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国の除染目標達成でも7割弱は帰還せず 飯舘村住民アンケート
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013011102000140.html
2013年1月11日 東京新聞[こちら特報部]
「妊娠中だけど、おなかの子どもを幸せにできるのか」「老人たちの気力が失われ、物忘れがひどくなった」−。福島原発事故により、全村避難中の福島県飯舘村の住民たちの声だ。日本大の糸長浩司教授らが住民にアンケートをした。行政は除染と帰村を基本方針に掲げるが、調査結果からは帰村についての住民の自己決定権や、除染以上に生活再建支援を望む思いが伝わってくる。(出田阿生、上田千秋)
◆避難解除に私たちの声を
「村に戻るという考えが先行し、村民の意見や考えが無視されている」─。22歳の男性は調査にこう記した。原発事から1年10カ月。回答者の約6割が、世帯分離など避難による家族構成の変化を経験していた。
今回の調査項目は、あるべき避難の解除時期のほか、生活や子育てに関する心配─など7つ。そのほかに、自由に意見を書き込んでもらった。回答者は60代が最も多く21.5%。50代(20.4%)、70代(17.4%)と続き、最少は20代の5.3%だった。
村に戻る時期については、7割近くの人が国の除染目標の年間20ミリシーベルト以下になっても戻らないとし、その基準で帰村すると回答した人は2.4%にとどまった。
約7割の村民が求めたのは、避難解除の決定に自分たちの意向を村民投票などの形で反映させてほしいという点だ。
「村民投票で決める」が37.9%、「村民懇談会で話し合って決める」が33.2%に上り、計71.1%が行政の一方的な決定に難色を示した。52歳女性は「特に若い人を中心に考えてから決めてほしい。若年層が戻らないのでは『姥捨山』になってしまう」と複雑な胸の内を明かした。
村では現在、住宅地を中心に除染が進む。同村の菅野典雄村長は避難当初から「2年で戻る」と発言するなど早期帰村に前向きだ。ただ、その除染がスムーズに進んでいるとは言い難い。村の7割を占める山林はほぼ手つかずの状態だ。
「勝手に帰村させるようなことを決めても、村民は納得しない」(50歳男性)、「山林の除染もやらず帰村はありえない」(60歳男性)といった言葉が記された。
44歳男性は「除染は効果が低く、コスト的にもあまり意味がない。帰村を促す既成事実をつくるためだけに大金をかけてほしくない」 「生活再建のために金を使うべきだ」と訴えた。
こうした現状認識に基づいて、村行政に期待すること(複数回答)のトップには徹底した除染を上回る形で、「補償・賠償交渉」(73.8%)が上がった。「国は東電の賠償を安くすることばかり考えている」と、46歳男性は憤った。36歳女性も「被災者に寄り添ったものではない」と不満を示した。
一方で「税金も払わないとの悪口も聞こえる。飯舘から避難していることを隠すようになった」(63歳女性)といった避難先での境遇を嘆く声も複数寄せられた。
◆除染は…生活再建助けて
2011年5月以降の全村避難により、多くの住民が仮設住宅などでの暮らしを強いられるようになった。以前は比較的広い一軒家に住んでいた人が大半だっただけに、「家族はすぐに怒り、いらいらする。笑いが少なくなった」(45歳男性)という声も多い。
就業環境も不安定だ。村では農林業が主産業だったが、避難先で農業を続けているのはおよそ半数。農業以外の仕事は簡単には見つからない。
21歳男性は「将来的に収入を得られるか心配。国や村は企業誘致や就業支援を」と書いたが、約7割の住民は避難解除後も、村内での就業意向はなかった。
子どもたちを取り巻く不自由な生活実態も、親たちには切実だ。子どもの内部被ばく検査の未受診者は、アンケート回答者だけでも15.3%に上ることが分かった。
事故後の子どもの変化について(複数回答)は「怒りっぽくなった」(38.1%)、「体力が減った」(36.2%)、「寂しがることが増えた」(23.1%)。6割の親が「結婚について心配している」と漏らす。
行政に対する不満は大きい。「村は国の言いなりになっている」(60歳男性)、「原発に対して村も本気で怒ってほしい」(60歳男性)。
放射能リスクで、楽観的な情報しか入手できないことへの不安を訴える人は3割、「務めて気にしないよう」生活している人も3割に達した。
[20年来飯舘村と関わる 糸長浩司日本大教授]
◆「村民投票」を望む
今回調査にあたった糸長教授は、約20年前から飯舘村の総合計画の策定に携わってきた。その長年の人間関係を生かしてアンケートをした。
今回を含めた調査で、明確になったのは「除染して帰村」という施策しか示さない行政と、「除染は難しく、帰郷の見通しが立たない」と認識して、多様な選択肢に沿った支援を求める住民との落差だったという。
飯舘村では、国が巨費を投じてゼネコン主導の除染事業を始め、村の住民たちもその下請け作業にあたっている。
糸長教授は「必死にやっても、線量が下がらないという話は村中で広まっている。徹底するには山林をすべて伐採するしかないが、そうすれば、洪水が起きかねない。それゆえ、多くの住民は除染よりも暮らしの再建に金を回してほしいと望んでいる」と説明する。
今回の調査で印象的だった点は、帰村(避難解除)を決めるための手続きで「村民投票」を望むという回答が最多だったこと。糸長教授は「国や県、村への不信感の表れだ。住民は放射性物質の拡散情報を知らされず、避難が遅れた。自分たちの意向を反映するには村長や村議会を通す形ではなく、直接民主主義しかないと感じたのではないか」と分析している。
今後について、糸長教授は「震災や津波の場合と同じように、原発事故の被災者へも特例を設けるべきだ」と提言する。津波被災では5世帯以上が集まれば、税金で集団移住を支援するという国土交通省の事業が始まった。しかし、これは原発事故の被災者には適用されず、自治体単位でしか移住を決められない。
「少人数単位での土地や家探しを行政が支援しなければならない。一方で、まだ決断せずに仮設や借り上げ住宅で暮らす人たちの環境改善も必要だ。別の場所に生活の拠点を移した後も、村の住民票を存続させる『二重住民票』制度の導入も検討されるべきだ」
[デスクメモ]
政権交代後、3.11が後景化し、同じ分だけ、被災民の辛苦は重くなった。「まだ原発ネタやるの」という声を耳にする。返答は「まだやる」。飯舘住民の一人はこう記している。「刑罰を受けるべき東電や国の方が強く、いつの間にか被害者の私たちの方が弱い立場…」。まだ何も終わっていない。(牧)
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