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日銀の白川総裁が説明した目的を実現できるものではないが、日銀の「追加金融緩和策」をことさら批判する気はない。
日銀の立場上あのような説明になるのはやむを得ないとも思うが、菅−野田政権で画策されている消費税増税とも絡む問題なので、その内実を明らかにする必要があると思っている。
「原発」の危険性・必要性・持続性・経済性にまつわるウソとゴマカシは、3.11の福島第一原発事故以降だいぶ晒されるようになったが、官僚・政治家・学者・メディアがスクラムを組んで形式的主権者である国民を騙す国家レベルの“言論詐欺”=“洗脳行為”は、別に「原発」に限ったものではない。
国際問題は、米国支配層の尻馬に乗るだけで主体的に立ち向かうという機会は少ないので、米国的認識と米国的処方箋が“錦の御旗”のように流布されるにとどまっているが、内政に関しては、主権者である国民をゴマカしたり目くらましを浴びせることで自分たちの政策を実現しようとする手法が横溢している。
※ 財政政策や経済政策については気持ちが改善されたら(笑)、頭のなかでいろいろ考えていることを文章にしたいと思っているので、今回は要点のみにとどめさせていただく。
とんでもない量の放射能をばらまき福島を中心にとんでもない数の人々と自然環境に災厄をもたらし続けているなかでも恥知らずにも見せている政治家・官僚機構・学者・電力会社・大手メディアの原発に対する言論を見聞きしていると、消費税増税やTPP参加をめぐる言説と合わせて、気持ちががっくり落ち込む。
書いても仕方が無いという気持ちといつかずっと先のために有効かも知れないという気持ちのせめぎ合いのなかで少しずつ書いていければ思っている。
■ 日銀「追加金融緩和策」の目的
日銀が13〜14日に会合で決定した「追加金融緩和策」の目的は何なのか?実に簡単な話なのだが、昨今みられる金融・財政に関する諸政策は、「国債管理」をターゲットにしたものと考えると過つことがほとんどない。今回の政策もその例外ではない。
今回発表された「追加金融緩和策」は、「国債管理」の強化を第一義とし、効果は極めて限定的だがオマケとして「円高抑制」を目的にしたものである。
「国債管理」とは、既発国債利回りと新規発行国債利率の上昇を抑制することで、既発国債を大量に保有する金融機関の経営保全と財政における国債費増大の抑制をはかるというものである。
日銀が建前として掲げた目的であるデフレ脱却は、これまで何度も書いてきたように(日銀や財務省官僚もわかっていて実際に語ってもいるように)、インフレは金融政策で抑制できても、デフレ脱却は金融政策ではできないことから、真の目的に対する目くらましを意図したゴマカシの目的である。
経済成長(GDP増大)もそうだが、デフレ脱却=インフレへの転換は、賃上げ・資本形成(設備投資や公共投資)増加・赤字財政支出増加のいずかれかもしくはそれらの組み合わせによる国民可処分所得総体の増大でしか実現できないものである。
日銀の金融政策は、それらを実現するための貸し出しや国債購入を可能にするベースマネーやマネーストック(マネーサプライ)を増加させる“縁の下の支え”でしかない。
デフレ脱却は、日銀のサポートを受けた供給主体側と政府の行動や政策によってしか実現できないものである。
日銀はサポートを続けてきたが、輸出優良企業を中心とした供給主体側は、支払い給与総額の減少という“デフレ推進策”を一貫として採り続けてきた。
そのため、供給主体側の頂点にある経団連が不遜にも批判する政府の赤字財政支出増大によって、日本はかろうじて現在の経済水準が維持されているという悲劇的な状況に陥っている。
02年から08年にかけての戦後最長と言われた「異常円安景気」中も、経団連を中心とした優良企業は、膨大な利益を上げながら支払い給与の縮小に努め、内部留保と債務減少に励んだ。
日銀が政策金利を上昇させたことに見られたように、05年から07年にかけて、設備投資の増大などでデフレ脱却の芽も見えたが、国家社会をそれほど顧みない優良企業のデフレ維持行動のおかげでその芽は摘まれてしまった。
日銀が14日に表明した追加金融緩和策は、「消費者物価上昇率1%が見通せるまで強力な金融緩和を推進していく」と表明し、資産買い入れ基金を10兆円増額(総額65兆円)するというものだ。
できないとわかっているから政策目標とはしてこなかった日銀が、米国FRBに似せて、インフレ率と結びつけることで金融緩和策を継続する意思を表明したものと言える。
増加させる10兆円は全額を長期国債の買い入れに費やすというから、日銀の資産買い入れ基金による長期国債の買い入れ額は、年間40兆円規模に達する。
