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「秋場龍一のねごと」ブログ
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「原発安全神話」から「放射能安心神話」へ。WHO「がんリスク予測」をトップで報じた朝日新聞
きのう25日、朝日新聞の1面トップに「福島のがんリスク、明らかな増加見えず WHO予測報告」(朝日新聞デジタル)という大きな見出しが躍った。
この記事をざっと読むと、一見、福島の原発事故による被ばくで、がんになる確率は非常にすくないような印象を与える。なにより、この「予測報告」をしたのがWHO(世界保健機関)という、まさに保健に関する世界的権威である。なにも知らない「善良なる市民」は、「これで安心」と胸をなでおろしたことだろう。
でも、ちょっと待ってほしい。このリポート、世界的権威によって創作というか捏造された「放射能安心神話」かもしれないのだから。
福島の原発事故があるまで、多くの市民は、原発は安全なものだと思い込まされていた。まさか原発が爆発して建屋が吹っ飛んだり、格納容器が壊れ放射性物質が大量放出されたり、核燃料などが溶け落ちてメルトダウンするなんて、この日本で起きるとは思わなかった。
なぜかといえば、そう「原発安全神話」が効いていたからだ。でも、福島の事故で、原発といっしょに「安全神話」も吹っ飛んでしまった。で、もう原発が安全なものだとは、さすがの嘘がうまい東電や原子力ムラも言えなくなった。
そこで新たに創作されたのが、じゃーん「放射能安心神話」である。
その「安心神話」の序章は、原発が爆発したとき、当時の官房長官枝野の「ただちに健康への影響はありません」である。
さらに次章では「100ミリシーベルト以下の被ばくの影響は観察されていない」という、山下俊一など御用学者のメッセージが繰り返される。
そして、ここにきてWHOの「がんリスク増加見えず」である。
これで「放射能安心神話」の完結といったところだろうか。でも、この神話、「三文小説」ならぬ「三文神話」なんだよね。
まず、「ただちに健康への影響はありません」は「ただし、時間がたてば甚大な影響があるかもしれません」が抜けている。
また、「100ミリシーベルト以下の被ばくの影響は観察されていない」は、広島・長崎の被ばく生存者追跡データを根拠としたものだけど、100ミリシーベルト以下でがん死リスク係数が突然ゼロになる閾値モデルは成立しないのだ。
現在、世界の専門家の主流は「放射線量に安全な量は存在せず」である。この被ばく量までなら安全という区切り、閾値など設定できない。つまり、いくら低線量であっても、被ばくすれば、がんリスクを負うということである。また、がんだけではなく、多くの疾患、症状なども報告されている。
そして、今回のWHO予測である。WHOというと、不偏不党の中立的な世界的組織というイメージがあるが、すくなくとも放射線被ばくに関しては、まったく不偏不党でも中立でもなく、ほぼ完全に原発推進派に偏重している。
その根拠は、WHOはIAEA(国際原子力機関)と1959年に「IAEAからの合意がないと原子力に関する健康問題に着手しない」という協定文書を交わしているからである。
よく知られているように、IAEAは原子力推進の世界的ロビー機関だ。そう、原子力ムラの大親分。そのボスがうんと言わないとWHOは放射線被ばくの健康被害に関してなにも言えないのである。
チェルノブイリ原発事故のWHOとIAEAの合同の被害調査(2005年)では、がんで死亡したのが4000人、甲状腺がんで亡くなった子供は9人とした。
これにたいして、ニューヨーク科学アカデミーは1986年の原発事故から2004年までの18年間の死亡者が100万人いることを証明している。
以上のように、WHOがIAEAに牛耳られていることは世界の常識だが、そのWHOの「予測」を朝日新聞が1面トップに批判もなく載せるのはいったいどういうことだろうか。しかも、こんな記事もある。
「100ミリシーベルト以下の低線量被曝の影響には不確かな要素があるため、原爆やチェルノブイリ原発事故などの知見を参考に、大まかな傾向を分析、予測した。」
「国連によると、チェルノブイリ原発事故の避難民の甲状腺被曝は平均490ミリシーベルト。子どもを中心に約6千人が甲状腺がんになった。ただし、甲状腺がんの治療成績は良く、死亡は十数人にとどまる。」
この記事には署名があった。大岩ゆり。たしか、以前にも当ブログにご登場願ったことがある。
ぼくのなかでは、朝日新聞の大岩さんと高橋真理子さんは札付きだ。
朝日は「社説」でも原発再稼働にかなり批判的だし、連載中の「プロメテウスの罠」「原発とメディア」は、ジャーナリズムとして良心的な仕事をしている。だが、放射線被ばくの健康被害に関しては疑問だらけだ。
とくに朝日新聞社が主催する「ドクタービジット」に中川恵一(東大准教授)を講師として派遣するのは、いったいどういう思惑があってのことなんだろう。
中川は、飯館中の生徒113人を前に「君たちの受けた放射線量は、中東や北欧の都市と比べても低い」と、さも放射線被害は起こらないかのように述べている。
放射線医学の専門家と称する者が、高線量被ばく地域の子供たちにこんな言辞を弄するのは、ぼくのなかでは犯罪行為である。
そして、そんな者を講師として派遣する朝日新聞は共同正犯であるということが、ぼくのなかでは成立する。
なぜ、朝日新聞は「放射能安心神話」に加担するのですか?
(参考資料:朝日新聞11月25日朝刊)
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