09. 2012年11月10日 03:41:33
: Gj84vO9mCk
原発に未来が無いのは何故か・カギは高速炉 原発の建設、管理運営、廃棄物の処理、廃炉のコストを積算した場合、他のエネルギーに比べて割高なのは自明である。原発の商用利用が成立するかは、高速炉による核燃料サイクルを実現出来るか否かで決まる。史上初の原発の商用利用に成功したイギリスに於いても、その計画の段階である1953年時点で、使用済み核燃料から抽出したプルトニウムによる高速炉が計画されていた。(参考1)しかし、この高速炉への挑戦は、怖いもの知らずのアメリカでさえ94年に議会で中止し、イギリスもこれに続いている。米英の脱落に勢いづいたであろう日本勢も、翌95年に発生した「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故等により敢えなく沈没。フランスの高速炉スーパーフェニックスも98年に頓挫している。(参考2)一方、米GE社は、議会で否決されたくらいで諦める事は無かった。というよりも、諦める訳にはいかなかった。誰かが高速炉による核燃料サイクルの実現を目指していない限り、商用の原発は存在理由を失う。原発とは、未来の核燃料サイクル技術によって担保された、約束手形のようなものである。GE社は後の2007年に日立と連携してGE日立を設立、再処理をパッケージにしたプリズム高速炉を再設計し、米国原子力委員会への再提出を目論んでいた。(参考3) そんな最中に発生したのが福島第一の事故である。ドイツは脱原発、フランスは原発依存の縮小へ向かい、米オバマ政権はグリーン・ニューディールが売り物だ。追いつめられたGE日立がターゲットとして選んだのはイギリスだった。GE日立は7月初旬に英当局にプリズム高速炉の企画書を提出し、受理された。(参考4)6月下旬よりヒートアップした日本の脱原発デモと、企画書提出の時期に関連性を読み取るとしたら、詮索が過ぎるだろうか。 ・なぜイギリスなのか イギリスが抱える深刻な問題の一つは、100トンにも及ぶ核廃棄物だ。MOX燃料に活路を求めたが、セラフィールド閉鎖にみられるように失敗に終わっている。これに加えてイギリスでは廃棄場所が確定していない。現在の予定地は安全性の面で疑問視されている。福島事故の調査も行っている低線量被ばく研究の第一人者ベーバーストック博士は、英政府の顧問を勤めていたが、この安全性を指摘したため2005年に更迭されている。(参考5)しかし、この問題はくすぶっており、最近の世論調査でも過半数の住民が安全性の再調査を求めている。(参考6)つまり、「トイレ」が無いのだ。GE日立がイギリスに目を付けたのは、こうした理由からだと考えられる。GE日立のアクションに対するイギリス国民の反応は賛否両論の淡白なものであったが、その後発表されたサプライズ、日立によるホライズン買収に対する反応は強烈だった。日系の資本に対する激しいアレルギー反応を示し、英国世論は脱原発に向かっている。つまりイギリス国民にとって、日米のハーフである「GE日立」の参入と、純血の日系企業である「日立」の参入とは別問題であったようだ。その一方で、英メディアが気味が悪いほど日立の参入を賞賛しているのも印象的だ。イギリスでは近い将来の電力不足が危惧されており、日立の参入はやむを得ない事であろう。しかし、これはどう見ても、イギリスを商用高速炉の実験場とする下準備に見えてしまう。GE日立において日立の提携先であるGEは、「我々のパートナーにとって素晴らしい日がやってきた。彼らを支援するのを楽しみにしている」(参考7)という不気味なコメントを残している。多量の核廃棄物を抱え、「トイレ」の無いイギリスにおいて、日立は6施設(?)もの原発を新たに設置・運用する計画なのだ。イギリスにとっての選択肢は、どんどんと狭まって行くように見える。高速炉の運用は途上国では絶対的に不可能であり、他の先進国が撤退した以上、イギリスは、国際原子力マフィアにとっての最後のフロンティアと言える。逆に言えば、もしイギリスに可能性が無くなれば、約束手形の不履行が確定し、原発の存在価値は無くなる。 高速炉とは恐ろしいものである。福島第一の事故は「最悪の事故」であったが、それでも水を使用する軽水炉であったため、海水の注入により「最悪の事故」に留まった。これがナトリウムを使用する高速炉で、燃料がプルトニウムであったならどうなっていただろうか。イギリスは馬鹿では無い。要は時間の問題なのだ。 現在の主戦場と見られるイギリスに、多大な影響をもたらす可能性があるのが日本である。日立のお膝元である日本が脱原発へ向かうとなれば、英国世論に与えるインパクトは多大だ。ただし、敵は強大である。毎日新聞は、6次下請けくらいの輩だろう。 ・参考箇所について 参考として引用されたサイトは、むしろ原発推進の立場のもの 参考1 日本原子力開発機構ニュース http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t12-5.pdf#search='PRISM+NRC' 参考2 原子力百科事典より http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=03-01-05-05 参考3 原子力百科事典より http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=07-02-01-05 参考4 ガーディアン紙(英語) http://www.guardian.co.uk/environment/2012/jul/09/nuclear-waste-burning-reactor 参考5 BBCニュース(英語) http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-cumbria-19816861 参考6 ガーディアン紙(英語) http://www.guardian.co.uk/uk/the-northerner/2012/aug/17/lakedistrict-nuclearpower-west-cumbria-managing-nuclear-waste-safely-partnership 参考7 ワールド・ニュークリア・ニュース(英語) http://www.world-nuclear-news.org/NN_Britain_to_have_boiling_water_reactors_3010121.html
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