネットワーク学専攻)。不動産・住宅関連業界がメイン テーマ。電鉄会社・総合不動産企業・ハウスメーカー・マンションデベロッパー・住宅設備メーカーなどの戦略立案から戦術策定を行う。データ分析から導き出 す予測を基にしたコンサルテーションを展開。著書:『「消費マンション」を買う人 「資産マンション」を選べる人』他7冊。
リアルエステートビジネスチームサイト〜不動産ビジネスの経営戦略コンサルティングサイト〜
質問1 2020年までに、土地やマンション、一戸建て住宅などの不動産を購入しようと考えている?
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