http://www.asyura2.com/12/genpatu28/msg/649.html
Tweet |
原発の安全性は活断層評価では不十分
大飯原発の敷地内に活断層があるかないかでかなり話題になっている。活断層評価は、何万年に一回とか何十万年に一回動くかどうかを見ることになるから、活断層が実際にあってもあまり関係ないと考えている方がかなり多く居るはずだ。
しかし、ここには誤解と言うか、巧妙な仕掛けと言うか、そういったものがある。
まず、活断層そのものについてだ。
活断層があるかないかが重要な問題とされている。自分としては事実として大飯原発敷地内に活断層があると思うが、実を言うと、活断層がないとされてもそれが安全だというわけではない。つまり、活断層がなくとも大きな揺れがあることがあるからだ。
1995年の阪神大震災では震度7、つまり、これ以上の震度階級がない最大震度を記録した地域が神戸側に幅1キロ、長さ20キロから30キロにわたって表れた。
( http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/31/index2.html の図3 )
しかし、この神戸側に活断層は発見されていない。野島断層が淡路島には現れたが、神戸側ではトレンチを掘るなりして調査をしたにもかかわらず活断層を見つけることができなかったのだ。
そもそも、活断層とはどういったものなのか。活断層の定義としてその断層が前回動いたのがいつ頃かということが問題にされる。「数十万年前以降」に活動したものを活断層とするわけだ。
( http://kotobank.jp/word/%E6%B4%BB%E6%96%AD%E5%B1%A4 )
しかし、この定義と現実とは合わない。
なぜなら、もっとも頑丈に作ってあるはずの高速道路の鉄筋コンクリートの柱が倒壊するほどの揺れがあった場所でも活断層が発見されないことがあるからだ。阪神大震災はまさにこういった事例だった。
現在の活断層調査は地表面を調査するか、せいぜい数十メートル掘り下げて調査するだけだ。ところが被害を与えるような地震のすべては震源深さが5キロから数十キロはある。現実に震度5程度までは地震が起こっても地表面に割れが観察できることはほとんどない。「地表地震断層が出現するのはM6.8以上からで、確実に出現するのはM7.2以上」
( http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf110-6/p771-783.pdf )とさえ言われている。だから、地表に姿を現さない活断層を伏在活断層と呼ぶことまで行われている。
阪神大震災を起こした兵庫県南部地震はマグニチュード7.3、震源深さ16キロの地震だった。7.3は7.2より大きい。だから、実際に震源側の淡路島では野島断層が地表に姿を現し、震度7を記録した地域があった。しかし、同じく震度7を記録した神戸側では地表活断層は発見されていない。
原発の安全性で問題なのは建物が壊れるかどうかだ。だから、揺れがどれほどあるかが基本的な問題だ。原発敷地内に活断層がなくても、原発が破壊されるような地震がどの程度あるのかが本来の問題なのだ。原発敷地内に活断層が見られなくとも頑丈なコンクリートの柱が粉々に破壊されることがあるからだ。
一応、揺れが大きくなるのは断層がずれたからだということで、その断層面の大きさに注目して、断層面の広がりを示す震源域の大きさを考えてみよう。
1995年の兵庫県南部地震はM7.3で震源域の広さは幅15キロ、長さ50キロ程度だという。
( http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B101&ac2=&ac3=4483&Page=hpd2_view )
2004年の中越地震はM6.8で幅20キロ、長さ50キロ程度だ。
( http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/aftershocks/kiso_aftershock.html の図3 )
2008年の岩手・宮城内陸地震はM7.2で幅35キロ、長さ45キロ程度だ。
( http://www.hinet.bosai.go.jp/topics/iwate-miyagi080614/ の「主な地震の震央分布図」 )
よって、M7で幅30キロ、長さ40キロと仮定してみよう。マグニチュードと震源域の大きさが比例しないのはこれらのマグニチュードがモーメントマグニチュードではなかったり、断層面が傾いていたり、または震源深さが関係するからだ。
一般的に海溝型の大きな地震が発生する前にその地域一帯を地震空白域として、その空白域の周辺でマグニチュードが1程度小さい地震が頻発する現象がある。これを地震の活動期と呼ぶ。ここでは、1946年の昭和南海地震発生前の状況で、どの程度の頻度で地震が起こるか見てみよう。
http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/sec7.3.html にある 図7.12 1946年南海地震(M8.0)の発生前40年間(左)と最近40年間(右)における,近畿地方周辺の地震活動(M>6) の比較(「1995年兵庫県南部地震」,京大防災研より) を見てみよう。
1909年の姉川地震(M6.8)に始まって、1946年の昭和南海地震(M8.0)前までにマグニチュード6以上の地震がこの辺一帯で11回も起こっているのだ。(図7.12はそのままではよく見えないがパソコン画面で拡大してみると鳥取地震が起こったところで同じ1943年にM6.2の地震が2回起こっているのが分かる。)琵琶湖の北東側で起こった姉川地震と鳥取県の東部で起こった鳥取地震含む一帯の面積を縦60キロ、横200キロと見積もって、この地域、つまり、若狭湾周辺の面積を12000平方キロとする。
マグニチュード7の地震の震源域は30キロ×40キロの1200平方キロと仮定したから、若狭湾周辺の地震頻発域にはマグニチュード7の震源域がちょうど10個収まることになる。
