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2年目に入り子供の被爆をどう考えるか?
http://takedanet.com/2012/08/post_e544.html
平成24年8月26日 武田邦彦(中部大学)
福島事故から2年目に入り、子供の被爆をどのように考えるか、不安に思っている方が多くなりました。私は全体として次のように考えるべきと思います。
1) 被曝の限度は事故が起こる前に専門家が充分に考えて「この程度ならまずは安全」とした1年1ミリシーベルトを守ってやることです。子供の健康より長いものに巻かれろという人たちの一部が、まだ別のことを言っていますが、その人達は絶対に子供の将来に責任を持ってくれません。再度、確認しますが日本の法体系はすべて1年1ミリを基礎にしています。公的な文書はすべて1年1ミリです。「子供がガンになっても俺は関係ない」というような人にダマされないように。
2) 「非常時だから余計に被曝しても良い」という人もいますが、福島原発が事故を起こしたのは第一に東電、第二に政府、そして第三に今の大人(我々)であり、子供には責任がないのですから、「非常時だから、子供もガンになって良い」ということにごまかされないようにしたいと思います。ICRPが「非常時では1年20ミリ」と言ったのも前提があり、子供がそれに相当する「メリット」の提示を求めています。
3) 具体的な項目を頭の中で整理をしておきたいと思います。
(a) 空間線量からの外部被曝は落ち着いては来ましたが、まだ1時間1マイクロ(福島)から0.15マイクロぐらいのレベルにあります。1マイクロというと1年に9ミリ、0.15マイクロというと1.3ミリシーベルトですから、安全ではありません。それに加えて、すでにセシウムなどの放射性物質はすべて地表に落ちており、子供は地表に近いところにいます。政府などの測定はすべて「すこしでも小さく見せたい」ということで高い位置で測定していますので、子供の場合は、1.2倍、砂遊びなどでは1.5倍ぐらいに考えてください。
(愚痴ではないのですが、このようなことを書くとき、「日本の政府に誠意があったら良いのにな」と思います。というのは国立環境研究所など多くの研究機関がありそこが全力を挙げて国民の総被曝量を下げようと努力してくれれば、多くの人の被曝量が減ると思うのです。)
(b) 土からの再飛散による呼吸で入るもの
日本の自然放射線はほぼ1時間0.04マイクロですから、仮に外部線量が0.11マイクロであっても、その差の0.07マイクロは土にあるセシウムなどから来るものです。それが再飛散しています。再飛散した量をどのぐらい吸い込むかは個人の生活によってかなり違います。校庭で土ほこりにまみれる生徒さんなどはかなり吸い込む事になりますし、毎日、アスファルト、コンクリート、そしてビルで生活をしている人は少ないということになります。
(福島は1平方メートルあたり50ベクレル、関東東北で10ベクレル程度とすると、最大でその20倍を吸い込むことになります。福島で1000ベクレル、関東東北で200ベクレルです。食品の被曝と同じように考えてください。)
(c) 食材からの被曝
ここでもっとも大切なのは、国の食品安全基準が、本来の1キロ40ベクレルではなく、1キロ100ベクレルとなっていることです。よく知られているように、原発からの被曝の限度は「外部+内部」であり、外部が0.6とすると内部は0.4マイクロになります。現在の食品安全の基準が「食品だけで1年1ミリ」と公言されていますから、正確には40ベクレルになります。従って、「これは基準を満たしているから安全」というのはダブルスタンダードですから、かならず「どちらの基準でお話になっていますか?」と聞いてください。
先日、福島中通りのある地域のお米の検査があり、不検出と報道されていましたが、測定方法が杜撰なこと、畑の汚染度とのこれまでの移行率の関係が明示されていないことなど、信頼できるものではありません。日本は科学技術立国ですから、畑の汚染度との関係が従来の科学で説明できるかも大きな問題です。
食品はウランやプルトニウム、ストロンチウムの問題も解決していないので、引き続き、柑橘類、太平洋北のサカナ、椎茸などに充分に注意をしてください。また福島産のお米は測定がいい加減(ベルトコンベアーで測定)なので値は信用できません。
(法律や基準にダブルスタンダードというのは絶対に避けなければならないものですが、それを政府、偉い人、評論家などがおおっぴらにダブルスタンダードを国民に強いているのは実に奇妙で、不誠実です。)
(d) 水からの被曝
自家用の地下水を使用していて、福島、関東東北にお住みの人以外はまったく大丈夫です。水道も全国的にOKで、地下水でも中部、関西、北海道、それより遠いところはOKです。ただ、関西などでも一部の疑問があり、注意をする必要はあると思います。
(e) 移動などによる被曝
航空機は国内は一回あたり10マイクロ、海外は100マイクロで見当をつけてください。福島を短期間(2,3時間)で通過する場合は3マイクロ程度、1週間逗留して100マイクロ程度です。
(f) 子供の被爆の計算
以上の5項目を足し算します。自然被曝1.5ミリ、医療被曝2.2ミリ、核実験被曝0.3ミリの合計4ミリに5項目の被曝を足します。これが5ミリを超えたら要注意です。たとえば、原発からの被曝が2ミリでも、この1年、まったく医療被曝がなければ、1.5+0.3+2=3.8ミリシーベルトで安全です。医療被曝はレントゲン、CTスキャン、歯の治療などです。
逆に、たとえば関西にお住みの方は、原発からの被曝がほとんどありませんから、医療被曝は従来通りの必要な治療で被曝する事ができます。また福島、関東東北のお医者さんは可能な限り医療被曝を減らすようにして下さい。
夏休みが終わり、親としてはざっと夏休みの被曝を計算して秋からの対策を冷静に、科学的に考えてください。もっとも注意しなければならないのは、哀しいことに今の日本は政府、自治体、大学の先生、評論家などが「子供の被爆より、経済成長」を大切にしていることです。しかし、子供はそれを選択できませんから心を強く持ってください。
また、被曝や医療の本当の専門家は「法律の基準」以外のことは言われないし、「基準を超えていますが健康に影響はありません」などと言うはずもありません。「基準を超える」というのは全員が全員、病気になるということではなく、全体として危険ということです。
「酔っ払い運転をしてもほろ酔い程度から大丈夫です」と言っているようなもので、ほろ酔いで運転して100人が100人、事故を起こすわけではないのですが、社会でそれは許さないという基準を設けて子供などが交通事故に巻き込まれないようにしているのです。
「1年100ミリでも、100人に0.5人しかガンで死なないから大丈夫」と言った反社会的医師がいます。それに基づいて「1年100ミリまで大丈夫」と言っている人がいますが、これは100人に0.5人というのは1億人で50万人です。
一方、酔っ払い運転の死者はわずかに1億人で数100人に過ぎません。自分が病気で死ぬのならともかく、東電の事故や酔っ払い運転のように反社会的なことで、死ぬのですから被曝のガン死も酔っ払い運転者にしかれるのも同じことです。いかに責任のある人がいい加減なことを言っているかわかります。
売名だけを目的としたこのような反社会的、反法律的な言動で、子供達が余計な被曝をしないように注意しましょう。また周囲にあまり気にしている人がいない場合でもまったく関係がありません。自分の子供は自分しか守れませんから。1年1ミリは「科学的にハッキリしないが、社会の約束として守ろう」ということです。
また、今から60年前は結核予防法によって小学生が毎年、胸のレントゲンを撮っていたのです、小児白血病の原因となることがわかり、今ではほとんど集団検診をしていません。私たちには経験があるのです。
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