16. 2012年12月08日 18:51:19
: oHxSUlGoAc
プロバイダーが動的アドレスなんでID変わりますが02、13です。最近、昼食に良く行くところに置いてある新聞が朝日から読売に代わりけっこう読売を見ている。凄まじいセールス攻勢に屈したらしいが、その原発関連の内容に激怒しつつ務めて冷静に拙見を追加させていただく。 ・オバマは環境保護主義者ではない この投稿記事の内容はたいへん示唆に富むものだが一点だけ異論がある部分がある。共同による記事内容の「オバマ政権は温室効果ガス排出が少ない原発を重視し」という部分だ。アメリカの原発再興計画を始めたのは息子ブッシュでありその計画を破棄したのがオバマだ。加えてオバマはシェール・ガス採掘を喜んで見せた。もしこれが環境保護重視のアル・ゴアだったらどうだろう?オバマのように無慈悲に原発勢力を退けつつシェール・ガスを喜んだだろうか。オバマは環境保護主義者ではない。オバマが重視しているのは発電コストだ。今の製造業の生産ラインは多分にオートメーション化されており、電力料金を格安に抑えれば、賃金の高いアメリカ人を雇用しても競争力を維持出来る。アップルが中国の生産拠点をカリフォルニア州に移転すると発表したが、アメリカで生産したからといって製品価格が変化するわけではない。その仕組みが出来たから移転となったわけだ。カリフォルニア州への移転計画はアップルだけでは無い。インフラの都合で遅れているが、キャタピラ社やジェナラル・エレクトリック社も含め複数の企業が海外の生産拠点をカリフォルニア州に移転する。いずれにしろ、オバマの目標は環境保護ではなく貧困撲滅にあることはキャリアからも容易に想像できる。成功するかは不明だが、テクノロジーを使って貧困撲滅を目指す戦略はさすがだ。ちなみに今アメリカでは温暖化防止意識が高まっている。これはハリケーン・サンディを予言して注目をあつめたティッドウェルという人物の主張が一因だ。日本のメディアはこの部分だけは良く取り上げる。 ・オバマ政策のライバル オバマ政策が成功するとは限らない。新興国が低コスト発電に成功してしまえば競争力を失う。アップルのCEOもアメリカでの製造期間にはお茶を濁したような言い方をしている。ただし新興国が再生可能エネルギーによる低コスト発電に成功するにはいくつかのハードルがある。一つは個人世帯の設備投資。たとえば新興国の市民で自宅にソーラを設置出来る人は限定されるだろう。家庭用消費に電力を奪われてしまえば低コスト電力を産業にまわせる比率が下がる。もうひとつの難題はスマート・グリッドの構築。自然エネルギーは不安定なので、風が吹いているところでは風力発電、日が照っているところでは太陽光発電で発電しつつ領域内に電力を分配する。ヨーロッパでは国境を超えて構築される「ヨーロピアン・グリッド」計画が進行中。ヨーロッパ連合とアメリカは技術協定を結びつつ供給体制の構築を急いでいる。新興国の中でオバマがライバル視しているのは、たぶん中国だ。あれだけの人口を抱えながらその生活水準が上昇して行く途上にあり家庭用消費の比率を抑えるのは容易ではない。インフラも完成されておらずスマート・グリッド構築には時間がかかると予想しているはずだ。 ところで、アップルのカリフォルニア移転と共にアメリカ関連のニュースとして伝えられたのがアメリカの液化天然ガスの輸出枠拡大だ。この2つのニュースは矛盾している。一方で製造業拡大、一方で限りあるエネルギー資源の輸出枠拡大。これはアメリカの再生可能エネルギー政策の自信を暗示しているが、この発表には「プラス・マイナスを考えた場合プラス」というまどろっこしい表現が盛り込まれている。これは、おそらく家庭向け電気料金を下げたくないのだ。電気料金がまともに安くなってしまえば、個人がソーラ等を設置する意欲は無くなってしまう。日本の電力自由化政策でも同じだろう。 ・日本の可能性 アメリカはスマート・グリッドを完成出来たわけではない。オバマ政策が見切り発車を出来たのは、それが地熱発電が可能なカリフォルニア州だからだ。アメリカは広いとは言え地熱発電が可能な地域は限られており、現在の供給量の8割はカリフォルニア州。地熱発電は安定供給が可能なエネルギー源なためスマート・グリッドに依存しない。これが日本のヒントだ。自然エネルギー派の学者達は何かと太陽光にこだわる。これは太陽光の進化が激しいからだろう。しかし日本にアメリカの真似は難しい。たとえば太陽光には適度に砂漠化した土地が最適だ。サハラ砂漠のようなところではソーラが砂に埋まってしまうし日本のような土地では雑草に覆われてしまい維持管理または整地などのコストがかかる。アメリカには適度な砂漠が膨大にあり、今まで何の役にも立たなかった安価な土地がメガ・ソーラ勢力にとってはお宝に変貌している。無論、太陽光も進めるべきである。しかし地熱大国日本が地の利を活かさない手はない。アメリカの地熱発電は2050年には1億キロワットに拡大可能なのようだが、カリフォルニア州を中心とした限定的な地域での試算である。日本もその気になれば相当程度にまで到達が可能だろう。加えて現在設定されている目標価格は出力ワットあたり10セント未満と驚異的な低コスト発電だ。 <参考> 地熱発電については政治関係も含めあちこちに訴えているんだが反応が乏しい。もし何らかのコネがあり、この説に納得された方は是非訴えていただきたい。参考資料を以下に添付する。 ・米エネルギー省のサイトより 高性能地熱発電について http://www1.eere.energy.gov/geothermal/pdfs/egs.pdf ・米エネルギー省のサイトより 2012年 レビュー http://www1.eere.energy.gov/geothermal/pdfs/gtp_2012peerreview_dhollett.pdf <02のお詫びと訂正> カリフォルニア州で「現在出力されているのが270万キロワット」と書きましたが320万キロワットあるようでした。 |