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2012/09/05 自由報道協会主催 アーニー・ガンダーセン博士記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/29154
2012年9月5日(水)、自由報道協会 麹町報道会見場で行われた「自由報道協会主催 アーニー・ガンダーセン博士記者会見」の模様。アーニー・ガンダーセン博士は米国の原子力技術者で、1979年にスリーマイル島で起きた原子力発電所事故の調査時には、専門家として活動、アメリカ・エネルギー省の廃炉手引き(初版)の共著者でもある。現在はエネルギー・コンサルティング会社、フェアウィンズ・アソシエーツのチーフ・エンジニアを勤めている。「福島第一原発事故及びその影響に関する見解」及び「今後のエネルギー・シフトへの展望等」について語り、質疑応答も行われた。
■詳細 http://fpaj.jp/?p=4380
※掲載期間終了後は、会員限定記事となります。
ガンダーセン氏はまず、事故後の福島第一原発の作業員に対し、敬意と感謝の意を表し、簡単に自らのバックグラウンドについて説明した。
「原子力工学の学士、修士号を取り、原子炉の運転のライセンスを保持、原子力関連会社の上級副社長を勤めいたこともある。自分の人生は “原子力はよいもので、世界を変えることができる” という超推進派からスタートしたが、その後原子力産業に幻滅を感じ、(1990年に)内部告発をしてから、人生が変わった」
原子力そのものよりも、「問題は規制がきちんとしていないこと」だと強調する。
「福島第一原発(以下ダイイチ)の事故後、原子力を制御するには人間は十分に知恵がない、と自分は考えを決めなけらばならなかった。除染、廃炉のスキル 東京電力はもっていないと認識した。
彼らがこれまで経験してきたことは原子炉の運転であって、今ダイイチで起こってる事は、原子力の歴史上、誰もが経験したことがない問題。自分の答えはNO、東京電力ではできない。」
その答えが確固となった理由として、前の週の金曜日(8/31)、国会でプレゼンテーションを行った時の様子を語る。
「事故後初めて、関係者(東京電力、保安院)に直接質問できる機会があった。2、3質問したが、その答えは意外でもあり、本当に恐ろしいと思った。アメリカで言う所のブラインダー、つまり目隠しをつけてわざと見ないようにする、そのような回答であった。
福島第一原発を解体し、除染をきちっとするには、クリエイティブで、これまでに無かったような解決策を考えなければいけない。しかし東京電力の職員に直接質問した所、彼等は昔ながらのパラダイムに縛られていて、それ以外の考え方はできない体質なのだということが分かった。」
「ダイイチの除染、そして廃炉という作業は、東京電力からは切り離す必要がある。上層部に関しては確実に人員を入れ替える必要がある。東京電力は原子力以外の発電方法に注力すべきであって、ダイイチには関わるべきではない。」
そして、『ダイイチには新たなプロジェクトマネージメント会社を作り、彼らが直接日本政府に報告するべき」と提案する。
「スリーマイル事故の時も、新たに管理会社を作った。それまでの電力事業者では解体等のスキルを持っていなかったから。そのスキルは(日本の)保安院も持っていないと思う。そして海外の専門家のグループを作り、常に後ろから見守ったり、助言を行ったりする体制が望ましい。その専門家集団はIAEAであってはならない。IAEAの憲章の第2条には『原子力を推進することがIAEAの役割』と書いてある。」
次に、現在の日本政府の方針について言及する。
「日本政府は向こう数十年は原発を残すと、決めてしまおうとしているように見える。昨日読んだ記事で、『これから段階的に原発を廃止していくと、最終的には電気代が2倍になる』と書いてあるものがあった。それは間違ってると私は思う。そこまでコストが上がらないような他の発電方法を開発する余地が日本にはあると思うし、原子力以外の方法を検討するべきだと思う。
さらに今日の記事では、『自民党が2050年ぐらいをめどに段階的に廃止していくという提案をした』というものがあった。政府が見積もってるコストは正確だと思わないし、公の機関がのものも正しいとは思えない。」
同氏は当日夜、日本滞在中最後のスピーチを予定しており、「日本が原子力以外に代替発電方法があるという話をしたい」として、代替エネルギーの可能性についても語った。
「20世紀は大型の中央発電所が必要だったが、コンピュータの発達により、数多くの小型、分散型の発電所を制御することが可能となった。21世紀に入り、太陽光や風力などの再生可能エネルギーのコストも大幅に下がり、20世紀ではできなかったことが可能になった。
分散発電の技術は既にあり、これからあらためて発明しなくてはいけないものはない。日本企業はこの分野で、実はリーダーである。三菱、日立、トヨタ…その他多くの企業が、既にこのスキルを持っている。必要なことは、国家レベルにおいて、せっかく存在しているバラバラのピースをつなげることである。おそらく何かひとつ、日本に欠けているものがあるとすれば、これまでとは全然違う考え方をしようという、政治的な意志だと思う。」
「原子力推進派は、『どうしたって原子力は必要なんだから』という。『しかも大丈夫だから…25万年も放射性廃棄物を保管する方法もあるのだから』という。だが敢えてそれに反論するなら、放射性廃棄物を25万年も貯蔵できるのであれば、一晩ぐらい、再生可能エネルギーで作った電気を蓄電するようなことは、絶対できるようになる。
原子力には補助金が付けられている。補助金を勘定にいれれば、今の段階だったとしても、石炭よりも、再生可能エネルギーよりも、原子力は高くついている。」
最後に、日本に対する期待として、以下のようにまとめた。
「ダイイチの事故により危機が起こってしまったが、それは機会を与えられたとも言える。つまり、日本の皆さんがこれまで歩いてきた道を変える機会。全世界が原子力に変わるエネルギーを欲しているなかで、それを輸出する主導国になれる機会を与えられた、とも考えられる。」
「今回の事故で経験したものとは異なる、より安全な将来のビジョンを描けるよう、日本国民自身が政府を説得することを期待しています。」
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<以下、質疑応答のなかでの発言>
(国会事故調について)
「国会事故調は大変良い報告書を出したと思う。報道では『今回の事故は、縦割り社会をはじめとする、日本の風土、独特だったから起きたのであり、アメリカではありえない』という論調だったが、その問題は日本だけではない。アメリカにも原子力ムラというものがあって、それ以外の人の言う事に耳を傾けないという現実がある。」
(今回の事故の、報道のされ方について)
「事故が起きてから3週間程度は、数にすると18件ぐらい、自分の所に取材があったが、テレビや新聞ではほとんど報道されなかった。CNNは頑張ったが、それでも1、2日だけで、それ以降はトップニュース扱いにはなっていない。とはいえ日本以外の海外メディアはそこそこ報じたのではないか?と評価している。現在は、日本の放射能の問題については、ほとんど報道されている様子はない。
それより大事なのは、日本の報道がどうなっているか?である。日本の主流の報道機関のインタビューに対して自分は、何時間というような単位ではなく、何日も何日も答えた。それなのに、日本国内の報道機関では報道されなかった。一線の記者を非難しているのではない、デスク、編集…さらに上部の経営レベルで、検閲のようなものあったと、私は考えている。」
【IWJ・阿部】
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