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記者の目:原発事故 東電テレビ会議映像=中西拓司
http://mainichi.jp/opinion/news/20120907k0000m070099000c.html
毎日新聞 2012年09月07日 00時11分
◇資料保管、公開する態勢整備を
東京電力は、東日本大震災直後のテレビ会議映像(昨年3月11日午後6時半ごろ〜同16日午前0時ごろ)の報道関係者向け公開を7日、いったん終了させる。私は150時間中、音声がある50時間をすべて視聴し、福島第1原発事故に関する第一級の1次資料だと感じた。東電は6日、映像の公開対象を「震災後1カ月間」に拡大すると発表したが、現状では事故資料の管理態勢は脆弱(ぜいじゃく)だ。
映像には会議席上とは別に、幹部が漏らした「つぶやき」が多数ある。3号機が水素爆発した直後、14日午前11時20分ごろのやりとりはこうだ(肩書はいずれも当時)。
清水正孝社長「何が起こったか、まだ分からないの?」
小森明生常務「水素爆発が一番考えられますけど、ちょっと規模が大きいと……」
社長「そうすると2号もあれ(爆発するかも)か……」
結局、別の幹部が、「水素爆発」と発表した政府の見解に合わせるべきだと言い出し、公式見解は「水素爆発」になった。三つの原子炉と四つの使用済み核燃料プールの暴走が同時進行する異常事態に、当事者すらお手上げだったことを示した。
前日13日午後7時ごろには、幹部と電話で話す勝俣恒久会長のつぶやきが残る。
勝俣会長「3(号機)はベントを開けられそうなのよ。水素(爆発)の問題? 確率的には非常に少ないと思うよ。(公表して)国民を騒がせるのがよいかの判断だけど、次の社長記者会見でそれ(爆発リスク)を聞かれたら否定するよ」
◇現場とトップの認識の差 明確に
この後、清水社長は記者会見で3号機について「設備損傷が広がらないよう全力を尽くす」と、爆発リスクには言及しなかった。同じ頃、現場では3号機の原子炉建屋から水素を抜くため必死の努力を続けていたにもかかわらずだ。結局、3号機は翌日爆発した。現場の危機感がトップに共有されず、楽観論に傾いた象徴的なエピソードだ。
150時間の映像公開は8月6日、東電本店で始まった。外部流出を警戒する東電は、視聴する記者の背後に社員を張り付け、視聴用パソコンに盗難防止用ワイヤをくくりつける用心深さだ。社員の名前など計1665カ所には「ピー」という音をかぶせた。意図的かどうかは不明だが、重要な場面になると突然無音になる部分もある。
東電が独自編集した1・5時間分はインターネットで誰でも見られるが、全体のわずか1%。株主代表訴訟の中で、3月11〜31日分の映像は東京地裁の保管が決まったが、公開を前提としておらず、映像で判明した事実を報告書に盛り込んだ国会事故調査委員会なども「つぶやき」の全てを公表しているわけではない。事故を振り返る上で、当時の映像と音声による生資料に勝るものはないにもかかわらず、東電は「社内記録」として映像の全面公開を拒んでいる。
◇政府の対応はさらにお粗末
資料保存という点で、東電より罪深いのは政府だ。政府は、前線基地のオフサイトセンターや官邸を結ぶ独自のテレビ会議システムを整備していたのに、通信回線ダウンのため一切活用しなかった。国会事故調報告書は「官邸は端末を起動させた形跡がなく、情報共有にまったく活用されなかった」と断じた。
政府の原子力災害対策本部の議事録がないことも批判を浴びた。政府は3月、東電との統合対策室の「議事概要」を作ったが、昨年3月18日以降に限られ、初動の議事録は欠落したままだ。さらに「概要」のため、放射性汚染水が海洋放出された昨年4月4日前後の記述を読んでも、誰がいつ判断したか分からない。検証は東電が今後公開する映像に頼るしかないが、そもそも、当時の閣僚らがどんな政策判断をしたかの検証を一企業の「社内記録」に頼らざるを得ないのは異常だ。当時の通話内容など3200ページ以上の記録を公開した米原子力規制委員会とは、雲泥の差がある。
お盆休み返上でピー音が頻繁に鳴る画面を見ながら1945年8月15日前後、旧日本軍が機密書類を大量焼却した歴史を思い出した。事故は戦争と同様、後世の検証を受けるべき出来事だ。今回の不適切な対応は故意というより不作為によるものと言うべきだが、歴史的財産をずさんに扱った事実に変わりはない。
資料などは東電ではなく政府が管理し、公開すべきであり、国家的なアーカイブ組織の創設を提言したい。検索も可能にし、海外向けに英訳も進める。世界にはまだ約430基の原発が稼働しており、世界の共有財産にすべきだ。世界に影響を与えた福島の原発事故を、検証可能な状態に整備する責任が政府にある。(東京科学環境部)
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