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日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>The Economist
年配者は若者に「職」を譲るな 働かない市民への支出は繁栄をもたらさない
• 2012年2月17日 金曜日
• The Economist
「倒れるまで働け」――これは定年延長を求める議論を揶揄してよく使われるフレーズだ。かくいう小誌(Economist誌)も、定年延長を支持する立 場を取っている。人々の平均寿命は着々と伸びているのに、働く年数を増やしたいと思う人は少ない。事実、フランスの野党・社会党は、政府の改革――定年を 60歳から62歳まで引き上げた――を覆そうと狙っている。
就業年数の延長に人々が反対する背景には、「35〜40年も働けば、いい加減もう休んでいいだろう」という考えがある。だが「若者が職に就けるように年 配者は身を引かなければならない」と考える人が多いのも理由の1つだ。そんな気持ちを代弁するかのように、英フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、 ルーシー・ケラウェイ氏は最近の記事で次のように書いている。「のん気な我々の世代がそこここに居座っているから、若者が先に進めない」。
経済学者であれば、この理論における欠陥を見抜くだろう。ケラウェイ氏の記事は「世の中には一定量の仕事しか存在しない」という考え方に基づいている。 この概念は、経済学で「労働塊の誤謬」と呼ばれているものだ。かつては女性の社会進出を阻む口実として持ち出された。今日でも、反移民の立場を取る政治家 が、移民は国内の仕事を奪う脅威だとしてこの理論を利用している。
高齢層の雇用率が高い国は、若年層の雇用率も高い
やっかいなことに、この「労働塊の誤謬」は撲滅するのが実に難しい。一見したところ、正しい理論のようにも思えるからだ。確かに、エネルギッシュな若者に職を奪われまいとする年配上司の姿は、誰にとっても馴染みがある。
こんな時は、何につけてもまず統計を見ることが重要だ――自分で感じたことや人から聞いた話も役に立つだろうが。冒頭の図は、OECD(経済協力開発機 構)に加盟する富裕国の雇用水準を示している。労働人口における最高年齢層(55〜64歳)と最若年齢層(15〜24歳)の雇用率を見ることができる。対 象国を4つのグループに分け、最高年齢層の雇用率が高い順に並べた。
もしも「労働塊」の理論が正しいのであれば、高齢層の雇用率が高ければ、その分、若年層の雇用率が低くなるはずだ(もしくはその逆)。しかしそんな傾向は微塵も見られない。高齢層の雇用率が高いグループは、若年層の雇用率も高くなっている。
この結果に、「この相関関係は、各国の経済が景気循環の異なるステージにあることを示しているだけだ」と反論することもできよう。つまり、経済が力強く 成長している国では高齢層、若年層にかかわらず雇用率は高くなるものだ、と。だが、この数年間は世界中が景気後退期にあり、回復のスピードも遅々としたも のである。そのため、高水準の雇用を維持することは難しい。中国など、急成長を遂げている国のほとんどはOECDに属していない。
早期退職プログラムを導入した企業は年金負担に苦しんでいる
では高齢層の就業が若年層の就職を妨げないのはなぜか。それは女性が社会に出ても男性が職にあぶれないのと同じ理由である。生計のために働く時、人は収 入を得る。そしてそのお金で、他者が生み出した商品やサービスを購入する。この場合の「他者」を構成しているのは老若男女のすべてである。
就業パターンもまた変化する。かつては大半が農業に従事していた。だがトラクターやコンバインが登場しても、失業状態が永遠に続いたわけではない。人々 は、まず製造業で、次にサービス業で、就職先を見つけた。しかも60代の人間は30代の時にしていた仕事には就かないかもしれない。
とはいえ、上述の理論やデータをいくら見せられたところで納得できない人もいるだろう。ではここで1つ、思考実験をしてみよう。高齢者が早期に退職した 場合、彼らは若い世代に依存することになる。国から困窮者向けの給付金を受けている層と同じことが、実は、個人年金の給付を受けている層についても言え る。年金の資金を生み出す株式配当や債券利息の支払いに必要な収益を、労働者に依存しているからだ。
実際、企業年金基金が赤字に陥っている理由の1つは、度重なる早期退職プログラムにある。これは“見せかけの節約“の典型的な例だ。短期的に給与の支払 額は減少したが、長期にわたる年金コストは増加してしまった。同プログラムを導入した企業は、80年代、90年代のような高収益の年金運用を期待して、長 期の年金コストを賄えると考えていた。
企業レベルで起きていることは、社会一般にも当てはまる。人々はこう考える――経済成長は続くから、定年後の生活が長くても何とかなるだろうと。だが経 済が成長するためには、就労人口を増やすか生産性を上げるかしかない。働かない市民への支出を膨らませる社会が、真の意味で繁栄を続けることなどあり得な いのだ。
もし早期退職が本当に生活水準の向上につながるのなら、何も60歳まで待つことはない。55歳にすればいい。仮に政府が退職年齢を40歳に引き下げれ ば、すべての若者が職を得て、みながぜいたくに暮らせることになる。だが悲しいかな、ギリシャ神話に出てくるロトパゴス族(ハスの実を食べ、無欲で平和に 暮らしている人々)の世界はあくまでも夢物語なのだ。
さあ、職場に戻ろう。
The Economist
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1843年創刊の英国ロンドンから発行されている週刊誌。主に国際政治と経済を中心に扱い、科学、技術、本、芸術を毎号取り上げている。また隔週ごとに、経済のある分野に関して詳細な調査分析を載せている。
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