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福島健康調査:委員発言、県振り付け…検討委進行表を作成
http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m040112000c.html
毎日新聞 2012年10月05日 02時33分(最終更新 10月05日 02時36分)
東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員会を巡り、委員が発言すべき内容などを記した議事進行表を県が事前に作成していたことが分かった。調査結果への見解における「結語」(結びの言葉)が記され、「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)再現データの質疑に終始しない」と求める記載もあった。県の担当者は毎日新聞の取材に「そうしたものを作ったかもしれない」としつつ、内容に対する明確な回答はなかった。
検討委を巡っては、本会合の前に秘密裏に「準備会」(秘密会)を開き、調査結果に対する見解をすり合わせた上で、本会合でのやりとりを事前に打ち合わせていたことが判明している。この問題が取り上げられた3日の県議会で村田文雄副知事は「意見などをあらかじめ調整した事実はない」と答弁したが、進行表には「○○先生と要調整」(○○は委員の実名)との記載もあった。
毎日新聞が取材で確認したのは「第3回『県民健康管理調査』検討委員会 進行」と題された文書。関係者によると、県保健福祉部の担当者が作成し、昨年7月24日に開かれた第3回検討委の前日の同23日に委員らに送られた。それ以前の同17日には秘密会を開いたことが分かっている。
文書はA4判2ページ。「取扱注意」と記され、議事内容や進行を記載している。このうち「ホールボディカウンターと尿(内部被ばく)検査結果について」と題した項目では「結語」として「セシウム134及び137による内部被ばくについては、合計しても1ミリシーベルト未満であり、相当に低いと評価。他の地域の住民では、さらに低いと思われる」との発言予定が記されていた。
調査の進捗(しんちょく)状況を巡る項目では国や県が有効活用しなかったとして問題視された「SPEEDI」に言及。「SPEEDI再現データ(3月15日の課題)の質疑に終始しない。(SPEEDIの話題のみが着目される可能性あり、そうならないよう願います。また、そうなった場合は、『線量評価委員会』で検討とそらして下さい。)[○○先生と要調整]」などと記載されていた。
県によると、第3回検討委は初めて全面公開され、実際の本会合も進行表に沿った形で進められていた。県の担当者は「座長(山下俊一・県立医大副学長)のメモ的なものとして作った可能性はある」と話した。【日野行介、武本光政】
◇
福島健康調査:「結論ありき」県民憤り…検討委「進行表」
http://mainichi.jp/select/news/20121005k0000m040113000c.html
毎日新聞 2012年10月05日 02時33分
東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が設置した県民健康管理調査の検討委員会で、県が委員らと事前に調整していたことを示す「議事進行表」の存在が明らかになった。内部被ばく調査の結果については「結語」として「相当に低い」との発言予定を記し、問題となりそうな話題については「そらして下さい」と要望。A4判2枚の文書には県による「振り付け」とも受け取れる記載が列記され、県民らは不信感を募らせている。【日野行介、武本光政】
◇議論の場、意見出ず
「不気味なほど意見が出ない。おかしい」。福島市内の市民団体「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」はメンバーが検討委を傍聴しているが、代表の佐藤幸子さん(54)は検討委の議論にそんな疑問を抱いていたという。
検討委の前日に委員らに送られた進行表には、浪江町と飯舘村、川俣町山木屋の3地域で120人を対象にした内部被ばく調査についての記載がある。調査結果への見解は翌日の検討委で議論されるはずなのに、議事進行における「結語」として「内部被ばくは合計しても1ミリシーベルト未満で、相当に低いと評価」などと記されていた。
また、内部被ばくの検査手法を巡り「WBC(ホールボディーカウンター)の今後の普及とGe半導体(ゲルマニウム半導体検出器)の逼迫(ひっぱく)状況(牛肉等)を考えると、尿検査でWBCを代替えするのは困難ではないか」との記載もあった。尿検査はホールボディーカウンターと呼ばれる大型機器を使った検査より放射性物質の量を正確に調べられる一方、かなりの量の試料が必要とされ、手間がかかるとされる。また、尿検査に使用されるゲルマニウム半導体検出器は、牛肉などの検査にも使われている。
同ネットワークは事故直後から尿検査の導入を訴えているのに対し、県は県議会などで慎重な姿勢を示し続けている。佐藤さんは「やっぱり、結論ありきの議論だったのか」と憤りを隠さない。
また、進行表のうち調査の進捗(しんちょく)状況を巡る項目では、問題視された「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の話題をできるだけ避けるよう要望。仮に話題になった場合には、別の委員会で検討するとして話題をそらすよう求めていた。
詳細調査の項目には「予算の有効配分と実効性を踏まえて、あれもこれも追加は不可です」「下記の範囲での議論をお願いします」などとの記載もあり、一定程度議論を誘導したい県の意向がうかがえる。
内部被ばくに詳しい矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授(物性物理学)は「特に下線を引いたりした部分は、影響を過小評価したい思惑を感じる」と、県の姿勢に疑問を呈した。
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