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しあわせのトンボ:聞くのはたいへんだ=近藤勝重(毎日新聞)
毎日新聞 2012年10月05日 13時59分
「記者ですか。書くの、たいへんでしょ」とよく言われる。一応はうなずいて、「『書く』より『聞く』仕事なんですよ」と答えると、相手はわかったようなわからんような顔をする。記者の「記」から、「書く」と結びつくのは無理からぬことだが、実際は聞いて、聞いて、聞いて、そして書くというのがぼくらの仕事だ。
昨今、原発や尖閣、竹島問題は言うに及ばず、難しく複雑な問題が山積している。どれ一つ見ても、一刀両断に決められるほど簡単な話ではないと思うにつけ、もっともっと専門家の話を聞かねばと思う。
その点で、MBSラジオの「たね蒔(ま)きジャーナル」は、喫緊の問題について専門家や当事者の話が聞け、ありがたい番組だった。秋の改編に伴い9月で終わったが、丸3年、ご一緒したキャスター役のベテランアナ、水野晶子さんからは聞くとはどういうことかということも教えられた気がする。
それまでぼくは相手にAからEまで五つのことを聞きたいと思うと、Aの質問をして、その答えが理解できると、Bに入り、以下も同様の一本調子の聞き方が多かった。が、水野さんは違った。Aの話を聞いて相手から答えが返ると、その答えに対する水野さんなりの確認と受けの言葉、つまり〓を入れて、それからBに移るのである。リスナーにもわかってもらえるようにという配慮があるのだろうが、この間(ま)を取った受け方で相手も一層乗ってきて、話の中身が随分と豊かに、かつ本質にふれてくるのがよくわかった。
ところで、ある作家が「あなたにとって小説とは」と聞かれて、うんざりしたという話を当の作家自身のエッセーで読んで以来、ぼくは「あなたにとって」とは聞くまいと言い聞かせてきた。しかし最近、そう聞いてもまずくはないんだと思うことがあった。現役を引退する阪神タイガースの金本知憲外野手の記者会見で、「金本選手にとって野球とは」と聞かれた彼はこう答えた。「7、8割はしんどくて、残りの2、3割は喜びや充実感。でもその少しの2、3割をずっと追い続け、7、8割を苦しむ。そんな野球人生でした」
いい話だなあ、と感じ入ったのと同時に、「あなたにとって○○は」も長打になる時があるんだ、と考え直したしだいだ。いや、聞くって、それやこれやいろいろたいへんだ。あとひと押しがなぜできなかったのか、などと反省しつつの記者稼業は、はや四十数年になる。(専門編集委員)
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