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活断層リスク
(上)「問題ある原発」選別
不信払拭へまず大飯 規制委、月末から現地調査
原子力規制委員会は今月末から原子力発電所の地下に隠れる「活断層」を探す現地調査に入る。直下に活断層が確認された場合、規制委は原発の運転を認めず廃炉とする方針だ。すでに専門家はいくつかの原発で活断層の存在を指摘している。規制委の発足後、事実上の初仕事となる活断層調査は再稼働に向けて「問題のある原発」を選別する作業になる。
活断層が焦点に急浮上したのは、東日本大震災で日本列島の地下の構造が変わったとみられるためだ。従来は地殻が水平方向に押し合うタイプの「逆断層」で地震が起きると考えられていたが、震災後は逆方向に引っ張られて動く「正断層」でも地震が頻発するようになった。過去の原発の立地審査では正断層を取り上げてこなかったが、無視できなくなった。
経済産業省原子力安全・保安院(当時)は昨年11月、活断層の再調査を電力各社に要請した。関西電力が大飯原発(福井県)の再稼働に向け、ストレステスト(耐性調査)の結果を提出したわずか数日後のことだ。
政府内から「再稼働が遅れる」との懸念も上がったなかで旧保安院があえて再調査を命じたのは、過去に電力会社が耐震性の評価を遅らせ、福島第1原発の事故を防げなかったという苦い思いがあるためだ。
耐震設計に関する審査指針が改正され、旧保安院が各電力会社に調査を指示したのは2006年。しかし大規模な補強工事を迫られるのを恐れた電力各社の対応は鈍く、先送りを繰り返した。
この6年間で報告を終えたのは50基中わずか4基。「福島第1原発でも評価を終えていれば事故は起きなかったはずだ」と旧保安院幹部は悔やむ。
電力各社が再調査を進めた結果、原発で活断層の疑いが相次ぎ浮上。過去の審査で見逃していたとみられるが、最終的に日本原子力発電敦賀原発(福井県)、北陸電力志賀原発(石川県)、東北電力東通原発(青森県)、関電美浜・大飯と日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(いずれも福井県)の6カ所で疑いが残った。
6カ所では今月末から規制委と有識者が現地に入り、地層を掘って地震の痕跡を探す。日本活断層学会などから推薦を受け、過去に原発の審査に携わっていない専門家を選考。地震学が専門の島崎邦彦規制委員長代理は「オールジャパンで挑む」と意気込む。調査の第1弾は、すでに稼働している大飯原発だ。
原子炉建屋の直下に活断層があれば、地割れで建屋が傾く恐れがあり、揺れを抑える耐震補強だけでは対処できない。規制委の田中俊一委員長は「結果が黒や濃いグレーのときには止めてもらう」と表明した。現地調査で活断層が見つかった場合、廃炉につながる可能性が高い。
枝野幸男経産相は16日の記者会見で「安全確認ができない場合や地元の理解が得られない場合、稼働は難しいだろう」と語った。安全を確保できない原発をふるい落としていくうえで、規制委による活断層の調査はまず最初の関門となる。
ただ活断層かどうかの見解は専門家でも分かれる。大飯原発にも「活断層ではない」との反論が根強い。規制委が客観的な調査を徹底したとしても、地震の予測に100%はない。世界有数の地震国、日本の国民にどう説明し不信を払拭するか。難題が待ち受ける。
[日経新聞10月17日朝刊P.5]
(下)突然の廃炉宣告 負担増、揺らぐ電力経営
「二度と立ち上がらない原子力発電所が出るかもしれない」。経済産業省の幹部は危ぶむ。原子力規制委員会が調べる6つの原子力施設のうち、いくつかで活断層が見つかり、廃炉に追い込まれるという見立てだ。
原発の真下に活断層があれば「止めてもらうことをお願いする」と規制委の田中俊一委員長は明言してきた。とくに原子炉の建屋の下を活断層が走っていれば、補強工事では対応しきれない。原発は二度と動かず、電力会社も廃炉を迫られる恐れがある。
こうした原発の「突然死」は電力会社の経営を揺さぶる。まず、原発の帳簿上の資産価値がなくなることで損失が発生する。使う前の核燃料も無駄になる。電力会社は廃炉に備え40年かけて少しずつお金を積み立てていくが、途中でいきなり廃炉になれば積み立て不足も起きる。
経産省の試算によると、今年度内に50基の原発すべてが廃炉になれば電力会社に計4.4兆円の損失が出る。これは自己資本の4分の3を食いつぶす額だ。極端な想定ではあるが、規制委による調査の結果次第で経営に響くと政府内でささやかれる会社もある。
北陸電力は志賀原発(石川県)の設置許可を申請したときの写真に「典型的な活断層がある」と専門家から7月に指摘された。北陸電は「活断層ではない」と反論している。規制委は今冬にも現地調査をする。
調査によって活断層が見つかれば、志賀原発は廃炉という結論になりかねない。その場合、北陸電に計3135億円の損失が出ると経産省は見積もる。自己資本のほとんどが吹き飛ぶ。
もう1つの焦点が原発の電気を電力各社に卸している日本原子力発電だ。敦賀原発で活断層が見つかると1、2号機だけでなく、すでに計画が危ぶまれている3、4号機の新設も絶望的になる。東海第2原発(茨城県)は調査の対象外だが、地元の村上達也東海村長は再稼働に反対する。日本原電は原発しか持たず、発電できなくなる恐れがある。
国も無傷ではいられない。志賀原発では政府が原発建設の審査で活断層を見落とした可能性がぬぐえない。政府内には「なぜ建設を許可したのかとして北陸電や株主が国を訴えかねない」との懸念がくすぶる。
日本原電は東海原発の廃炉作業を進める。経営難で廃炉に必要なお金を確保できなくなれば国も放っておくわけにはいかない。政府は廃炉専門会社に衣替えする構想などを検討するとみられる。
これだけ影響が大きい活断層の調査だが「シロ」「クロ」の線引きは簡単ではない。石や土の崩れ具合などをみる活断層の判断は、専門家の経験に頼るところが大きいからだ。一部の研究者が「原発を建設しやすくするために活断層を短く見積もってきたのではないか」と疑われるなど専門家への信頼も揺らいでいる。規制委には慎重な作業が要求される。
川合智之、原田逸策が担当しました。
[日経新聞10月18日朝刊P.]
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