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放置され続ける福島の被災障害者たち 衆院選も素通り
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012120902000112.html
2012年12月9日 東京新聞[こちら特報部]
東日本大震災と福島原発事故により、厳しい状況に追いやられた福島の障害者たち。彼らの状況は一向に改善されていない。支援の需要は増すばかりなのに、施設の職員不足は甚だしく、家族への負担も重くなるばかりだ。11日で震災から1年9カ月。衆院選真っただ中で、あれこれのスローガンが飛び交っているが、厳しい状況に追い込まれた少数者に心を砕く声はほとんど聞こえてこない。 (上田千秋)
◆職員足りない 施設悲鳴
震災前に比べると、だいぶ工賃が下がったんです。仕事があるだけありがたいですけど」
福島県南相馬市で、障害者を支援するNPO法人「あさがお」が運営している施設「きぼうのあさがお」。部品の組み立て作業をしていた男性の横で、同施設の森桂子所長はそう打ち明けた。
この施設では身体、知的、精神のいずれかの障害がある約20人が、地元企業から請け負った軽作業や豆腐づくりなどに携わっている。
しかし、発注元の企業も被災したことで震災後は工賃が下がり、風評被害で豆腐などの売り上げも落ちているという。
職員の不足も深刻だ。震災前にいた10人のうち、幼い子どもがいる2人は避難先から戻らず、そのまま退職。各地の施設から交代で応援に来ている職員で賄っている。
同法人が運営しているグループホームの状況も厳しい。障害者が共同で生活するグループホームには震災後、入居希望者が殺到。「あさがお」では1カ所増設して4カ所にし、総定員数も14人から28人にした。
◆人材確保するめど立たない
にもかかわらず、職員数は計8人のまま。来年1月にはもう1カ所開設を予定しているが、職員を確保するめどは立っていない。半年前からハローワークなどを通じて募集しているが、なかなか適した応募者が来ない。
森さんは「このままでは今の人数でやるしかなく、職員の負担はさらに大きくなる。震災以降、入居者は感情が不安定になっている。本当はゆっくり話をしたりしないといけないのに、それができていない」と話す。
この法人に限らず、障害者側の需要は、震災と原発事故の被害が大きかった浜通りを中心に県内で拡大している。
慣れない避難所暮らしで状態が悪化し、以前は自宅で生活できていた人が入居を求めるようになった。避難区域の施設が使えなくなったり、「グループホームの入居希望者を何人も断っている。本当は定員の倍ぐらいの希望者がいるのではないか」(森さん)。
今は応援の職員とともに、何とかしのいではいるものの、それもいつかは終わる。職員のなり手が全くいないわけではないが、未経験者や高齢者も少なくなく、施設側の希望とは合っていない。
「障害者たちが働いたり、暮らしていく施設は地域にとって不可欠。それなのに、震災後も、補助金の額などを含めて、行政の対応は何も変わっていない。正直、もう少し目を向けてくれてもいいんじゃないか、という思いはある」(同)
◆低額賠償金 家族にも影
施設に余裕のない状況は、障害者の家族にも影を落としている。
福島県川俣町の塗装業高沢公二さん(69)。次男(41)には重度の知的障害がある。24時間の介護が必要で、原発事故までは富岡町の施設に入居していた。事故後、田村市の施設に避難したが、数日後、施設から「職員が足りないので面倒を見られない」と言われ、自宅に引き取った。
常に誰かがそばにいなくてはならず、高沢さんと妻(75)、次女(40)の3人が交代で介護を担当。高沢さんは仕事の量を減らし、仕事をやめた直後だった次女も職探しができなくなった。新しい受け入れ先がようやく見つかったのは、先月末になってからだった。
高沢さんの収入は激減したが、東京電力からの賠償金は避難区域に該当しない県内23市町村の住民に一括して支払われる一人8万円と、警戒区域の富岡町在住だった次男への精神的損害の月10万円のみ。介護費用の加算を東電に求めたが「皆さん10万円でお願いしている」と拒まれた。
その後、原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)に和解仲介を申し立てた結果、月数万円分が増額されたが、高沢さんは「とても足りる額ではない」と言う。
県内の障害者関連団体でつくる「JDF被災地障がい者支援センターふくしま」(郡山市)の和田庄司事務局長は「震災前の需要を100とすれば、今は150。一方、100から70ぐらいにまで減った職員数は元に戻りつつあるとはいえ、需要を考えれば全く追いついていない」と指摘する。
◆福島での勤務 近親者が反対
1〜2週間で交代する各地からの応援についても、和田さんは「応援はあくまで緊急対応。施設を安定的に運営するには、正規職員を増やす必要がある」と訴える。
だが、現実には希望者は少なく、「福島で働くことを本人ではなく、近親者たちが反対するケースもある」(県障がい福祉課)という状況だ。
日々の生活以外にも、原発事故によって特別な支援が必要になった。東電への損害賠償請求をサポートする作業だ。
請求に際し、点訳した説明書や手話通訳が必要な障害者も多いが、東電は対応していない。知的障害者同士の夫婦や親が高齢の場合、誰も説明書の内容を理解できていないケースもある。
和田さんは「大半は各団体の人たちが手助けしている。ただ、そうした人たちも専門家ではなく、十分に応えられているかは分からない。本来なら100万円もらえるのに、50万円で済ましてしまっている可能性もある」と表情を曇らせる。
宇都宮大の長谷川万由美教授(地域福祉論)は「職員不足は全国どこの施設でも抱えている構造的な問題だが、国が支援し、規模の大きな自治体が福島に職員を派遣するなど、やり方はあるはずだ。このままでは職員の負担増やサービスの低下を招き、地元に帰りたいと思っている障害者がますます帰れなくなってしまう」と懸念する。
衆院選に前出の高沢さんは何を思うのか。居住する福島1区で、各候補が訴えるのは脱原発やTPPなどで、障害者の問題が取り上げられることはまずないという。
「一般の人は関心がないのかもしれない。しかし、私たち家族にとっては大切な問題だ。こういう機会に考えてもらわないと、私たちの生活は少しも変わっていかない」
[デスクメモ]
選挙カーの音で目を覚ます。原発を増やした人たちが「美しい日本」と言っている。悪い冗談にしか聞こえない。豊かな日本、というのも空疎だ。豊かでなくても、お互いを思いやる社会が欲しい。ゼニカネの論理の対極で、献身する福島の障害者運動の人たち。その声なき歩みにひたすら頭が下がる。(牧)
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