この地域で40年間で6回マグニチュード6以上の地震が起こってきたので、かなり雑だがこれらの地震がすべてマグニチュード7であったと仮定する。
すると、ある一つの震源域がマグニチュード7の地震を起こす確率は40年間で0.6回と言うことになる。
若狭湾の原発群が立地する地域の広さは縦20キロ、幅100キロ程度だと仮定すると面積は2000平方キロとなる。2000平方キロは1200平方キロの約2倍だから、この広さでマグニチュード7の地震が起こる確率は40年で0.6の2倍、つまり1回程度ということだ。なお、これは昭和南海地震の起きる前40年間で考えた数値だ。
今重要なのは、今後の確率だ。東日本太平洋沖地震は1000年に1度の地震とされる。日本列島全体に大きなゆがみが新たに生じたので、次の南海地震はより大型化するはずだ。次の南海地震が30年以内に発生する確率は90%程度とされるので、40年後に起こると仮定する。次の南海地震はマグニチュード9とされるのでその大きさは昭和南海地震の32倍にもなる。これがそのまま震源周辺域での地震活動に結びつくわけではないだろうが数倍程度にはなるだろう。つまり、若狭湾の原発群が直下型のマグニチュード7程度の地震に襲われる可能性は40年間で数回、つまり、10年に1回程度となる。
九州にある玄海原発や川内原発、四国にある伊方原発はどうだろうか。九州にある原発はプレート境界に近い。特に川内原発はアムールプレートの南端近くにあり、桜島や新燃岳の噴火活動活発化もあり、直下型の地震が起こる可能性は高い。事実、1997年に鹿児島県北西部地震がマグニチュード6.3、6.2の大きさで続けて2回起こっている。また、伊方原発は中央構造線のほぼ真上にあり、鹿児島県北西部地震はその中央構造線の末端に位置している。だから、中央構造線での地震活動が活発化している可能性もある。
なお、大きな地震が起きたのちの余震活動では、震源域の端のほうで大きな余震が起きる傾向があるという。
( http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/aftershocks/kiso_aftershock.html には次のように書かれている。
[5]大きな余震は余震域の端の周辺で起きやすい傾向があります。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震では、余震域の南端付近(茨城県沖)でマグニチュード7.6の最大余震が、北端付近(岩手県沖)でマグニチュード7.4の大きな余震が発生しました。)
以上の話は、活断層が原発直下にあるかないかよりも震源域の広がりを意識したものだ。そして、震源域を考えた確率論のほうが現実をよく表していることがはっきりしたはずだ。
では、なぜ、活断層評価ということが重要視されてきたのだろうか。
非常に簡単に言ってしまえば、活断層評価はあいまいでいくらでも解釈次第で確率を甘く評価でき、原発立地が可能になるからだ。
浜岡原発は東海地震の震源域の真上に立地している。東海地震が繰り返しあの地域で起こることが分かる前に浜岡原発が作られたと昨年マスコミで繰り返し報道されたが、それは明確な間違えで、浜岡原発の建設認可がされる前に東海地震が繰り返しあの地域で起こってきたことが地震学会で確認されていた。このことをまったく無視して浜岡原発は作られたのだ。
活断層かどうかの判定基準を十数万年前から40万年前というより長期間に最近変更したのは、活断層かどうかの判定基準を厳しくしたことになるが、一般的な印象は、40万年に一度しか動かない活断層なら原発直下にあっても当分は安全だというものだろう。まして、活断層かどうかの判定はかなりあいまいで、地滑りが上向き方向に起こる可能性さえあるとする議論が規制委員会では認められてしまうのだから、40万年に一度という判定基準は単に活断層があっても当分動かないから大丈夫と言う印象を与えるためと見えてしまう。
日本政府も日本の電力会社も、原発による発電コストは1kwh5円程度で火力や水力、地熱などに比べて最も安いと言ってきた。そして、その陰で、使用済み核燃料については再利用を図るとし、高速増殖炉の開発に何兆円も費やして失敗してきている。再処理工場も同じで六ヶ所村の再処理工場はいまだに稼働していない。そして、これらのコストは原発の発電コストにきちんと反映されてきてはいなかったのだ。更に、高レベル廃棄物の処分は全く可能になっていない。地層処分についてはやっと今年になってから日本学術会議で不可能だと認められた。しかし、地上での乾式貯蔵になればコストは無制限と言っていいほど膨れ上がる。ここまで現実にはコストがかかるものを推し進めてきたのは電気代に総括原価方式と言う原価計算の方法が認められてきたからだ。コストをかければかけるだけ利益が増えるという方式で、一基建設するのに3000億円程度かかる原発は総括原価方式では利益を生むもとになっていた。
しかし、福島第一原発事故が起こった昨年来、原発のコストは大変に高いものだということがやっと認められだした。しかし、それでも、現在ある原発は停止するともったいないということで再稼働を推し進める動きが各所から出ている。
その根拠が活断層評価だ。数十万年に一度だから当分の間動かしても大丈夫と言うものだ。しかし、太平洋戦争終了の前後に起こった昭和南海地震や昭和東南海地震の後、日本全体は地震の静穏期に入ってしまい、たまたま地震があまり起こらなかっただけだ。1995年の阪神大震災以来日本全体が地震の活動期に入っている。
繰り返すが、活断層評価による再稼働判断はおかしい。間違っていると言ってもいいくらいだ。震源域による直下型地震がどの程度起こるかという確率評価をするべきだ。
*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<1211>>TC:38110,BC:13088,PC:?、 Mc:?
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素28掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。