http://www.asyura2.com/12/genpatu28/msg/401.html
Tweet |
JBpress>日本再生>国防 [国防]
トリウム核エネルギー発電が日本を救う
原爆への転用懸念がなく、小型で安全、効率も高い
2012年10月30日(Tue) 倉田 英世
日本は、平成23(2011)年3月11日の東日本大震災の後遺症として、無資源に近い国家の電力エネルギー源確保に関して、核エネルギー発電から撤退し、太陽熱・水力・風力・潮流などの自然エネルギーの徹底開発に移行するかのような方向が不用意に示唆された。
しかし自然エネルギーは、日本の電力需要の1.2%程度の供給能力と量的に限界がある。しかも日本は、現在発電用燃料資源の主力である化石燃料(石油・プロパンガスなど)を、すべて輸入に依存する無資源国家であり、消費できる期間は80年程度であることが示されている。
我が国は、第2次世界大戦敗戦後の経済成長期に、化石燃料が逼迫している無資源国家の電力資源として原子力(核エネルギー)発電が将来にわたって継続的に確保する上で、最良の手段と判断して採用し、事故当時54基の核エネルギー発電装置を稼働させていた。
これは総発電量の約30%に相当する発電量を確保し、さらなる発電量の確保を目指してきていた。
しかし、昨年の東日本大震災における、地震と津波という自然災害に加え、日本政府と東京電力の怠慢が引き起こした「人為災害」によって、福島第一原子力発電所において「3基の発電炉の水素爆発を含む炉の破損」によって放射能漏れ事故を起こし、米国のスリーマイル島原発事故およびロシアのチェルノブイリ原発事故を上回る大きな被害が継続中である。
そのため整備のために発電を中止し、ストレステストを含む点検を終わった大飯発電所の1〜2号基をようやく再稼働できたが、他の48基の発電炉の再稼働ができない状況下にある。
しかもこの国家的危機に際して、当時の菅直人総理が国民の信頼を失って退陣する前に、無知な日本人が行う「暴走:スタンピード」と言われる悪弊から発する、「原発ゼロ」発言を行って退陣した。
その結果として、幸か不幸か化石燃料が尽きた段階における日本の核エネルギー発電のあるべき新たな方向が、オボロゲながら見えてきた感がある。
現在、関西電力が点検を終わった原子力発電所の再稼働を模索している。が、不可能であったため今年の夏の所要電力が18%不足した。そのため国を挙げて節電に取り組むという厳しい時期を過ごさざるを得なかった。
福井県民が、原子力発電所の再稼働に合意しない状況にあったことが最大の原因であった。このため平成24(2012)年5月5日までに、日本の54基の全核エネルギー発電所が停止せざるを得ない状況となり、経済に及ぼす影響が極めて大きかったのが実態であった。
日本の核エネルギー科学技術は、「世界各国は、発電のために化石燃料、自然および核エネルギーのベストミックスを追求する上で、日本に学ぶべきだ。原子力でも再生可能エネルギーでも日本の技術は世界最高レベルを誇っている」 と伝えた資料(「原子力とエネルギーの未来」(ニューズ・ウイーク 2011.2.23, p41))がある。
日本がここで核エネルギー発電から退却することは、この世界の見る眼を欺いて3流国家に成り下がる選択をすることとなる実態を警告しておきたい。繰り返して言うが日本は、無資源国家なるがゆえに、この電力不足の危機から脱却するには、核分裂、次いで核融合発電を追求する以外にない情勢の中にある。
その危機的現況から脱却するための最高の選択肢について、本論で概要を示す。
1.核エネルギー発電のあるべき方向
(1)新たな核エネルギー発電採用の方向
菅総理の発言は、今夏の最盛期を迎える際に電力需要の大幅な不足が見積もられ、昨23(2011)年冬の経験を上回る節電要求、電気料金値上げ、ガソリンをはじめとする石油製品の値上げが常態化せざるを得ない事態に発展させた。
そしてエネルギー問題で国家・国民に多大な損害を与え、経済不況の中で多大な負担が課せられる事態を迎える状況下にある。
確かに、現在の核エネルギー発電システムは、暴走すると「核爆発」に至る極めて高い危険性を内在していることは当初から分かっていて、科学技術の力をもって対処させてきた国策である。
