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水俣病の教訓を原発事故に活かすことが大切
http://takedanet.com/2013/01/post_949d.html
平成25年1月8日 武田邦彦(中部大学)
水俣病というのは「水銀で起きた世界で最初の事件」です。それまで水銀が毒性を持つなどと思った人はいなかったので、女性のおしろいは酸化水銀、神社の朱色は硫化水銀、歯の治療に水銀アマルガム、回転軸に水銀シールを使っていました。だれも疑わずに水銀を使用していたのです。
ところが、意外なことに水銀を大量に使い始めると病気がでました。最初の病気だったので、「水俣病」という名前がつきました。今度の福島原発の事故は、このブログでも書いているように、水俣病などからの教訓、たとえば予防原則などが守られていません。そのことについて読者の方から次のような「まとめ」をいただきました(まとめて頂いたものをそのまま掲載しました)。
・・・・・・・・・水俣病の経緯・・・・・・・・・
・最初に魚が原因であることが確定したのに、原因物質が分からないことを理由に漁獲制限を行わなかった。
・工場排水を飲ませた猫が発病したにもかかわらず、原因物質が分からないことを理由に排水規制を何も行わなかった。
・早期に有機水銀中毒が疑われたのに、多くの学者が否定のための様々な説を出し、対策をとらないように妨害した。
・工場排水が原因と疑われる様々な情報を工場が隠蔽した(ここだけ武田の見方は少し違います。工場は法令を正しく守っていたと考えられます)。
・食品衛生調査会水俣食中毒特別部会が有機水銀説を発表したら、翌日には解散させられ、池田通産大臣が閣議でこの説を否定した。
・・・・・・・・・
・水俣の魚を誰も買わなくなったことで、何の補償も受けていない漁民の生活が追い詰められ、食べてはいけないと知っていながら、漁民たちは魚を食べ続けた。
・周囲の人々が、水俣の悪評を恐れて、被害者を偽患者扱いした。
・患者の家族は、縁談などへの影響を恐れ、患者を隠した。
・天草や出水でも患者が発生していたのに、患者の発生を否定、隠した。
・多くの県外へ移住した人々が、水俣出身であることを隠した。
・・・・・・・・・
・患者認定は、重症患者を基準としたため、重症患者以外が認定されなかった。(微量影響の研究をしないため、軽症者は因果関係が立証できない)
・国やマスコミが、何回も水俣病の全面解決を演出した。
・新潟では、水俣のデータにより毛髪中水銀量を基準に出産制限が行われたため、重症の胎児性水俣病患者が発生しなかった。
・・・・・・・・・
くり返してはいけない歴史が見事に原発事故でくり返されています。
まず、原因(水銀)と結果(病気)を、政府、学者、行政、実施者が団結して隠したり、混乱させたりして、被害を拡大しました。
そのような「空気」の中で、水俣の「被害者」は水銀以外の被害(悪評や縁談、出身の差別)を恐れて、さらに被害が拡大します。
さらに、ハッキリした被害者以外は救済しないとか、「終焉宣言」が出されたり、さまざまな「人間が作った被害拡大」が続いたのです。
真正面から「するべき事をする」ことはされませんでした。たとえば「漁民がサカナを食べなくても生活できるように補償する」などです。問題は「水銀を含んだサカナを食べなければ解決する」のですから、それをやれば良いのに、「水銀を食べさせて、補償を逃げる」という方法を政府が選択したのです。
今回の原発事故と違うのは、水俣病では当事者の企業は「法令を守った」ということです。工場は「水銀を垂れ流した」とされていますが、「法令での排水基準を守った」ということなのですが、国が決めた排水基準が間違っていたのです。
でも「国は無謬(国は間違いをしない)」という前提で官僚が身を守ったので、結果として、漁民と企業が犠牲になりました。
今回は東電と国の責任を、また福島の人にかぶせるということになっています。企業の責任だけは水俣病と違いますが、まるでうり二つです。そして、水俣病の時には責任の無い企業をバッシングし、今回は「被曝から福島の人を守れ」と言っている人たちをバッシングしています。
私たちは歴史に学び、少しずつ進歩することこそが人間の叡智ではないかとおもうのです。ちなみに、水俣病で「悪くない企業を悪者にして、解決したようなふりをした」ことによって、その後、カネミ油症事件(企業はほとんど責任がない)、ミドリ十字事件などで多くの人が犠牲になりました。今回の原発事故でも、同じ事が行われようとしています。
責任を回避する官僚、権力にすり寄る御用学者は50年前から存在していたのです。
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