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ウラン、二極化する国際価格 原発利用の温度差映す
原子力発電の燃料になるウランの国際価格は東京電力の福島第1原子力発電所の事故後、短期契約も長期契約もそろって下がり続けてきた。ところが今春以降は短期が一段安になる一方、長期は小幅に上昇している。相場の二極化は何を意味しているのだろうか。
「原発再稼働が遅れウランの使用量がゼロの状況では在庫がどうしても膨らんでしまう」。ある電力会社の調達担当者は困惑の表情を隠せない。海外の調達先に可能な限りの出荷先送りを要請しているが、契約を盾に引き取りを迫られるケースも一部にあるという。
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国内54基のうち現在稼働しているのは関西電力大飯原発の2基のみ。使用量が激減する中でウランの在庫は急増している。商社の試算では沖縄電力を除く電力9社の在庫は世界の年間需要の6万〜7万トンを上回る7万〜8万トンに達したという。在庫増が価格の押し下げ要因になっている。
市場分析を行う米トレードテックが発表する1年以内の短期価格は10月中旬で1ポンド43.50ドル。今年の最高値をつけた1月中旬比で18%下がり、福島の事故前の2011年3月初旬比で35%安い。
政府が9月に「30年代に原発ゼロ」という方針を掲げたのも弱材料に働いた。福島第1原発の事故ですでにドイツ、イタリア、スイスなどの原発政策は後退しており、特にドイツは22年末までの原発全廃を決めている。
ウラン価格の下落で生産にもブレーキがかかってきた。仏大手原発メーカーのアレバは今月中旬、ナミビアでのウラン鉱山開発の延期を発表。英豪資源大手BHPビリトンは8月、豪州の銅・ウラン鉱山の採掘拡張計画を凍結した。
ただ、日本の在庫増などの要因を除けば世界のウラン需給は構造的に締まっている。11年の需要6万4000トンに対し鉱山生産は5万5000トンにとどまる。不足分は使用済み燃料の再濃縮やロシアの核兵器解体から出るウランで賄った。この核解体分を米国に引き渡す契約は13年末で切れる。鉱山開発の見直しが相次ぐ中、市場では「14年には需要が供給を上回る」との見方が多い。
市況も3年以上の長期価格の方は小幅ながら反発し、直近の9月末は8月末比で1ポンド1ドル高い61ドルになった。ウランの売買契約では短期が1〜2割で長期が8〜9割を占める。
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長期価格の上昇には原発推進国がなお多いという要因もある。世界一の104基を抱える米国は今年、34年ぶりに原発の新設決定に踏み切った。フランスは58基を運転する原発大国のままだ。中国、ロシア、韓国なども積極的だ。特に中国は先週「内陸部以外」という前提付きながら原発推進を発表し、建設中の25〜30基は順次工事を進める見通し。世界で建設中の約70基の4割に当たる。
日本要因で下がる短期価格と世界の趨勢で小幅高になる長期価格。ウラン価格の相反するベクトルは国内と海外の原発利用の温度差を映し出している。
(編集委員 浜部貴司)
[日経新聞10月30日朝刊P.]
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