http://www.asyura2.com/12/genpatu28/msg/107.html
Tweet |
今年の夏に出た有馬の著作だが、
M.Saitoなる人物のカスタマーズ・レビューに対し、
著者の有馬本人が、返答してる。
興味のある方は、どうぞ・・
(コメント欄にも追記あり)
原発と原爆 「日・米・英」核武装の暗闘 (文春新書) [単行本]
有馬 哲夫 (著)
内容説明
ヒロシマに原発建設を計画したのは誰だ!
ヒロシマに原発設置、そして日本核武装の可能性が、戦後史の闇から浮かび上がる。秘密文書が語る実態と、うごめく日米実力者らの暗闘
内容(「BOOK」データベースより)
日本の原子力発電をリードしてきた権力者たちには、核オプションを持つという戦略があった。米英の機密文書から初めて明らかにされるイギリスを巻き込んでのプルトニウム確保、ロッキード事件へとつながる原発建設ラッシュ。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
有馬/哲夫
早稲田大学教授(メディア論)。1953年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。1993年ミズーリ大学客員教授、2005年メリーランド大学客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
第1章 広島に原発を建設?(3・11が原爆と原発をリンクさせた
「広島に原発を」というイェーツ提案 ほか)
第2章 なぜ、日本最初の原発はイギリス製だったか(正力の宣戦布告
プルトニウムへの執着 ほか)
第3章 東海発電所と核武装(原子力委員長・佐藤栄作
研究された核武装の可能性 ほか)
第4章 ロッキード事件とウラン調達(原発建設ラッシュと核燃料
田中角栄は濃縮ウランの大量輸入を決めた ほか)
第5章 核なき核大国へ(カーターの核不拡散政策
NPTの穴 ほか)
カスタマーズ・レビュー
紹介された公文書は有益だが、著者の推論は他の書籍等による検証が必要。, 2012/9/5
By M.Saitoレビュー対象商品: 原発と原爆 「日・米・英」核武装の暗闘 (文春新書) (単行本)
掲題の通り。著者は原子力関連の研究書ではあまりなかった手法(機密解除になった米公文書の開示)を駆使しており、その意味で既存のソース以外をベースとしたことは高く評価されるべきです。しかし、あとがきにも書かれている通り、元々原子力関連を専門にする方ではなく、311後に本書を企画とされたようです。巻末では今後の原子力のあり方について一考されておりますが、とって付けた印象は免れず。原子力論議ブームの波に乗った出版であることは明らかですが、3、4章に下記の問題点があり、本書のテーマの半分を占める原発の歴史研究に使うのは注意が必要です。OSINTの意義について熟知されている方だけに、残念。
9/17著者自身から反論を頂きましたが、それに対する回答は著者コメント欄に返信しましたが、著者再投稿の際無くなったようです。従って【1】〜【5】については当コメント欄に当方の主張の根拠となる文献を追記しておきました。
【1】メディア統制の根拠が希薄
P117-118にて東海発電所の初期トラブルがメディア統制されたと書かれていますが、その根拠はP140付近にあるように朝日、読売の過去記事検索でベタ記事しかヒットしなかったからとのこと。しかし読売と朝日は「全国紙」であり、「一般紙」。それほど掘り下げた技術解説を求めるべきではなく、詳しい情報は業界紙や専門書を購入して把握するのが筋では。東海発電所の状況は同時代の専門誌では良く取り上げられていますし、『東海発電所物語』(1971年)『ドキュメント東京電力』(初出1980年頃)等一般向けの本にも出てくる話です。著者の断定は「電気新聞」「原子力工業」(後原子力eye)等を精査した結論ではなく、基本文献のチェックも甘い。
また、本書冒頭に立地地域の原子力への関心が高い旨記載してあるにもかかわらず、地方紙について検討の俎上に挙げないのは不適当です(作業量的に高負荷なのは承知ですが、課題として提示はすべき)。上記2点の理由から、著者の指す「メディア」とは何を示すのかが疑問です。
【2】スリーマイルまで礼賛一色だったという指摘の誤り
P141ではTMI事故(1979年3月)の時代に一気に飛んで「報道管制をしていたに違いない」から礼賛報道しか無かったとしています。しかし1970年代には応力腐食割れ問題等の不具合や作業員の被曝についてそれなりに報道があったことに一言も触れていません。読売、朝日でも数段抜きの記事で取り上げてます。反対派に一部学者が参加して研究書レベルの著作を世に問い始めたのも70年代中盤からですし、森江信『原子炉被曝日記』の出版もTMI直前。NHKも1978年2月に『被曝管理』という番組を制作し、反対派に評価されていますね。