なぜかメディアはあまり説明していないが、日銀の国債買い入れは、資産買い入れ基金のみで行われるわけではなく、従来からの金融緩和策である月々1兆8千億円(年間21.6兆円)の公開市場操作による買い入れも継続して行われる。
この二つの政策を合わせると、日銀は、年間ベースで40兆円+21.6兆円=61.6兆円の国債を買い入れることになる。
40兆円なら、けっこう買うんだねという印象で済むが、61兆円ともなると、ええっ!と思う方も多いはずだ。そりゃあそうだ、61兆円と言えば、とんでもない額と言われた今年の国債発行額44.3兆円をはるかに超える金額レベルである。
単年度の国債発行額を凌駕するというだけではなく、今年度末の国債残高は668兆円と言われているから、年61.6兆円規模の日銀国債買い入れ策が継続すれば(インフレ率が“安定的”に1%に達しない限り続くはず)、11年も経てば、日銀以外の金融機関が保有する国債のほとんどが日銀に移ってしまうことになる。
むろん、「ゆうちょ銀行」や「かんぽ」のみならず日本の金融機関のほとんどが国債を主要な収益源にせざるを得なくなっている現状を考えれば、そうならないことはわかるのだが、計算上はそうなってしまう買い入れ規模なのである。
日銀がそのような「金融緩和策」を採った背景には、政治的圧力ではなく、財務省の意向があると考えている。
政治的圧力ならこの15年以上常に晒され続けてきたわけで、この間の自民党や民主党の国会議員による日銀批判は、今回の金融緩和策が「国債管理」のためではなくデフレ=不況からの脱却に資するものという印象にするための“合作行為”と受け止めたほうがいいだろう。
財務省が「国債管理」でいちばんナイーブになっている変化は、国債利回りの上昇(既発国債の値下がり)である。
巷間騒がれているような国債のデフォルトは、増税に向けた脅かしとしては重宝なテーマだと考えているかもしれないが、実際にそのような状況に追い詰められるとはまったく考えていない。
唯一とも言える危惧は、時価会計に移行したことで、金融機関が保有している国債の時価評価が低下することで生じる金融機関の経営危機と金融システムの混迷である。
国債利回りの上昇は同時に、新規国債の利率上昇や民間貸し出し金利の上昇を招く。現在のようなデフレ不況下でそうなれば、金融システムから実体経済まで経済社会全体がとんでもない災厄に見舞われることになる。
紙くずになる恐れもある民間発行の債券や株式とは違い、国債の時価が低下しても保有する金融機関が現実的な損失を被るわけではない。期限まで保有すれば、約定の利払いと元本償還をきちんと受けるからである。
保有国債の価格下落は、損失ではなく逸失利益の問題である。国債保有で固定化されているお金を、利率が上がるはずの新規発行国債(他の資産でもいいが)に振り向ければ、より多くの果実(利子)が手に入るという逸失利益である。
国債は財務省・日銀がコントロール可能な内国民で95%が保有されているから、投機的売り浴びせによる国債価格下落=利回り上昇は起きにくいが、ユーロ圏の国債市場をめぐる動きや国際収支(経常収支)の傾向を考えると、そう安閑ともしていられないと考えたと推測する。
オマケとした目的である「円高抑制」について簡単に説明したい。
日銀が国債を大量に買えば、ユーロ問題で退避したお金が日本国債に向かうことで利回りが低下したことでわかるように、金利は低下するはずである。少なくとも、買わないよりは金利上昇を抑制できることは間違いない。
外国為替レートは、長期的にはインフレ率の差で、短中期的には金利の差で規定されるものである。インフレ率の差で基本のレートが形成され、金利の差がそれにバイアスをかける。日々のレートは、それらをベースに、市場参加者の思惑が混じり合うことで動く。
金融緩和策に「円高抑制」を期待しても、長期トレンドを決するインフレ率の差は、米国のほうが日本より高いインフレ率なので円高誘導とならざるを得ない。
さらに、金利についても、短期は日米ともにゼロ金利政策を採っているが、長期金利(2年国債)は米国のほうが“低下余地”=日本より高い金利になっていることから、米国の金利が下がれば円高が進むことになる。
日米の金利差は1月中旬に0.08%まで縮小したが現在は0.18%まで拡大している。この間のやや円安傾向はここに理由があると考えている。日本に下落余地が少ないなかで、今後米国の長期金利が下がれば、為替レートは円高に振れることになる。
それでもぎりぎりまで金利を低下させて円高を抑制したいというのが、日銀の「金融緩和政策」の小さな目的だと受け止めている。
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