しかも我々は、その危険な事態を今回の大災害でつぶさに経験させられた。しかし我々は、この危険性を十分認識した対処手段である核科学技術進歩の力でコントロールしつつ安価な電力を得ることが、日本の電力エネルギー政策の基本であるべきだった。
東日本大震災の結果として今回の事故によって、この電力確保の方向変更の必要性が具体的に示されことは、神の啓示かもしれない。
現行のウラン・プルトニウムシステムを使ってきた「固体系核燃料」による発電の望ましくない方向を一挙に転換させ得る、革新的に安全かつ安価な「トリウム溶融塩発電炉」と呼ばれる「液体系核エネルギー発電」を採用せざるを得ない方向への転換が現実のものとなる可能性が見えてきた。
その概要を述べて、今後のエネルギー確保の有るべき方向を示したいと考える。
(2)トリウム溶融塩発電炉の研究
ここでまずトリウム元素について述べる。トリウムは、原子番号90の銀白色の金属元素で、元素記号はThである。主な産地は、オーストラリア、インド、ブラジル、マレーシア、タイなどである。
トリウムには同位元素が27種あるが、天然に存在するのは安定元素ではなく放射性のトリウム232(90Th232)だけで、安定な同位体はない。
トリウムはウランと似た性質を持っており、中性子を吸収すると核分裂を起こし、大量のエネルギーを発生させる。このトリウムをエネルギー源とする発電炉は、ウラン発電炉に比べて次の3つの利点があると言われている。
●安全である。放射性廃棄物が少なくなる。発電炉システムが、液体であるため炉心溶融のような事故が起こる可能性が極めて少ない。
●経済的である。トリウムを使った燃料からは、ウランを使う場合の200倍のエネルギーが発生する。そのため、発電コストが今より20%以上抑えられる。
●資源が豊富である。ウランは、現在のペースで消費すると、80年で消耗する。しかしトリウムは、1000年以上使用できる豊富な原料である。
ただし、欠点として反応によって強いガンマ(γ)線を放出するという欠点がある。しかしこれは、炉外周の防護壁を厚くすることによって回避できる。
このように今後の電力確保に大きなメリットがあるシステムであると言われている。
(3)現在採用している核エネルギー発電炉の問題点
現在、世界各国が採用している核エネルギー発電炉は、第2次世界大戦中に開発され、日本の中堅都市である広島、長崎に投下され、2市の全壊と30万人を超える一般市民を犠牲にした、「核兵器延長線上の技術」を平和利用に転換させる方法で行われている。
すなわちウラン235(92U235)もプルトニウム239(94Pu239)も核兵器の原料である。
しかしウラン金属は、ウラン235(92U235)を0.7%と、ウラン238(92U238)を99.3%含む同位元素からできている。核兵器にするにも、核エネルギー発電に使うにも、このウラン235を核分裂反応させなければエネルギーは出てこない。
核分裂反応させるには、0.7%しかないウラン235を核兵器の場合は90%以上、発電に使うには3〜5%に濃縮(含有量を大きくする)しなければならないという、大変な過程を経なければならない。
説明していく過程分かると思うが、「原子力発電」というのは本来適切な用語ではない。しかし日本では、「原子力は平和利用、核力は軍事利用」と勝手に決めつけて使っている。
世界共通用語では「核エネルギー」が使われているのでそれに従うこととする。
自然界に存在する物質を作っている元素は、天然のものが92個存在する。そのうちで、一番大(重い)きい「ウラン(U)」を構成している2つの同位元素 )のうちウラン235(92U235)が核分裂反応(核が2つに分裂する)を行って強いエネルギーを出す。
そのエネルギーは、身近な物質である水が、元素である水素2つと酸素1個が結合して水(H2O)を作る化学反応と比較すると、数百倍から千倍の強力なエネルギーを出す。
ウラン238は核分裂反応しないため、ウラン235のような大きなエネルギーは出さないが、中性子を吸収すると、人工の94番目の放射性元素「プルトニウムに(94Pu)に変化する。
