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「疑わしきはクロ」が耐震指針
2012年11月15日 東京新聞[こちら特報部]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012111502000127.html
関西電力大飯原発(福井県)の活断層問題。原子力規制委員会は調査の継続を決めたが、運転停止を要請しなかった。だが、これは妙な判断だ。原発の耐震安全審査手引きには、活断層には「疑わしきはクロ」の原則が適用されると定められている。現地調査チームに「シロ」を唱える声はなかった。そうならば、止めるのが筋だ。原発ゼロを恐れる恣意(しい)的な判断が働いてはいないか。(荒井六貴、上田千秋)
◆断層の上に緊急用取水路
「再稼働を認める前提は、高いレベルの安全性が確保されていることだったはずだ。それが崩れたのだから、即刻運転は止めるべきだろう」
原子力規制委の現地調査チームのメンバー、東洋大の渡辺満久教授(変動地形学)は規制委の判断に疑問を呈した。
同原発の敷地内には「F−6断層(破砕帯)」と呼ばれる断層がある。その断層を横切る形で稼働中の3、4号機の緊急用取水路が設置されている。この取水路は、福島事故のように電源喪失した際に非常用発電機を冷却する海水を引くための設備だ。
このF−6断層が活断層か否か。これを調べるために、チームの専門家4人は今月2日、敷地内の試掘溝(トレンチ)を調査。活断層の条件の一つである「13万〜12万年前以降」の地層のずれがあることは否定できない、との認識で全員が一致した。「地滑りの可能性もある」との意見はあったものの、活断層であることを否定したメンバーはいなかった。
渡辺教授は「シロ、クロ、グレーで例えれば、私がクロで1人が濃いグレー、2人がグレーだった。当然、運転停止になるものだと思っていた」と振り返る。その思いには重要な根拠がある。
旧原子力安全委員会が2010年12月、原発の耐震性を安全審査する指針の運用を明確化した「耐震安全性に関する安全審査の手引き」という書類がある。指針は行政手続法に基づく法律に準ずる決まりとみてよい。
この手引きでは、活断層を特定するのに当たって「調査結果の精度や信頼性を考慮した安全側の判断を行うこと」「断層運動が原因であることが否定できない場合には、耐震設計上、考慮する活断層を適切に想定する」ことを定めている。
つまり、活断層が疑われる地層の場合、安全性優先の原則から、活断層とみなすことを求めている。「疑わしきは活断層」という考えだ。
その上で、手引きは「活断層が確認された場合、その直上に耐震設計上の重要度分類Sクラスの構築物を設置することは想定していない」「その活断層の将来の活動によって、地盤の支持性能に重大な影響を与えるような断層変位が地表にも生じる可能性を否定できないことから、当該構築物の設置は想定していない」と定めている。
「重要度分類Sクラスの構築物」とは、原子炉の緊急停止に必要な重要施設や、使用済み核燃料貯蔵施設などを指す。役所特有の分かりにくい文章だが、「Sクラスとされる大切な施設は、地震で地盤が変化するから、活断層の上に設置しては駄目」という意味だ。
◆透ける全原発停止回避の意図
ここでもう一度、大飯原発に戻って、この手引きに当てはめてみる。
まず、F−6断層を通る緊急用取水路は「Sクラス」の重要構築物。そのF−6断層が活断層か否かの現地調査で、少なくとも専門家たちの間で「シロ(活断層ではない)」と断言する主張は出なかった。
つまり、手引きに従えば、活断層と見なされるゆえ、重要構築物があってはならないが、実際にはある。そうならば、危険なので運転停止と判断されるべきなのだ。これが渡辺教授が「意外」と思った根拠だった。
ところが、4日と7日に東京都内で開かれた評価会合で、とりまとめ役の島崎邦彦・規制委員長代理は「(活断層か否か)はっきりさせたい」「(自分を含めて)5人が一致して結論を出すことが望ましい」として結論を先送りした。新たな試掘溝を掘ることを関電に指示、追加調査することにしたが、調査の終了時期は明示されることなく、結論は引き延ばされることになった。
さらに規制委の田中俊一委員長は14日の記者会見で「活断層か地滑りかはっきりしないと(運転の可否の)判断は無理だ。理由なく原発を止める権限はない」とまで言い切った。原子力規制庁の担当者も「(手引きには)稼働中の原発を止める規定はない」と、「詭弁」とも取れる言い逃れに終始している。
さらなる調査という規制委の方針について、渡辺教授は「運転を止めないと、原子炉周辺などは調べられない。期待されているような学術的に高いレベルの結果は出ないだろう」と語る。
原子炉建屋直下などにも長さ数十メートルの短い断層がいくつも存在するが、「海中の活断層を震源に地震が起きれば、F−6断層だけでなく、これらの細かな断層も連動する可能性がある。なおさら運転を止めて調べ直す必要がある」と訴える。
仮に規制委が運転停止を命じなくても、危険だという判断さえ発表すれば、経済産業省が関電に対し、行政命令で運転を停止させることは十分可能ではないだろうか。
この点について、野田首相は2日の会見で「規制委の判断が出れば、当然、政府は尊重する」と述べているが、経産省資源エネルギー庁の担当者は取材に「規制委に予断を与えるのでコメントできない」と話した。
今夏の電力需給逼迫を理由に「見切り再稼働」を強行した大飯原発だが、電力は結局、足りていた。少なくとも、この季節、運転を停止しても需給面での問題は全くない。
規制委が時間稼ぎをしているようにも見える現状に、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「活断層の存在が疑わしいのなら、安全第一で原発を止めるべきだ。規制委は中立といいながら、それも判断できていない」と憤りを隠さない。
「活断層の結論を先延ばしすることで、なし崩し的に原発を動かそうとしている。原発がなくても、電力供給を乗り切れてしまうことが分かり、原発の稼働が再びゼロになることを避けたいという勢力の意図が働いているとしか思えない」
渡辺教授は「私は大飯原発を廃炉にすべきだと決めつけてはいない。シロかクロかはっきりさせて、シロなら再稼働させればいい」と唱える。
「その判断をするためには、いったん運転を止めないといけない。それがどうしてできないのか。最初から結論ありきの調査だったのか」
[デスクメモ]
「想定外」という言葉が福島原発事故後、やたら使われた。活断層にも当てはまるのでいま一度、意味を考える必要がある。想定外とは想定しなかった、つまりは安全技術が未熟だったことを指す。一方、原発は未熟が許されない代物だ。人知は万能ではない。となれば、もはや結論は自明ではないか。(牧)
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