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http://diamond.jp/articles/-/16087Close-Up Enterprise【第71回】 2012年2月13日
テレビ崩壊で巨額赤字へ 存亡の機に立つ家電メーカー
大手家電メーカーの業績が壊滅的な状況にある。2011年度第3四半期の決算で、各社とも通期業績の大幅な下方修正を発表。パナソニック、ソニー、シャープの3社で、通期の最終損益は合計1兆2900億円の赤字を見込み、まさに存亡の機に立たされている。
まさに“悪夢”のような光景だ──。日本の大手家電メーカー3社(パナソニック、ソニー、シャープ)が揃って、主力商品だった液晶テレビの不振な どによ り、巨額赤字をふくらませる見通しとなった。死屍累々となった2011年度第3四半期(10〜12月期)の家電決算は、1日のシャープの会見で幕が開い た。
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「国内液晶テレビの想定以上の急激な市場悪化が起こった。金額ベースで(前年同期比)20%台です」。片山幹雄社長は開口一番、主力の液晶テレビ 「AQUOS」が置かれている悲劇的な状況について語り始めた。エコポイント需要によって支えられた一昨年の年末商戦から一転して、液晶テレビの売れ行き は激減し、頼みの国内マーケットの“底”が抜けたのだ。
結果は黒字から一転、過去最悪の2900億円の最終赤字に転落すると通期見通しを変更。テレビや太陽電池、携帯電話事業も軒並み赤字になり、将来の利益回復を見込んだ繰り延べ税金資産1190億円の取り崩しを迫られた。
5割減産に追い込まれたシャープの堺工場 Photo:読売新聞/AFLO
そんな苦境の象徴が、社運を賭けて09年10月に稼働させた堺工場(大阪府堺市)だ。世界最大級のマザーガラスを使い、液晶テレビなら40インチ 換算で1560万台の年産能力を誇る「モンスター工場」。当初はソニーや東芝といった大口需要家への供給も想定し、3800億円の巨費を投じた。
ところが年率30%を超える価格下落とコモディティ(汎用品)化、そして為替環境の悪化が、日本メーカーを急速に締め上げていった。液晶テレビは 「40インチでも5万円以下、32インチなら2万円台でも買える」(家電量販店関係者)という現実に、コスト競争力を失ったシャープの国内工場から、テレ ビ向けの外販需要は消えた。
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東日本大震災後の昨年4月、シャープは約1ヵ月半にわたって同工場と亀山第2工場の操業を停止して、約270億円の特別損失を計上した。
「いつまた工場が止まるかわからない」(業界関係者)。昨年秋からそうささやかれていた巨大工場は、1月から当面50%ほど生産停止をすることが発表され、過去最悪の赤字決算を迎える。
2日、今度はソニーが前回予想を1300億円下回る、2200億円の最終赤字の見通しを発表。震災やタイ洪水による700億円の営業利益減も大きいが、やはり最大要因はテレビだ。
すでにテレビ事業は8年連続赤字が確実の“札付き”だ。今年1月に韓国サムスンとの液晶パネル生産の合弁会社「S−LCD」を解消するため約 634億円の損失を計上し、営業損益は約2300億円の赤字と過去最悪となる。映画や音楽、金融など他部門の利益を文字どおり“丸のみ”する。
同日、社長兼CEOへの昇格が発表された平井一夫副社長は「ソニーの体験を楽しんでいただくため、テレビは大変重要。ロスを出さないビジネスにする」と力説したが、もはや一刻の猶予もない。
一方、すでに不振のテレビや半導体事業で巨額損失を織り込んでいたパナソニックが、製造業では史上最大級の7800億円の最終赤字となる。わずか3ヵ月で3600億円も下方修正した。なぜか。
三洋買収判断を問う
電池事業の危機
それはテレビ以外の分野でも、想定以上のスピードで競争激化の波にさらされているからにほかならない。
下方修正分のうち2500億円は、主に09年に買収した三洋電機の「のれん代」と呼ばれる資産のうち、価値がなくなったと思われる部分の減損処理 だ。具体的にはノートパソコンやモバイル端末に内蔵する民生用リチウムイオン電池、そしてDVDプレーヤーなどの受光部に使う光ピックアップという電子部 品の2事業が主な対象になった。
次のページ>> 日本の家電メーカーの“脱皮”するための時間はわずか
リチウムイオン電池はもともと三洋電機がトップメーカーで、経営統合後も世界シェア24%(テクノ・システム・リサーチ調べ)と1位を維持。しか し円高ウォン安の為替を背景に韓国メーカーに追い上げられ、収益構造が悪化し、「サムスンとの競争を厳しく見通して、毀損せざるをえない」(上野山実常 務)と判断した。
決算発表するパナソニックの大坪文雄社長 Photo:Christopher Jue/AFLO
環境エネルギー分野は買収時の注目点だったため、会見で「三洋電機とのディスシナジーが発生しているのでは」と、過去の買収判断を疑うような質問 も上がり、大坪文雄社長が「買収なくして新たな成長分野を見つけられたでしょうか。テレビと半導体を抱えて、どうできたでしょう?」と血相を変えて反論す るひと幕もあった。
家電メーカー3社で合計、1兆2900億円の最終赤字──。テレビを筆頭にしたデジタル家電の凋落は、日本の家電メーカーが新しいビジネスモデルへ“脱皮”するための時間が、残りわずかであることを物語っている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義)
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