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日立の原発、英国に未来託す
2012年11月16日(金) 阿部 貴浩 、 大竹 剛
日立製作所が、英国の原発事業会社を約860億円で買収する。逆風の中で原発推進国に寄り添い、世界展開を強化する。だが、発電を担う電力会社は未定。ハイリスクの賭けに出る。
日立製作所が、原子力発電所推進国の英国で賭けに出る。10月30日、同社は6億7000万ポンド(約860億円)を投じて、原発事業会社である英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収すると発表した。
ロンドンで会見する日立製作所の石塚達郎・執行役常務(左)と英政府の大臣(右)
「原発を作る場が欲しい」。日立で原発事業を統括する羽生正治・執行役常務の言葉は、原発事業を取り巻く苦境を物語る。福島第1原子力発電所の事故で国内では原発の新規建設は困難になり、原発事業の維持・拡大は海外展開がカギを握る。
だが、これも容易ではない。原発大国の米国はシェールガス革命に沸き、仏オランド政権は7割以上ある原発依存度を5割に引き下げる公約を掲げる。脱原発のドイツは言うまでもなく、日立が原発受注を内定していたリトアニアでは、国民投票で建設反対が多数となった。新興国では、韓国や中国の原発メーカーとの競争が激しい。
その中で英国は、原発推進を掲げ、新規の建設需要が確実に見込める数少ない先進国の1つ。英国は電力供給の18%を原発に依存しているが、稼働中の原発は老朽化が進み、1基を除く15基が2023年までに寿命を迎える。英政府は、再生可能エネルギーの普及を急ぐが、原発の新規建設はエネルギー政策の柱の1つだ。エドワード・デービー英エネルギー・気候変動相は、「英国は新しい原発開発の飛躍台になる」と述べ、日立を呼び水にした投資誘致に意欲を見せた。
2兆円超える巨額事業の賭け
日立の羽生氏は、「(原発推進の方針に関して)英国は最も政治的に安定しており、市民の反対も少ない」と、買収の決め手を打ち明ける。ホライズンの買収には仏アレバや中国の国営企業、東芝などの名前が浮上する中で、勝負にかける日立の決意は固かった。「社内で定めた応札価格の上限に近いところで決まった。最後は接戦だったはず」と羽生氏は振り返る。
日立は2020年代前半の運転開始を目指し、新型原子炉「ABWR(改良型沸騰水型軽水炉)」を4〜6基建設する。総事業費は200億ポンド(約2兆6000億円)はかかると見られている。
巨額の事業となるだけに、リスクは大きい。ホライズンの親会社である独電力会社のエーオンと独RWEが撤退する理由は、独政府の脱原発も一因だが、「財政難で短期間にリターンを得られない事業は続けられない」(RWEの英子会社トップ)というのが本音だ。
日立は今後、100%出資するホライズンの株式を電力会社に売却する必要がある。日立はあくまでもメーカーであり自身が発電を担う計画はなく、電力会社の参加なくしてプロジェクトは成立しない。しかも、日立の出資比率を50%以下に抑えなければ、原発設備の販売は連結決算上の内部取引となり売り上げが立たない。
日立の石塚達郎・執行役常務は、「欧米系の電力会社を中心に売却先を探している」と話す。だが、電力会社から見れば、ホライズンがどれほど儲かる事業になるのか、まだ見えない。
英政府は、電力卸価格が一定価格を下回った場合に差額を補填するが、その「行使価格」が決まっていない。現在、英国の原発建設計画で先行する仏電力会社EDFが英政府と行使価格を交渉中だが、日立の交渉はこれからだ。
「買収過程で英政府から感触は得ている。建設開始まで、まだ時間はたっぷりある」と羽生氏は言う。日立は今後、英国での実績を武器に世界で原発を受注していきたい考えだ。日立の賭けは、国内だけでは存続が困難となった日本の原発産業の将来をも左右する。
大竹 剛(おおたけ つよし)
1998年、デジタルカメラやDVDなどの黎明期に月刊誌「日経マルチメディア」の記者となる。同誌はインターネット・ブームを追い風に「日経ネットビジネス」へと雑誌名を変更し、ネット関連企業の取材に重点をシフトするも、ITバブル崩壊であえなく“休刊”。その後は「日経ビジネス」の記者として、主に家電業界を担当しながら企業経営を中心に取材。2008年9月から、ロンドン支局特派員として欧州・アフリカ・中東・ロシアを活動範囲に業種・業界を問わず取材中。日経ビジネスオンラインでコラム「ロンドン万華鏡」を執筆している。
阿部 貴浩(あべ・たかひろ)
日経ビジネス記者。日本経済新聞で中堅・ベンチャー企業部や証券部、名古屋編集部などを転々とし、2011年春から日経ビジネス編集部の片隅に席を見つける。製造業とのかかわりが長く、自動車や機械、造船など「物づくり企業」を幅広く担当。メーカーのおじ様方と飲みに繰り出しては経済実態とかけ離れた円高に憤り、震災復旧の苦労話に涙ぐむ。いつの間にやら会社近くの「六本木・麻布」より「神田・新橋」を好むようになった。
時事深層
“ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121114/239426/?ST=print
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