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週刊ポスト2012/11/16号 :大友涼介です。
東電による「電力安定供給のための料金値上げ」が実施されて早2ヵ月。値上げされた請求書はすでに各家庭に届いているだろう。関西電力、九州電力も相次いで値上げを決定した。「原発を減らすためにはやむを得ない」というが、これは真っ赤なウソだ。なんと「全く発電していない原発」のために値上げ料金が使われていたことが発覚した。これは原発が必要かどうかという問題ではない。電力マフィアと全国民との闘いにほかならない。
◆発電ゼロなのに93億円の利益
またしても原発マフィアの電力恫喝行政が始まった。
10月24日に開かれた政府の需給検証委員会で資源エネルギー庁の糟谷敏秀電力ガス事業部長が、「電力会社を黒字にするには、原子力発電所の稼働か、料金値上げのいずれしかない」
と発表すると、待ってましたとばかりに関西電力や九州電力などが相次いで料金引き上げの方針を発表し、値上げの波が全国に広がっている。
一足早くこの9月から値上げした東京電力管内の家庭や商店、事業所には、いま、新料金での高額請求書が届いている。
千代田区内のコンビニ経営者は請求書の金額に目を丸くした。
「コンビニは冷凍・冷蔵庫で電気を多く使う。うちは値上げで電気代が月に5万円も増えた。東電の説明では12・7%の値上げだったはずなのに、残暑もあって前年同月比で3割以上のアップです」
それでも国民は政府の電力不足キャンペーンで、「電力の安定供給のためなら値上げも仕方がない」「原発を減らすにはやむを得ない」と思い込まされている。
原発再稼働に反対してきた大阪府の橋下徹大阪市長さえ、
「燃料調達費が上がっているため、一定程度は仕方がないのではないか」
そう関西電力の値上げを容認する姿勢を見せた。
騙されてはならない。
この現実を知れば、値上げなど許せないはずだ。
国民の支払う電気料金が、「発電量ゼロ」の原発への電気代として支払われているのである。
日本原子力発電という会社がある。東海第二原発(110万キロワット)、敦賀原発1号機(35・7キロワット)、同2号機(116万キロワット)の3基の原発を保有し、東電をはじめ、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力の本州5電力会社に電気を売る卸電気事業者だ。
3基のうち、東海第二は昨年3月の東日本大震災で自動停止した。敦賀1号機は昨年1月から、同2号機は昨年5月7日から、それぞれ定期検査のため停止されている。当然、その後、現在に至るまで発電量はゼロである。
ところが、同社の有価証券報告書によると、昨年度(12年度)は東電の約465億円をはじめ、関西電力・約341億円、中部電力・約307億円など5社から電力を売った代金として合計約1443億円を受け取り、93億円の経常利益を上げている(震災の被害による特別損失計上で最終損益は赤字)。本社社員の平均年間給与は637万円。経産省が電気代値上げにあたって電力各社に求めている賃下げ基準(大企業平均596万円)より高い。
敦賀2号機だけは昨年4月1日から5月7日に停止するまで37日間稼働したとはいえ、その間の発電量は10億kWhと前年度の発電量(162億kWh)の16分の1に過ぎない。
なぜ、事実上「発電ゼロ」の会社が利益を出せるのか。
次の数字を比較して欲しい。過去2年間の日本原子力発電の発電量と電力5社が支払った金額は、
・11年度 162億kWh 1736億円
・12年度 10億kwh 1443億円
と、発電量が16分の1に減ったにもかかわらず、電力会社の購入代金は2割しか減っていない。
12年度の平均電力単価は「1kWh=144円」であり、東電の値上げ後の家庭向け電気料金(第一段階1kWh=18・89円)の8倍だ。電力会社は日本原子力発電からべらぼうに高い電力を買っている。
それだけではない。実は、昨年度に同社で唯一稼働した敦賀2号機は中部、北陸、関西の3電力だけに供給している。つまり、東電と東北電力(支払い金額約117億円)は電力を全く受け取っていないのに合計582億円払ったことになる。もちろん、そのカネは国民の電気料金だ。
