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時事寸評 電力はなぜ足りたのか?
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平成24年9月6日 武田邦彦(中部大学)
武田邦彦 「電力はなぜ足りたのか?」 2012.09.06
夏に向かって大飯原発の再開問題が議論されているときに、野田首相は支離滅裂なことを言っていたが、仙谷元官房長官は「原発を止めるなど集団自殺だ」といい、米倉経団連会長は「電力需要が逼迫する夏に原発を止めると日本経済は破綻する」と言った。
日本国内が海外の論調と全く違う方向に進み、日本の海外駐在員が日本に正確な情報を伝えないというのも問題であり、かつ電力需給の見通しを出した専門家が御用学者だったこともあるが、すでに2011年3月の事故直後に「日本の電力は原発を止めても不足しない」との計算がIEA(国際エネルギー機関)から出ているのだ。そこには具体的な数値も入っているが、日本の場合は数値はなく「大丈夫」か「足りない」だけであとで責任を追及できないようになっている。
猛暑となった今年の夏。しかも電力生産の40%を原発に頼っていた関西電力。それがなんなくこの夏を乗り切った理由は簡単だ。電力の消費率としてテレビに出ていた数値は、間違っていたのである。電力は、
1)設備容量(おおざっぱな比率を示すのに、これを100とする)
2)稼働可能設備(約80)
3)本日の稼働予定設備(60)
4)本日の消費電力(50)
の4つが問題だが、「消費率」としてテレビに出ていたのは、4)÷1)ではなく、4)÷3)だから、電力会社がその気(設備を最大限に動かす)という気になれば、設備容量はざっと言って2倍ある。
このことは専門家なら誰でも知っているが、テレビでは説明していなかった。電力の消費量がいつも80%から90%になっているのは、その日に電力会社が作ろうと決めた数字に対して消費する電力を指しているからである。
本当に国民が知りたかったのは、電力が全力を挙げて生産したときと、国民が全力を挙げて節電したときにどのようになるかであり、それを間違った(ふりをして原発再稼働を行った)政府と専門家の責任は重い。
原発の再開に賛成する人もいても良いが、「ウソをついて原発を再開する」のは民主主義でもなく、人格がある人とも思えない。まさに「売国無罪」(宮脇先生による)の一つである。「国民はバカだ。だから本当のことは言わなくて良い」という「偉い人」の戦略が見える。
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ただ、電力は国民の活動の源泉であるから、節約するのは日本の将来を暗くする。節約するのだったら、贅沢品など将来の日本に影響の少ない方からやらなければならず、節電のようにもっとも節約していけない電気を節約するというのは実にばかげたことなのである。
子供のことを考えれば、贅沢品を節約しようという気になるはずであり、決して活動のもとになる電気を節約するのではなく、むしろアメリカ人一人あたりの消費電力の2分の1という状態をアメリカを抜くぐらいにしないと子供は悲惨な生活を強いられるだろう。
そろそろ大人は目の前のお金ではなく、50年後の日本を考えて行動するときのように思う。
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