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福島原発・争議に動き始めた下請け労働者たち
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012110302000114.html
2012年11月3日 東京新聞[こちら特報部]
被ばく隠しに賃金のピンハネ─。東京電力福島原発事故の収束作業現場で働く下請け労働者の窮状は、「こちら特報部」でも再三、指摘してきた。事故から間もなく1年8カ月。一人の作業員は先月末、高い放射線量下での作業を強いられたと、東電のグループ企業を労働基準監督署に申し立てた。一方、労働契約のずさんさから争議に発展するケースも出始めている。憤りが渦巻く現場を探った。(上田千秋)
「単純におかしいことはおかしいと言いたかった」。今年に入り、福島第一原発で働いた30代の男性はこう語った。
男性は下請けの建設会社「サンシード」(福井県)に今年1月、正社員として入社。だが、今月5日付での解雇を言い渡され、これを不当として団体交渉に踏み切った。
男性は入社後、すぐに1日2回の食事代と宿舎代は会社の負担という約束で、福島第一の現場に赴いた。日給の1万円に残業手当と深夜手当が付き、そこから雇用保険料や社会保険料などが引かれる契約だった。
原発で働くのは初めてだった。仕事は免震重要棟に出入りする労働者の管理。間もなく「約束との違い」に気づいた。
車で1時間半以上の原発までの移動時間は「拘束9時間」に含まれていなかった。請負業務のはずなのに、元請け会社の社員から直接指示を受けることが何度もあり、違法な「偽装請負」ではないかと感じた。
3月の給与から、残業手当と深夜手当が毎日1時間ずつ減らされた。8月には、食事代と宿舎代を自己負担するよう求められた。会社の営業所長は「元請けの指示」と説明したが、労働者は反発、食事代のみ自己負担に。その際、営業所長は「来年3月まで、この形態でいく」と話した。
ところが、会社側は先月、男性を含む福島第一に派遣されていた30人全員の解雇を告げた。
理由は「元請けから急に契約を切られた」。退職金もなかった。
◆元請け会社に団交申し入れ
男性はフリーター全般労働組合(東京都)を頼って、先月中旬、サンシードと、同社の元請けで原発の保守管理大手のアトックス(東京都)に解雇撤回などを求めて団交を申し入れた。アトックスは福島の事故収束作業でも、東電から多くの業務を受注している。
男性は「弱い立場であるこちらの足元を見るようなやり方は、断じて許せない」と訴える。
ただ、両社の対応は現在まで冷ややかだ。
アトックスは「雇用契約を結んでおらず、団交には応じられない」としており、「こちら特報部」の取材にも「短期間の契約で、指揮・命令をしたこともない。また、業務の代金は一括して払っており、こちらの指示で手当や食事代などが減ることはあり得ない」(同社総務部の担当者)。
サンシードも先月26日の最初の団交では、解雇撤回を拒んだ。フリーター全般労組の山口素明共同代表は「収束作業はいわば”公務”。長丁場の作業なのに、こうした状況が続けば、労働者は集まらない」と批判する。男性も「一生懸命働いても、結局は使い捨てだ」とつぶやいた。
収束現場での雇用などをめぐるトラブルはこれにとどまらない。40代の男性労働者と雇用契約を結んだ福島県いわき市の業者のやり方は「むちゃくちゃ」と言える。
この男性が駆け込んだ派遣ユニオン(東京都)によると、業者は健康診断の受診料、放射線管理手帳の発行費用名目で、計約1万7千円を給与から天引き。双方とも本来は事業者負担だ。しかも業者は会社の形態を装っていたが、実際には法人登記していなかった。
業者はある日、「仕事はがれき撤去作業。20ミリシーベルトを4日間で浴びる」と説明。男性が「高すぎるのでは」と疑問を漏らすと、「8日たてば、半減してゼロになる。皆それぐらい浴びてるから大丈夫だ」と意味不明の返答をした。それに異議を唱えると、その日のうちに解雇されたという。
◆賃金ピンハネ 責任うやむや
業者は6次下請けで、この男性は8月、団交を元請け会社などにも申し入れたが、5社はいずれも「(男性と)雇用関係にない」と団交拒否。
これまで福島労働局の指導で健康診断の受診料と手帳の発行料は返還されたものの、5社にピンハネされた賃金の返還は実現せず、責任の所在もあいまいなままだ。
同ユニオンの関根秀一郎書記長は「一次下請けには、東電から日給5万〜6万円支払われていたはずなのに、男性は1万3千円しか受け取っていなかった」と話す。
このほかにも、いわき市の渡辺博之市議によると、「作業場所は原発敷地外」と言われて入社したのに、原子炉建屋内で汚染水の処理をさせられたという例もあった。
福島第一の収束作業は今後、少なくとも40年以上は続く。膨大な数の労働者が必要にもかかわらず、国や東電の労働者保護はお粗末だ。
厚生労働省は9月、原発作業員が胃など3つのがんを発症した場合に、労災補償する目安を明らかにした。累積被ばく線量100ミリシーベルト以上を基準としたが、それ以下でもリスクがあることは学界でも常識となっている。
身近な防波堤である労働基準監督署も「職員数が足りないこともあり、申し立てがあれば動く程度。多くのトラブルは見過ごされている」(関根書記長)のが実情だ。
40年以上にわたって原発反対運動を続け、労働者の相談を受けてきた双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎代表は「東電は、仕事を丸投げすればそれで終わりと思っている。しかし、事故を起こした当事者である以上、下請けを含めたすべての労働者に対して責任がある」と主張する。
「被ばくが避けがたい危険な仕事をさせられているのに、それに見合った給与をもらえるわけでもない。働きたい人が減って『最近、労働者の質が低下してきた』という声も聞こえてくる」
さらに石丸代表は「現在の収束作業は労働者を使い捨てにすることを前提に成り立っている。しかし、このままではいずれ労働者の供給が滞る。多重下請けのピンハネ構造をなくし、被ばく管理を徹底しない限り、収束作業自体が行き詰まってしまう」と警告する。
派遣ユニオンの関根書記長も「最近、ようやく表に出てきたトラブルはあくまで氷山の一角。まだ訴え出る労働者は少ないが、こうした闘いを見て『声を上げてもいいんだ』ということが広まれば、争議の件数は飛躍的に増えていくだろう」と予測している。
[デスクメモ]
「原発は『絆』とは真逆だ」─。布施祐仁さんの著作「ルポ イチエフ」(岩波書店)の中で、一人の下請け労働者はそう語っている。発注元が支払っているはずの危険手当が重層の雇用構造の中で”蒸発”することを指している。都合のよいときだけ、祭り上げる下品さ。戦後も何ら変わっていない。(牧)
※偽装請負
実態は労働者派遣なのに、請負に見せかける違法行為。通常の請負では、請負会社の労働者がその会社の指揮命令下で働く。だが、偽装請負では元請け会社の指示に従う。使用者責任が不明確になるため、労働者派遣法や職業安定法で禁じられている。派遣契約より人員削減などがしやすく、原発労働では横行している。
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