一体、どんな会社なのか。(※日本原子力発電株式会社 http://www.japc.co.jp/)
日本原子力発電は原子力発電推進のために電力9社と政府系特殊法人の電源開発(現在は民営化)の共同出資で1957年に設立された国策会社だ。筆頭株主は東京電力(28・23%出資)。66年には日本初の商用原発「東海発電所」の運転を開始し、前述のように現在3基の原発を保有している。
社員数は関連会社を含めて2254人。原発推進派の政治家、与謝野馨・元財務相は議員になる前に社員だったことでも知られる。
一般の企業なら、売り上げが激減し、ゼロになれば倒産する。しかし、この原発会社は国民が払う電気料金によって発電ゼロ、つまり売る商品がなくても何事もなかったように経営を続けているのである。
◆延命のために年間1003億円
もっと驚く事実がある。東京電力は日本原電の原発が今後、再稼働する見込みが立っていないにもかかわらず、同社への支払額を値上げ料金に上乗せしているのだ。
電気料金は、人件費や管理費、燃料費といった発電にかかる経費に一定の利益を乗せて計算する「総括原価方式」によって決定される。東電の値上げ申請内容を経済産業省の電気料金審査専門委員会が査定した資料(『東京電力株式会社の供給約款変更認可に係わる査定方針』)には、東電が今後3年間(12〜14年)に見込んでいる他社からの購入電力量とその金額が、発電の種類ごとに一覧表で示されている。
東電が他社の原発の電力を購入しているのは日本原子力発電の東海第二と東北電力の東通原発からだが、資料によると、「原子力発電」の購入電力量は今後3年間も「ゼロ」、つまり、どちらも再稼働できないと見込んでいるにもかかわらず、支払い金額にはなんと年間約1003億円が計上され、それが値上げ料金の原価に含まれている。
東電は今回の値上げで年間ざっと6150億円の増収を見込んでいるが、そのうち1003億円は「発電しない原発企業」のために使われていたのである。
ちなみに、東電が日本原電に支払うのが昨年度並みの約500億円とすると、残りは稼働していない東北電力東通原発向けであり、東電の値上げには、日本原電救済だけではなく、こっそり東北電力の原発事業への”隠れ補助金”まで含まれていることになる。
原発推進派の識者からも、電気料金値上げによる日本原電救済には批判が強い。
電力問題に詳しく、「低コストで安価な電力供給のためには原発の安全性を高めて残すべき」という立場を取る経済ジャーナリストの町田徹氏はこう指摘する。
「原発停止で日本原電の経営はもはや成り立たない。東電が発電セロでもカネを払うのは、そうしないと潰れるからです。しかし、日本原電の東海第二は震災で相当なダメージを受けていると見られており、放射能漏れこそ起こさなかったが、原子炉内の温度を100度以下に下げて『冷温停止』という安定状態にするまで3日もかかった。復旧させようというのは無理がある。東海第二には関連会社や下請けを含めて数千人がかかわっているはずで、廃止するとなると従業員を別の原発に移さなければならないが、停止中の敦賀原発も老朽化しており、受け入れるのは難しい。日本原電は敦賀第3、第4原発の建設を計画しているが、枝野幸男経産相は認めないと言っている。将来の展望がない原発企業を電気料金で生き延びさせるのは、電力の安定供給やコスト面からみても本末転倒です。会社を整理すべきでしょう」
実は、政府内でも日本原電に電気料金を使うことに異議があった。消費者庁の諸費者委員会は東電の値上げ申請への意見書でこう指摘している。
<そもそも購入電力量がゼロであることに加え、日本原電が実質的に東京電力との共同事業体という性格を持つことを考えれば、算入原価を下方修正すべきである>
下方修正では甘過ぎるとはいえ、大幅な見直しは当然である。
しかし、経産省の『査定方針』では消費者委員会の意見を跳ね除け、こう結論付けた。
<原子力発電による購入電力については、原価算定期間における受電量をゼロと見込んでいるものの、停止中の原子力発電所にかかる維持管理や安全対策工事などに必要と見込まれる費用については、(中略)料金原価に算入することを認めることが適当である>
そして枝野経産相は値上げを認可した。
