http://www.asyura2.com/12/genpatu28/msg/252.html
Tweet |
【第750回】 2012年10月22日 週刊ダイヤモンド編集部
混乱残る内部被ばく検査体制
求められる検査装置の規格作り
東京電力福島第一原子力発電所事故後、福島県内の自治体、病院などで住民の内部被ばく状況の検査体制が整備されつつある。
自治体などで内部被ばく検査用の装置の購入や運用が行われているほか、地域の病院やNPOなどでも、自主的に検査機器を購入し、検査を求める住民の要求に応える動きが出てきている。
通常、人体の内部被ばくの測定にはホールボディカウンター(WBC)という装置が使われる。これは、更衣をした上で周囲を鉛の板で遮蔽した機械の中に一定時間立つなどして測定するものだ。
原発事故前は、放射線を取り扱う施設や原発作業者の健康管理のために少ない台数があるのみだったが、事故を契機に福島を中心に大量に導入された。
そうした中、憂慮すべき事態が発生している。本来、内部被ばくを図る用途でない機械が内部被ばく検査用として購入され、検査に使われようとしているのだ。
問題の装置は、郡山市の医療生協桑野協立病院に納入されたもの。空港でのセキュリティチェックのカウンターと同様の形状で、ゲートの下に30秒留まるだけで内部被ばくが測れるとうたっている。日本で初めて導入された新技術として地元紙やテレビニュースでも大きく取り上げられた。
「体内・体表面に関わらず、人体のγ線による被曝状況をスクリーニングする道具として導入した」と病院ではコメントしているが、販売元である米国のミリオンテクノロジーズ社は、「あくまでも放射線線源が体表面についていないかをチェックするための装置で、内部被ばくの検査には使えない」と否定する。
さらに、この装置がメーカー側の出荷価格より3倍以上高い2000万円という価格で病院に売られていたこともわかった。
にもかかわらず、同様の機械が同じ医療生協傘下の病院や、福島県内外のNPOなどを通じて、内部被ばく検査用として大量に導入されるという計画もいまだあり、事態は混迷を極めている。
放射線の健康影響を心配する住民からは非常に要望の高い内部被ばく検査だが、実際の測定は簡単ではない。
WBCですら、正確に測るには周辺環境の放射線の影響を受けない場所に設置されている必要があり、人型の特殊な放射線源を使って、装置の校正作業を行う必要もあるほどだ。
さらに、測ってそれで終わりではなく、データの解釈のしかたなどについて、医師などから細かな説明や、異常が出たときの生活状況の問診などのコミュニケーションが伴って初めて意味を成すものだ。また、その前提となるデータが不正確では、元も子も無い。
これまで、福島県内では数万件にも及ぶWBCでの内部被ばく検査が行われてきた。
だがデータを見る限り、福島県内で大量に内部被ばくをしている人数はごく限られており、原発に近い南相馬市などの検査でも、その約70%が検出限界以下であることがわかっている。
この状況で「本来内部被ばく検査に使えないこうした機器で、出荷制限のかかっている食物を継続的に食べ続けるなどの特殊な食生活をしている1万人に1人程度いるかもしれない患者を検出することはできるかもしれないが、それ以外の大多数に対しては却って誤解や不安を与える可能性が高い」と、福島県内でWBCの校正作業を継続的に行ってきた早野龍五・東京大学教授は指摘する。
そもそも、こうした放射線検査装置についての、国としての明確な基準が存在しないという問題が、実際には検査に使えない機器が流通し使われ続けることの根本の原因としてある。
特に、これだけ検査の要望の高いWBCは、国内では医療機器ですらない。海外ではIEC(国際電気標準会議)により規格化されているものの、国内では明確な規格が無い。原発事故の数年前から、保健物理学会でIEC規格をJIS(日本工業規格)規格として当てはめる検討が進んでいるものの、いまだに結論は出ていないという。
規格があれば、それに違反した機器の流通を止めることも、用途を故意に偽って販売する業者の摘発もできるはずだ。正確な検査を行いそれをフィードバックして、住民の不安を解消する、というプロセスを維持するためには、国の責任として何らかの“秩序”を早急に作るべきなのではないか。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)
http://diamond.jp/articles/print/26597
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素28掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。