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2013-01-11 陽光堂主人の読書日記
福島第一原発周辺での「手抜き除染」が問題になっていますが、下請け業者によって本来作業員に渡るべき手当が中抜きされていることが判りました。この除染作業は国直轄の事業で、危険手当は国から支給されています。特殊なシステムに便乗した悪質な遣り口であり、当局は厳しく対応すべきです。
東京新聞は、本日付でこう報じています。(http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013011190070424.html)
除染下請け 天引き横行 業者支払い日給1000円
東京電力福島第一原発事故に伴う国直轄の除染事業で、下請け業者が、作業員の日給から半ば強制的に宿泊代や食事代を天引きし、国が支給する危険手当の一万円のほかは、一日千円程度しか支払っていない実態が、作業員らへの取材で分かった。宿泊施設は、業者が国などから無料や安価で借りたもので、作業員から徴収した宿泊代のほとんどが業者の取り分と化す形となっていた。
除染作業は放射性物質にさらされる危険があるため、国は作業員に一日一万円の危険手当を支払っている。ところが、この手当は除染を請け負う業者を通じて支払われており、そのことが不透明な給料支払いを生む温床になっていた。
福島県田村市の除染現場の事例では、作業員の日給は、国が支払う危険手当の一万円に加え、福島県の最低賃金に近い約六千円を業者が日当として支払う二階建ての形を取っていた。
見掛け上は、合わせて日給一万六千円となるが、宿泊代や食事代として四千五百〜四千七百円を天引き。作業員が手にする額は一万千円強にまで目減りしてしまっていた。
危険手当の財源は税金で、本来的には作業員に直接支払われるべき性質のお金。業者は事実上、一日わずか千円強で作業員を雇っていた形になる。
業者のうまみになっているのが宿泊代や食事代。ある業者は、国から宿泊施設を無料で借りているのに、作業員に朝夕の食事込みで四千五百円で貸し付けていた。
別の業者は、明細を示さず宿舎と食事付きで日当一万千円の条件で作業員を集めてきたが、危険手当が支給されることが作業員の間で広まり説明を求められると、危険手当を含む日給一万六千円から宿泊代三千七百円と食事代千円を差し引いたものだと説明した。
このケースでは、作業員は一室四千円のバンガローに四、五人で宿泊。業者は宿泊費として計一万四千八百〜一万八千五百円を集めており、四千円との差額が利ざやになっている。業者の関係者によると、食事も原価は三百円程度に抑えるようにしていたという。
不透明な給料の実態のほか、雇用契約書を交わさず口約束だけの人も多かった。
管轄する福島労働局の担当者は、こうした実態をある程度は把握し、改善指導もしているというが、田村市の現場以外でも同様の不透明な給料問題が起きていた。
本紙の取材に対し、元請けゼネコンの広報室は「過去には危険手当がきちんと作業員にわたっていない例もあったが、きちんとわたるよう下請けへの指導を繰り返している。雇用条件などは法にのっとった契約になるよう個別に指導している」とコメント。下請け企業からは十日までに回答がなかった。
<危険手当> 環境省は福島事故に伴う除染で、国直轄の事業では被ばくの危険がある作業員に「特殊勤務手当」を支払っている。国家公務員が警戒区域に入るときの手当を目安に、1日1万円と決められた。一方、もっと危険性が高い福島第一原発で働く作業員に対しては、東京電力が放射線量など現場の状況に応じて危険手当を支払っているという。ただ、作業員には十分届いていないためか除染の危険手当の高さへの不満も出ている。 (下線は引用者による。以下同じ)
要するに、国が支給する危険手当を作業費に流用していたわけで、請負費用が殆ど丸々悪徳業者の利益になってしまっているのです。悪い人間は昔からいますが、最近はとみに増えているようで、それだけ日本人が劣化しているのでしょう。
管轄が環境省と厚生労働省に跨っているのも問題で、最低賃金の捉え方が違っているので、これが業者を利する形になっています。除染作業は危険ですから、危険手当は最低賃金とは別にカウントされるべきですが、厚生労働省は危険手当も含めて最低賃金を算定しています。
だから業者の対応も、一概に悪いとは言えないのです。厚生労働省の考え方が非人道的で可笑しいのです。新大臣の田村憲久は生活保護費のカットを早速言い出していますが、この役所は国民に冷たいようです。現行の生活保護制度は杜撰な運営がなされていますので、これを改善することから始めるべきです。
もちろん、悪徳業者の責任は重大で、こんなに搾取されていたら作業員も規則通り除染できません。現場責任者の誘導もあって、手抜きが横行する結果となっています。
除染は無意味というのが国際的な常識ですから、この体たらくに諸外国も呆れています。放射性物質は消えてなくなるわけではありませんから、除染しても他の場所に移るだけです。川に流すぐらいなら、そのままにしておいた方がよいに決まっています。現場の人だってそれぐらい解るはずです。
それでも、避難している人が帰村するためには必要な作業だという意見もあることでしょう。ところが、全村が避難した飯舘村村民の7割近くは除染が終わっても帰村しないと述べています。東京新聞は、本日付でこう報じています。(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013011102000115.html)
「除染目標達成でも帰村せず」 飯舘村民の7割 アンケート
東京電力福島第一原発事故で全村避難した福島県飯舘村民を対象としたアンケートで、回答者の七割近くが、国が実施している除染の目標を達成しても帰村しないと考えていることが分かった。除染以上に避難先での生活再建支援を求める声が強く、除染と帰村を掲げる国や村の施策に影響を与えそうだ。
調査は昨年十月〜十二月、日本大の糸長浩司教授(環境建築学)らが中心になって実施した。選挙人名簿などを基に、二十歳以上の村民の旧住所に書類を郵送。転送先不明者らを除いた四千八百五十人のうち、28・2%に当たる千三百六十六人から回答を得た。
どのような状態なら村に戻って暮らすかという質問に対し、国が平時の安全基準としている年間放射線量一ミリシーベルト未満が38・8%、同五ミリシーベルト未満が6・9%を占めた。数値に関係なく村には戻らないと答えた人(21・9%)を含めると、計67・6%に上った。
国は、同村の面積の約七割を占める居住制限区域で、来年三月までに同二〇ミリシーベルト未満に下げることを除染目標としている。この基準を達成できたとしても、七割近くの人が村に戻らない可能性がある。
村行政への要望についても、補償や賠償交渉が七割超で、徹底的な除染(49%)を上回った。
「除染で本当に農業が再生できるとは思わない」(六十四歳の農業男性)、「現実を直視して、無駄な除染より賠償に資金を使うべきだ」(六十二歳男性)といった意見も寄せられた。
さすがに当事者である村民は、現実を厳しく捉えています。政府のやっていることなど信用していません。除染しても避難民が戻らないなら、無駄な税金が使われて悪徳業者だけが潤うことになります。
政府は避難民を帰村させたがっていますが、除染など不可能ですから、これは残酷な仕打ちです。人体実験と言ってもよいでしょう。安倍は被災地を訪れて心を痛めたそうですが、それが本当なら、こんな無意味で冷酷な施策を早急に改めるべきです。
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