天下りの受け入れや広告費を餌にした自主規制は従来から批判されてきましたが、NHKには広告費圧力は無意味ですし著者は「管制」と短絡過ぎでしょう。それとも他の方も指摘されているように原子力に疑念を抱く意見を「左翼だから」と十把一からげに取り扱った結果なのでしょうか。巻末参考文献を見ても批判側の実績を十分に検討したとは言えません。イデオロギーだけで何でも切り捨てるなら、例えば東側の技術は全く論評できないでしょう。
【3】福島第一の耐震設計はターンキー契約に拘束されるものではない
P143-144にてNHK番組を批判しつつも、ターンキーのために耐震設計が疎かになったかのように描写されている記述がありますが、東電自身が当時の雑誌にて「耐震設計は自社で直接実施し、その結果をGEに提示して構造計算を行った」と記載している以上、誤りでしょう。また、電力会社は自社で商用原子炉を導入する前に、日本原電というパイロット機関を設立に一枚かんで、敦賀に日本最初のBWRを導入し、出向社員を送り込んでノウハウを習得したのです。従って日本仕様のBWRの耐震設計も敦賀1号機が初経験であり福島より1年先行しています。歴史面からの問題点追及は必要なことですが、敦賀は無視できません。また、ターンキー契約はGEはじめ原子力プラントメーカーが世界的に採用していた契約方式であり、アメリカ国内の原発建設でも初期から使われていました。本書に限りませんが殊更特別な契約であったかのような書かれ方には違和感が。
【4】耐震設計と津波対策
敷地を標高10mに削った一番の理由は正に「耐震」のため、建物を岩盤直接設置することが目的です。工学書は言うまでもなく、パンフレットにも載ってる位宣伝された前提ですが、本書P143-144では無視されています(最近の福島原発本に良くあることですが)。標高30mに建設した場合、揺れの影響が遥かに大となると当時の建設担当者が述べています。また、60年代末の知見で津波高が低く見積もられたのは仕方ないでしょう。問題は建設から被災まで40年等閑にしたことです。
9/12追記:表題が適当でなかったのでお詫びします。要は高台を削って低い場所に建設したのは岩盤設置という「日本で追加した基準」に従った結果であり、アメリカの設計基準には無いということです。見出しの「〜の混同」は削除。
【5】田中角栄は濃縮ウランの大量輸入を決めたから独自の資源調達戦略がない?
4章は2009年に出版されたある田中本を意識されたのでしょうか。しかし田中首相は1973年9月にフランスを訪問、メルスル首相と濃縮ウラン購入の約束をし、事務折衝後毎年1000トン×10年(=10000トン)の濃縮ウランを契約しています。、本書で取り上げている、1972年にアメリカと約束した濃縮ウラン10000トンのインパクトは、日本全体の需要との比較が必要ですが、肝心の個所で計量単位の不統一があり実質提示が無いようです。P187には米公文書から「85年まではアメリカに依存」と引用されてますが、当時電力業界はウラン確保のため他の契約も積み重ねており、その寄与を計算に入れなければ意味が無い。また『P184の』文書『は作成時期が田中の訪仏前後どちらなのかで意味合いが変わりますが、そ』の時期も明示はされていません。
また、GEが濃縮サービスをソ連で行っていたことを「日本は知らなかっただろう」とP191で断定していますが、『ソ連が濃縮サービスを売り込んでいた件』は当時専門誌に載る程度には知られており、GE関連情報がどこまで知れ渡っていたかの検証は原子力委員会月報のみでは不完全です。例えば、電力会社は米国事情を知るために大手商社を自社情報部門の補強として活用していましたが、抱え込んだ情報を全て外に喋っている保証など無いでしょう。
9/12追記:上記『』内修正。また、米英機密文書のカウンターパートは日本側の機密文書であり、更に企業内情報はIR資料等を除き公開規定はありません。
【6】核物質に対するスタンス
本書の副題や帯にある「核武装」「原爆」といった単語のせいか、本書を読み進めていくとプルトニウムなら何でも良いかのような印象を受けますが「核兵器に向いてるのは通例は高濃縮のものであり、軽水炉では不要」という常識的な話との関連がいまいちと感じます。特に、話が軽水炉全盛期になる後半部はそうです。