経産省や東電はなぜ、そこまでして日本原電を救済したいのか。
原発事故後に官房長官として東電救済の指揮を執った仙石由人・民主党副代表は、「再稼働しなければ原発は資産から負債になる。企業会計上、脱原発はただちにできない」と電力会社の経営事情を理由に原発再稼働を推進した。
同社を破綻処理すれば、従業員の解雇で大量の失業者が生まれるだけではなく、原発の廃炉などに巨額の費用がかかる。当然、そのカネは電力会社や政府が負担しなければならない。
安全確認がなされないまま停止している原発は、すでに事実上、電力会社の不良債権といっていいが、はっきり廃炉を決めた途端に、電力会社には巨額の負担がのしかかる。だから、政府も電力会社も、値上げする電力料金の中に原発維持費を盛り込み、全原発を生き残らせ、原子力ムラの温存を図ろうとしているのである。
◆勝俣・前東電会長が天下り
日本原電の処理はまさに原発問題の象徴といっていい。しかし、将来的に原発の比率をゼロにするならもちろん、政府が選択肢に挙げた全電力の15%や25%にする場合でも、いずれは多くの原発を廃炉にする必要がある。町田氏が指摘したようにこの会社を国民の電気料金で残すことは、電力の安定供給とは全く無関係の話だ。
東京電力には、もう一つ、この会社を潰せない理由があると思われる。
日本原電には原発事故で引責辞任した東京電力の勝俣恒久・前会長が天下っているからだ。
勝俣氏は東電の社長、会長時代を通じて日本原電社外取締役を務め、会長辞任後も同社の非常勤取締役である。
電気料金の値上げは、原発事故の責任者の食い扶持にも回っていた。
日本原電の言い分を聞いた。広報室の担当者は、「勝俣取締役の役員報酬は有無を含めてお答えできないが、個室も専用車もありません」という。当たり前である。以下は広報室の担当者との一問一答である。
記者:発電ゼロなのに料金を取る根拠は何か。
日本原電広報室:電気事業はガスや水道、鉄道と同様の設備産業なので、維持費用が掛かる。電力会社と1年ごとの契約に基づいて料金を支払ってもらっている。発電量がゼロでも基本料金が掛かるわけです。
記者:利潤まで取るのか。
日本原電広報室:料金は「卸供給料金算定規制」という法令に基づいて、原価に利潤を加えた額を算定している。発電していなくても、燃料を購入すればその分も乗せる。
記者:1年契約なら打ち切られても仕方がない。
日本原電広報室:今期の分は電力会社と契約を結んでいる。期間は1年だが、複数年を前提とした料金算定をしている。
記者:原発停止で経営が成り立たないはずだ。電力を供給していないのに国民の電気料金からカネを取るのはおかしい。
日本原電広報室:昨年12月から社長30%、副社長20%など役員報酬をカットしている。当社としては、国民生活や産業、経済を支える原子力発電を今後とも活用していく必要があると確信している。世界最高水準の安全を追求していく覚悟です。
東京電力広報グループ:日本原電の原発は当社との共同開発で、維持管理費用や将来の稼働に向けた投資に関する費用について自社電源同様に当社が負担する義務がある。
この会社の存続のために電気料金が値上げされ、国民生活を支えるどころか圧迫しているという認識は全く感じられない。
このカラクリをつくり上げた電力会社や経産省の電力マフィアたちは電力値上げに苦しむ町工場の声をどう聞くのか。大田区産業振興協会の山田伸顯・専務理事はこう怒った。
「メッキや鋳物など電力需要の大きい業種には今回の値上げは死活問題。それなのに電力会社は我々が払った電気代を発電ゼロの会社に渡しているなんてとんでもない話です」
そして、誰もが納得する言葉を続けた。
「売り物がない企業が代金をもらえるなど、当たり前の商売では考えられないことです。役所も電力会社も中小企業の苦しみを全くわかっていない」
この企業の精算を早く決断しない限り、東電だけではなく、値上げ方針を打ち出した関西電力はじめ全国の電力会社が新たな料金算定に原発企業への救済資金を盛り込むのは確実で、今後も国民負担は膨らむばかりだ。
これでも電気代値上げは仕方ないと思えるだろうか。
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