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「秋場龍一のねごと」ブログ
http://akiba1.blogspot.jp/2012/08/blog-post_31.html
「ふくしまは、元気です。」の広告制作者たちへ。また安全神話に加担するのですか?
けさ8月31日の朝日新聞を開いたら、「ふくしまは、元気です。」という全面広告のキャッチコピーが眼に飛び込んできた。
そのでかい赤色ゴシックフォントの背景には紺碧の五色沼、その下にはTOKIOのメンバー5人が遠くを見ながら笑顔で立っている写真、さらにその下には、「ふくしまからはじめよう。」というキャンペーン案内。そして一番下に「福島県」という広告主のロゴが入っている。
この広告、ものすごく無理やり良心的に考えて、「シュールなアート」か「ブラックユーモア」ってところだ。
キャッチコピーの下にボディコピーがあって、「福島の秋はにぎやかです。美しい自然、旬の食、伝統の祭りの数々。楽しくて、おいしくて、どこか懐かしい風景がここにはあります。山と海と人に恵まれた、日本のふるさと。福島は、あなたを待っています。」
――どうだろう。これ、どう見てもシュールでブラックだよね。
もちろん、この広告のどこにも東京電力福島第一原発事故のこと、高線量の放射性物質拡散のこと、淡水魚の被曝のことなど一切見当たらない。
まるでチェルノブイリを超える原発事故などなかったような、平和で幸福で健康にあふれた紙面である。
どうやら、大々的に「原発事故なんてなんでもないよ」「放射能なんてぜんぜん怖くないよ」キャンペーンを展開して、またあらたな「安全神話」に着手したようだ。
ぼくもかつて広告制作にタッチし、コピーライターを生業にしたことがあるためか、ものすごく気になることがある。
この新聞広告は大手の広告会社が請け負い、その会社の社員か協力会社の制作者たちがたずさわっており、それはもちろん個々の生身の人間である。
ぼくはそんな彼らの心情を知りたい。そう、どんな気持ちでコピーライターの君は、「ふくしまは、元気です。」というコピーを発想したのか、ということだ。コピーライターばかりではなく、クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナーなどにも訊きたい。
これまで原子力安全神話を具体的に創作してきたのは、業界でクリエーターとよばれる君たち制作者だ。危険な原発を稼働させるためには、原発は絶対に安全である、と人びとを信じさせる世論づくり、「安全神話」が必要であった。
そして、フクイチ事故が起きたのだけど、これら「安全神話」の制作者たちは、よもやこの史上最悪事故の責任はないとは考えないはずだ。
たとえば、コピーライターの君――。
「ふくしまは、元気です。」なんて、君はそうは思わないし、このコピーがどんなに悪意に満ちたものか百も承知だろ。
自分が持って生まれた文案センス、培った広告能力を悪魔に売り渡すなよ。ぼくはかつて同業者だった君たちに、怒りよりも憐れみをおぼえる。君が与えられた能力を発揮するのはだれか、胸に手を当てて考えてほしい。
――満腔からそう願う。
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