9/12追記:初見の読み手に分かりにくいと感じたという意味で、著者の知識不足を指摘する意図はありませんでした。誤解を与え申し訳ありません。
なお、有馬氏の他の著書でも正力等への評価の是非について話題となっているようですが、その点は論述としては普通に書かれており、問題とは思いません(価値観に対して著者がどう判断するかであり、例え逆の結論でも同様)。上記より総合して★3つです。(コメントに追記)
著者からのコメント, 2012/9/17
By 歴史家レビュー対象商品: 原発と原爆 「日・米・英」核武装の暗闘 (文春新書) (単行本)
【著者からのコメント】
M. Saitoという方の書いた書評は拙著の内容の把握について過誤がありますので、過誤の指摘と著者としてコメントさせていただきます。
【1】「メディア統制の根拠が希薄」という指摘について
【著者 本書にはっきり書いていますように、イギリスエネルギー省の機密文書で、日本原子力発電の一本松氏が、東海発電所の事故をマスコミに取り上げられないようにしたという発言しているのを根拠にしています。彼の発言内容の検証のために最も代表的な2紙を選んで分析しています。
・「本書冒頭に立地地域の原子力への関心が高い旨記載してあるにもかかわらず、地方紙について検討の俎上に挙げないのは不適当です」という指摘について
【著者】 本書は新聞報道の分析について書いたものではありません。そうするつもりがあったら、業界紙や地方紙にも触れていたと思います。本書は正力以来引き継がれてきた核武装オプションを手に入れるための暗闘を書いたものです。
【2】「スリーマイルまで礼賛一色だったという指摘の誤り。P141ではTMI事故(1979年3月)の時代に一気に飛んで「報道管制をしていたに違いない」から礼賛報道しか無かったとしています」という指摘について。
【著者】p.141の原文は「肯定ないし礼賛する番組を多く作っていた」となっています。「多く作っていた」ですから、スリーマイル島まで礼賛一色だとは書いていませんし、そうも読めません。したがって、否定ないし、批判する番組がなかったとはいっていません。
・「それとも他の方も指摘されているように原子力に疑念を抱く意見を<左翼だから>と十把一からげに取り扱った結果なのでしょうか」という指摘について。
【著者】「左翼だからと十把一からげに取り扱った」といっていますが、そのような部分、あるいはそう取られる記述は本書のどこにもありません。この時期共産主義封じ込め政策をとっていたアメリカ側の公文書から多く引用しているので、引用からそのような印象をもった可能性があります。著者自身は、そもそも、左翼とか右翼とかレッテル張りはしません。
【3】「福島第一の耐震設計はターンキー契約に拘束されるものではない。P143-144にてNHK番組を批判しつつも、ターンキーのために耐震設計が疎かになったかのように描写されている記述がありますが」という指摘について
【著者】評者は多くの本を読んでいらっしゃるので他の本と勘違いなさっているのではないですか。p.143-144には「ターンキーのために耐震設計がおろそかになった」という記述も、描写もありません。そもそも耐震設計のことにはまったく触れていません。おっしゃるように原発を硬い地盤の上に作るためにやわらかい部分を削ったと思います。
・「本書に限りませんが殊更特別な契約であったかのような書かれ方には違和感が」という点について。
【著者】本書には「殊更特別な契約であったかのような書かれ方」はありません。そのまったく反対で、p.143で「日本の電力会社がなぜターンキー契約をのぞむようになったのか・・・・・」と書いているように、東海発電所の大失敗のために、福島だけでなく、東電だけでなく、日本の電力会社がターンキー契約を望むようになったと考えているので、前のような表現になっています。
【評者】【4】「耐震設計と津波対策の混同」について
【著者】明らかに評者は他の本と勘違いしているようです。前にも述べたようにpp.143-144では耐震設計について触れていません。したがって混同していませんし、混同のしようがありません。
【評者】【5】「田中角栄は濃縮ウランの大量輸入を決めたから独自の資源調達戦略がない」という指摘について
