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17日の東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=79円18銭に下落した。政府・日銀が大規模な介入を実施した昨年10月31日以来の円安・ドル高水準だ。先進各国が金融緩和競争を繰り広げるなか、14日に追加緩和に踏み切った日銀が一歩踏みでる形となったため、一部の市場関係者が円を元手とする「キャリー取引」に着目。円を売って他の通貨を買う動きが強まったことが、円安の流れに拍車をかけた。
「円キャリー取引が復活した」(クレディ・スイス証券の深谷幸司外国為替調査部長)。この日の東京外国為替市場を駆け巡ったのは、こんな言葉だ。円キャリー取引とは低金利の円を調達して外為市場で売り、他の通貨建ての資産につぎ込んで高収益を狙う手法。オーストラリアドルなどに円キャリーの資金は回っているとみられ、17日の円の対豪ドル相場は10時半前に1豪ドル=85円50銭近辺に下落し、約半年ぶりの円安・豪ドル高水準をつけた。
円キャリーを勢いづかせているのは日銀の追加緩和だ。資産買い入れ等基金の規模を10兆円増額したことが高い関心を集めている。米国も欧州も緩和局面のさなかにあるが、米連邦準備理事会(FRB)が1月末に決めたのは超低金利局面を長期化させるという内容。「量的緩和の第3弾(QE3)」に踏み切った訳ではない。これに対して日銀は、市場の不意をつく形で買い入れ増額という「実弾投入」に踏み切った。
さらに金融政策が目指す物価目標を明示することで、デフレ脱却への強い姿勢も演じてみせた。さらなる緩和があるとの観測を広げていることも、円がキャリー取引の「調達通貨」に選ばれる要因となっている。「金融政策の『シグナル勝負』で日銀に軍配が上がった」。バークレイズ銀行の山本雅文チーフFXストラテジストはこう指摘する。
もっとも、日銀の「緩和勝ち」だけが円安をもたらしている訳ではない。伏線はあった。
「2月上旬から海外勢は円売りに転じ始めていた」。こう話すのは三菱東京UFJ銀行の内田稔シニアアナリストだ。円が75円台を目前に伸び悩んだのは2月1日。岩盤のように堅い上値に突き当たった円相場を見て、外為関係者の間では「覆面介入か」との臆測が飛び交った。これが海外の投機筋を動かす。76円突破を「介入発動ライン」とにらんで下値模索に転じ、円売りの「口実」を探し始めたためだ。
チャート上の節目も円安基調に弾みをつけた。日銀が追加緩和を決めた14日の東京市場では円相場が一時78円08銭まで下落。「200日移動平均」である78円05銭を割り込んだことがきっかけとなり、「海外ファンド勢がいっせいに円売り・ドル買いに動いた」とHSBCの花生浩介外国為替本部長は語る。昨年8月と10月の円売り介入時でさえ、その時々の200日移動平均を割り込むことはなかっただけに、多くの市場関係者の背中を押したという。
「このまま春の兆しのようになってくれるといい」。安住淳財務相は17日、円安が進んだことについて日経QUICKニュースにこう語ったうえで、日銀の追加緩和を「時宜にかなっていた」と持ち上げた。意図したかどうかはともかく、日銀は「世界的な緩和競争」と「相場の流れ」がうまくかみ合った絶妙のタイミングで追加緩和に踏み切った格好。勢いづく円安基調はその証左だ。
円相場にとって当面の下値のメドとなるのは79円55銭。8兆円強を投じて空前絶後の大規模介入に踏み切った昨年10月31日に付けた安値だ。「緩和を材料にした円売りは一巡し、一段の円安は難しい」(外資系銀行)とみる市場関係者も少なくない。だが、この「介入後安値」をも割り込むような事態となれば、本格的な円安トレンドに弾みがつくとの観測がでている。追加緩和の効力が試されるのはこれからだ。
〔日経QUICKニュース 赤尾朋子〕
http://www.nikkei.com/markets/features/26.aspx?g=DGXNASFL170DF_17022012000000
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