そこで先に述べたように、ウラン235の割合を増やすため、「濃縮」という方法を採用し割合を3〜5%にして発電に使う。これを90%以上に濃縮して兵器に詰めるとすると、一瞬で爆発する「核兵器」となる。
単位当たりのウラン235(92U235)の量が違うだけで、エネルギー発生源と反応原理は同じであるという問題がある。
ウラン238(92U238)が中性子を吸収するとプルトニウム(94Pu)となる。これは、94番目の人工元素で、ウラン235と同様に、同位元素の1つであるプルトニウム(94Pu239)が核分裂反応するため核兵器に使われるのである。
現在一般に使われているウラン235の核分裂を利用する核エネルギー-発電炉は、冷却作用と発電に使うタービンを回すエネルギーを普通の水で行っていることから「軽水炉」と言われ、加圧水型と沸騰水型がある。
軽水型炉の発電で残る放射性廃棄物の中に、プルトニウムが蓄積される。このプルトニウムの中のプルトニウム239(94Pu239)が核分裂することかからウランに混ぜたMOX燃料として有効に利用しようという方法がある。
さらに、理想の核エネルギー発電炉が、プルトニウム239(Pu239)を有効に利用しようとする発電システムとして、高速増殖炉が研究段階にある。
日本では、目下2つの高速増殖炉が設置され実験中である。1つは茨城県東海村にある「常陽」、もう1つは福井県敦賀市に設置されている「もんじゅ」で、すでに約2兆円を研究・開発に投入しているが、故障のため停止中である。
2.望ましい核エネルギー発電
ウラン235(U235)を使う核エネルギー発電は、核兵器を作った米国が、放出するエネルギーの大きさに着目して、強力なエネルギーを出す反応炉を原子力空母および原子力潜水艦の動力源として利用する目的で開発した核エネルギー炉が原点で、それを電力供給用の発電に使うこととしたのが実態である。
当時米国のオークリッジ研究所では、原子番号90番の「トリウム(90Th)」を使った核エネルギー発電も研究されており、実験用発電炉を設置してデータを取っていた。
研究は成功していたが、核兵器に使うウランもプルトニウムも生産できないことから、国家の命令で中止され、ウランを使う核エネルギー発電だけが発展させられて、世界に広められたというのが実態である。
ウラン235の核分裂を使う核エネルギー発電炉は、「燃料が固体」であるため原料のウランをペレット(直径2cm、高さ3cm位)とし、それを燃料棒に収めて炉に装荷し、中性子を当てて発電する。
一方、取り扱いの容易性に優れたトリウム溶融塩炉は「液体燃料」を使うので反応容器の損傷が少ない。
ウラン発電施設は、100万キロワット以上のレベルと大型にした方が効率が良いのと、危険性が高いので遠隔・過疎地に設置される。そのため、送電には30万ボルトの電圧をかけて圧送するが、途中の損失が大きい。
トリウム発電炉は、10万キロワットレベルと小型にできて安全性が高いので、電力使用地域の近くに設置することが可能なので効率性が高いのが特徴である。しかも、身近にあってそこから電力の供給を受けることができれば、愛情もわき大切にしようと思うであろう。
福島核エネルギー発電施設は、東京電力が建設し200キロ以上離れた東京方面に送電しているので、東北県内に居住する人々にとっては、なくてもいい迷惑物件だから安全性が確認され運転再開の判定が下っても、「権利は主張するが義務を果たしたくない利己主義」が平然と行われる日本ではやむを得ないだろう。
従って将来に向けては、トリウム溶融塩発電設備が身近に建設されて電力を賄えば、発電所に愛情も生まれ大切に考えるであろう。
3.トリウム溶融塩発電設備
トリウム溶融塩発電炉に使うトリウム元素90(90Th)物質は、炉を運転する際に科学的性能を予測できるという。
従って問題となる事態が発生し改善を要する際に、直ちに論理的な対策が見つかり対処できるので安全性が高い。
このことは、現用のウラン発電と大きく異なる安全で小さい一度燃料を装荷すると燃え尽きるまで自動的に運転できる可能性が極めて高いことを示している。
トリウム(90Th)は、炉内で中性子と反応してウラン232(U232)に変化する。そのウラン232(U232)が核分裂する。そしてプルトニウム239(Pu239)に変化し、核分裂反応する。