【著者】本書では「田中角栄は濃縮ウランの大量輸入を決めたから独自の資源調達戦略がない」とはいっていません。p.158やp.169-170で書いているように、濃縮ウランの大量輸入も濃縮ウラン供給源の多元化も田中以前に、佐藤政権で「日本の核政策に関する基礎的研究」を蝋山グループに命じたときから、内閣、通産書および原子力委員会が決定していた方針だった、したがって田中独自の政策でも戦略でもないと、公文書を引用しながら論証を重ねています。言い換えれば、田中は正力以来のウラン資源供給源多元化方針、佐藤政権以来のエネルギー政策を継承したのであって、独自の政策を打ち出したわけではありません。P.158に「そもそも短い間しかポストにいない大臣が任期中に自分独自の政策を打ち出し、それを実行するということはできるものではない」とも書いています。ほかにもpp.159-160でもインガソル−キッシンジャー書簡を引きながら、72年の自民党総裁選挙において、それまでの規程路線にそって政策を進めるがゆえに、総理大臣は田中が望ましく、自らの政治理念にこだわり、独自の政策を打ち出し、アメリカにとっての混乱を起こしそうな福田を望ましくないとアメリカ側は思っていたとも書いています。
結果として田中政権のときにフランスから濃縮ウラン輸出の契約をもらえたから、それは田中の政策であり戦略だったといいたいようですが、田中政権のときにそれができたのは偶然でしかありません。仮に供給源の多元化が田中の戦略だった(実際は正力のときから引き継がれた方針)としても輸出用ウランの濃縮を始めたばかりのフランスが実際に他国に売るほど生産できて、しかもそれを日本にそれを売ってくれると田中は前もって予想できたでしょうか。できたら田中は神様ですね。
【評者】「本書で取り上げている、1972年にアメリカと約束した濃縮ウラン10000トンのインパクトは・・・・・・」という点について。
【著者】本書ではアメリカから輸入することになった量を「1万作業トン」と書いています。「濃縮ウラン10000トン」とは書いていません。混同しているのは評者のほうのようですが。
【評者】また、GEが濃縮サービスをソ連で行っていたことを「日本は知らなかっただろう」とP191で断定していますが、ソ連の濃縮サービスの件は当時専門誌に載る程度には知られており」という指摘について。
【著者】著者が「日本が知らなかっただろう」と述べているのは、「GEが濃縮サービスをソ連で行っていたこと」ではなく、「GEがソ連で濃縮したウランを日本など先進同盟国に輸出していた」ということです。
これは本書に書いている通り、国家安全保障会議で決定した機密事項で30年間機密指定されていたので、日本側は知りえません。評者は「当時専門誌に載る程度には知られており」といっていますが、上記の理由で「専門誌」にのるはずがありませんし、専門家とはいえ一般市民に知られているはずもありません。ただし、ソ連が当時濃縮ウランの国際市場に参入していたという程度の一般情報なら評者のいう「専門誌」にのっていたと思います。
東海発電所についての記述もそうで、拙著は一般情報ではなく、21世紀になってようやく機密解除されたイギリスエネルギー省の機密文書に基づいて書かれています。
【6】「核物質に対するスタンス」について。
【著者】著者にはここでなにを指摘なさっているのかよくわからないのですが、著者がプルトニウムのうち原発の燃料となるのは低濃縮で、兵器にするには高濃縮にしなければならない、という程度の知識さえないといいたいのでしょうか?だとすると、核武装オプションを得るために日本が再処理工場(プルトニウムなどを高濃縮する)をいかに渇望していたかを本書の第5章の前半で書いています。著者の専門は原子物理学ではないので、確かに専門家ではありませんが、数千枚の関係公文書を読んでいるので、それなりの知識を蓄えています。
・「特に、話が軽水炉全盛期になる後半部はそうです」という指摘について。
【著者】著者にはそのような「後半部分」を書いた記憶がありません。実際今読み返しても見つけられません。
・「田中角栄について書いた二次資料(学術的研究書といえるものはまだないと思いますが)を参考文献にあげていない」との指摘について
【著者】本書の内容にとって必要な情報は一次資料のニクソン文書で充分でしたので、挙げていません。これまで書かれた田中本ではニクソン文書にあるような重要な事実を指摘したものはありませんでした。次回作では、立花氏や徳本氏のものなど、一次資料に基づいたもので参考になったものは、参考文献にあがっています。
最後に拙著をお読みいただいてありがとうございました。原発の問題を考える上で左翼も右翼もありません。虚心坦懐に歴史的事実を見極めることが大事だと思います。
著者 有馬哲夫
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素28掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。