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自民党大勝で胎動を始めた原発再稼働
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012122002000137.html
2012年12月20日 東京新聞[こちら特報部]
衆院選前夜から軒並み電力株が上がっている。自民党の勝利が原発再稼働、ひいては電力会社の業績改善につながるという市場の読みからだ。原発立地でも「再稼働」を訴えた自民候補が当選した。今回の衆院選で自民党は原発を争点とせず、同党に一票を投じた有権者の原発政策に対する考え方も多様だ。だが、再稼働が焦点化する来夏へ向け、脱・脱原発の胎動が始まっている。 (荒井六貴、上田千秋)
「選挙で自民党は勝ったけど、再稼働はしてもらいたくない。事故が起きれば、住まわれん」
九州電力玄海原発の北東6キロにある佐賀県唐津市呼子町。「呼子のイカ」で知られる。ここで半世紀、漁業を営んできた田口力さん(70)はそう話した。海藻のカジメを仕分ける妻の一枝さん(63)は「動かしてほしくないけど、電気代が上がっても困る」と戸惑った。
隣接する長崎県漁業協同組合連合会は6月、全国の県漁連では初めて、再稼働反対の特別決議を出した。同漁連傘下で、玄海原発の南10キロ圏に入る新松浦漁協の志水正司組合長(64)は「事故があれば、玄界灘の魚は売れなくなる。消費者は敏感だ。誰が国会議員になろうと再稼働はダメ。再生可能エネルギーを考えた方がいい」と言った。
玄海原発は昨年6月、定期検査を終えた2、3号機に海江田万里経済産業相(当時)が「安全宣言」を出し、再稼働目前となったが、世論の反対や九電の「やらせメール」の発覚、安全評価(ストレステスト)の導入で動きが止まった。
ただ、この衆院選で再稼働への動きは再び刺激された。地元の玄海町を含む佐賀3区では、自民党のベテラン保利耕輔氏が圧勝。保利氏は玄海原発について「わが国有数の立地条件に恵まれ、安全に作動してきた。二重、三重に安全対策を講じた上で、一日も早く作動させ…」と訴えた。
人口の10%が九電関連で働く玄海町は原発停止を死活問題ととらえる。電源立地交付金は本年度14億8,000万円ほどで、来年度までは保証されているが、それ以降は未定。町議会は9月、再稼働を求める意見書を賛成多数で可決している。
15軒ほどの旅館を束ねる玄海町旅館組合の組合長小豆朋行さん(53)は「原発の定期検査がなくなり、作業員の宿泊客が大きく減った。この状態が長引けば、身の振り方を考えないと。再稼働してもらうために自民党に入れた」と語った。
地元の唐津上場商工会は、原発が停止したことによる宿泊や飲食の損失は唐津市などを含め、年間約18億円超とはじいた。商工会の西尾達也事務局長(60)は「食材や酒などの売り上げ減少は入れてないので、損失はもっと大きい。県などが他の企業を誘致しても、うまくいかない」と原発頼みの状況を隠さない。
町議会の再稼働を求める意見書に唯一、反対した共産党の藤浦晧町議は「町は今も原発マネーでハコモノや道路を造っている。これでは建設業がもうかるだけ。選挙結果は原発ムラを勢いづかせる。油断できない」と表情を引き締めた。
衆院選から一夜明けた17日、電力各社の株価がまた上がった。東京電力株はストップ高となる前週末終値比50円高の202円で取引を終え、関西電力株も一時ストップ高を付けた。原発を持たない沖縄電力の株ですら、88円高の2,634円となった。
電力業界は自民党の圧勝を歓迎している。関電大飯原発3、4号機を除いて、全国の原発はストップ。このため、北陸、沖縄電力以外は赤字に転落し、電気料金値上げを申請している関電と九電を中心に、大幅なリストラを迫られる事態に陥っていたからだ。
電力各社でつくる「電気事業連合会」は同日、八木誠会長(関電社長)名で「(現政権による)2030年代に原発ゼロを目指すとする『革新的エネルギー・環境戦略』はあまりにも課題が大きく、新政権において見直しをお願いしたい」とのコメントを出した。
再稼働に向けた具体的な動きが出てくるのは、来春以降とみられる。原子力規制委員会は来年7月までに新しい安全基準をつくって審査する方針で、春ごろから旧経済産業省原子力安全・保安院の安全評価を終えていた四国電力伊方原発3号機などの調査を先行して始める可能性がある。
自民党は公約では「(再稼働は)順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指す」と慎重な言い回しにとどめている。だが、脱原発市民団体から「推進派ナンバーワン」と名指しされた甘利明政調会長は、自身のサイトなどで「原発停止で3兆1,000億円分の天然ガスと石油を輸入して国富を散逸」と主張。「安全を確認した原発は動かした方が国民利益にかなう」と唱えている。
ただ、同時に自民党は公約で「安全性は規制委の専門的判断に委ねる」としている。規制委を独立性の高い国家行政組織法第3条に基づく「3条委員会」にするよう求めた経緯もあり、規制委の判断を軽視しにくい。
とはいえ、規制委も再稼働自体に反対しているわけではない。さらに田中俊一委員長ら5人の人事は国会同意が必要なのに、民主党政権は同意を先送りしたまま。再稼働に向け、意に沿う委員を新たに送り込んでくる可能性も否定できない。
少なくとも、現政権が検討に着手した電力自由化や、電力会社から送配電部門を切り離す発送電分離などの行方も、不透明になってきた。
こうした流れに対し、「脱原発を目指す首長会議」世話人の三上元・静岡県湖西市長は「来年7月の参院選や各地の地方選では、衆院選のようにならないよう自民党以外の候補者を一本化する必要がある」と提言。自民党や日本維新の会内部の再稼働「慎重派」への働きかけも強調する。
市民団体「再稼働阻止全国ネットワーク」の小川正治さんも「選挙の結果にとらわれず、これまで以上に声を上げていけばいい」と意気込む。
「これまでの運動は東京中心だったため、地方の声も拾いきれていなかった。そうした力を集めていけば、より大きな力になるはずだ」
玄海原発周辺では、再稼働を危ぶむのは漁業者だけではない。佐賀県産婦人科医会の内野稔会長(72)はこう話した。
「簡単に再稼働の許可が出るのは困る。政権が交代し、心配している。原発の地元はお金が落ちるから賛成だろうが、事故の影響は玄海町の地元だけではすまない」
[デスクメモ]
水紋は発生源が深ければ深いほど広い。今回の選挙結果は量、質ともに脱原発世論の現在を示した。「いや脱原発志向は強い」という反論がある。問題は志向の質だ。フクシマの悲惨や核廃棄物を考えれば、答えは自明だったはずだ。その深さをどこまで共有できていたのか。数より原点を確認したい。(牧)
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