さらにPu239を加えて反応させるれば、ウラン原子炉では装荷したPu239の半分くらいしか反応しなかったのが、トリウム溶融塩炉ではほとんど燃焼させることができる。
ここで過去に行われたオークリッジ研究所の実績とオークリッジ研究所が成功していた研究について述べる。
1960年に研究構想が国家で認められ、本格的な建設が始まった。そして1965年に臨界に達し、1969年12月までに事故皆無で、2万6000時間という長時間の運転を行って必要なデータ取得を達成し実験を終わっている。
以上の実験成果があったのに米国では中止し、核兵器と同じウラン系を採用しウラン軽水炉を使う方向で発展させてきたのである。
以上述べたように、トリウム溶融塩核燃料が「機能良好かつ安全な核エネルギー発電炉」を建設できる可能性を示していることが理解頂ければ幸いである。
溶融塩核燃料炉に関する詳しい核物理化学的な内容については、古川和男氏著の『原発安全革命』(文春新書)を参照されたい。
まとめ
福島核エネルギー発電施設の人為的な損壊によって、日本の核エネルギー発電の将来が危ぶまれ現在運転中以外の発電炉の稼働ができない事態が継続している。
大飯原子力発電所の調査が終わり結果が政府に提示され、ようやく発電を開始できた。が、現在の政府は首相以下調査結果を判断し、「発電再開にゴー」を掛ける知識も意思もなく我が国の将来にわたる電力確保政策の方向も示し得ない状況にあることが懸念される。
地方分権は望ましい方向だが、現在48基すべて停止する運命にある核エネルギー発電所は、危険なるがゆえに遠隔かつ過疎の県に高い補助金を積んで納得させながら設置されてきた。
しかしその電力は、県下に供給されるのではなく、東京・大阪をはじめとする多数の人口を抱える経済圏の需要を賄うために使われてきた。
ちなみに日本は、第2次大戦後の占領下で受け入れた、権利と義務の権利だけを主張し、個人主義を利己主義として恥じない民主主義が定着した国家になってしまっている。
そのため、いったん事故が起きるなどの不具合が発生すると、反対する県民を納得させるために補助金、優遇措置などを提供して県知事に了解を得なければならない、おぞましい情けない進展不能な状況下にある。
しかも三菱重工業、東芝、日立製作所という、世界に冠たる核燃料発電会社を抱えているが、発展途上国からの建設受注の可能性を棒に振る犠牲を払わざるを得ない状況下にある。
この厳しい現況を脱却し得る光明が「トリウム溶融燃料発電システム」である。目ざとい中国は、昨年3月11日の日本における大地震以前に、公式にこのトリウム核エネルギー発電施設開発を宣言していたが、大震災以前はほとんど関心を示していなかった。が、震災以降世界的に注目されだし、本格的な進展が期待されている。
日本でも賢明な有識者物理科学研究者集団である「株式会社トリウムテックソリューション」がいまだ私的レベルであるが、トリウム溶融発電システムの本格的な研究・開発に乗り出してきている。
もんじゅと常陽に2兆円を投入したことを反省し、トリウム溶融塩炉の開発は100億円規模で可能と言われている事実を信頼した国家としての研究投資を期待する。
日本は、自民党時代の2009年に、早くもニューズ・ウイークで「リーダー不在のポンコツ日本政治」と蔑まれていた。これは決断できない日本の政治に対する厳しい批判であった。
が、民主党政権に交代して一段と低落に拍車がかかり、世界のジャーナリズムが取り上げることさえしなくなってしまっている。
我々はこの事態を深刻に受け止め、「平成維新」を敢行して有史以来の日本に復帰する足がかりとするために立ち上がる第一歩として、このトリウム溶融発電システムに取り組まねば将来はないことを自覚した行動を開始しなければならない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/36420
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素28掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。