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国連専門家が国・県批判
2012年11月29日 東京新聞[こちら特報部:話題の発掘]
「政府が住民にヨウ素剤を配布していなかったのは残念」「福島県の健康管理調査は不十分」─。福島原発事故の被災地などを現地調査した国連の専門家は、行政側の「被災者目線」の欠如を批判した。政府や県は国際社会の厳しい視線を受け止め、説明責任を果たせるのか。(林啓太)
◆ヨウ素剤無配布、健康調査不開示…
原発事故の被災地を調査したのは、国連人権理事会で健康分野に携わるインド出身の弁護士アナンド・グローバー氏。12日間の日程で、行政担当者や被災地の住民たちから聞き取りし、最終日の26日に暫定の調査結果を記者発表した。
グローバー氏は政府が原発周辺でヨウ素剤を配布していなかったことについて「甲状腺がんの危険を減らすための常とう手段を欠いた」と批判。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報が避難に生かされなかったことについても「正確な情報提供が重要。政府の信頼性が問われる」と指摘した。
さらに政府が定めた年間20ミリシーベルトの避難基準について「チェルノブイリ事故の強制移住の基準は年間5ミリシーベルト以上だった。こうしたズレが住民の混乱を招いている」と懸念。
県の子どもを対象とした甲状腺検査についても、「子どもの親は診断資料を受け取れない。医療記録にアクセスする権利を否定されている」と、県の対応を痛烈に批判した。
一方、福島県外への避難を希望する人に対する県の住宅支援の新規申し込みは、来月28日で打ち切られる。行政の被災者支援については「政府は、すべての避難者が避難を続けるのか、自宅に戻るのかを自分の意思で決められるようにするべきだ。経済的な支援や補助金を継続、復活させなければならない」と問題提起した。
グローバー氏は今後、政府の反論も聞き、来年6月に国連人権理事会へ報告書を提出するという。
福島県郡山市の子どもや親たちが「集団疎開」を求めて仮処分を申し立てた裁判の原告代理人の柳原敏夫弁護士は「被災者の苦しみを思いやった調査だ。政府や県は指摘を率直に受け止めて対応してほしい」と話した。
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