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開発した除染の新技術生かさず 透ける東電救済とゼネコン支配
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012111802000115.html
2012年11月18日 東京新聞[こちら特報部]
福島原発事故で放射能汚染された福島県の一部で、国が除染作業を本格化させている。この作業開始に先立ち、国は除染の新技術を募って実証実験を実施。複数の効果的な方法を認定した。ところが、現場はゼネコン主導で、新たな方式はほとんど使われていないという。「住民の安全より、東京電力の負担軽減が優先されている」。開発に尽力した業者からは、そうした怨嗟(えんさ)の声が上がっている。 (荒井六貴)
◆国の除染 実態は
「膨大な税金を費やして、実証実験までした意味がない。せっかく新たな方式を考案しても反映されない。結局のところ、東電救済なのか。結果的にゼネコンや作業員を出す人材派遣会社がもうかっているだけだ」
福島県いわき市で塗装会社「志賀塗装」を営む志賀晶文社長(39)は現状をそう語り、国への不信をあらわにした。
内閣府は昨年11月、独立行政法人・日本原子力研究開発機構(原研)に、除染技術の開発事業を委託した。
未曽有の事故に対しては、以前からの拭き取りや水による洗浄などとは異なる技術が必要になった。
原研の募集に対し、民間企業や研究機関から約300件の応募があり、25件が選定された。
志賀さんの会社が開発した方式も選ばれた。
自動車の研磨やさび取りに使われる「(電動)サンダー」と呼ばれる工具を使い、放射性物質を取り除いた後、最後に放射性物質がつきにくい自社製品の塗料を塗って仕上げるという工法だ。
「水だと汚染水が出たり、放射性物質が飛散する。建物に付着した放射性物質は、すでに水洗いでは落ちにくくなっている。この方式なら除染の廃棄物が少なく、建物の表面を削っても集じん機に吸引するので飛散しない。工具もあるものを適用できる」(志賀さん)
新方式は原発事故直後、福島市内で住宅塗装を請け負ったときの経験がヒントになった。塗装前に表面をきれいにしようと、住宅に水を掛けていたところ、近所から「放射性物質が飛び散る」と苦情を受けた。
「水を使わずにきれいにする方法はないか」と思案に明け暮れ、室内塗装などの前に使用するサンダーに目を付けた。
実証実験では60%以上の除染率が確認された。総合評価では「コストは低い」と分類され、「即適用可」というお墨付きをもらった。志賀さんは国がこうした新方式を駆使して、除染を進めていくものと信じていた。
◆ゼネコン主導で「安さ」優先
今年6月、志賀さんの会社は同県楢葉町の除染業務を受注した前田建設工業を幹事会社とする共同企業体(JV)に声を掛けられ、JVの下請けに加わった。前田側が環境省に提出した入札書類にも、志賀さんの新方式が記載され、受注の決め手にもつながった。
入札書類上では、志賀さんの方式を使う対象は学校や公園、大型施設の屋根など約24,800平方メートルだった。
ところが、受注後、下見をしたところ、新方式が技術的に使えそうな現場は、浄水場など8分の1程度しかなかった。ちなみにJVの総受注額は188億円だった。
志賀さんは「ゼネコンは入札を有利にするために、適当にうちの技術を提案したのだろう。発注元の環境省も、現場と方式が適合するかを点検しないで、発注したとしか思えない。地元をばかにしている」と憤る。
もうひとつ、頭の痛い問題が持ち上がった。楢葉町などでの国の事業とは異なる、福島市や郡山市など相対的に放射線量が低い「汚染状況重点調査地域」での作業には、志賀さんらの方式が使えないことが分かった。
これら地域での除染作業の発注元は各自治体。しかし、除染手法は環境省の除染ガイドラインなどに準拠しており、予算もそこで設定された手順の単価で計算される。
具体的には旧来からの拭き取りやブラシ洗浄、高圧水洗浄といった手順で、建物表面を削ったりする志賀さんたちの方式は想定されていない。
自治体は国の補助を受けるために、決まった手順以外の新方式の採用には二の足を踏む。なにより、洗浄の方が志賀さんらの削る方式より安くつくことは間違いない。
環境省の除染チームは「ガイドライン以外の技術を使う時は相談に応じる」としてはいるものの、実際には「従来の洗浄などの作業がメーンになる」としている。
「除染の目的は、住民が安全に住める環境を取り戻すこと。多少お金がかかっても、しっかりと除染するのは当然のことだ。費用を安く上げようというのは、最終的に除染費用を払う東電の負担を軽減させるためではないか」(志賀さん)
こうした志賀さんの不満は、原研に新技術を選定された他の業者たちにも共通している。
新潟県長岡市の機械メーカー「マコー」も独自に除染機器を開発した。だが、担当者は「原研に報告書を提出したのに、その後はコストダウンや改良などについて指示がない。何のために実験を繰り返したのか、分からない」と困惑する。
焼却灰から放射性物質を除去する技術を提案した福島県郡山市の「郡山チップ工業」の大内正年社長は「国は技術を集めただけで放り出した。環境省はゼネコンに除染を丸投げし、ゼネコンは安さだけが取りえの下請け業者に発注する。その結果、お金がかかる新しい技術は不要になった。ゼネコンは稼ぎ、東京に税金は入るが、福島には入らない」と皮肉った。
内閣府は原研に対し、新たな除染技術開発に関する委託料を約120億円払った。こうした除染技術の募集は環境省でも実施された。しかし、新技術は生かされない。
福島の被災住民をダシにした血税のむだ遣いとはいえないか。取材に対し、原研は「コメントする立場にない」とし、環境省の福島環境再生事務所は「いまは技術の適用を検討している段階。決して無視はしていない」とだけ答えている。
[費用1兆円超も総額不明]
福島原発事故に伴う除染事業の対象地域は、昨年12月時点で警戒区域や計画的避難区域だった「除染特別地域(福島県内11市町村)」と、特別地域よりやや汚染が軽い「汚染状況重点調査地域(8県104市町村)」に分けられる。
特別地域では環境省、重点調査地域では各自治体が事業を主導する。
環境省の除染ロードマップによれば、長期目標として年間1ミリシーベルト以下を目指す。本格的な除染は7月から始まり、線量が特に高い4町を除いて、2014年3月末までに終えたいとしている。
除染費用は、環境省がまとめて原因企業である東電に請求する。金額は来年度分を合わせて1兆円を超えているが、総額は不明。特別地域で先行的に始まった田村市、楢葉町、川内村、飯舘村での作業は、鹿島、大林組、大成建設、前田建設工業が各幹事会社を務める4JVが落札した。
[デスクメモ]
3・11後、初の総選挙がくる。「脱原発」を掲げる政党のオンパレードに戸惑う。「合流」がどうのもたくさんだ。むしろ、あの、そして現在も続く大震災と原発事故の重みに耐えうる言葉がどこにも見つからない。現実の重さを政治が背負えていない。この冷厳な事実こそが、最大の焦点ではないか。(牧)
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